現代狂言Ⅸの感想を書く前に、新作「ことだま交差点」のあらすじ紹介を。
記憶力のなさには自信がありますので(笑)、すっぽり抜け落ちてる場面や間違ってる台詞なども多々あると思いますが、そのへんはご容赦ください。
だいたいこんな感じだった、と思っていただければ幸いです。
新作 現代狂言 ことだま交差点
南方朔 南原清隆
平均 森一弥
平均ことだま 佐藤弘道 平子悟 大野泰弘 ドロンズ石本 野村万蔵
上司 岩井ジョニ男
上司ことだま 三浦祐介 石井康太
楽器が置いてある舞台に、楽士の和田さんと稲葉さんが登場。
まず、オープニングの音楽。続いてゆったりとした音楽が流れる中。
橋掛かりから南方朔が腰に手をあて、すり足でゆっくりと登場。
南方朔は上はえんじ色の服、下はゆったりとした白っぽいパンツで、腰にはえんじ色のスカーフを巻き、扇を差している。
舞台まで進んできた南方朔。
南方朔 「わたくしは天上界に住む下級の神じゃ。近頃人間の言葉使いが怪しくなってきた。悪しき言葉を使えば人の心も曇る。このたび大神様より人間の心に内に宿る美しい言葉を引き出し、人の心を明るくせよとの命をうけたまわった。これより人間の住む下界へ参ろうと思う」
舞台の周りをまわる南方朔。だんだん小さく回りだしその場で回転する。
南方朔 「久しぶりの下界はどんなものじゃ。前に降りたときは人間は髷を切って文明開化と騒いでおった。ほぉ~下ってきた下ってきた。雲の下まで下ってきた。見えるぞ見えるぞ」
舞台上から左右を見まわして
南方朔 「前より緑が少なくなってきたような、代わりにねずみ色の箱がのびて・・」
「ウ~」というサイレンのような音が鳴る
南方朔 「ん?西の方の大陸は黄色く黒くなっておるが、どのような国か」
耳に手を当てる
南方朔 「ニイハオ」「ツァイチェン」
(初日昼公演ではこのあと「麻婆豆腐」)
南方朔「かの国も大事なければよいが」「私の下る大和の国は・・・」「(ゴホっと咳をして)「下から立ち上る空気がくさい、それに前より暑うなって・・」
(棚倉では、ここで「ハックション」とくしゃみをして、「前より花粉が多い」
板橋でもくしゃみをして「前より花粉が多い」「くっさめ、くっさめ」。そして「大和の国はどうなっておるのじゃ」)
南方朔 「下るぞ下るぞ」「何かと気苦労が多い天上界より、人間たちとのんきに暮らしたいものじゃ」
舞台中央でくるくる華麗に回転し膝まつく南方朔。
橋掛かりと切戸口から男たちが出てくる。
皆、手元を見て下を向いて立っている。
南方朔「降りた」
顔を上げまわりを見る。
南方朔「これはどうしたことじゃ」
♪とおりゃんせ♪のメロディーが鳴り、男たちが手元を見たまま歩き出す。
一人の男(三浦祐介さん)が前も見ず手元を見たまま歩いているのを見て
南方朔「あ、ぶつかる・・ぶつからない」
三浦さんは前も見ずに人をうまくよけながら切戸口から退場。
今度は、石井ちゃんがスケートのジェスチャーで、前から来る人をよけながら滑っていく。
南方朔「滑る、滑る」
人をうまくよけたあと、「石井ちゃんです!」のポーズ。
南方朔「またスベル」
今度は、橋掛かりから弘道お兄さんが駆け足でやってきて側転で人をよけ、切戸口へ駆け抜けていく。
南方朔「なんじゃあの技は」
皆いなくなる。
橋掛かりからスーツ姿の男(平均)が手元を見ながらやってくる。
舞台中央で南方朔とぶつかる。
平均 「あ、すみません」
南方朔「私は南方朔という下級の神じゃ」
平均 「あ、僕、宗教とか興味ないんで。変なコスプレ」
南方朔「コスプレとはなんじゃ、ところでここはどこじゃ?」
平均 「渋谷のスクランブル交差点ですよ」(「スクランブル交差点」「渋谷の交差点」と公演によってこの台詞はまちまち)
話している途中で信号が変わる音。
取り残される南方朔。
車が右から左からとやってくる(音)。
平均 「あ、ぶつかる・・よけた」
体を横に縦にして車をよける南方朔
平均 「トラックが・・・」
地面に伏せる。体をひらひらと揺らしながら立ち上がる。(国立能楽堂2日め夜は、平均が「マジ、神技」)
立ち上がった南方朔、口に笛をくわえ(たジェスチャーで)、笛を鳴らしながら交通整理を始める。
南方朔「お巡りさんも12番目のサポーターです」
平均 「DJポリス?なんで今?」(国立能楽堂2日目昼は「古い」というツッこみ)
(板橋公演では、交通整理をしている南方朔を見て、平均がここで「マジ神技」)
南方朔「おぬし、名前を教えてくれぬか」
平均 「え?話ならLINEで」
南方朔「ライン?」
平均 「ID教えて」
南方朔「IDとはなんぞや」
平均 「じゃ、ふるふるで」
かざした手を左右に振る平均。それと同じように南方朔も顔を左右に振る。
平均 「いや、あなたが顔をふってどうするんですか」
南方朔「名前だけでも・・」
平均 「え~いやですよ」
南方朔「なぜじゃ」
平均 「言ったら笑われるし」
南方朔「いいではないか」
平均 「僕の名前はいたって普通の、たいらひとし。みんなからは平均君って呼ばれてます」
南方朔「平均?ハッハハハハ」
平均 「ほら、笑われた。だから嫌なんだ」「こうやって笑われるし。うまく伝わらないなら言わないほうが。どうせ失敗するなら言わないほうがましだ」
南方朔「人間の言葉を見ればその人が分かる。現代の言葉よ出でよ」
切戸口から、平子さんを先頭に、石本君、万蔵さん、弘道お兄さん、大野君の五人がそれぞれの肩に手をかけて集団で登場。
皆、白っぽいゆったりとした衣装。
舞台中央に平均が立ち、その周りに五人が客席に背を向け座る。
平均 「何か出てきたよ」「ストリートパフォーマンスか何かですか?」
南方朔「見ればわかる」
と言って手をくるりと回すしぐさ。
五人は平均の周りをまわりながら近づき何か早口で言う。
平均 「何?」
もう一度五人が何か言うが、やはりわからない。
南方朔「では、もそっとわかりやすく・・」
今度は五人がゆっくりと平均の周りをまわりながら
平子 「既読スルー」
弘道 「ブログ炎上」
大野 「ディスるんじゃないよ」
石本 「膝が痛い」(初日昼は「内山君じゃないよ」)
平均 「この人グチじゃあ」(「この人個人的な」「この人個人的な悩み」と、公演によって少しづつ変わる)
万蔵さんは、初日昼は石本君の言ったあとの笑い声で何を言っていたが聞こえず。夜は「歌舞伎じゃないよ」2日目昼は何も言わず。夜は「俺は首が痛い」(平均のツッこみ「なんでみんなどこか痛いの?」)
棚倉では、万蔵さんは何も言わず。
板橋でも言わず、平均が「この人何も言ってない」というツッこみ
南方朔「交差点、まことに不思議なところ。ことばとも交わる、神とも交わる」
(この台詞は、国立能楽堂ではなかった・・かな?)
