しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

それでも元気な私

2007-02-19 16:00:36 | こんな本読みました

Soredemogennki  小手鞠るい 著     新潮社

 るいさんの自伝的物語。

 高校を卒業して、岡山から、京都の大学に出てきた18歳から始まっている。

 喫茶店で働いて、恋人ができて・・・と『欲しいのはあなただけ』とほとんどかぶる内容は、るいさんの経験した出来事なんだなあと実感。

 恋人と別れ、いくつも仕事が変わり、また恋人ができて、結婚して、離婚して、と次々と起こる出来事は、ちっとも珍しくない、だれにでも起こりうる事ばかり。

 どの時にも、るいさんは、精一杯やっている。 その時その時でベストをつくしているのだ。

 だから、共感が持てるし、普通に綴られた文章だけど、頑張っているのがよくわかる。

 読みながら、自分の人生をも重ね合わせてるいさんに気持が同化していく。

るいさんは、1956年生まれ。 現在はアメリカニューヨーク州ウッドストック在住。 詩人で、翻訳家でもあり、「川滝かおり」という名前で翻訳の仕事をしている。


予知夢

2007-02-18 17:04:43 | こんな本読みました

Yotimu  東野圭吾 著   文芸春秋社

 ガリレオ先生シリーズ。 帝都大学理工学部物理学科第13研究室、湯川学が解き明かす事件の真相の数々。

 5つの話のそれぞれが、オカルト的な事件なのだけど、湯川氏にかかると物理的に立証されていく。

東野さんが電気工学科卒のエンジニアだったので、物理に詳しくて、実験で事件の真相を明らかにしていくのだけど、その説明を読んでも、理系に弱い私には、何のことやらさっぱりわからない。

 だけど、なんだかすごいなあ、と感心してしまう。

 そして、こういう事件の常ではあるが、人間ドラマがそれぞれの事件にあり、それが興味深い。

 最後の話『予知る』は、「あれ?もしかしてこれって、物理だけで解き明かせたのかな?」と思わせた終わり方で、つまりはガリレオ先生も万能ではなく、普通の人間で、真実は神のみぞ知る、というのがいいです。

 


ダブル

2007-02-18 16:46:25 | こんな本読みました

Daburu  永井するみ 著    双葉社

 推理小説で、殺人犯が、最初からわかっていても、読者は、「一体いつこの謎を解き明かすのだろう」 「犯人は、いつばれてしまうのだろう」という興味をもって読み進む。

 この小説も、最初から犯人がわかっているというか、読者にこの人が犯人よ、と思わせていく手法で、最終的にはちょっと、はずれるんだけど、それでもすぐ、見当がついてしまう。

 犯人当てでない、人の心の奥底、だれでもみな、自分中心に考えているから、その基準に合致しないものは、認めないというもの、あるよね。

 けれど、だからといって、排除するわけにはいかないし、排除したらそれは犯罪になる。それをやってしまった犯人。 でも気持ちはわかる。 母子の愛情にもリアル感が大きい。

 雑誌記者で探偵役の多恵が、出来すぎていて、素人なのにまるで名探偵みたいなのが気になりました。


あなたとわたしの物語

2007-02-18 16:11:05 | こんな本読みました

Anatatowatashi  小手鞠るい 著    徳間書店

 続けて小手鞠さんの本。 すっかりはまりました。

 一気に、一日で読んでしまった。

 新宿高層ホテルの20階ティールームを舞台にした、6つの恋の物語。

今は、新宿高層ビル街など、なんの珍しくもない存在だけど、わたし達の年代には、この高層ビルがトレンディだったのです。 20代の頃のデートスポットで、夜景を見ながら食事やお酒を、というのが、ロマンティックに感じられる時代でした。

 るいさんの設定は、まさにその時代ピタリなので、情景が目に浮かび、懐かしさと共感が交じり合うのです。

 以前観た、ショートショート映画で『思春期の恋』というのがあり、「恋というのは、つまりは性的な欲望」で、本能的な欲求を、恋と錯覚するのだというのがありました。

 脳からそのような分泌物が出るような指令がなされ、心臓がドキドキしたり、顔が赤らんだりというのは、相手を求める体の要求サインだという事で。

 心が恋するのではなく、体が求めるのである、という。 人間も、子孫繁栄のプログラムが組み込まれた動物の一種なのだと、妙に納得した覚えがあります。

 1作目の『恋という名の欲望』は、まさにそれ。

 会った瞬間に相手がほしいと感じて、理性的にそれを実行に移していく。 けれど、実際には・・・。

 2作目『情熱の法則』・・・・ 「情熱に従い、熱い想いに正直に生きるということは、とても素晴らしく、気持ちのいいこと。だけど、情熱のおもむくままに生きれば、人はあとで必ず、その情熱から復讐される。」

