乃木坂46の2015年第1弾シングル。通算11枚目となり、昨年の10枚め「何度目の青空か?」から約5カ月のスパンを置いてのリリースとなっている。本来なら、前作で紅白を狙い、グループの最終兵器・生田絵梨花をセンターに投入しての力作だったのだが、紅白出場はかなわず、本作で仕切り直しといった感となった。
紅白は逃したものの、ファッション誌専属モデルへの抜擢や、相次ぐラジオレギュラーと各メンバーのメディア露出が増加したこともあってが、乃木坂の人気はむしろ高くなってきており、本作はなんとリリース初動で50万枚を記録した。まあ、AKB以来シングルは握手会券付きなどの予約売上も含まれるから、純粋なCDショップやインターネット売上だけの過去のミリオンセラーとは直接比較は出来ないのだが、それでも乃木坂46としては売上が伸びていることは確かで、ファンとしては一つの山だった前作を超えたことは素直に嬉しい。
メインタイトルの「命は美しい」は曲全体のキーがかなり低く抑えられていて、囁くように歌いだすような出だし、そしてサビに入ると非常にダンサブルなアレンジになっている。歌詞の内容はメッセージ性が強く、抽象的で、従来の乃木坂の歌詞のようにストーリーは語られていない。
正直言って、「君の名は希望」、「何度目の青空か?」のように共感というか感情移入はできていない。悪い曲ではないと思うのだが、歌詞も曲もアイドルというよりはアーティスティックな方向に振ってプロデュースされたように思える。既に、各局のテレビでパフォーマンスが放送されているが、非常に激しいフォーメーションダンスになっていて、特に前列左の松井玲奈がSKEでの激しさを手加減無く発揮している。又、一度、松井のアンダーとして川村真洋が前列に入ったことがあったが、これまた素晴らしく、松井玲奈にひけをとらない素晴らしいダンスを見せた。スキルだけなら選抜メンバーを凌駕している。
今回タイトル曲よりもカップリングである「あらかじめ語られるロマンス」、「立ち直り中」、「ボーダー」、「君は僕と会わない方がよかったのかな」の4曲がいずれも乃木坂らしい佳作が集まった。「あらかじめ~」は8枚目「気づいたら片想い」のカップリング「ロマンスのスタート」と並ぶ"アイドル"らしい王道ポップス。「立ち直り中」や「君は僕と~」の2曲はその歌詞に共感でき、そして「ボーダー」は当時研究生だった2期生6名の初のユニット曲として思い入れたっぷりで、文字通り"研究生”と"正規メンバー”というボーダーに葛藤していた6人のテーマ曲といってもいい。そうしたことを考えるとなおさら、2月22日のバースデーライブでの昇格はとても感慨深い。
西野七瀬ソロの「ごめんねずっと」も良い曲ではあるが、アルバム「透明な色」に収録されたソロ曲「ひとりよがり」と曲調、世界観ともあまり変わらず、これなら他のメンバーにユニット曲でもチャンスを与えた方が良いのでは、と思ってしまった。決して西野アンチではないし、彼女の透明感のあるボーカルは素晴らしいのに、西野の楽曲としてのイメージが固定化されてしまうようで面白くないのだ。
特典のDVDはまだすべてを見終わっていないのだが、「立ち直り中」のMVはとても感動して涙腺がゆるんでしまった。秘密の場所で、白石、橋本が再会するシーンは本当に泣けてしまう。
PS
さて、早くも7月22日に12枚目シングルの発売が決定し、5月10日には乃木坂工事中で選抜が発表される。つまりもう収録は済んでいるだろうから、現時点で結果は出ていることになり、今更予想するのも甲斐がないのだが、「命は美しい」はそのパフォーマンスとして、伊藤万理華、斉藤飛鳥を必要とする作品であったことは良かったと思う。12枚目は今までのパターンでいけば「ガールズルール」「夏のFree&Easy」のようなアイドルらしい夏曲になるだろう。センターはもう一度、西野七瀬か、飛び道具として相楽伊織も面白いかもしれない。松井玲奈の兼任解除で1枠空くことから、川村真洋・井上小百合・斉藤優里・中田花奈といったダンス巧手を引っ張り上げてもいい。次のシングルは5タイプ(! おいおい・・・)用意されるらしいので、もしかしたら「命は美しい」同様18名ないしは又増やすのかもしれない。(AKBなどは32名があったりするから)
そして10月発売となるであろう13枚目は紅白狙いで「君の名は希望」クラスの名曲となる勝負曲を用意するはずで、10枚目と同じくもう一度生田絵梨花センターを予想している。紅白はやはりNHKへの貢献度も大きな尺度だから、AKBのような復興支援活動、NHKの各番組やイベントへの出演など、今年はもっと増やしていく必要があるだろう。その意味では、伊藤かりんの将棋フォーカスへのMC抜擢や、中元日芽香のらじらーサンデー隔週MC、マサかめTVへの永島、中元出演、単発ではあるがバナナマンのバナナゼロミュージックへのグループ出演など布石は打たれてはいる。特に伊藤かりんの将棋アイドルとしての活動は、視聴者の世代が広いだけにかなり影響は大きく、お手柄である。