平均 「これは何ですか? 」
南方朔「ことだまじゃ」「ことだまは魂がその行く末も・・人も作っておる」「人はことばで出来ておる、と大神様になろうた」
平均に向かい
南方朔「お前はどんなことばで出来ておる?」
舞台の周りに並んだことだまたち。それぞれ「ことば」を発していく。
弘道 「ヤバイ」
石本 「ガチで」
大野 「逆に」
万蔵 「びみょ~」
平子 「そっち?」
南方朔「これだけ?」
平均 「あ、はい」
南方朔「あ、はい、じゃなくて。これだけじゃ、嬉しいときはどうするのじゃ?」
ことだまたちが順に
石本 「ガチで」
弘道 「ヤバイ」
ことだま全員「ヤバイヤバイ」
南方朔「悲しいときは?」
大野 「逆に」
弘道 「ヤバイ」
ことだま全員「ヤバイヤバイ」
南方朔「困ったときは?」
万蔵 「微妙に」
弘道 「ヤバイ」
ことだま全員「ヤバイヤバイ」
南方朔「じゃあ、ヤバイときは?」
平子 「・・・そっち?」
南方朔「ヤバイときは「ヤバイ」って言わないのか!」
平均 「あ、はい」
南方朔「あ、はいって」
(2日目昼は、このあと「なんか腹立つ」)
南方朔「これでは思いが伝わらないではないか」
平均 「大丈夫ですよ、スマートフォンがありますから」
と言って南方朔に手に持った(ジェスチャーで)スマートフォンを見せる。
南方朔「人のツラも見ずに話をしろというのか」
平均 「スタンプがありますから」
南方朔「スタンプ?」
平均 「じゃあ試しに」
と言って手元を押すしぐさ。
平均 「うれしいとき」
舞台上の、万蔵さん、平子君、石本君、弘道お兄さん、大野君の五人が、片手を前に出して指さし、もう片方の手は腹に置き満面の笑み。
平均 「びっくりしたとき」
両手を挙げビックリしたポーズをする五人。
平均 「急いでいるとき」
走るマネのポーズをする五人。
平均 「でね、今、僕がはまっているのが狂言スタンプ」「うれしいとき」
五人 「く~ははははは」(と狂言ふうに笑う)
(2日目昼はここで、南「喋ったな、今」平「ボイス機能付きです」)
平均 「びっくりしたとき」
五人 「南無三宝(なむさんぼう)」(と言って腿をたたく)
南方朔「先ほどから思うておっただが、このスタンプだけ異様にうまいな」
と言って万蔵さんに近づき指をさす。
平均 「気のせいです」
南方朔「そうか?力の差が・・」
というやり取りがありつつ。
平均 「急いでいるとき」
後ろに一歩下がって
五人 「まず、急いで参ろう」
南方朔「急いでないよ」「後ろに下がっちゃった」
五人 「何かといううちにこれじゃ」
南方朔「どれじゃ?」
(棚倉では、「何かといううちに棚倉じゃ」そして、南「早い、新幹線より早い」)
(板橋では「何かといううちに板橋じゃ」)
南方朔「これでは本音が・・」
平均 「本音なんか、伝わらないなら言わなくていいんです」
南方朔(腿をたたいて)「南無三宝」
♪とおりゃんせ♪の音楽が流れる
橋掛かりから上司とそのことだま二人がやってくる。
南方朔「誰じゃ?」
平均 「上司です。鉄道オタクで面倒くさい…」
平均に気が付いた上司が近づいてくる
上司 「最近、元気ないな、どうした?・・石炭切れたか?」
平均 「めんどくせ~」
上司 「仕事ではな、しんかんせん、が大事なんだ」
平均 「しんかんせん?」
上司 「まず、信頼」
平均 「あ、新幹線のしん」
上司 「そして感謝」
平均 「あ、かんね」
上司 「・・・・」
平均 「それだけ?せんは?」
「せん」が何かを言わず続けて
上司 「飲みに行かないか?」
平均 「ヤバイ」
上司 「ん?ヤバイ?ヤバイというのはだな、法に触れたり危険なことを言うのであって・・」
平均 「ありえないよ」
上司 「ありえない?ありえないとは思いもよらぬことが・・」
平均 「逆にすみません」
上司 「逆に?逆というのは順序が逆になったり反対の意味・・ということは、お前、謝る気がないだろ」
平均 「僕、この人苦手なんですよ」
南方朔「人はことばで出来ている。この男のことばよ出でよ」
上司の後ろに二人のことだまがやってきて交互に喋る。上司はそれぞれのことばにあったジェスチャー
ことだま「俺らの時は」「出来てあたりまえ」「背中を見ろ」
背中を見ようとするが見えない上司
ことだま「出発進行」「飲みにケーション」
平均 「やっぱ苦手だよ」
南方朔「ことだま同士で話し合ってみるのじゃ」
平均と上司のことだまたちが二組にわかれ、リズムに合わせて行進をする。
口ぐちに「ヤバイ」「俺らの時は」「逆に」「出来てあたりまえ」 「びみょ~」と言いながら交差しようとするが、ぶつかってしまいうまく歩くことが出来ない。
南方朔「これは話し合いというより争いだな」
上司とそのことだまが行進をやめ、口ぐちに
「俺らの時は」
「変わった」
「できて当たり前」
「響かない」
「飲みにケーション」
「無視され」
「さみしい」
(国立能楽堂2日目夜と棚倉、板橋では、ここの台詞をジョニ男さんが武田鉄矢さんふうで喋る)
上司とことだま、橋掛かりから退場
南方朔「あの男 もそっとコミュニケーションをしたいんじゃ・・」
平均 「いいですよ、コミュニケーションとるの苦手だし、本音なんて誰も言ってないし、本音を言うなんてありえない」
「ありえない」という言葉を聞いてよろける南方朔。
平均 「だいたい、こんなお気楽な格好をしているあなたに上司のいるサラリーマンの気持ちなんてわかるわけないでしょ」
南方朔「(腹に据えかねるという表情で)何が気楽だと?みどもはみどもなりに深~く悩んでおるのじゃ。」「えっえええ・・」
と言いながら泣き始める南方朔
平均 「泣くの?」
南方朔「神の世界は神の世界でいろいろあるのじゃ」「その小さき箱をこっちへよこせ」
平均の手元からら小さい箱をもぎ取りおでこに当てる。
南方朔「今の言葉など・・・」
ピロピロピロという音が流れ情報が南方朔の頭の中に入っていく。
急に口調が変わる南方朔。
南方朔「っていうかさ~。上司は何もわかっちゃくれないし~、マジ半端ねぇ~。悲しうぃ~ね~。これはもう笑うしかないよね~。はっはははは」
平均 「笑うの? 」
南方朔「え~んえんえんえん」
平均 「泣くの?」
南方朔「なぁブラザー」
と言って平均とグーパンチで両手を合わせる。
(国立能楽堂2日目夜は、ここで「ガチリアルで」。あと、欽ちゃんの口調で「訊いたら笑いの神様にげてっちゃうよ」)
(板橋でも欽ちゃんと、「天上界はガチリアルでビックリ」という台詞)
南方朔「え~んえんえんえん」「はっははははは」
泣いたり笑ったりする南方朔を見て
平均 「情緒不安定だよ」
南方朔「お前も素直に本音を言うたらどうじゃ」
平均 「本音を言うなんてありえない」
「ありえない」という言葉を聞いてよろめく南方朔。
そして、座っていたことだまが一人倒れる
平均 「だるい」
またよろめく南方朔。またことだまが一人倒れる。
平均 「うざい」
どんどん倒れ元気がなくなることだまたち。
南方朔「このことばは危険じゃ」
と言って、平均が言った「ありえない」ということばを放り投げる。
南方朔「これも」
と言って、「だるう」「うざい」も放り投げる。
平均 「どうしたの?」
南方朔「そのようなネガティプな言葉を聞くと、身も心も弱り、本当にそうなってしまう」
橋掛かりから、石井ちゃんと三浦さんが登場
石井「ガサ」
三浦「ゴソ」
と言いながら、扉を開けるしぐさ。
それに気づいた平均。
平均 「あれは?」
南方朔「危険な言葉を肥料とし、求めて奴らはやって来る。ネガティブな言葉の森の番人じゃ」
石井 「ありえない、ここにもあったぞ」
三浦 「うざい、ここにも」
危険なことばを集めながら、橋掛かりを渡り終え舞台までやって来る二人。
橋掛かりから舞台に入るとき、二人はロープをくぐって入場する武藤のマネをしてポーズを決める。
