入江 杏子 著 文芸春秋
何でもそうだけど、出来事には多面性が必要で、「火宅の人」は、壇氏の側から書いたもの。 これは、(不倫)相手の恵子さんの書いた本。
入江杏子さんは芸名で、本名は久恵さん。 劇団民芸の女優さん。
裏表紙に写真が載っていて若くて可愛いと思ったら、約50年も前の写真だった。 昭和2年の生まれだから、今年で79歳になるはずである。
もちろん、ご健在で、数年前の映画にも何本か出演しているし、TVドラマにでたこともあるらしい。
発刊が平成11年。 壇と別れて35年たってからこの本を書いている。
小説に書かれていない部分、事実と小説で違う箇所、恵子側の気持がつづられ、「火宅の人」とあわせて読むといろいろわかる。
こうなると、「火宅の人」に出ている登場人物、いや壇の素顔がみたくなり、図書館にて『新潮日本文学アルバム 壇一雄』を借りてきて、検証する。
この文学アルバムを執筆した佐藤亮一が、「火宅の人」に出てくる「恵子と事を起こした」旅行に同行した編集者である。
そして、大発見。 壇が菅野もと子とロンドンで会ったK・K女史というのが、誰なんだろうと気になっていて、でもわかるわけがなく、見当もつかなかった。
写真でわかった。 小森和子、あの小森のおばちゃまなのである。 菅野もと子らしき顔も確認。 改めて小説のあの場面を思い浮かべると、いちいち納得がいって、映画のようにイメージが膨らむのである。 こういうのって、悪趣味? それとも好奇心強すぎかな。
ご家族や、その他の気がかりな人の顔を確認し、佐藤亮一の文を読んで、また「火宅の人」を考える。
このアルバムは、壇と奥さんのヨソ子さんとの仲睦まじい写真や、子供たちと写った家庭的な壇の姿ばかりが収められていて、恵子さんとのツーショットは1枚きり。 これは、かなり意図的なものがあるという印象を受けた。
最初に多面性と書いたけど、ヨソ子さん側から書いた本『壇』沢木耕太郎著も、読みたい。