中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

メンズヘルスとは

2024年08月30日 | 情報
日本メンズへルス医学会HPより

メンズヘルスとは
男性の平均寿命が女性より短いという現実は、医学や生物学の分野での重要な謎となっています。
日本は世界で最も長寿の国の一つですが、男女間の平均寿命の差は約6年あり、残念ながら世界平均と比較すると中位に留まっています。
平均寿命に加えて、男性の健康指標が女性より劣っていることも近年、多くの関心を集めています
このような状況を変え、男性の健康寿命を伸ばすためには、”メンズヘルス”への取り組みが不可欠です。
メンズヘルスは、男性特有の健康課題に焦点を当て、より健康で充実した人生を送るためのサポートを提供します。
男性の健康を改善することは、社会全体の福祉を高めることにつながり、
より長く、より豊かな人生を実現するための重要なステップです。

健康寿命の延伸と平均寿命との差の縮小が重要
平均寿命と健康寿命の差は日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味しますが、
これは、2010(平成22)年から男女とも、徐々に縮小傾向にあり、2019(令和元)年では男性8.73年、女性12.06年となっています。
図2.平均寿命と健康寿命の差(2019年)
引用元 厚生労働省 平均寿命と健康寿命 eヘルスネット(厚生労働省)

日本は1970年に「高齢化社会」に突入し、1994年には「高齢社会」、2007年には「超高齢社会」に突入しました。
2020年時点でも高齢化率21%以上の「超高齢社会」にあたり、2025年頃には団塊の世代が75歳を迎え、
4~5人に1人が後期高齢者(75歳以上)という「超・超高齢社会」に突入すると考えられています。
このように、我が国の高齢化が急速に進む中、国民一人ひとりの生活の質を維持し、社会保障制度を持続可能なものとするためには、
平均寿命の伸びを上回る健康寿命の延伸、即ち、健康寿命と平均寿命との差を縮小することが重要です。

男性特有の疾患・男性に頻度の高い疾患
女性の健康を支えるウィメンズヘルスと同様に、
男性特有の疾患や男性に多い健康問題に焦点を当てる男性専門の医療として「メンズヘルス」が国際的に注目を集めています。
メンズヘルスは、男性固有の健康問題の治療だけでなく、女性に比べて不利な臨床成果を示す疾患の啓蒙活動も行います。
また、喫煙、薬物依存、暴力、医療機関の利用が少ないといった、健康リスクを高める男性のライフスタイルの改善にも取り組んでいます。
男性の健康を向上させるための包括的なアプローチを提供するメンズヘルスは、男性がより健康で満足のいく生活を送るためのカギとなります。
この取り組みにより、男性は自身の健康に対してより意識的になり、全体的な福祉の向上に貢献することができます。

男性更年期障害:LOH症候群
男性も更年期障害を経験すること、ご存じでしょうか?
近年、メディアでは男性の更年期に関する話題が増え、男性の健康に対する社会的な関心が高まっています。
男性ホルモンであるテストステロンは、社会から評価を受けると分泌が増え、
逆に転職、退職や職位の変化など、日常生活に緊張感やストレスが増える環境になると分泌が減ります。
テストステロンの分泌低下は狭心症、動脈硬化、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、骨粗しょう症、うつ病、サルコペニアなどの
様々な疾患の原因と関連し、結果として寿命が短くなることが明らかになっています。
これらの症状は、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)として知られています。
LOH症候群は、性欲減退、勃起不全(ED)、朝の勃起減少など多様な症状を引き起こし、うつ病や心身症などの精神疾患との鑑別が重要です
診断にはAging males’ symptoms(AMS)スコアが国際的に使用されています。
男性の健康に新たな光を当て、これらの症状に対する理解と対応が進むことで、より良い健康管理が可能になります。

〇11月19日は、「 国際男性デー」です。
「国際男性デー」は、男性や男の子の健康に目を向け、ジェンダー平等を促す日として、1999年にカリブ海の島国トリニダード・トバゴで始まったとされています。
また、欧米では、11月は男性の健康への関心を高める月間「Movember(モーベンバー)」としても知られています。

(参考)


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<社説>過労死防止対策 命を犠牲にせぬ職場に

2024年08月29日 | 情報
素晴らしい社説なんですが、とても第三者的な、醒めた文章との印象です。
それが社説の宿命かもしれませんが、言論機関のみなさんには、
自社内の現実に目を向けていただき、「なぜ」を掘り下げていただきたいと考えています。

