しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

更年期少女

2010-07-14 23:17:36 | インポート

Photo_3 真梨幸子 作 幻冬舎

表紙の絵、素敵でしょう。

 いかにも少女漫画という典型的な絵柄。

これは、昭和51年から52年まで、『少女ジュリエット』という雑誌に連載され、日本中の少女を熱狂させた「青い瞳のジャンヌ」なのである。

 18世紀のフランスを舞台に伯爵令嬢ジャンヌの波乱に満ちた半生。

 ところが、物語は未完のまま、作者秋月美有里は漫画界から姿を消す。

もちろん、架空の話で、この絵は松苗あけみさんの描いたもの。

 でも、でも、ありそうじゃありませんか、こんな漫画って。

 すぐ浮かんだのが「ベルばら」そして、「高橋真琴」の絵。

 「青い瞳」には、ファンサイトがあり、多くのファンが掲示板に書き込みをしたり、お絵かきしたり、小説を載せたり、会報発行などしている。

 その幹部の集まりが「青い六人会」で、マルグリット、ガブリエル、ジゼル、ミレーユ、シルビア、エミリーとHNで呼ばれる40代のオバちゃん達が、月に1度高級ランチを食べながら、語り合うのである。

 しかしながら、それぞれの家庭には事情があり、オバちゃん達はこの会を唯一の楽しみとしているが、次々に殺人事件に巻き込まれていくのである。

 推理小説のようであるが、コミカルで、ビジュアルでもある。

 このように、何かに夢中になるオバちゃんを「オタオバ」というらしい。

 そういえば、私の周りにも、韓流やライブの「オタオバ」が多いし、自分は・・・?

あっ、オタオバだ、と気づいてしまった。

 そうそう、これ、あるある、と身につまされる描写が多々あり、社会現象、ネット依存、人間心理など、思い当たることがでてくるのである。

 まあ、とにかく面白くて面白くてやめられない。

 ねちっこく、ドロドロとした女性向きである小説だけど、男性の感想もきいてみたい。

 


東京島

2010-07-05 23:21:10 | こんな本読みました

Photo_2 桐野夏生 作  新潮社

 この夏に映画で公開されるとの事で読んでみた。

 無人島に漂着した31人の男とたったひとりの女、清子。

 あ、この話、知ってる、と思った。

 何年か前、図書館で本を物色している時、「実際に戦争中に起こった出来事」として何かの本に出ていたのだ。

 それは、ある会社の人たちが、戦争のどさくさで島に残され、たったひとりの女性をめぐって殺し合いが起こる。

 女性は女王として君臨し、助け出されたあと、この話が映画化され、女性は有名人となり、話題となった、という。

 映画の本だったかなと探してみたが、みつからず、ネットで調べてみたら、「アナタハン島の女王事件」というのだそうだ。

 けれど、この本とその事件は全く別物で、桐野さんのヒントになったかもしれないけれど、内容は桐野ワールドである。

 女性がひとりであれば、たとえ白豚のようで46歳という中年であろうと、息子のような年齢の男達の注目を浴び、大事にされる。

 けれど、年月がたつにつれ、そして清子が皆を裏切って「ホンコン」なる中国人たちと脱出を企てて失敗してもどってくると、「女」の価値がなくなり、だれもかまわなくなる。

 人間は群れをつくるから、この島を東京島と名付け、「オダイバ」「ジュク」「ブクロ」「チョーフ」「コウキョ」「トーカイムラ」などなじみの地名をつける。

 登場人物も「オラガ」「カメちゃん」「アタマ」「犬吉」「ヒキメ」など、それぞれの特徴にあったニックネームで呼ばれる。

 人間は秩序を求めるから、リーダーができたり、反対分子ができたり、宗教家が現れたり、ミニ社会が構築される。

 サバイバル状態での人間の変化や行動が興味深い。

 だんだん、神話のような雰囲気になってくる。

 皆の願いは、ここを脱出すること、それのみ。

 果たして、清子はみんなは、ここから助け出されるのでしょうか。