 なんと深い言葉ではないでしょうか。 このような情熱をつかむもつかまないも、あなた次第。

 『もしも「恋」を好奇心と他人の肉体への欲望と置き換えられるなら、わたしは恋をしている』

 るいさんの言葉は、すごくいい所をついているなあと思います。

 残りの4作も、ふとした出会いから生じる男女の恋物語。

 ティールームで語り会う最初の5作は、中年女性が主人公ですが、最後の物語は、それらの人たちの姿をながめる、ホテルの従業員の女の子の話。


欲しいのはあなただけ

2007-02-06 23:31:48 | こんな本読みました

Hoshiinoha  小手鞠るい 著    新潮社

 まあ、なんて刺激的なタイトルでしょ。 図書館にリクエストするのが、ちょっと恥ずかしかったです。

 恋愛小説の名手、るいさん。

 誰でも1回以上は経験するよね、恋愛のはじまりと終わり、それがすごくリアルに書かれていて、そうだそうだ、と思ってしまう。

 「男らしい人」との出会いと別れ、「優しい人」との出会いと別れ、そしてその間にある結婚も、淡々と静かに描かれていて、人が人を好きになる事、自分にあてはめて考えてしまうなあ。

 とっても普通の恋愛なんだけど、しみじみと考えます。


女流

2007-02-06 23:08:09 | こんな本読みました

Zyoryuu  関川夏央 著   集英社

 林芙美子と有吉佐和子。

 昔、授業で女流文学を選択して、林芙美子を学んだ時に小説を読んで以来、林の小説は読んでいない。

 有吉佐和子の小説は、「紀ノ川」「華岡青洲の妻」「悪女について」などを20代の頃に読んだ。

 関川氏は、この二人の私生活にぐいぐいはいりこんで、さまざまな角度から、人間性を浮き彫りにしている。

 林芙美子の男性遍歴、奔放性、放浪性、有吉佐和子の知的早熟性、旺盛な好奇心など。

 この本に『女二人のニューギニア』についての記述がかなり書かれている。有吉佐和子にとっては、異色のルポだったようだ。

 これを読むと、二人に興味を持つこと必須である。


親切なクムジャさん

2007-02-06 22:28:42 | こんな本読みました

Kumuzya  大石 圭 著    角川ホラー文庫

  韓流ブームはまだ衰えていなくて、私の周りの奥様方は、いまだに韓国ドラマと韓国スターにご執心。

 表紙カバーは、『チャングムの誓い』の主演のイ・ヨンエ。

 これは、最初に映画があり、それを大石圭が小説化したものである。

 私も最初に映画をDVDで観て、というか、DVD観る前に、このタイトルにものすごく惹かれて、気になって、気になって仕方がなかった。

 『復讐は、人間の本能』であるという。

 13年間無実の罪で刑務所にいた、美しい女の復讐劇。 読者は、当然主人公のクムジャに同化して、最後の胸のすくような復讐場面に満足感をいだく。

 しかし、クムジャさん、なんて緻密な計算で、ここまで復讐の計画を練っていたのか、その忍耐、努力に涙がでるほど感動してしまう。

 なんてひどい男、そうよ、これくらいやらなければ、気が済まない。 法的な制裁を待つことなしに、被害者(子供達)の親が、男を切り刻んでいく場面は、残酷である。

 映画と小説は若干違っていて、結末も違う。

 けれど、映画を観なくても小説だけで充分堪能できる。


功名が辻

2007-02-06 21:20:27 | こんな本読みました

Koumyou14  司馬遼太郎 著   文春文庫  1巻~4巻

 2006年NHK大河ドラマの原作。 つい先ごろ終わったばかり。

 私、司馬さんの小説は、初めて読みました。

 すごく読みやすいなあ、いかにも大衆小説、という印象です。

ドラマもときどき観ていました。

 山内一豊の妻といえば、良妻賢母の代名詞で、一豊が名馬を買いたい時、へそくりの金子10両をさっと夫に差し出したという話が、有名である。

 私も、是非、それにあやかりたいと、読み始めた次第。

 千代は、確かに賢夫人で、夫の身が立つように、いろいろ画策するけど、一豊もまた立派な夫でした。

 一生涯、千代以外の女性を求めなかったのだから。 この時代の男性にしては、珍しい事である。

 土佐の領主になってからは、話が駆け足で進んで、最後がちょっと物足りなかった。

 中年以後の、千代との落ち着いた生活をもっと読みたかった。