しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

白い部屋で月の歌を

2005-11-22 10:32:08 | こんな本読みました
shiroiheyade

 朱川湊人  角川ホラー文庫

 第10回(2003年)日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
 読み始めたらとまらなくて、一気に読んでしまった。
 この発想がすごい。
読者としては、どうしてもジュンに同化して、読んでいくのだけど、最後が酷くて、ちょっと哀しい。

 もう1作『鉄柱(クロガネノミハシラ)』も、よくできた物語で、映画を観ているように、頭の中に映像が次々に浮かんでくる。
左遷された夫婦が、引っ越したある地方の町、やけに親切な町会長さん、広場にある一本の鉄柱。
鉄柱の使い方がわかった時の衝撃。
こんなとんでもないもの、と思ってもその風土というか、風習に染まってしまう、そこが一番怖いところなのだろう。



花まんま

2005-11-22 10:10:04 | こんな本読みました
hanamanma

 朱川湊人  文芸春秋社

 第133回直木賞受賞作が、表題の「花まんま」で、他に短編が5作入っている。
一番よかったのは、やはり、「花まんま」で、何度も思い返しても、心が温かくなる話である。
登場人物の描き方も上手くて、イメージが頭にくっきりと浮かぶのである。
生まれ変わりって、ほんとにあるのかもしれない。
 心優しいお兄ちゃんは、しっかりと妹を守って、前世の人間だった喜代美のお父さんにさわらせなかった。
もし、私だったら、きっと「フミ子がこんな事を言い出して・・・」といままでのいきさつをペラペラしゃべってしまうのではないか。
 そして、喜代美のお父さんの気持を楽にしてあげたいと考える。
でもそれは、きっと大人の考えなのだろう。
朱川さんは、小学5年生の視点で描いている。
さすが、物語の作り方がうまい!

 他の短編「トカビの夜」 「妖精生物」 「摩訶不思議」 「送りん婆」 「凍蝶」、どれもちょっぴり不思議なお話で、関西が舞台というのが特徴。