小手鞠るい 著 徳間書店
続けて小手鞠さんの本。 すっかりはまりました。
一気に、一日で読んでしまった。
新宿高層ホテルの20階ティールームを舞台にした、6つの恋の物語。
今は、新宿高層ビル街など、なんの珍しくもない存在だけど、わたし達の年代には、この高層ビルがトレンディだったのです。 20代の頃のデートスポットで、夜景を見ながら食事やお酒を、というのが、ロマンティックに感じられる時代でした。
るいさんの設定は、まさにその時代ピタリなので、情景が目に浮かび、懐かしさと共感が交じり合うのです。
以前観た、ショートショート映画で『思春期の恋』というのがあり、「恋というのは、つまりは性的な欲望」で、本能的な欲求を、恋と錯覚するのだというのがありました。
脳からそのような分泌物が出るような指令がなされ、心臓がドキドキしたり、顔が赤らんだりというのは、相手を求める体の要求サインだという事で。
心が恋するのではなく、体が求めるのである、という。 人間も、子孫繁栄のプログラムが組み込まれた動物の一種なのだと、妙に納得した覚えがあります。
1作目の『恋という名の欲望』は、まさにそれ。
会った瞬間に相手がほしいと感じて、理性的にそれを実行に移していく。 けれど、実際には・・・。
2作目『情熱の法則』・・・・ 「情熱に従い、熱い想いに正直に生きるということは、とても素晴らしく、気持ちのいいこと。だけど、情熱のおもむくままに生きれば、人はあとで必ず、その情熱から復讐される。」
なんと深い言葉ではないでしょうか。 このような情熱をつかむもつかまないも、あなた次第。
『もしも「恋」を好奇心と他人の肉体への欲望と置き換えられるなら、わたしは恋をしている』
るいさんの言葉は、すごくいい所をついているなあと思います。
残りの4作も、ふとした出会いから生じる男女の恋物語。
ティールームで語り会う最初の5作は、中年女性が主人公ですが、最後の物語は、それらの人たちの姿をながめる、ホテルの従業員の女の子の話。