南方朔「(番人は)ことだまたちを封じ込め、思考を停止させ、人々を不幸へと導くのじゃ」
番人 「(ネガティブなことばを)探すぞ」「ガサ」「ゴソ」
平均 「入ってきた。もぅ最悪」
言ったあとで「しまった」という顔をする平均
喜ぶ番人
それを見た南方朔。扇を番人のほうへ向け、舞いながら歌う
南方朔「♪ことばはもと 魂なり♪」
三浦 「これは苦手なことばじゃ」
南方朔「♪世はまた人の情けなり♪」
石井 「これはたまらん、急いで帰ろう」
橋掛かりから帰っていく番人二人
南方朔の歌を聞き、ことだまたちが起き上がり元気になる。
そして南方朔と一緒に歌い出す。
南方朔「私の使命は人の心の美しい言葉を引き出すこと」「例えば季節の変わり目などで心がときめくものじゃ。お前は心がときめくことはないか?」
平均 「べつに」
南方朔「春夏秋冬、どの季節が好きじゃ?」
平均 「どれと言っても・・・」
南方朔「人は季節に寄り添い生きていく」「俳句など詠んで・・・」
ことだまたち、一人ずつ順番に立ち俳句を詠む。
まずは弘道お兄さんが立ち上がり。
弘道 「光浴び 草木燃え立つ 春の朝」
南方朔「命の輝く句じゃな」
平子 「夏の音 がりがりがりがり ガリガリ君」
平均 「ガリガリ君?」
大野 「帰ろかな たき火の匂い 身にまとい」
(初日夜は、ここで平均の「え?ガリガリ君」というツッこみが続き大野君の句がかき消される・笑)
石本 「雪見つつ こたつに入り ガリガリ君」
平均 「またガリガリ君?」
南方朔「ガリガリ君は美味しいの」
万蔵 (すっと立つが何も言わずに座る)
平均 「詠まないの?」
平均に向かって
南方朔 「さぁ、おぬしも一句どうじゃ」
平均 「いや・・」
南方朔「季節の変わり目を感じて・・」
平均 「季節なんて暑いか寒いかだけ、スマホを見れば・・」
南方朔「スマホ?」
平均 「スマホ」
南方朔「ス・マ・ホ」
♪スマッホッホッホ♪と歌いながら手を叩き、リズムをとり社交ダンスのステップで踊り出す南方朔。
ことだまたちも♪スマッホッホッ♪と歌いながら音楽に合わせリズムをとり手拍子。
万蔵さんは腰に巻いていたスカーフを手に舞を舞う。
(棚倉と板橋では、万蔵さんと南方朔が社交ダンスのスンダードのステップでコラボ。南方朔は踊りの最後にくるくるとその場で華麗に回転して座る)
続いて弘道お兄さんが前転、バク転などを器械体操の技を披露。
平子君、石本君、大野君は、三代目J Soul Brothersの踊り。
(板橋では、平均が「三代目J Soul Brothersのやつだ」)
その後、南方朔も含め六人で踊る。
♪スマッホッホッホ♪のリズムが続く中、平均に向かって
南方朔「さぁ、俳句を」
少し考え
平均 「季節見ず いつも見るのは スマホだけ」
平均は「へい♪スマッホッホッホッ♪」と歌いながら一人踊るが、音楽は止まり、ことだまたちは白けた表情。(国立能楽堂2日目夜、棚倉、板橋では、一人でかなり長く踊っていた平均君)
「はっ」と気づき踊るのをやめる平均
ことだま「なんじゃそれは」「季語もない」「情緒もない」
(棚倉では南方朔が「踊りは面白かったが」)
すっかり静かになり
南方朔「好きな言葉はなんじゃ?座右の銘は?」
平均 「座右の銘?う~ん、しいて言うなら・・・現状維持です」
南方朔「何?現状維持じゃと?」
座っていたことだまたち、顔を伏せ手で床を叩き始める。
南方朔「これはいかん、始まってしまうやも・・・」
平均 「え?」
南方朔「お前のように言葉を粗末にし・・」
ことだまたち一人ずつ立ち上がりしゃべりだす。
ことだま「このような男の運命」「たかが知れている」「自分を磨こうともせず」「輝かせようともせず」
南方朔「ことだまたちの反乱じゃ」「こうなると私でもどうすることも出来ない」
平均 「どうなるんですか?」
南方朔「ことだまたちが反乱をおこすと無言の世界に、お前の心は閉じこもってしまう」
最後に立ち上がった万蔵さんが南方朔に向かい
万蔵 「お前もこの者ではなく他の者を・・」
ことだまたち、トントンして動く二つ折りの紙人形のように少しずつ動きながら、平均の側に集まりだす。
平均 「どうせ僕なんかこんなキャラだし、どうせ言ってもわかってくれないし、どうせ、どうせ。僕なんかどうせ・・」
舞台最前列に座る平均。その後ろにやってきたことだまたちが口ぐちに。
ことだま「どうせやっても無駄」「面倒くさい」「これ、やる意味あるんですか?」「死んだほうが・・」
ことだまたちは言い終わると、前のめりに倒れた平均を舞台奥まで一気に引っ張っていく。
(棚倉と板橋では橋掛かりまで引っ張っていく)
南方朔「現代人の言葉は曇り、濁っている。ここから美しい言葉を引き出せようものか」
上を見上げる南方朔。
南方朔「雨じゃ、これは怒りの雨やも知れぬ」
扇を手に持ち舞う(初日夜は腰に巻いていたスカーフを手に舞う)
南方朔「扇が勝手に動き出しておる、やめぬか」
音楽に合わせ手に持った扇が動き出し、そのあとをついていく南方朔。
南方朔 「ここだけ雲が切り取られ青空が見える」
扇を持った手が上がっていく。
南方朔「おぉ体が浮いてゆくわ」
扇につられながらな舞い、橋掛かりまで行く。そして柱につかまりながら欄干の上に立つ。
(棚倉、板橋のホール公演では能舞台の先の劇場の元からある舞台の最前に腰を掛け、客席へ降りていくためについている階段に足をかける)
あたりをゆっくりと見渡したあと
南方朔「お~い!へいき~ん!実に良い眺めじゃぞ~~!」
ことだまたちに抑えられている平均、顔を上げて
平均 「どこ?」
南方朔「ここじゃ、空の上じゃ」
平均 「え?空の上?」
南方朔「西の空がだんだん茜色に染まってきた。実にきれいじゃ。お前も空に昇ってこ~い!」
平均 「マジ、無理。ありえない。空に昇るなんて、マジ、ありえない」
南方朔「ありえない。というのが、マジ、ありえない」
平均 「えぇ?」
南方朔「勇気を出すのじゃ」
平均 「勇気なんて・・」
南方朔「半歩の勇気じゃ。踏み出すのが怖いなら、半歩だけでいい。嫌ならすぐに戻ればよい」
平均 「でも、どうせ・・・」
南方朔「どうせ・・なら、やってみよ。まず呼吸を整え・・」
ことだまと声がかぶり話すのをやめる南方朔。そして欄干の上に座り平均を見守る。
(板橋では「まず呼吸を整え」の台詞は最初から南方朔は言わず)
立ち上がる平均
ことだま「まず呼吸を整え」「ゆっくりと息を吸い」
言われたとおりにする平均
ことだま「息を腹にためる」「これを繰り返す」「すると体が緩み」「心も緩む」
万蔵 「そして、頭の上から糸でつるされたがごとく立つのじゃ」
ことだま「あとは自ら踏み出すのみ」「さぁ」
平均 「よし」
躊躇していた平均だが、意を決して踏み出す。すると両脇をことだまに抱えられ平均の体は宙に浮き足をクルクルと空回りさせる。
平均 「何これ~~!!空に浮いてる~!」
腕だけではなく体もことだまたちに抱え上げられ空を飛ぶ平均。
前のほうまでくると、少し斜めになりながら左に方向転換。
平均 「あぁ~~!」
と言いながら、そのまま橋掛かりの南方朔のところまで飛んでいき、欄干の上に二人で並んで座る(棚倉、板橋では、舞台最前に二人で並んで座る)。
笑顔の南方朔と、ビックリした表情の平均。あたりを見渡し。
平均 「なにこの景色・・」「下のほうはあかね色に」「だんだんと薄い茶色、濃い茶色に」「そしてわずかに残るオレンジ」
南方朔「富士山も・・・」「そしてそれは天まで続く・・」
平均 「初めて空の上から夕日を見た・・」
感に堪えないという表情で
平均 「これをことばにすると・・・・・ヤバイ。じゃないな。美しい?きれい?う~ん、いい言葉が見つからない!」
万蔵 (舞いながら)「♪夕暮れは雲の畠に♪」
と歌い出す。(棚倉と板橋では、ここで南方朔が後ろに下がる)
