長野まゆみ 著 河出文庫
写真なし、です。
すごくシンプルな表紙だったような記憶。
長野さんの文章、いいなあ。 ほんとにいい。
典雅な擬古体、ポップな懐古体というらしいけど、とにかく美しい。
これは、美大出身だからか、モノの表現が美しいのである。
宮沢賢治の影響があるのか、夜の教室の情景、先生の様子、授業風景など、賢治が書いたものといってもいいくらい、イメージが似ている。
犬の名前の耳丸も風雅でいい。きりっとした、忠実な犬と想像できる。
アリスの苗字も、どんな少年なのかも描写がなく、それでいて、ちゃんと姿形を思い描けるのだ。
夜空に星や月を貼り付けるのは、メアリーポピンズと同じで、あれ?という気がしたけれど、翼をつけた少年が、びろうどの天幕に工作した星を貼っていく様子が目に浮かび、これこそ長野ワールドという感じ。
現代なのか、明治時代なのか、田舎なのか、何にも書いていない、独特の世界。
うっとりと浸ってしまう。