しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

さゆり(上)(下)

2005-06-16 14:25:11 | こんな本読みました
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 アーサー・ゴールデン/著  小川高義/訳  文芸春秋

 この写真は、文庫版です。
私の読んだのは、新書版で、着物の帯の装丁です。
文庫版の上下を合わせると、舞妓さんの顔となり、私はこれで、すっかりだまされてしまいました。
「さゆり」は、実在の人物ではなくて、ゴールデン氏の創作なのです。

 米国人が、一人称形式で書く花柳小説という、めずらしい小説。
老齢の現在は米国に住む「さゆり」の半生の物語。
昭和4年、9歳で郷里から売られていった、坂本千代(のちのさゆり)が、舞妓から苦労を経て、一流の芸妓になるまでの様子なのだけれど、実によく祇園のしきたりやら慣習やらをご存知で、こういう世界があるんだなと、とても興味深い。
あらすじについては、こまかく書きません。
芸妓さんに興味があったら、読んで下さい。

 私が、何故本を読むかというと、こういう本でパワーをもらうからなのです。

 ひとそれぞれ、読書の感想は違うと思うけれど、私は、自分を主人公に置き換えます。
現実生活で、おこるさまざまな出来事、嫌なこと、苦しいこともたくさんあり、人生経験の乏しい自分には解決策が見出せないのがほとんど。
 そんな時、本の中の登場人物の生き方、処し方は、羅針盤のごとく道をつけてくれるのです。
あの時、あの人はこうしていた、と思い出し、それによって我慢ができたり、希望をもったりできるのです。
だから、本を読むのです。
 少ない経験値が、読書によって多くなる、それが本を読む効用だと考えています。


オニババ化する女たち

2005-06-16 13:52:59 | こんな本読みました
 三砂ちづる/著  光文新書

 サブタイトルに「女性の身体性を取り戻す」とあります。

 昔話にでてくるオニババや山姥は、社会の中で、適切な役割を与えられない、独身の更年期女性では、ないかと著者は述べています。
 性と生殖に関わるエネルギー、これを、抑えつけたり、おろそかにすると、さまざまな弊害がでてくる。
昔から伝わる、女性の体の知恵や自然な力が、現在には忘れられているのではないか。
各章ごとに体についての話があるのですが、私の印象に残ったのは、月経についての章。

 昔の女性は、月経をコントロールできた、というのです。
月経は、「垂れ流し」で、ナプキンがないと処理できない、と当然のように考えられているけれど、じゃあ昔の女性はどうしていたの?という事で、90代以上の山間部などいわゆる田舎の女性に話を聞いてみる。
 すると、自分できゅっと止めておいて、トイレでまとめて出す、というような事ができたそうなのである。
現代の女性に、なぜそれができないのか。
骨盤底筋の衰えや、生活習慣などが遠因ではないか。

 というような内容で、これはちょっと読んでおいても損はないぞ、という本です。


 


モカシン靴のシンデレラ

2005-06-16 13:18:55 | こんな本読みました
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 中沢新一/著  牧野千穂/絵  マガジンハウス

 ガラスの靴のシンデレラのはなしって、しってるよね。
シャルル・ペロー翻案で、ディズニーがアニメ化したので、有名なおはなし。

 これは、「もうひとりのシンデレラ」 カナダ東海岸地方にかつて住んでいた、ニクマク族に伝わる物語なのです。

 「オオシゲアスカ」(肌をこがされた少女の意味)は、二人のおねえさんにいじめられる毎日だった。

 村のはずれには、偉大な狩りの名人「見えないひと」が住んでいて、村中の娘のあこがれの的。
だれもがお嫁さんになりたがる。
 
 けれど、誰にも見る事ができず、ボロボロの服で、お古のモカシン靴をはいた、オオシゲアスカだけは見ることができ、お嫁さんとなってハッピーエンド、という単純明快なストーリー。

 魂の美しい者が幸せになれるという、わかりやすい話なのです。
牧野さんの絵の美しさが、ストーリーにぴったり。
こころやすらかになれる本です。