万蔵 「♪あまつ空なる♪」
とさらに歌い、座っている平均の隣にやって来る。
万蔵 「空はじきにさまざまな色を放つ」
平均 「夜は足元からやってくるんだ」
万蔵 「闇は地上を覆い、やがてあたりを包み込んでしまう」
闇が迫る風景を見ながら
万蔵 「すべてのものはうつろいゆく。生きるとは変わり続けることじゃ」
平均 「・・・・・・せつない」
座っていたことだまたちが一人ずつ立ち上がり。
弘道 「心は聞き取る、お前のことばを」
大野 「心は受け取る、言うことばを」
石本 「心は傷つく、言うことばで」
平子 「心は喜ぶ、お前の言うことばに」
万蔵 「ことばの持つ力を信じよ」
南方朔と万蔵さんが前に。
万蔵 「ずーっと見ておったぞ、南方朔」
南方朔「大神様」
大神様(万蔵)「ことだまたちが喜んでおったな。しかと見届けたぞ、南方朔」「この若い者も・・」
大神様に扇を返す南方朔。
渡された扇を手に舞う大神様。
大神様「最前の上司のことだまともう一度、我々も一緒に・・」「では、そ~れ」
上司とことだま二人が切戸口から現れる
リズムに合わせ全員一列に並び足踏み。
二組に分かれ、まずは平行に向き合い、「ヤバイ」「俺らのころは」と言いながら行進。
ぶつからずにうまく交差する二組。
今度は二組が斜めに向き合い、前進、交差。
交差が終わったところで止まり、前を向いたまま後ろ方向に歩き出す(棚倉と板橋ではここで「ヤバイヤバイ」と全員が言いながら歩く)。
後ろ向きに斜めに歩く行進もぶつからずにうまく交差する(初日昼はここでぶつかってしまうが、それ以外の公演ではすべて成功)。
一列に並んで座り、端から徐々に立ち上がっていく姿勢、順にストップモーションで止まっていく。最後は上司のジョニ男さんが立ち、頭の後ろから手を挙げ(ピンクレディーの「UFO」みたいな感じ)、チーンという効果音。
皆で座り一礼(板橋では、その前に皆で手をつないで一度上げ、そのあと礼)
立ち上がり、リズムに合わせことだまたちと南方朔と大神様は退場。
二人きりになった平均と上司。
上司 (気まずそうに)「飲みにケーションするか?」
平均 「どうせ僕なんかと・・」
と言ってハッと気づく。
上司 「そうだよな」
平均 「あ、いや、」
ことだまたちに教わった、息をゆっくり吸い、腹でためる動作を繰り返しやってみる平均
平均 「どうせなら、鉄道の話を聞かせてもらえませんか?」
上司 「おぉ、そうか、新幹線が好きでな、ゼロ系が・・」
平均 「あ、先ほどのしんかんせんの続きを・・」
上司 「ん?」
平均 「しんかんせんの、しんが信頼。かんが感謝。せんは?」
上司 「・・・・センキュー」
平均 「え?英語?」
上司 「そう。しんかんせんがだいじなんじゃ」
平均 「でも、しんかんせんのかんは感謝で、センキューとかぶってるじないですか?」
上司 「あ、凡ミスです」
(国立能楽堂2日目夜は「スマミセン、凡ミスです」)
(棚倉では「凡ミス」はなく「おはずかしい」)
(板橋では「センキューソーマッチ」「うっかりボーイ」平均「ボーイではないけど)
上司 「とにかく、感謝の気持ちを忘れるな、っていうことだよ」
平均 「いつもありがとうございます。気にかけていただいて」
上司 「俺のほうこそありがとな」「これから飲みに行くか?」
平均 「はい」
上司 「出発進行!」
(国立能楽堂2日目夜は、武田鉄矢の口調で「じゃあ行こうよ」)
上司はシュッシュッポッポッと言い機関車のマネをしながら、二人は橋掛かりに向かう。
橋掛かりで窓開けるジェスチャーをして、
上司 「レギュラー満タン」
上司の頭を思いっきりツッこむ平均。そしてツッこんだ手を見る。
(初日昼は上司は「めがねめがね」と言って落ちたメガネを探していたが、それ以外はなし)
(2日目夜は、平均が「ツッこむ勇気」)
(板橋では「半歩の勇気」)
上司 (ツッこんだ平均に)「良かったよ」「チョベリグ」
平均 「あ、それ古いです」
上司 「スナック終着駅へレッツゴー!」
(棚倉では「居酒屋おっかさんへ行こうか」)
と言いながら二人は退場。
切戸口から、南方朔と神様らしい格好になった大神様が再び現れる。
大神様「少しは良い言葉を使うようになったの」
南方朔「これであの者も少しは運が改まりましょうか?」
大神様「ならぬな」
南方朔「え?」
大神様「ハッハハハ、戯言(ざれごと)じゃ」「あの心がけが続けば、の話じゃ」
上司と平均が歩いて行ったほうを見て
大神様「それにしてもあの男、飲みにケーション」
乾杯のジェスチャー
大神様「あぁ、恥ずかしい(と言って顔を覆う」
南方朔「お恥ずかしゅうございます」
大神様「現代の言葉の変わりようはいかなものか」
南方朔「はい」
大神様「さりながら、「ヤバイ」という言葉ひとつを上手に使いこなすとは、なかなか捨てたものではないな」
頭を下げる南方朔。
南方朔「わたくしは、見事お役目を果たせましたでしょうか?」
大神様「(いたずらっぽい笑顔で)びみょ~」
南方朔「えぇ?」
大神様「そうではないか、そちは雨の中うろたえ、え~んえんえんえん、はっははははは(南方朔の泣くマネと笑うマネをする)」
南方朔「いや、それは・・」
大神様「見かねてことだまたちをさしむけたが」「ことだまたちに助けられ、ようやく」「美しい言葉を使えばその者は心も晴れる。お前もたまには人間たちと関わり合いを持つのもいいのではないか?そうすればおぬしの心も晴れる」
南方朔「いえ、わたくしはもう・・」
南方朔に近づいく大神様
大神様「なぁ、ブラザー」
と言って南方朔と両手でグータッチ
大神様「え~んえんえんえん」「はっははははは」
南方朔「ご許されませご許されませ」
大神様「さぁ、天に帰ろうぞ」
早足で駆けるように橋掛かりから退場する二人。
以上が、「ことだま交差点」のあらすじでした。
ニュアンスだけしか覚えていない場面や、勘違い、記憶違いの場面など、不正確な箇所も多々あるかと思いますが、大体こんな感じだったと思っていただければ幸いです。
一応、メモをとっていたのですが、解読不明な文字が多数あり(笑)、ヒエログリフを読むためのロゼッタ・ストーンのようなものがあればな~と、自分で書いたメモなのに思ってしまいました(笑)。
ことだまたちが反乱を起こす場面の台詞などはかなりうろ覚えで、ちょっと不正確かも。
それから、南方朔と平均君、大神様が空から夕日を見る場面は、もっともっとたくさんの台詞で、刻々と変わる壮大な夕景を描写してました。
この場面は何度観ても引き込まれてしまう、とてもいい場面なのにそれがうまく伝わらずに残念無念。
(いい場面なだけにメモもとるのも忘れ見入ってしまいました・笑)
沈みゆく夕日とその景色が目に浮かび、南原さんが挨拶でいつも言っている「みなさんの想像力が・・」というのがまさに表現されている場面だな~、これぞ「ことばの力」だな~といつも感心していたのですが、そんなこんなの感想は、また後日に。
リズムに合わせてことだまたちが行進して交差する場面は、文字にするとちょっとわかりにくいですが、日体大の集団行動を思い浮かべていただければと思います。
ちなみに、後ろ向きに歩いて斜めに交差する場面。
初日昼公演ではぶつかってしまい、うまく交差できませんでしたが、それ以外は全部成功。
ここは、最初のことだまたちが争うようにぶつかってしまう場面との対比でもありますし、うまく交差して客席を感心させなきゃいけないところなのに、初日昼はぶつかって客席から笑い声が起こってしまい、ちょっと悔しい思いも。
夜公演以降は、この場面が来るとドキドキしていたのですが(笑)、どの公演でも成功し、客席からは拍手や「お~」という声があがって、後ろ向きの交差が成功したときは毎回(心の中で)ガッツポーズをしてました(笑)。
