中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「石綿肺で自殺」は労災

2012年09月28日 | 情報
石綿肺でうつ病をり患し、自殺したのは、労災であると認定されました。
ポイントは、裁判所が判断指針を拡大して解釈していることにあります。

労災:「石綿肺で自殺」認定…岡山地裁、初の司法判断
毎日新聞 2012年09月26日 
 職場で吸ったアスベストで石綿肺を発症した男性(当時60歳代)が自殺したのは、
闘病苦が原因であり労災にあたるとして中国地方在住の妻が、
労働基準監督署による労災不認定処分の取り消しを求めた訴訟の判決が26日、岡山地裁であった。
古田孝夫裁判長は「10年以上にわたる症状悪化や石綿疾患による同僚らの死で心理的ストレスが過重だった」と
業務と自殺との因果関係を認め、処分取り消しを命じた。石綿疾患の患者の自殺が労災認定された事例はあるが、
司法判断による認定は初めて。

 判決などによると、男性は1961〜70年、石綿吹き付け施工会社に勤務し、大量の石綿にさらされた。
87年に石綿肺と診断され、02年6月に合併症を併発し労災認定され、10月にうつ病と診断された。
さらに07年1月には石綿肺の最重症と診断され、5月に自殺した。

 労基署が判断指針に基づき、精神障害発症前6カ月間に、
石綿肺の重症化などの変化がないことを重視して不認定としたのに対し、
古田裁判長は「次第に悪化する石綿肺の病状や死への恐怖を考慮すれば、短期間での顕著な重症化がないからといって、
心理的ストレスの強度を否定できない」と処分を取り消した。

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全国労働衛生週間

2012年09月27日 | 情報
10月1日より全国労働衛生週間がスタートします。
「心とからだの健康チェック みんなで進める健康管理」とスローガンにもあるように
今年度も「メンタルヘルス対策」に重点が置かれています。
今や、メンタルヘルス対策は、最重要の経営課題です。

以下、厚労省のHPより転載です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002ghpr.html

平成24年度全国労働衛生週間実施要綱

1.趣旨
全国労働衛生週間は、昭和25年の第1回実施以来、今年で第63回を迎える。
この間、全国労働衛生週間は、国民の労働衛生に関する意識を高揚させ、
事業場における自主的労働衛生管理活動を通じた労働者の健康確保に大きな役割を果たしてきたところである。

我が国における業務上疾病の被災者は長期的には減少してきたものの近年は横ばいとなっており、
昨年は7,779人と前年と比べ4%減少した。一方、一般定期健康診断の結果何らかの所見を有する労働者の割合が
平成23年は52.7%とやや上昇したほか、印刷業での胆管がんの発生が問題となるなど職場での健康リスクは依然として存在している。

また、我が国の自殺者3万人超のうち約2,700人が勤務問題を原因・動機の一つとしていること、
メンタルヘルス上の理由により休業又は退職する労働者が少なからずいること、
精神障害等による労災認定件数が高い水準で推移していること等から、
職場におけるメンタルヘルス対策の取組みが重要な課題となっている。

第11次労働災害防止計画は今年が最終年となることから、以上の状況を踏まえ、
その目標達成に向けて、事業者等が労働者の健康障害の防止、健康診断の結果に基づく措置の実施の促進等に着実に取り組み、
健康を確保する必要がある。また、事業者や管理監督者、産業保健スタッフ等によるメンタルヘルスケアの積極的推進により、
労働者がメンタルヘルスに関する措置を受けられる職場を実現することが求められている。

さらに、労働者の健康確保と快適な職場環境の形成を図る観点から、受動喫煙のない職場の実現を図ることが重要である。
このような観点から、今年度は、
「心とからだの健康チェック みんなで進める健康管理」
をスローガンとして全国労働衛生週間を展開し、事業場における労働衛生意識の高揚を図るとともに、
自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図ることとする。

2.スロ-ガン
「心とからだの健康チェック みんなで進める健康管理」

3.期 間
10月1日から10月7日までとする。
なお、全国労働衛生週間の実効を上げるため、9月1日から9月30日までを準備期間とする。

4.主唱者
厚生労働省、中央労働災害防止協会


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一次予防、って何ですか

2012年09月26日 | 情報
「一次予防、って、何ですか?」との質問がありました。

一次予防から三次予防まであります。これは、予防医学の基本です。
一次予防:MH不調者の発生予防対策
二次予防:MH不調者の早期発見と適切な治療
三次予防:MH不調者の復職支援対策と再発防止対策

以下にhttp://www.ikyo.jp/useful/081112prevention.htmlより転載しました。

医学の中で、病気になったら治すという「治療医学」に対して、病気にならないように予防する「予防医学」があります。
一次予防、二次予防、三次予防は、「予防医学」から出てきている言葉です。
「予防医学」では、病気を予防するだけでなく、より広い意味で、
疾病予防、障害予防、寿命の延長、身体的・精神的健康の増進を目的としています。
病気を未然に防ぐだけではなく、病気の進展を遅らせること、再発を防止することも予防であるとされています。
それに基づいて分類されている、一次予防、二次予防、三次予防は、次の通りです。

第一次予防 健康増進
疾病予防
特殊予防

生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育による健康増進を図り、予防接種による疾病の発生予防、
事故防止による傷害の発生を予防すること

