中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職復職Q&Aシリーズ②

2022年07月29日 | 情報

Q;流通系企業の管理職です。過去に精神疾患の経験がある部下の従業員の言動・行動が普通ではなく、疾患を再発している模様です。
ただし、就労状況に問題はありませんし、業務はマニュアル通りに実行できています。
当該従業員について、どのように対処すればよいでしょうか?

A;「言動・行動が普通ではなく」とは、どういうことでしょうか?
もし心配であれば、「すぐに」当該従業員と面談をしましょう。
貴職の心配を解決しなければなりません。「腫物を触る」ような態度は、問題を大きくするだけです。
新型コロナ下に限らず、従業員とのコミュニケーションは、基本中の基本です。

しかし、「就労状況に問題はありませんし、業務はマニュアル通りに実行できています」とありますので、
管理職にとっては不満がないように受け取れます。

精神医学で「事例性」と「疾病性」という言葉をご存じでしょうか?
管理職としては、このうちの事例性に注目して、マネジメントしましょう。疾病性は、医療専門職の範疇です。

さて、事例性とは、業務を推進するうえで困る具体的事実を指し、遅刻が増えた・無断欠勤がある・仕事の能率が低下している
・同僚とのトラブルをおこすなどを云います。
そして上司や同僚はその変化にすぐに気がつくはずです。
一方、疾病性とは、症状や病名などに関することで、「うつ症状がある」「幻聴がある」など医療の専門家が判断する分野です。

問題の第一は、管理職のあなたが、部下に精神疾患の病歴があることを、なぜご存じなのでしょうか?
「配属される際に、人事部門から説明があった」「人事面接時に、本人自ら報告があった」ならば良いのですが、
他の方法・手段によって入手したのであれば、高度に機微な個人情報ですので、情報を秘匿することが求められます。

まず、産業医がいる職場であれば、当該従業員と産業医との面談をセッテイングしてください。
乃至は、当該従業員の了承を得て、産業医に状況を説明してください。
そして、産業医が、休職・治療の必要を認めた場合、当該管理職は、人事労務部門に経緯を報告し対処方法を協議してください。
当然に産業医も、当該事案について人事労務部門に報告します。

産業医がいない職場であれば、契約している保健師、保健師もいない職場であれば、地域産保※にそれぞれ助言を仰ぎましょう。
そして、就業規則などに則って人事労務部門と共同して休職命令などの対処方法を検討しましょう。

※地域産保

https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/333/default.aspx

職場での問題把握の第一歩は、病名の追求(疾病性)以上に、業務上何が問題になって困っているか(事例性)を優先する視点が求められます。

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27.28日は、休載します

2022年07月26日 | 情報

27.28日は、出張のため当ブログは休載します。
再開は、29日(金)です。よろしくお願いします。

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テレワーク実施率は 16.2%と過去最低を更新

2022年07月26日 | 情報

テレワーク実施率は 16.2%と過去最低を更新、20 代・30 代の実施率が大幅減
新型コロナが働く人の意識に及ぼす影響を継続調査~第 10 回「働く人の意識調査」
2022 年 7 月 25 日 公益財団法人 日本生産性本部

【第 10 回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は別添「調査結果レポート」参照)

1.わが国の景況感:現在の景気「悪い」が約 4 割、今後の景気見通しも悲観的な傾向続く(図 2,3)

・ 現在の景気について、「悪い」が前回 4 月調査の 30.9%から 37.6%へと増加。「悪い」「やや悪い」の計も 72.0%と 2021 年 4 月以来の 7 割超えとなり、原材料価格の高騰、急激な円安等が影を落としているとみられる(図 2)。

・ 今後の景気見通しについて、「良くなる」「やや良くなる」との楽観的な見通しが減少し、「悪くなる」「やや悪くなる」という悲観的な見通しが増加する傾向は続いている(図 3)。

2.感染不安と外出自粛:全年代で「不安を感じる」割合は減少し、警戒感は概ね希薄化(図 5~8)

・ 自身がコロナに感染する不安について、「かなり不安を感じている」の割合は前回 4 月調査の19.8%から 14.9%へと減少、過去最少になった(図 5)。

・ 年代別では、全ての年代で「不安を感じている」割合(「かなり不安を感じている」「やや不安を感じている」の計)は減少。また、「かなり不安を感じている」は、70 代以上を除く全年代で 10%台となり、新型コロナウイルス感染への警戒感は概ね希薄化している(図 6)。