公演によって反応が違う場面も多々ありました。
集団行動のあと皆が退場するときも、国立能楽堂2日目昼は拍手がありましたが、夜公演はなし。板橋公演では拍手がありました。
あと、最初のほうで、石井ちゃんがスケートで滑ったあと、「石井ちゃんです!」のポーズをして「またスベる」場面(笑)。
初日昼公演は本当にスベってましたが(笑)、それ以外の公演ではけっこうウケてました(笑)。
それから、ジョニ男さんの「石炭切れたか?」はどの公演でも笑いがおこっていたのに、棚倉ではなぜか今イチ反応が悪く、ここらへんが舞台の面白いところだな~という感じでした。
あとは、公演によって台詞を言う場面が前後して変わっていたり、台詞そのものも追加されたのかな?というところもあったり、もっと台詞を言ってる場面もあったりしましたが(俳句を詠む場面では南方朔がそれぞれの俳句に対して寸評の台詞を言ってました)、かなり記憶が曖昧なので、合ってるだろうと思われるところだけを書き、それ以外は割愛させていただきました。
あと、楽士の和田さんは今まで箱椅子のような打楽器を使っていましたが、今回はそれはなく、小さなドラムセットを使ってました。
記憶力のなさには自信がありますので(笑)、すっぽり抜け落ちてる場面や間違ってる台詞なども多々あると思いますが、そのへんはご容赦ください。
だいたいこんな感じだった、と思っていただければ幸いです。
新作 現代狂言 ことだま交差点
南方朔 南原清隆
平均 森一弥
平均ことだま 佐藤弘道 平子悟 大野泰弘 ドロンズ石本 野村万蔵
上司 岩井ジョニ男
上司ことだま 三浦祐介 石井康太
楽器が置いてある舞台に、楽士の和田さんと稲葉さんが登場。
まず、オープニングの音楽。続いてゆったりとした音楽が流れる中。
橋掛かりから南方朔が腰に手をあて、すり足でゆっくりと登場。
南方朔は上はえんじ色の服、下はゆったりとした白っぽいパンツで、腰にはえんじ色のスカーフを巻き、扇を差している。
舞台まで進んできた南方朔。
南方朔 「わたくしは天上界に住む下級の神じゃ。近頃人間の言葉使いが怪しくなってきた。悪しき言葉を使えば人の心も曇る。このたび大神様より人間の心に内に宿る美しい言葉を引き出し、人の心を明るくせよとの命をうけたまわった。これより人間の住む下界へ参ろうと思う」
舞台の周りをまわる南方朔。だんだん小さく回りだしその場で回転する。
南方朔 「久しぶりの下界はどんなものじゃ。前に降りたときは人間は髷を切って文明開化と騒いでおった。ほぉ~下ってきた下ってきた。雲の下まで下ってきた。見えるぞ見えるぞ」
舞台上から左右を見まわして
南方朔 「前より緑が少なくなってきたような、代わりにねずみ色の箱がのびて・・」
「ウ~」というサイレンのような音が鳴る
南方朔 「ん?西の方の大陸は黄色く黒くなっておるが、どのような国か」
耳に手を当てる
南方朔 「ニイハオ」「ツァイチェン」
(初日昼公演ではこのあと「麻婆豆腐」)
南方朔「かの国も大事なければよいが」「私の下る大和の国は・・・」「(ゴホっと咳をして)「下から立ち上る空気がくさい、それに前より暑うなって・・」
(棚倉では、ここで「ハックション」とくしゃみをして、「前より花粉が多い」
板橋でもくしゃみをして「前より花粉が多い」「くっさめ、くっさめ」。そして「大和の国はどうなっておるのじゃ」)
南方朔 「下るぞ下るぞ」「何かと気苦労が多い天上界より、人間たちとのんきに暮らしたいものじゃ」
舞台中央でくるくる華麗に回転し膝まつく南方朔。
橋掛かりと切戸口から男たちが出てくる。
皆、手元を見て下を向いて立っている。
南方朔「降りた」
顔を上げまわりを見る。
南方朔「これはどうしたことじゃ」
♪とおりゃんせ♪のメロディーが鳴り、男たちが手元を見たまま歩き出す。
一人の男(三浦祐介さん)が前も見ず手元を見たまま歩いているのを見て
南方朔「あ、ぶつかる・・ぶつからない」
三浦さんは前も見ずに人をうまくよけながら切戸口から退場。
今度は、石井ちゃんがスケートのジェスチャーで、前から来る人をよけながら滑っていく。
南方朔「滑る、滑る」
人をうまくよけたあと、「石井ちゃんです!」のポーズ。
南方朔「またスベル」
今度は、橋掛かりから弘道お兄さんが駆け足でやってきて側転で人をよけ、切戸口へ駆け抜けていく。
南方朔「なんじゃあの技は」
皆いなくなる。
橋掛かりからスーツ姿の男(平均)が手元を見ながらやってくる。
舞台中央で南方朔とぶつかる。
平均 「あ、すみません」
南方朔「私は南方朔という下級の神じゃ」
平均 「あ、僕、宗教とか興味ないんで。変なコスプレ」
南方朔「コスプレとはなんじゃ、ところでここはどこじゃ?」
平均 「渋谷のスクランブル交差点ですよ」(「スクランブル交差点」「渋谷の交差点」と公演によってこの台詞はまちまち)
話している途中で信号が変わる音。
取り残される南方朔。
車が右から左からとやってくる(音)。
平均 「あ、ぶつかる・・よけた」
体を横に縦にして車をよける南方朔
平均 「トラックが・・・」
地面に伏せる。体をひらひらと揺らしながら立ち上がる。(国立能楽堂2日め夜は、平均が「マジ、神技」)
立ち上がった南方朔、口に笛をくわえ(たジェスチャーで)、笛を鳴らしながら交通整理を始める。
南方朔「お巡りさんも12番目のサポーターです」
平均 「DJポリス?なんで今?」(国立能楽堂2日目昼は「古い」というツッこみ)
(板橋公演では、交通整理をしている南方朔を見て、平均がここで「マジ神技」)
南方朔「おぬし、名前を教えてくれぬか」
平均 「え?話ならLINEで」
南方朔「ライン?」
平均 「ID教えて」
南方朔「IDとはなんぞや」
平均 「じゃ、ふるふるで」
かざした手を左右に振る平均。それと同じように南方朔も顔を左右に振る。
平均 「いや、あなたが顔をふってどうするんですか」
南方朔「名前だけでも・・」
平均 「え~いやですよ」
南方朔「なぜじゃ」
平均 「言ったら笑われるし」
南方朔「いいではないか」
平均 「僕の名前はいたって普通の、たいらひとし。みんなからは平均君って呼ばれてます」
南方朔「平均?ハッハハハハ」
平均 「ほら、笑われた。だから嫌なんだ」「こうやって笑われるし。うまく伝わらないなら言わないほうが。どうせ失敗するなら言わないほうがましだ」
南方朔「人間の言葉を見ればその人が分かる。現代の言葉よ出でよ」
切戸口から、平子さんを先頭に、石本君、万蔵さん、弘道お兄さん、大野君の五人がそれぞれの肩に手をかけて集団で登場。
皆、白っぽいゆったりとした衣装。
舞台中央に平均が立ち、その周りに五人が客席に背を向け座る。
平均 「何か出てきたよ」「ストリートパフォーマンスか何かですか?」
南方朔「見ればわかる」
と言って手をくるりと回すしぐさ。
五人は平均の周りをまわりながら近づき何か早口で言う。
平均 「何?」
もう一度五人が何か言うが、やはりわからない。
南方朔「では、もそっとわかりやすく・・」
今度は五人がゆっくりと平均の周りをまわりながら
平子 「既読スルー」
弘道 「ブログ炎上」
大野 「ディスるんじゃないよ」
石本 「膝が痛い」(初日昼は「内山君じゃないよ」)
平均 「この人グチじゃあ」(「この人個人的な」「この人個人的な悩み」と、公演によって少しづつ変わる)
万蔵さんは、初日昼は石本君の言ったあとの笑い声で何を言っていたが聞こえず。夜は「歌舞伎じゃないよ」2日目昼は何も言わず。夜は「俺は首が痛い」(平均のツッこみ「なんでみんなどこか痛いの?」)
棚倉では、万蔵さんは何も言わず。
板橋でも言わず、平均が「この人何も言ってない」というツッこみ
南方朔「交差点、まことに不思議なところ。ことばとも交わる、神とも交わる」
(この台詞は、国立能楽堂ではなかった・・かな?)