第二次予防 早期発見
早期対処
適切な医療と合併症対策

発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や保健指導などの対策を行ない、
疾病や傷害の重症化を予防すること

第三次予防 リハビリテーション

治療の過程において保健指導やリハビリテーション等による機能回復を図るなど、社会復帰を支援し、再発を予防すること

因みに、拙著「中小企業の『うつ病』対策」も、予防医学の基本に従って記述しています。
購入は、書店では取り寄せになります。アマゾンでは、送料無料で入手できます。
小売価格1,260円
著者:橋本社会保険労務士事務所代表 橋本幸雄
監修:精神科専門医・産業医 恵比寿メディカルクリニック院長 高岡 拓先生



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障害者雇用の助成金

2012年09月25日 | 情報
法定障害者雇用率が、平成25年4月1日より、民間企業の場合は、2.0%に引き上げられることは、
以前、当ブログにて紹介しました。
精神疾患にり患したものの、残念ながら回復せずに就業できない労働者も障害者雇用の対象になります。

そこで、障害者雇用に取り組む事業主への各種助成金について、平成24年9月1日より一部の取り扱いが変更になりましたので、
以下に概要を紹介します。

各種助成金のうち、特に、
「障害者作業施設設置等助成金(第1種)(第2種)」
「障害者福祉施設設置等助成金」
「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」
「通勤用自動車の購入助成金」「通勤用バスの購入助成金」については、
「企画競争型」の認定が採用されましたので、助成金の支給には、認定を受けなければならなくなりました。

「企画競争型」とは、
「雇用する障害者のための措置の内容等を審査・評価し、評価の高い順から予算の範囲内で認定する」制度です。
詳細は、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構のHPを参照してください。

http://www.jeed.or.jp/disability/employer/subsidy/download/sub17.pdf#search='http%20://www.jeed.or.jp/disability/employer/subsudy/downlord/sub17.pdf'
障害者雇用納付金制度に基づく助成金の申請をお考えの事業主のみなさまへ

また、助成金の利用方法については、各都道府県の高齢・障害者雇用支援センターに直接相談してください。

http://www.jeed.or.jp/jeed/location/loc01.html#06

障害者雇用率制度とは・・・
「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、事業主に対して、
その雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるよう義務づけています
(精神障害者については雇用義務はありませんが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます)。
この法律では、法定雇用率は「労働者※の総数に占める身体障害者・知的障害者である労働者※の総数の割合」を基準として設定し、
少なくとも5年ごとに、この割合の推移を考慮して政令で定めるとしています。
今回の法定雇用率の変更は、同法の規定に基づくものです。 ※失業中の人も含みます。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/dl/120620_1.pdf#search='法定障害者雇用率'
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「残業」をコントロールできませんか?

2012年09月24日 | 情報
22日の日経を始めとして朝刊各紙には、残念なことに2件の過労死認定記事が掲載されました。

労災認定:昨春急死の富士通課長 上司国外脱出で過重労働(毎日)

富士通(本社・東京都港区)の海外マーケティング本部で課長を務め、11年4月末に急死した飛田野達也さん(当時42歳)について、
三田労働基準監督署が震災に伴う過労死として労災認定していたことがわかった。
震災後、外国人上司が国外脱出するなどして過重労働を強いられたといい、21日に記者会見した川人(かわひと)博弁護士は
「震災以降、働く人の健康の問題が軽視されている」と配慮を呼びかけた。
川人弁護士によると、飛田野さんの主な業務はヨーロッパやアジアなどの海外拠点のマーケティング分析。
帰宅後も自宅から会社のシステムにアクセスしていた。震災直後は社員の安否確認に追われ、
その後も震災に伴う緊急メールへの対応を任されたり、国外脱出した外国人上司2人の業務を負担したりするなどした。
節電対策のプロジェクトも担っていたという。
死亡前日から過去2カ月間の時間外労働の平均は少なく見積もっても月82時間に上り、拘束時間も月300時間に及んでいた。
震災から1カ月半後の4月29日朝、自宅で死亡しているのを妻が確認した。

ヤマト運輸社員の労災認定 長時間労働で過労死(共同)

ヤマト運輸の営業担当だった男性=当時(47)=が死亡したのは長時間労働による過労が原因として、
船橋労働基準監督署(千葉県船橋市)が労災認定していたことが21日、分かった。
代理人の弁護士によると、男性は昨年4月船橋主管支店営業企画課長に就いて以来長時間労働が恒常化し昨年8月、
くも膜下出血で死亡した。
労基署は死亡直前1カ月間の時間外労働を86時間と認定し、長時間労働と過労死の因果関係を認めた。

厚労省「脳・心臓疾患の認定基準」には、明確に
 「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、
1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、
業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること。」と謳われています。

もちろん、長時間残業しても、体力・精神力に影響を受けない社員もいます。
しかし、長時間残業は、もはや議論の余地がない(正直に言えば、議論を受け付けない、と云うほうが正しい表現かも)
労災認定の判断基準になっています。
企業・組織にとっては、長年にわたり経験を積んだ貴重な人材を失うばかりか、労災が認定されると、
その後には必ず民事損害賠償責任を追及されることになります。
「長時間残業」は、殆ど「オートマチック」に労災認定される根拠となることを肝に銘じてください。
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