<社説>過労死防止対策 命を犠牲にせぬ職場に
2024年8月17日 東京

過労死や過労自殺を防ぐための対策をまとめた政府の「過労死防止大綱」が改定された。
残業の上限規制が今年4月、それまで対象外だった運輸、建設、医療分野にも適用されたことを踏まえ、
順守徹底に向けて企業への指導を強化することなどが明記された。
過労死などを防ぐための国や自治体の責務を定めた過労死等防止対策推進法の制定から今年で10年がたつが、労災認定事案は減っていない。
誰もが健康で働き続けられるよう、過労死をなくすための取り組みを強化せねばならない。
過重労働対策として2019年に改正労働基準法が施行され、時間外労働の上限が規制された。
電通の女性社員が過労自死したことを受け、長時間労働是正の必要性が高まったことが背景にあった。
この法改正で週労働時間が60時間以上の労働者は減少し、年次有給休暇の取得率は22年に6割を超えた。
「残業しない、させない」機運は高まっていると言える。
ただ、23年度の過重労働関係の労災認定件数は前年度から約2割増の1099件。
うつなど精神障害の認定が883件と約8割を占め、5年前から倍増の勢いだ。
人口減に伴う人手不足で業務量が増え、過重労働となる懸念が高まっている。
フリーランスや副業など働き方も多様化しており、企業にはよりきめ細かい労働時間管理が必要となる。
職場の上司や同僚によるハラスメント被害も深刻で、接客業では顧客からのカスタマーハラスメントも問題化している。
ストレスから体調を崩す人も少なくなく、ハラスメントの防止・解決対策の必要性も高まっている。
企業はハラスメント防止と合わせ、労働者のメンタルヘルス(心の健康)対策にも取り組まねばならない。
新しい大綱には、11月に施行されるフリーランス法の周知、ハラスメント防止やメンタルヘルス対策で企業を支援することなども盛り込まれた。
政府には、従来の対策を検証し、効果的な対策を講じるよう求めたい。
労働組合の役割も重要だ。組合員には労働者を守る労働関係法の周知を積極的に進めてほしい。
労働時間が過少に申告されていないかなど、適切な労働環境で働いているか注視する責務もある。
健康や暮らしを犠牲にしてまで働かなければならない職場は、一掃しなければならない。
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毎日新聞の社説です。

2024年08月28日 | 情報
毎日新聞の社説です。当社説の執筆者は、小職のブログの愛読者ではないかと思うくらい、言説が似ています。
小職の思い上がりでしょうか。

過労死防止法10年 減らぬ実態直視し対策を
毎日新聞 2024/8/3

過労死等防止対策推進法が成立してから10年となった。
国や自治体の責務を定めたものだが、目的に掲げる「過労死のない社会の実現」は、なお遠い。
過重労働に起因する労災は昨年度1099件認定され、10年前と比べ5割近く増えた。
心不全や脳血管障害で58人が命を失い、自殺や自殺未遂は79人に上る。
うつ病などの精神疾患が急増し、認定の約8割に達する。それに伴い、認定者に占める女性や若年層の割合が高まっている。
遺族らが労働の過酷さを立証できないケースもあり、認定は「氷山の一角」だとの指摘もある。
働く人を取り巻く環境は大きく変化している。少子化による労働力不足で、経験が浅い従業員にも重い責任が課せられるようになった。
国際競争が厳しさを増し、企業は人員の削減を迫られている。
デジタル化も急速に進んだ。単純作業が減る一方で、業務範囲が広がり、効率の向上が要求される。
パソコンがあればどこでも仕事ができるようになり、労働と休息の切り替えも難しくなった。
職場の上司・同僚や顧客によるハラスメントの被害も深刻だ。ストレスから体調を崩す人もいる。
従業員を守る立場の労働組合は十分な役割を果たせていない。組織率は10%台半ばまで低下し、労組がない職場も多い。
「命より大切な仕事はない、と言い続けてきた。
それなのに働き手は追い詰められ、孤立を深めている」。
28年前に夫を過労自殺で亡くした「全国過労死を考える家族の会」代表世話人の寺西笑子(えみこ)さんは、10年をそう振り返る。
残業時間に法定上限を設けた働き方改革関連法やパワハラ防止法の制定、企業のストレスチェック実施義務化など、国も対策を講じてきた。
だが、思うような成果は出ていない。働き手の健康を第一に考えた取り組みが求められる。
週休3日制や、一定の休息時間を確保して連続労働を回避する「勤務間インターバル」を導入した企業もある。
長時間労働を是正しなければ時代から取り残される。
「KAROSHI」が国際語になって30年以上がたつ。
しかし、生活を犠牲にしてまで仕事をするような風土は根強く残る。
社会全体で働き方を見直す必要がある。
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労災ではないと