平均 「これは何ですか? 」
南方朔「ことだまじゃ」「ことだまは魂がその行く末も・・人も作っておる」「人はことばで出来ておる、と大神様になろうた」
平均に向かい
南方朔「お前はどんなことばで出来ておる?」
舞台の周りに並んだことだまたち。それぞれ「ことば」を発していく。
弘道 「ヤバイ」
石本 「ガチで」
大野 「逆に」
万蔵 「びみょ~」
平子 「そっち?」
南方朔「これだけ?」
平均 「あ、はい」
南方朔「あ、はい、じゃなくて。これだけじゃ、嬉しいときはどうするのじゃ?」
ことだまたちが順に
石本 「ガチで」
弘道 「ヤバイ」
ことだま全員「ヤバイヤバイ」
南方朔「悲しいときは?」
大野 「逆に」
弘道 「ヤバイ」
ことだま全員「ヤバイヤバイ」
南方朔「困ったときは?」
万蔵 「微妙に」
弘道 「ヤバイ」
ことだま全員「ヤバイヤバイ」
南方朔「じゃあ、ヤバイときは?」
平子 「・・・そっち?」
南方朔「ヤバイときは「ヤバイ」って言わないのか!」
平均 「あ、はい」
南方朔「あ、はいって」
(2日目昼は、このあと「なんか腹立つ」)
南方朔「これでは思いが伝わらないではないか」
平均 「大丈夫ですよ、スマートフォンがありますから」
と言って南方朔に手に持った(ジェスチャーで)スマートフォンを見せる。
南方朔「人のツラも見ずに話をしろというのか」
平均 「スタンプがありますから」
南方朔「スタンプ?」
平均 「じゃあ試しに」
と言って手元を押すしぐさ。
平均 「うれしいとき」
舞台上の、万蔵さん、平子君、石本君、弘道お兄さん、大野君の五人が、片手を前に出して指さし、もう片方の手は腹に置き満面の笑み。
平均 「びっくりしたとき」
両手を挙げビックリしたポーズをする五人。
平均 「急いでいるとき」
走るマネのポーズをする五人。
平均 「でね、今、僕がはまっているのが狂言スタンプ」「うれしいとき」
五人 「く~ははははは」(と狂言ふうに笑う)
(2日目昼はここで、南「喋ったな、今」平「ボイス機能付きです」)
平均 「びっくりしたとき」
五人 「南無三宝(なむさんぼう)」(と言って腿をたたく)
南方朔「先ほどから思うておっただが、このスタンプだけ異様にうまいな」
と言って万蔵さんに近づき指をさす。
平均 「気のせいです」
南方朔「そうか?力の差が・・」
というやり取りがありつつ。
平均 「急いでいるとき」
後ろに一歩下がって
五人 「まず、急いで参ろう」
南方朔「急いでないよ」「後ろに下がっちゃった」
五人 「何かといううちにこれじゃ」
南方朔「どれじゃ?」
(棚倉では、「何かといううちに棚倉じゃ」そして、南「早い、新幹線より早い」)
(板橋では「何かといううちに板橋じゃ」)
南方朔「これでは本音が・・」
平均 「本音なんか、伝わらないなら言わなくていいんです」
南方朔(腿をたたいて)「南無三宝」
♪とおりゃんせ♪の音楽が流れる
橋掛かりから上司とそのことだま二人がやってくる。
南方朔「誰じゃ?」
平均 「上司です。鉄道オタクで面倒くさい…」
平均に気が付いた上司が近づいてくる
上司 「最近、元気ないな、どうした?・・石炭切れたか?」
平均 「めんどくせ~」
上司 「仕事ではな、しんかんせん、が大事なんだ」
平均 「しんかんせん?」
上司 「まず、信頼」
平均 「あ、新幹線のしん」
上司 「そして感謝」
平均 「あ、かんね」
上司 「・・・・」
平均 「それだけ?せんは?」
「せん」が何かを言わず続けて
上司 「飲みに行かないか?」
平均 「ヤバイ」
上司 「ん?ヤバイ?ヤバイというのはだな、法に触れたり危険なことを言うのであって・・」
平均 「ありえないよ」
上司 「ありえない?ありえないとは思いもよらぬことが・・」
平均 「逆にすみません」
上司 「逆に?逆というのは順序が逆になったり反対の意味・・ということは、お前、謝る気がないだろ」
平均 「僕、この人苦手なんですよ」
南方朔「人はことばで出来ている。この男のことばよ出でよ」
上司の後ろに二人のことだまがやってきて交互に喋る。上司はそれぞれのことばにあったジェスチャー
ことだま「俺らの時は」「出来てあたりまえ」「背中を見ろ」
背中を見ようとするが見えない上司
ことだま「出発進行」「飲みにケーション」
平均 「やっぱ苦手だよ」
南方朔「ことだま同士で話し合ってみるのじゃ」
平均と上司のことだまたちが二組にわかれ、リズムに合わせて行進をする。
口ぐちに「ヤバイ」「俺らの時は」「逆に」「出来てあたりまえ」 「びみょ~」と言いながら交差しようとするが、ぶつかってしまいうまく歩くことが出来ない。
南方朔「これは話し合いというより争いだな」
上司とそのことだまが行進をやめ、口ぐちに
「俺らの時は」
「変わった」
「できて当たり前」
「響かない」
「飲みにケーション」
「無視され」
「さみしい」
(国立能楽堂2日目夜と棚倉、板橋では、ここの台詞をジョニ男さんが武田鉄矢さんふうで喋る)
上司とことだま、橋掛かりから退場
南方朔「あの男 もそっとコミュニケーションをしたいんじゃ・・」
平均 「いいですよ、コミュニケーションとるの苦手だし、本音なんて誰も言ってないし、本音を言うなんてありえない」
「ありえない」という言葉を聞いてよろける南方朔。
平均 「だいたい、こんなお気楽な格好をしているあなたに上司のいるサラリーマンの気持ちなんてわかるわけないでしょ」
南方朔「(腹に据えかねるという表情で)何が気楽だと?みどもはみどもなりに深~く悩んでおるのじゃ。」「えっえええ・・」
と言いながら泣き始める南方朔
平均 「泣くの?」
南方朔「神の世界は神の世界でいろいろあるのじゃ」「その小さき箱をこっちへよこせ」
平均の手元からら小さい箱をもぎ取りおでこに当てる。
南方朔「今の言葉など・・・」
ピロピロピロという音が流れ情報が南方朔の頭の中に入っていく。
急に口調が変わる南方朔。
南方朔「っていうかさ~。上司は何もわかっちゃくれないし~、マジ半端ねぇ~。悲しうぃ~ね~。これはもう笑うしかないよね~。はっはははは」
平均 「笑うの? 」
南方朔「え~んえんえんえん」
平均 「泣くの?」
南方朔「なぁブラザー」
と言って平均とグーパンチで両手を合わせる。
(国立能楽堂2日目夜は、ここで「ガチリアルで」。あと、欽ちゃんの口調で「訊いたら笑いの神様にげてっちゃうよ」)
(板橋でも欽ちゃんと、「天上界はガチリアルでビックリ」という台詞)
南方朔「え~んえんえんえん」「はっははははは」
泣いたり笑ったりする南方朔を見て
平均 「情緒不安定だよ」
南方朔「お前も素直に本音を言うたらどうじゃ」
平均 「本音を言うなんてありえない」
「ありえない」という言葉を聞いてよろめく南方朔。
そして、座っていたことだまが一人倒れる
平均 「だるい」
またよろめく南方朔。またことだまが一人倒れる。
平均 「うざい」
どんどん倒れ元気がなくなることだまたち。
南方朔「このことばは危険じゃ」
と言って、平均が言った「ありえない」ということばを放り投げる。
南方朔「これも」
と言って、「だるう」「うざい」も放り投げる。
平均 「どうしたの?」
南方朔「そのようなネガティプな言葉を聞くと、身も心も弱り、本当にそうなってしまう」
橋掛かりから、石井ちゃんと三浦さんが登場
石井「ガサ」
三浦「ゴソ」
と言いながら、扉を開けるしぐさ。
それに気づいた平均。
平均 「あれは?」
南方朔「危険な言葉を肥料とし、求めて奴らはやって来る。ネガティブな言葉の森の番人じゃ」
石井 「ありえない、ここにもあったぞ」
三浦 「うざい、ここにも」
危険なことばを集めながら、橋掛かりを渡り終え舞台までやって来る二人。
橋掛かりから舞台に入るとき、二人はロープをくぐって入場する武藤のマネをしてポーズを決める。
南方朔「(番人は)ことだまたちを封じ込め、思考を停止させ、人々を不幸へと導くのじゃ」
番人 「(ネガティブなことばを)探すぞ」「ガサ」「ゴソ」
平均 「入ってきた。もぅ最悪」
言ったあとで「しまった」という顔をする平均
喜ぶ番人
それを見た南方朔。扇を番人のほうへ向け、舞いながら歌う
南方朔「♪ことばはもと 魂なり♪」
