しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

少年アリス

2006-02-24 16:09:37 | こんな本読みました

 長野まゆみ 著  河出文庫

 写真なし、です。

 すごくシンプルな表紙だったような記憶。

 長野さんの文章、いいなあ。 ほんとにいい。

 典雅な擬古体、ポップな懐古体というらしいけど、とにかく美しい。

 これは、美大出身だからか、モノの表現が美しいのである。

 宮沢賢治の影響があるのか、夜の教室の情景、先生の様子、授業風景など、賢治が書いたものといってもいいくらい、イメージが似ている。

 犬の名前の耳丸も風雅でいい。きりっとした、忠実な犬と想像できる。

 アリスの苗字も、どんな少年なのかも描写がなく、それでいて、ちゃんと姿形を思い描けるのだ。

 夜空に星や月を貼り付けるのは、メアリーポピンズと同じで、あれ?という気がしたけれど、翼をつけた少年が、びろうどの天幕に工作した星を貼っていく様子が目に浮かび、これこそ長野ワールドという感じ。

 現代なのか、明治時代なのか、田舎なのか、何にも書いていない、独特の世界。

 うっとりと浸ってしまう。


レンタルチルドレン

2006-02-24 15:33:46 | こんな本読みました

Rentaru  山田悠介 著  幻冬舎

 こどもをレンタルする会社があり、レンタル料は2週間で男の子50万円、女の子60万円。

 気に入って購入する場合は、1千万円也。

 ものすごく高いけど、亡くなった自分の子供にそっくりであったら、安いものなのだろう。

 里谷夫妻は、病気で死んだ自分の息子と瓜二つのこどもをレンタルし、購入するのだけれど・・・。

 子供がどんどん変化していくさまが、恐ろしい。

 最後には、人間とはいえない代物になっていくのだけれど、逆に愛情が高まるというのが悲しい。


おじいさんがかぶをうえました

2006-02-24 15:10:05 | こんな本読みました

Ojiisanga  福音館書店

 「こどものとも50周年記念誌」

 「こどものとも」誕生の話、作家の語る「絵本誕生の秘密」、「絵本のできるまで」などが興味深い。

 圧巻は、第1号から今日までの付録である絵本が全部写真とコメント入りで掲載されている事。

 この中から数多くの名作が生まれ、ハードカバーになって、長く読み継がれているのである。

 読んだことある絵本がたくさん。 また、読んだことない絵本もたくさん。

 絵本の読み聞かせをしている人には必読である。

 自分で持っていたいけど、値段も高いので、小学校の本読みグループで共同購入しました。


沖で待つ

2006-02-24 14:52:23 | こんな本読みました

Okidematu  絲山秋子 著

 私の読んだのは、『文学界2005年9月号』掲載のもの。

 第134回芥川賞受賞作。

 「私」こと及川という総合職の女性と、同期入社の「太っちゃん」こと牧原の物語。

 住宅設備機器メーカー勤務で、初めての配属地福岡に太っちゃんと赴任して、一緒に仕事しながら成長していく話なのだけど、私の注目したのは、「太っちゃんとの約束」。

 どちらか先に死んだ方が相手のPCのHDDを壊すという約束なのだ。

 死んだ後、人に見られたくない情報がHDDには詰まっている。 ソフトで消す方法もあるが、完璧ではない。 見る人が見れば、履歴はわかってしまうのだ。

 先に事故で死んだ太っちゃんのマンションへ合鍵で入り、HDDにキズをつける作業が克明に記されていて、興味をひいた。

 PC本体のマザーボードはみたことがあり、メモリとかCPUとかあるなってことは知っていたけど、「お弁当箱」に収まっているHDDは、もちろん、みたことがない。

 金属の固い円盤で、大量のデータを保存しておく、資料棚のようなもので、必要な情報をメモリに呼び出して(ロード)して利用するのだ。

 「弁当箱は、いかにも、触ってはいけない、というように黄色い警告シールとバーコードがべたべたと貼ってありました」とあり、簡単には開けられないように秘密のねじがあったり、ドライバーもマイプラでなく、星型ドライバーを使わなくてはあかないのである。

 これは、とっても参考になり、なんだかわからないが、何かの役に立ちそうな気がする、のは私だけだろうか。

 最後の太っちゃんの幽霊は、いまいちかな。 でも、「私」にも秘密があったのを話さなくて、幽霊の太っちゃんに知られる事に必要性があったのかも。 あるいは、幽霊は、自分の心の内の風景なのかも。