・ 不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」割合は、前回の 29.6%から 21.3%へと減少し、過去最少(図 7)。特に 30 代では、29.6%から 15.0%へと半減(図 8)。

3.勤め先への信頼感:業績・雇用への不安は弱まるものの、収入への不安は拭えず(図 12~17)

・ 勤め先の業績への不安について、「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」「どちらかと言えば不安を感じる」の計)は 48.7%と過去最少。5 割を下回ったのは今回が初めて(図 13)。

・ 今後の自身の雇用について、「不安を感じない」(「全く不安を感じない」「どちらかと言えば不安を感じない」の計)が 51.9%と、4 回連続で 5 割を上回った(図 14)。雇用不安は第 3 回調査(2020 年 10 月)で底を打ち、その後は改善傾向。

・ 今後の自身の収入について、「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」「どちらかと言えば不安を感じる」の計)は 64.6%と 3 回連続で微増(図 15)。

4.市場価値と転職に対する考え:業種により差、給与への不満が転職意向に影響か(図 39~45)

・ 勤め先から支払われている給与が、自身のキャリアや能力、成果から見て世の中の相場に見合っていると思うかについて、「相場より低いと思う」すなわち自身の市場価値は給与額よりも高いと思う雇用者が 38.6%と最多、「相場より高いと思う」すなわち自身の市場価値よりも多く受け取っていると回答した雇用者は 5.6%、「相場に見合っていると思う」すなわち妥当な金額だと思っている雇用者は 30.3%となった。また、「わからない」が 25.5%と、約 4 分の 1 が自身の市場価値を把握していない(図 39)。

・ 主要業種別では、「相場より高いと思う」と「相場に見合っていると思う」の計は、「学術研究、専門・技術サービス業」56.0%、「金融業、保険業」50.9%と、この 2 業種のみ半数を超えた。「相場より低いと思う」は、「生活関連サービス業」56.0%、「医療、福祉」49.0%、「運輸業、郵便業」44.8%、「卸売業」42.9%となっており、業種によって構成が大きく異なる。「わからない」については、「運輸業、郵便業」が 31.0%、「飲食サービス業」が 30.6%と高い一方で、「金融業、保険業」は 7.0%と低い(図 40)。

・ 年代別では、40 代は「相場より低いと思う」が 43.1%と 4 割以上が現在の給与に不満を感じている。また、20 代・30 代は約 3 割が「わからない」であり、自身の市場価値を把握していない(図 41)。

・ 現在の転職意向について、「転職するつもりはない」は 60.6%。一方、「転職をしたいと考えており、現在転職活動をしている」は 5.8%であり、「いずれ転職をしたいと思っている」の 33.5%と差があることから、実際に転職活動を行うハードルの高さが垣間見える(図 42)。

・ 主要業種別では、「転職したいと考えている」(「転職をしてみたいと考えており、現在転職活動をしている」「いずれ転職をしたいと思っている」の計)は、「飲食サービス業」が 52.8%と最も多く、唯一半数を上回った。以下、「情報通信業」47.7%、「医療、福祉」45.1%、「卸売業」42.9%、「サービス業(他に分類されないもの)」41.8%と続く。一方で、「転職をするつもりはない」が最も多かったのは「公務」の 72.2%であり、唯一 7 割以上となった(図 43)。転職意向が高い「情報通信業」「医療、福祉」は、どちらも「給与が相場より低いと思う」の割合が 45%以上となっており、現在の給与に対する不満が転職への意向につながっていると考えられる。

・ 自身の市場価値に対する認識と転職に対する意向や行動に関係性があるかを調べたところ、「給与が相場に見合っているかわからない」と回答した雇用者で転職意向がある割合(「転職をしたいと考えており、現在転職活動をしている」と「いずれ転職をしたいと思っている」の計)が26.0%であるのに対し、「相場より低いと思う」雇用者の 50.6%、「相場に見合っていると思う」雇用者の 36.6%に転職意向があった(図 45)。自身の市場価値を把握することで、転職に対する意向が生じる可能性がある。

5.働き方の変化:テレワーク実施率は過去最低を更新、20 代・30 代の実施率が大幅減(図 46~54)

