矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

2大学で講義・講演

2016-05-25 00:45:05 | 感染症関連
24日火曜日は、古巣で大学院看護学科で臨床薬理の抗菌薬を担当させていただきました。

これで3年目。毎年、mid-careerの方が受講されており、とても新鮮です。昨年度、ボリュームが多いとフィードバックをいただき少し減らしましたが、私のセッションの前に、学生さんたちは本日の内容は自習済み、という状態でface-to-faceのセッションになります。

事前学習 をして対面セッション つまり、Flipped classroom形式です。

成人学習では、「自分に必要なことを、自分が選択し、自分が必要な量を学ぶ」という特性があるため、その理論を応用します。

”やらされている”学習ではdeep learningは難しく、浅い学習(superficial learning)になってしまいます。

3月のOttawa Conference(オーストラリア・パースでの学会)で、オランダのアセスメントの世界的権威の先生のすばらしいKey noteを聞かせていただきました。アセスメントに関して、これまでわかってきたことは、この3つと珠玉のfindingsを教えてくださいました。

学生(学習者)は、

"試験はいつか” "When is the test?"

”試験は何が出るのか” "What is on the test?"

”試験に不合格だったら、どうなるのか” "What if I fail?"


の3つの質問をするそうです! 確かにそうだなあ、と感心しました。

明日(今日)は、横浜市立大学附属市民総合医療センターで研修医の方向けのセッションをさせていただきます。

いつものCase-based 形式です。ケーススタディです。一般的理論をスライドで述べるだけでは”身につかない””応用されにくい”ので、
実際の”コンテキスト”(実症例または教育用に修正した症例)を提供し、思考プロセスのシミュレーションをするという形式。

ワインの勉強にも言えるなあ、と思うのですが、いくら地名と品種を覚えようとしてもすぐに忘れます。実際にレストランでソムリエの方に
サポートしていただきながら、地域と品種、好みの味(フルーティ、渋みなど)を言って、出してもらえると記憶に残りやすいです。

さて、今回のフォーカスは、「確定診断とドレナージ」です。

現場で振り返りと見直し。

「確定診断をつける」流れ(特に生検、気管支鏡など)と迅速なドレナージの意思決定と実行のスピード感。英断すべき瞬間、というのがあります。それをぜひ、”体感”していただきたいと願いを込めて症例を選びました。






症例プレゼンテーションABC

2016-05-25 00:16:01 | 医学教育
口頭での症例プレゼンテーションとカルテ記載(charting)を見れば、その人の臨床的な実力は一目瞭然と言えます。

しっかりと患者を理解し、無駄なくプレゼンテーション、またはカルテ記載できる人は十分にトレーニングが積めていると思います。
ただし、このスキルは、絶え間なく、続けながら進化、改善させていく必要があります。私もまだまだ途上です。

知識が増える、体系性を増してくることにより、情報の選択、情報の提示の仕方、まとめ方、もっとも大切なアセスメントとプランが
”熟成”されてきます。

学生、初期研修医の方へのワンポイントアドバイス。特に電話などでの短時間のプレゼンテーションでは情報を凝縮する必要があるため重要なコツがあります。

電話の場合などの時間が切迫している場合は、特に、

0. 要件を先にいう。
診断、治療上の質問がある、手術適応の評価をしてほしい、感染対策について教えてほしい、など要件をまず述べる。

症例の情報は、
1. 主語をつける。
つまり、どんな患者が、どういう理由(主訴)で来院して、どういう状態か、を述べる。


65歳日本人男性で、病的肥満、糖尿病の既往歴がある患者が、冷や汗を主訴に「徒歩で」来院し、心電図で、ST上昇が見られました。

この「65歳日本人男性で、既往歴がxxxのある患者が」の主語がない場合、聞き返す必要が出て、わかりにくく、効率が悪いです。

改善が必要な例
昨日からの発熱で来院し、悪寒、咽頭痛、咳があります。胸部痛はありません。などとなって、年齢は?、(人種は?)、性別は? 既往歴は?とこちらが聞き返す必要があるのは、改善が必要。

46歳白人女性で、既往歴に虫垂炎のある患者が、腹痛を主訴に来院されました。バイタルサインは安定していましが、腹部に圧痛とリバウンドがあり、急性腹症を考えています。などと1文があって、詳細を後から述べていただくと全体が見渡せて助かります。

2. アセスメント
暫定診断 working diagnosisをいくつか述べる。
その可能性 likelihoodを評価する。


暫定診断 は、左腎盂腎炎
左背部が痛みがあるとのことで、鑑別(除外)が必要な疾患として左の腸腰筋膿瘍も考えています。
など。


可能性の評価がない場合、いつも「疾患A 疑い」「疾患B疑い」「疾患C疑い」で、
疾患A, B, Cがすべて同列に並びます。これでは、意思決定に役立ちません。優先順位をつける、可能性の評価をする、ということが重要です。

この優先順位(可能性)は、時事刻々と変化します。最新になれば、チャートもそのように書き直す。入院しても、ずっと「疾患A, B, C疑い」でcopy & pasteが続くのは望ましくないのです。

当院では、医療面接と身体所見を最重視する教育を全診療科で徹底しています。

みんなで切磋琢磨しよう〜。一人で学習するよりも、共同学習するほうがより深い学習 deep learningが実現できます。