三浦 「これは苦手なことばじゃ」
南方朔「♪世はまた人の情けなり♪」
石井 「これはたまらん、急いで帰ろう」
橋掛かりから帰っていく番人二人
南方朔の歌を聞き、ことだまたちが起き上がり元気になる。
そして南方朔と一緒に歌い出す。
南方朔「私の使命は人の心の美しい言葉を引き出すこと」「例えば季節の変わり目などで心がときめくものじゃ。お前は心がときめくことはないか?」
平均 「べつに」
南方朔「春夏秋冬、どの季節が好きじゃ?」
平均 「どれと言っても・・・」
南方朔「人は季節に寄り添い生きていく」「俳句など詠んで・・・」
ことだまたち、一人ずつ順番に立ち俳句を詠む。
まずは弘道お兄さんが立ち上がり。
弘道 「光浴び 草木燃え立つ 春の朝」
南方朔「命の輝く句じゃな」
平子 「夏の音 がりがりがりがり ガリガリ君」
平均 「ガリガリ君?」
大野 「帰ろかな たき火の匂い 身にまとい」
(初日夜は、ここで平均の「え?ガリガリ君」というツッこみが続き大野君の句がかき消される・笑)
石本 「雪見つつ こたつに入り ガリガリ君」
平均 「またガリガリ君?」
南方朔「ガリガリ君は美味しいの」
万蔵 (すっと立つが何も言わずに座る)
平均 「詠まないの?」
平均に向かって
南方朔 「さぁ、おぬしも一句どうじゃ」
平均 「いや・・」
南方朔「季節の変わり目を感じて・・」
平均 「季節なんて暑いか寒いかだけ、スマホを見れば・・」
南方朔「スマホ?」
平均 「スマホ」
南方朔「ス・マ・ホ」
♪スマッホッホッホ♪と歌いながら手を叩き、リズムをとり社交ダンスのステップで踊り出す南方朔。
ことだまたちも♪スマッホッホッ♪と歌いながら音楽に合わせリズムをとり手拍子。
万蔵さんは腰に巻いていたスカーフを手に舞を舞う。
(棚倉と板橋では、万蔵さんと南方朔が社交ダンスのスンダードのステップでコラボ。南方朔は踊りの最後にくるくるとその場で華麗に回転して座る)
続いて弘道お兄さんが前転、バク転などを器械体操の技を披露。
平子君、石本君、大野君は、三代目J Soul Brothersの踊り。
(板橋では、平均が「三代目J Soul Brothersのやつだ」)
その後、南方朔も含め六人で踊る。
♪スマッホッホッホ♪のリズムが続く中、平均に向かって
南方朔「さぁ、俳句を」
少し考え
平均 「季節見ず いつも見るのは スマホだけ」
平均は「へい♪スマッホッホッホッ♪」と歌いながら一人踊るが、音楽は止まり、ことだまたちは白けた表情。(国立能楽堂2日目夜、棚倉、板橋では、一人でかなり長く踊っていた平均君)
「はっ」と気づき踊るのをやめる平均
ことだま「なんじゃそれは」「季語もない」「情緒もない」
(棚倉では南方朔が「踊りは面白かったが」)
すっかり静かになり
南方朔「好きな言葉はなんじゃ?座右の銘は?」
平均 「座右の銘?う~ん、しいて言うなら・・・現状維持です」
南方朔「何?現状維持じゃと?」
座っていたことだまたち、顔を伏せ手で床を叩き始める。
南方朔「これはいかん、始まってしまうやも・・・」
平均 「え?」
南方朔「お前のように言葉を粗末にし・・」
ことだまたち一人ずつ立ち上がりしゃべりだす。
ことだま「このような男の運命」「たかが知れている」「自分を磨こうともせず」「輝かせようともせず」
南方朔「ことだまたちの反乱じゃ」「こうなると私でもどうすることも出来ない」
平均 「どうなるんですか?」
南方朔「ことだまたちが反乱をおこすと無言の世界に、お前の心は閉じこもってしまう」
最後に立ち上がった万蔵さんが南方朔に向かい
万蔵 「お前もこの者ではなく他の者を・・」
ことだまたち、トントンして動く二つ折りの紙人形のように少しずつ動きながら、平均の側に集まりだす。
平均 「どうせ僕なんかこんなキャラだし、どうせ言ってもわかってくれないし、どうせ、どうせ。僕なんかどうせ・・」
舞台最前列に座る平均。その後ろにやってきたことだまたちが口ぐちに。
ことだま「どうせやっても無駄」「面倒くさい」「これ、やる意味あるんですか?」「死んだほうが・・」
ことだまたちは言い終わると、前のめりに倒れた平均を舞台奥まで一気に引っ張っていく。
(棚倉と板橋では橋掛かりまで引っ張っていく)
南方朔「現代人の言葉は曇り、濁っている。ここから美しい言葉を引き出せようものか」
上を見上げる南方朔。
南方朔「雨じゃ、これは怒りの雨やも知れぬ」
扇を手に持ち舞う(初日夜は腰に巻いていたスカーフを手に舞う)
南方朔「扇が勝手に動き出しておる、やめぬか」
音楽に合わせ手に持った扇が動き出し、そのあとをついていく南方朔。
南方朔 「ここだけ雲が切り取られ青空が見える」
扇を持った手が上がっていく。
南方朔「おぉ体が浮いてゆくわ」
扇につられながらな舞い、橋掛かりまで行く。そして柱につかまりながら欄干の上に立つ。
(棚倉、板橋のホール公演では能舞台の先の劇場の元からある舞台の最前に腰を掛け、客席へ降りていくためについている階段に足をかける)
あたりをゆっくりと見渡したあと
南方朔「お~い!へいき~ん!実に良い眺めじゃぞ~~!」
ことだまたちに抑えられている平均、顔を上げて
平均 「どこ?」
南方朔「ここじゃ、空の上じゃ」
平均 「え?空の上?」
南方朔「西の空がだんだん茜色に染まってきた。実にきれいじゃ。お前も空に昇ってこ~い!」
平均 「マジ、無理。ありえない。空に昇るなんて、マジ、ありえない」
南方朔「ありえない。というのが、マジ、ありえない」
平均 「えぇ?」
南方朔「勇気を出すのじゃ」
平均 「勇気なんて・・」
南方朔「半歩の勇気じゃ。踏み出すのが怖いなら、半歩だけでいい。嫌ならすぐに戻ればよい」
平均 「でも、どうせ・・・」
南方朔「どうせ・・なら、やってみよ。まず呼吸を整え・・」
ことだまと声がかぶり話すのをやめる南方朔。そして欄干の上に座り平均を見守る。
(板橋では「まず呼吸を整え」の台詞は最初から南方朔は言わず)
立ち上がる平均
ことだま「まず呼吸を整え」「ゆっくりと息を吸い」
言われたとおりにする平均
ことだま「息を腹にためる」「これを繰り返す」「すると体が緩み」「心も緩む」
万蔵 「そして、頭の上から糸でつるされたがごとく立つのじゃ」
ことだま「あとは自ら踏み出すのみ」「さぁ」
平均 「よし」
躊躇していた平均だが、意を決して踏み出す。すると両脇をことだまに抱えられ平均の体は宙に浮き足をクルクルと空回りさせる。
平均 「何これ~~!!空に浮いてる~!」
腕だけではなく体もことだまたちに抱え上げられ空を飛ぶ平均。
前のほうまでくると、少し斜めになりながら左に方向転換。
平均 「あぁ~~!」
と言いながら、そのまま橋掛かりの南方朔のところまで飛んでいき、欄干の上に二人で並んで座る(棚倉、板橋では、舞台最前に二人で並んで座る)。
笑顔の南方朔と、ビックリした表情の平均。あたりを見渡し。
平均 「なにこの景色・・」「下のほうはあかね色に」「だんだんと薄い茶色、濃い茶色に」「そしてわずかに残るオレンジ」
南方朔「富士山も・・・」「そしてそれは天まで続く・・」
平均 「初めて空の上から夕日を見た・・」
感に堪えないという表情で
平均 「これをことばにすると・・・・・ヤバイ。じゃないな。美しい?きれい?う~ん、いい言葉が見つからない!」
万蔵 (舞いながら)「♪夕暮れは雲の畠に♪」
と歌い出す。(棚倉と板橋では、ここで南方朔が後ろに下がる)
万蔵 「♪あまつ空なる♪」
とさらに歌い、座っている平均の隣にやって来る。
万蔵 「空はじきにさまざまな色を放つ」
平均 「夜は足元からやってくるんだ」
万蔵 「闇は地上を覆い、やがてあたりを包み込んでしまう」
闇が迫る風景を見ながら
万蔵 「すべてのものはうつろいゆく。生きるとは変わり続けることじゃ」
平均 「・・・・・・せつない」
座っていたことだまたちが一人ずつ立ち上がり。
弘道 「心は聞き取る、お前のことばを」
大野 「心は受け取る、言うことばを」
石本 「心は傷つく、言うことばで」
平子 「心は喜ぶ、お前の言うことばに」
万蔵 「ことばの持つ力を信じよ」
南方朔と万蔵さんが前に。
万蔵 「ずーっと見ておったぞ、南方朔」