・ テレワークの実施率は 16.2%と 2022 年 1 月調査の 18.5%を下回り過去最低を更新(図 47)。

・ 従業員規模別にみると、101~1,000 名の勤め先は前回 4 月調査の 25.3%から 17.6%に、1,001 名以上は 33.7%から 27.9%に減少、100 名以下は 11.1%から 10.4%へと微減し、いずれの従業員規模でも過去最低の実施率を記録(図 48)。これまで、テレワーク実施率は中・大企業が牽引してきたが、今回はいずれの規模においてもテレワークの退潮が明らかになった。

・ 年代別では、20 代で 12.0%、30 代で 15.5%と、ともに前回 4 月調査から低下。20 代の実施率は全調査回・全年代を通じて最低水準、30 代はそれに次ぐ低さとなっている。一方で、40 代以上の実施率は 17.4%で、前回と大きな変化は見られなかった。(図 49)。

・ テレワーカーで週のうち 3 日以上出勤する者は、前回の 52.7%から 50.5%に微減(図 50)。

・ 自宅での勤務の満足度について、「満足している」「どちらかと言えば満足している」の計は、前回 4 月調査で過去最多の 84.4%を記録したものの、今回は 75.0%に減少(図 52)。

https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/10th_workers_pressreleas.pdf

 

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休職復職Q&Aシリーズ①

2022年07月25日 | 情報

久しぶりに、休職復職Q&Aシリーズです。参考にしてください。
企業のメンタルヘルス対策で、最も多い課題、問題は休職復職関連の問題であると考えています。

Q;卸売業で人事課長をしています。うつ病で休職中の従業員が、主治医の復職可の診断書を持って復職を申請してきました。
しかし、診断書を精査していた産業医が、体調が回復していないことを理由に復職に反対しました。
会社としては、主治医の診断書もありますので復職を認めてもよいと考えていますが、助言をお願いします。

A;嘱託の産業医は、専属の産業医に比べて、どうしても会社の方針、人事労務管理の考え方等に理解がたりません。
また、会社側の産業医への情報提供が不十分であることや説明不足も否めないでしょう。

一方で、会社側として、復職申請した従業員の主治医が、復職を可とする診断書を認めたから復職を認めた、
という結論にも問題があるでしょう。
原則として、主治医は患者ファーストですから、患者から求められれば復職を可とする「診断書」を認める場合もあります。
さらに「残業はダメ」「出張は、当分認めない」「元の職場には戻さない」等、患者の言いなりと疑われるような
ただし書きを記す主治医もいます。

本来であれば、休職復職規程について会社としての対応方針と諸規程が整っていれば、
産業医も会社の方針に沿って検討・判断することができますが、
どうも御社にはそのような規程・考え方がないようですので、取りあえずの対処方法を説明します。

・会社側は会社の方針、人事労務管理の考え方を産業医に説明し、理解を得ます。
併せて、当該従業員の職務歴、職務内容、健康診断結果、ストレスチェックの結果、及び直属上司の意見等を共有します。

・診断書に付記事項があれば、産業医から当該主治医に質問状を提出してもらい、経緯や主治医の考え方を確認します。

・産業医、及び人事労務部門の担当者は、復職希望者を出社させ(多くの課題がありますが)、それぞれに面談します。
産業医は、会社から得た情報や、主治医の診断書をもとに、復職希望者の回復状況を精査します。

・また、人事労務部門の担当者は、まず病状の回復を労い、復職申請以後の諸手続きについて説明するとともに、
復職の意欲について確認を進めます。

・産業医、産業保健の専門職(保健師、看護師等)、衛生管理者を含む人事労務部門が集まり、現状を認識・分析し対応策を検討します。

・当該会議体の意見一致により、復職を認めるかどうかの結論を得ます。

・復職を認める場合は、復職先(原則として元職、後任人事を発令している等で元職に戻せない場合は、
異動先とその理由)、時間外労働を当分認めない等の労働条件を検討し、発令します。

・復職を認めない場合は、その理由と復職を認める条件を検討の上、当該従業員に伝えます。
併せて、会社(産業医の意見書を添付)から、当該従業員の主治医にも伝え、了承を得ます。

・会社側は、あらためて、主治医に対して会社側が復職を認める条件を提示し、理解を得ます。

・当該従業員に対しては、会社側が復職を認めない理由を説明し、早期に復職できるよう会社側も支援する旨、伝えます。

・ここで、最も重要な検討課題は復職希望者の残りの休職期間関連ですが、これから先は別稿に譲ります。

 

 

