しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

壇一雄の光と影

2006-03-20 15:18:17 | こんな本読みました

Danhikaritokage  ー恵子からの発信ー

  入江 杏子 著   文芸春秋

 何でもそうだけど、出来事には多面性が必要で、「火宅の人」は、壇氏の側から書いたもの。 これは、(不倫)相手の恵子さんの書いた本。

 入江杏子さんは芸名で、本名は久恵さん。 劇団民芸の女優さん。

 裏表紙に写真が載っていて若くて可愛いと思ったら、約50年も前の写真だった。 昭和2年の生まれだから、今年で79歳になるはずである。

 もちろん、ご健在で、数年前の映画にも何本か出演しているし、TVドラマにでたこともあるらしい。

 発刊が平成11年。 壇と別れて35年たってからこの本を書いている。

 小説に書かれていない部分、事実と小説で違う箇所、恵子側の気持がつづられ、「火宅の人」とあわせて読むといろいろわかる。

 こうなると、「火宅の人」に出ている登場人物、いや壇の素顔がみたくなり、図書館にて『新潮日本文学アルバム 壇一雄』を借りてきて、検証する。

 この文学アルバムを執筆した佐藤亮一が、「火宅の人」に出てくる「恵子と事を起こした」旅行に同行した編集者である。

 そして、大発見。 壇が菅野もと子とロンドンで会ったK・K女史というのが、誰なんだろうと気になっていて、でもわかるわけがなく、見当もつかなかった。

 写真でわかった。 小森和子、あの小森のおばちゃまなのである。 菅野もと子らしき顔も確認。 改めて小説のあの場面を思い浮かべると、いちいち納得がいって、映画のようにイメージが膨らむのである。 こういうのって、悪趣味? それとも好奇心強すぎかな。

 ご家族や、その他の気がかりな人の顔を確認し、佐藤亮一の文を読んで、また「火宅の人」を考える。 

 このアルバムは、壇と奥さんのヨソ子さんとの仲睦まじい写真や、子供たちと写った家庭的な壇の姿ばかりが収められていて、恵子さんとのツーショットは1枚きり。 これは、かなり意図的なものがあるという印象を受けた。

 最初に多面性と書いたけど、ヨソ子さん側から書いた本『壇』沢木耕太郎著も、読みたい。


火宅の人

2006-03-20 14:34:44 | こんな本読みました

KatakuueKatakushita_1  壇 一雄 著

  私の読んだのは、新潮社版458頁。

 以前から読みたかったのだけど、壇氏の本は、これがはじめて。

 長女の壇ふみさんの方が、TVなどでよく顔を見ているので、「ふみさんのお父さん」というイメージでしかなかったのが、これを読んで、強烈に壇一雄に興味をもってしまった。

 次郎が日本脳炎の後遺症で寝たきりになるところから、恵子と「ことを起こす」ところから話が始まるのだが、この小説がほぼ事実にもとづくというのは周知の事である。

 登場人物もすべてモデルがあり、奔放で放浪の作家のありのままというのに、興味がひかれる。 

 男性としては、魅力的だろう。 才能もお金も社交性もあり、たくさん稼いで湯水のごとく費消してしまう。 そして、まめ人間。 酒と女に溺れる、戦前生まれの典型的小説家。

 夫としたら、もちろん、すごく嫌。

 それにしても恵子に使うお金、気前よく人におごってしまったり、半年近いヨーロッパへの無駄使い旅行など、読んでいて、こちらが「あーもったいない」と心配してしまう。

 この本の面白さって何だろう。 私小説を興味本位に、他人の生活を覗き見するおもしろさなのか。

 いや、それも無論あって、正直さ、文章の上手さ、ひとりの男の苦悩がリアルに感じられる、云々いろいろミックスされたものが、先へ先へと読み手を進めるのである。

 個人的には、昭和30年代の風物にひかれ、また「あとがえる」という言葉がたくさんつかわれているのに目がとまった。 はじめて聞く言葉である。 意味はきっと「あともどりする」とか「もどってくる」という事だろうけど、30年代は、こんな言葉があったの?

 その他、今では使わない時代特有のことばがあるのが興味深い。

 執筆開始から約20年かけて、最後の章は、病床からの後述筆記で完成している。


キッパリ!

2006-03-03 14:40:35 | こんな本読みました

Kippari  上大岡 トメ 著   幻冬舎

 何か元気の出る本ないかなーって思ったら、これがおすすめ。

 今の自分を変えたいよーって感じたら、読んでみて。

 そして、もちろん実行するのです!

 「たった5分間で自分を変える方法」とあるように、どれもが簡単に実行できる事ばかり。

 まずはこのポーズ、片手を突き上げ、片手は腰のこのポーズをやってみよう!

 だらだらごろごろしていて、起き上がれない時、脚に力を入れて、ぐぐっと起きる。そして、天高くコブシを突き上げよう!!

 各項目ごとにチェック欄があり、4コマ漫画があり、読みやすい。でも、内容は濃いよ。

 トメさんのHPも是非見てね。↓

http://www1.ocn.ne.jp/~tomesan/


明日の記憶

2006-03-03 14:22:52 | こんな本読みました

Ashitanokioku  萩原 浩 著   光文社

 この本読むと、「ひとごとではない」と誰もが思うはず。

 今日も、小学校の本読み仲間と話していたのだけど「すぐ忘れちゃうのよね」「2階へ行って、何しに行ったか忘れちゃう」とか人の名前が出てこないとか。

 私も、これ読んで、「もしかしたら私も若年性アルツハイマーかも」と思いあたったりして。

 ちょっとした物忘れは、誰にでもある事で、10代や20代の人にももちろんあるのである。 そんなものは、「しまった」ですんでしまう。

 だけど、本当にこの病気になったら、自分でコントロールがきかなくなっていったら、どうなのだろう。 特に初期の頃は、自分で症状が進んだら、という予測ができるから、その恐怖は耐え難いものがある。

 じわじわと進行する病気と、それに対する主人公の心理が切ない。

 気になるこの表紙の後姿は、誰がモデルなのでしょう。