南方朔「大神様」
大神様(万蔵)「ことだまたちが喜んでおったな。しかと見届けたぞ、南方朔」「この若い者も・・」
大神様に扇を返す南方朔。
渡された扇を手に舞う大神様。
大神様「最前の上司のことだまともう一度、我々も一緒に・・」「では、そ~れ」
上司とことだま二人が切戸口から現れる
リズムに合わせ全員一列に並び足踏み。
二組に分かれ、まずは平行に向き合い、「ヤバイ」「俺らのころは」と言いながら行進。
ぶつからずにうまく交差する二組。
今度は二組が斜めに向き合い、前進、交差。
交差が終わったところで止まり、前を向いたまま後ろ方向に歩き出す(棚倉と板橋ではここで「ヤバイヤバイ」と全員が言いながら歩く)。
後ろ向きに斜めに歩く行進もぶつからずにうまく交差する(初日昼はここでぶつかってしまうが、それ以外の公演ではすべて成功)。
一列に並んで座り、端から徐々に立ち上がっていく姿勢、順にストップモーションで止まっていく。最後は上司のジョニ男さんが立ち、頭の後ろから手を挙げ(ピンクレディーの「UFO」みたいな感じ)、チーンという効果音。
皆で座り一礼(板橋では、その前に皆で手をつないで一度上げ、そのあと礼)
立ち上がり、リズムに合わせことだまたちと南方朔と大神様は退場。
二人きりになった平均と上司。
上司 (気まずそうに)「飲みにケーションするか?」
平均 「どうせ僕なんかと・・」
と言ってハッと気づく。
上司 「そうだよな」
平均 「あ、いや、」
ことだまたちに教わった、息をゆっくり吸い、腹でためる動作を繰り返しやってみる平均
平均 「どうせなら、鉄道の話を聞かせてもらえませんか?」
上司 「おぉ、そうか、新幹線が好きでな、ゼロ系が・・」
平均 「あ、先ほどのしんかんせんの続きを・・」
上司 「ん?」
平均 「しんかんせんの、しんが信頼。かんが感謝。せんは?」
上司 「・・・・センキュー」
平均 「え?英語?」
上司 「そう。しんかんせんがだいじなんじゃ」
平均 「でも、しんかんせんのかんは感謝で、センキューとかぶってるじないですか?」
上司 「あ、凡ミスです」
(国立能楽堂2日目夜は「スマミセン、凡ミスです」)
(棚倉では「凡ミス」はなく「おはずかしい」)
(板橋では「センキューソーマッチ」「うっかりボーイ」平均「ボーイではないけど)
上司 「とにかく、感謝の気持ちを忘れるな、っていうことだよ」
平均 「いつもありがとうございます。気にかけていただいて」
上司 「俺のほうこそありがとな」「これから飲みに行くか?」
平均 「はい」
上司 「出発進行!」
(国立能楽堂2日目夜は、武田鉄矢の口調で「じゃあ行こうよ」)
上司はシュッシュッポッポッと言い機関車のマネをしながら、二人は橋掛かりに向かう。
橋掛かりで窓開けるジェスチャーをして、
上司 「レギュラー満タン」
上司の頭を思いっきりツッこむ平均。そしてツッこんだ手を見る。
(初日昼は上司は「めがねめがね」と言って落ちたメガネを探していたが、それ以外はなし)
(2日目夜は、平均が「ツッこむ勇気」)
(板橋では「半歩の勇気」)
上司 (ツッこんだ平均に)「良かったよ」「チョベリグ」
平均 「あ、それ古いです」
上司 「スナック終着駅へレッツゴー!」
(棚倉では「居酒屋おっかさんへ行こうか」)
と言いながら二人は退場。
切戸口から、南方朔と神様らしい格好になった大神様が再び現れる。
大神様「少しは良い言葉を使うようになったの」
南方朔「これであの者も少しは運が改まりましょうか?」
大神様「ならぬな」
南方朔「え?」
大神様「ハッハハハ、戯言(ざれごと)じゃ」「あの心がけが続けば、の話じゃ」
上司と平均が歩いて行ったほうを見て
大神様「それにしてもあの男、飲みにケーション」
乾杯のジェスチャー
大神様「あぁ、恥ずかしい(と言って顔を覆う」
南方朔「お恥ずかしゅうございます」
大神様「現代の言葉の変わりようはいかなものか」
南方朔「はい」
大神様「さりながら、「ヤバイ」という言葉ひとつを上手に使いこなすとは、なかなか捨てたものではないな」
頭を下げる南方朔。
南方朔「わたくしは、見事お役目を果たせましたでしょうか?」
大神様「(いたずらっぽい笑顔で)びみょ~」
南方朔「えぇ?」
大神様「そうではないか、そちは雨の中うろたえ、え~んえんえんえん、はっははははは(南方朔の泣くマネと笑うマネをする)」
南方朔「いや、それは・・」
大神様「見かねてことだまたちをさしむけたが」「ことだまたちに助けられ、ようやく」「美しい言葉を使えばその者は心も晴れる。お前もたまには人間たちと関わり合いを持つのもいいのではないか?そうすればおぬしの心も晴れる」
南方朔「いえ、わたくしはもう・・」
南方朔に近づいく大神様
大神様「なぁ、ブラザー」
と言って南方朔と両手でグータッチ
大神様「え~んえんえんえん」「はっははははは」
南方朔「ご許されませご許されませ」
大神様「さぁ、天に帰ろうぞ」
早足で駆けるように橋掛かりから退場する二人。
以上が、「ことだま交差点」のあらすじでした。
ニュアンスだけしか覚えていない場面や、勘違い、記憶違いの場面など、不正確な箇所も多々あるかと思いますが、大体こんな感じだったと思っていただければ幸いです。
一応、メモをとっていたのですが、解読不明な文字が多数あり(笑)、ヒエログリフを読むためのロゼッタ・ストーンのようなものがあればな~と、自分で書いたメモなのに思ってしまいました(笑)。
ことだまたちが反乱を起こす場面の台詞などはかなりうろ覚えで、ちょっと不正確かも。
それから、南方朔と平均君、大神様が空から夕日を見る場面は、もっともっとたくさんの台詞で、刻々と変わる壮大な夕景を描写してました。
この場面は何度観ても引き込まれてしまう、とてもいい場面なのにそれがうまく伝わらずに残念無念。
(いい場面なだけにメモもとるのも忘れ見入ってしまいました・笑)
沈みゆく夕日とその景色が目に浮かび、南原さんが挨拶でいつも言っている「みなさんの想像力が・・」というのがまさに表現されている場面だな~、これぞ「ことばの力」だな~といつも感心していたのですが、そんなこんなの感想は、また後日に。
リズムに合わせてことだまたちが行進して交差する場面は、文字にするとちょっとわかりにくいですが、日体大の集団行動を思い浮かべていただければと思います。
ちなみに、後ろ向きに歩いて斜めに交差する場面。
初日昼公演ではぶつかってしまい、うまく交差できませんでしたが、それ以外は全部成功。
ここは、最初のことだまたちが争うようにぶつかってしまう場面との対比でもありますし、うまく交差して客席を感心させなきゃいけないところなのに、初日昼はぶつかって客席から笑い声が起こってしまい、ちょっと悔しい思いも。
夜公演以降は、この場面が来るとドキドキしていたのですが(笑)、どの公演でも成功し、客席からは拍手や「お~」という声があがって、後ろ向きの交差が成功したときは毎回(心の中で)ガッツポーズをしてました(笑)。
公演によって反応が違う場面も多々ありました。
集団行動のあと皆が退場するときも、国立能楽堂2日目昼は拍手がありましたが、夜公演はなし。板橋公演では拍手がありました。
あと、最初のほうで、石井ちゃんがスケートで滑ったあと、「石井ちゃんです!」のポーズをして「またスベる」場面(笑)。
初日昼公演は本当にスベってましたが(笑)、それ以外の公演ではけっこうウケてました(笑)。
それから、ジョニ男さんの「石炭切れたか?」はどの公演でも笑いがおこっていたのに、棚倉ではなぜか今イチ反応が悪く、ここらへんが舞台の面白いところだな~という感じでした。
あとは、公演によって台詞を言う場面が前後して変わっていたり、台詞そのものも追加されたのかな?というところもあったり、もっと台詞を言ってる場面もあったりしましたが(俳句を詠む場面では南方朔がそれぞれの俳句に対して寸評の台詞を言ってました)、かなり記憶が曖昧なので、合ってるだろうと思われるところだけを書き、それ以外は割愛させていただきました。
あと、楽士の和田さんは今まで箱椅子のような打楽器を使っていましたが、今回はそれはなく、小さなドラムセットを使ってました。