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精神不調、時計型機器や遠隔診療で把握

2022年07月22日 | 情報

精神不調、時計型機器や遠隔診療で把握 コロナで普及
2022年7月17日 日経

新型コロナウイルス感染症による行動制限で、気持ちがふさぐなど精神面の不調を訴えた人は多い。コロナが下火になっても影響は残る。腕などに身につけ心拍などを手軽に測れるウエアラブル機器で症状をとらえ、オンライン診療なども使って治療する手法に期待が集まる。

「2カ月先の新患受付が瞬く間に埋まってしまう」。心療内科・精神科を専門とする、きたなら駅上ほっとクリニック(船橋市)の松本悠院長はコロナ禍初期に患者の多さを実感した。特に2020~21年に学生や新社会人の抑うつ症状や不安、パニック発作が目立った。

多くの患者に共通するのが睡眠リズムの乱れだ。診察の際には、よく眠れているか聞くが、そもそも本人も寝ている間のことは正確にわからない。「睡眠の状態は多くの場合、ブラックボックスに近い。患者さんの話は前の晩など直前のことに左右されがちでもある」(同院長)。不十分な情報をもとに治療方針を考えなくてはならない。

そこで、21年から腕時計のように身につけて脈拍、活動量、睡眠の状態を測定できるウエアラブル機器を患者に使ってもらう試みを始めた。データはスタートアップのテックドクター(東京・港)に送られ、解析されて表やグラフに整理される。医師は患者のスマホに表示された結果を見ながら診察する。

「寝ても熟睡感が得られず困っている」。こう訴えて受診に来た30代の男性患者に対し松本院長は、眠っている時に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群を疑って検査したが、該当しなかった。ウエアラブル機器を付けてもらったところ、睡眠の乱れを検出した。仕事関連のストレスなどが原因とみられた。

仕事量の調整や生活リズム改善のアドバイス、心理療法などの治療で睡眠リズムは徐々に改善し、通院もいったん停止した。ところが、数カ月後にテックドクターからデータに変化が表れたと連絡があった。まもなく患者は不調を訴え、治療を受けた。データが症状の再発や悪化の兆しを早めに把握し、タイミングのよい治療をするのに役立つことがわかった。

精神科では今後、オンライン診療の活用にも期待がかかる。順天堂医院は積極的に利用を始めた。感染対策上、外出を控えたい人や、病院近くで勤務していたがテレワークが多くなり通院しづらくなった人、他人と会うのが怖い社交不安症の患者などが対象だ。海外ではコロナ禍の前から普及し、特に米国の大学病院の精神科などでは100%オンラインのところも多い。

「画像から患者さんの様子はだいたいわかる」と加藤忠史・順天堂大学医学部主任教授は話す。ただ、視線が合わない、あるいは話の微妙なニュアンスや表情の変化が伝わりにくいなどの課題はあるという。初診は対面で、オンライン診療中も3回に1回は対面受診としている。

規制上の問題もある。政府はコロナ対応でオンライン診療の規制を緩め、診療報酬を引き上げたが、精神科は例外扱いだ。オンライン診療の「医学管理料」から「精神医療に関するもの」を除外した。厚生労働省保険局医療課は「科学的なエビデンスがそろっておらず、学会にも慎重意見がある」と理由を説明する。「これではオンライン診療は事実上の持ち出しになる」(加藤主任教授)

慶応大学医学部の岸本泰士郎特任教授らは、日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトとして、対面のみとオンライン併用時の治療効果を比較検証する試験を実施中だ。抑うつ障害群、不安症群、強迫症および関連症候群の計200人の患者が参加し、半年かけて調べる。22年度内に結果がまとまる。

これらのデータでオンライン診療の効果を示せれば、中央社会保険医療協議会の議論を経て、24年度から診療報酬が認められる可能性がある。

順天堂大はさらに先を行く研究も計画する。日本アイ・ビー・エムと共同で、メタバース(仮想空間)でメンタルヘルスの診療ができないか探る。診療中、心拍、唾液量などはウエアラブル機器などで測る。メタバースで患者の苦手場面などをつくり、自律神経の反応を客観的に評価するといった利用法が考えられるという。

新型コロナはオミクロン型が拡大しているが、経済・社会活動をできるだけコロナ前に戻そうという流れは変わらない見通しだ。テレワークやオンライン授業が長期化したため、多くの人がいる場面に溶け込めず「コロナ・ロス」とも言える適応障害に悩む人が出てくると懸念する声も専門家の間にはある。外出を無理強いするより、オンラインやセンサーを上手に使い、誰もが抵抗なく治療を受けられるようにすることが大切だ。

 

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