2004年に放映された「世界の中心で、愛をさけぶ」。放映当時で19歳だった綾瀬はるか、山田孝之が主演。それまでグラビアアイドルとしての活動が多かった綾瀬はるかにとって、女優としての出世作となったと思われる作品。
1話から4話までの綾瀬はるか演じる廣瀬亜紀と山田孝之演じる松本朔太郎の出会いから付き合うようになるまでの、繊細なやりとりがたまらず、ハマってしまった作品。ヒロインの名前がアキであったり、ウォークマン(カセットテープ)がキーアイテムになっているなど、「あまちゃん」と共通点がある。そういや能年怜奈もあまちゃんのクランクインのときには19歳だった筈で、同じ年代でヒット作に恵まれていることも似ている。
ヒロインが白血病で、、、という点は山口百恵の赤いシリーズなど使い古された設定ではあるけれど、原作や映画の雰囲気を壊さず、丹念に高校生の普通の生活を軸にアキやサク、スケちゃんやボウズ、智世たちのやりとりを優しく描いていて、共感。これが「スペック」「トリック」の堤 幸彦監督の作品とは思えないくらい、堤カラーは抑えられている。(カット割りやカメラワーク、各シーンのこだわりなどは十二分に出ているけど)
後半は、アキの死に向かう絶望と抵抗を軸に切なく辛いストーリーが続き、それはそれでドラマとしてのカタルシスはあるのだが、やはり前半のアキとサクが結ばれるまでのドラマの世界観が良いのだ。また、仲代達也が演じたおじいちゃんの存在の大きい。おじいちゃんの初恋の人への想い、サクとおじいちゃんの自転車にまつわるエピソード、おじいちゃんの死とサクの喪失感、そのサクを慰めるアキの想い、、後半に連なるテーマがいっぱい詰まっているのだが、アキとサクの互いを思いやる気持ちが見える前半こそ、肝であり、私の大好きな部分なのだ。
原作や映画では、あまりサクやアキの両親は描かれていなかったように記憶しているのだが、映画よりも時間的に余裕が持てるドラマの利点を生かして、サクとアキ両方の家庭や両親のキャラクターもしっかり描いていて、これが映画以上にストーリーに深みを持たせているように思われる。アキの父親を演じた三浦友和はまあ赤いシリーズで山口百恵の相手役だったオマージュ出演かと思いきや、アキの死後、十数年振りに廣瀬家を訪ねたサクに、医者として働き続けてきたことを亡くなった娘のためと理解し感謝する場面ではその演技に泣かされてしまった。
綾瀬はるかは、八重の桜のようなシリアスも、ホタルノヒカリのようなコメディもできる幅の広い女優になった。しかし、このドラマでの透明感、おそらく全力投球したであろう演技の迫力は、他の作品では見られないと思う。又、山田孝之も演技力、役作りの半端ない取り組みがすごい役者になったものだ。何せ純朴なサクが、クローズでは偉い強い不良になったり、闇金ウシジマくんになったりするのだから。
ドラマのロケの大半が行われた伊豆の松崎町にはなかなか機会がなく、いまだに訪れていないのだが、二人が駅でおじいちゃんとおじいちゃんの初恋の人の遺灰を風に撒くシーンが撮影された、千葉の小湊鉄道の月崎駅には行くことができ、ホームでそのシーンを思い出しながらボーッとしてたら、小湊鉄道の気道車のど迫力の警笛に驚かされ、腰を抜かしそうになった。
・・・・どーも、気持ちが入り過ぎる作品となると、文章が空回りしている。このドラマの自分が感じ入った部分を伝える言葉が見つからない。このドラマのファンの方々、本当にへたくそな文章でドラマの魅力が伝わらず、申し訳ない。