2024年08月27日 | 情報
労災認定されていますが、会社側は争う姿勢です。
当該企業は大企業ですから、裁判に耐えられるでしょうが、中小規模の企業では無理でしょう。
中小規模の企業としては、労災認定を受け入れて、裁判に必要な費用、労力、時間を業務、経営の改善に振り向けるべきと考えます。
当ブログのタイトルです。
中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない」

会社側は、労災認定されているものの、労災ではないという主張。
川崎重工業社員自殺訴訟 遺族「会社が対応していれば防げた」
 裁判は結審 次回判決 川重側は争う姿勢
2024.08.07 サンテレビ

川崎重工業の男性社員が赴任先の中国で自殺したのは過労が原因だったとして、
遺族が会社に損害賠償を求めている裁判で、男性の妻が2024年8月7日「夫のSOSに会社が対応してくれていたら防げた」と思いを述べました。
裁判は結審し次回判決が言い渡されます。
訴えによりますと、川崎重工業に勤めていた男性社員(当時35)は2013年に中国の関連会社に出向し、
3カ月後に現地のマンションから転落して死亡しました。
男性の妻と娘2人は会社が安全配慮義務を怠った結果、業務量が増え、うつ病を発症して自殺したなどとして、
会社に対し、約1億円の損害賠償を求めています。
男性は労災認定されていますが、
川崎重工業側は、男性が転落したのは直前に酒や薬を大量に飲んでいたことなどが原因として、争う姿勢を示しています。
男性の妻は2024年8月7日の裁判で
「夫のSOSを会社が受け止め、すぐに対応してくれていたら防げた」「川重の夫の命を軽んじる姿勢には憤りを感じる」
「会社にとっては3万人以上いる社員の1人かもしれないが、私にとっては1人しかいない夫であり、父である」などと述べて、
改めて会社の責任を問いました。
裁判は8月7日で結審し、次回判決が言い渡されます。

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約3割が抑うつ状態を合併する

2024年08月26日 | 情報
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)患者の 約3割が抑うつ状態を合併する
2024年7月31日 滋賀医科大学HP

滋賀医科大学医学部医学科第5学年の宮口凜、精神医学講座の研究グループが、
レストレスレッグス症候群(または むずむず脚症候群, Restless legs syndrome、以下RLS)における抑うつ状態の合併率に関する系統的レビューを報告しました。 
本研究では、2,039人の患者(男性727人、35.7%、平均年齢50.8±14.8歳)を含む24件の研究を分析し、
RLS患者の約30%で抑うつ状態を合併することが示されました。 
RLSにおける抑うつ状態の有病率に関する系統的レビューは、世界初の試みです。
本研究成果をまとめた論文は、睡眠医学に関する医学雑誌である Sleep Medicine Reviews (ジャーナルインパクトファクター 11.2) に掲載され、
2024年7月18日に公開されました。(https://doi.org/10.1016/j.sm rv.2024.101975)   

要点
・レストレスレッグス症候群(RLS)は、睡眠が障害される点で苦痛が大きく、
また神経系の異常を共有する点で、近年、うつ病との関係が注目されているが、RLS患者における抑うつ状態の合併率については明らかにされていなかった。 
・RLS患者における抑うつ状態の合併率に関する系統的レビュー及びメタ分析は、世界初の試みである。 
・RLS患者ではうつ病または抑うつ状態の有病率は約30%と高いことが本研究によって示された。
・レストレスレッグス症候群は有病率の高い疾患であり、抑うつ状態を合併する患者も多いことが示された。
エビデンスレベルの高い手法で、レストレスレッグス症候群の潜在的な治療ニーズを明らかにした点で、インパクトがある。

※レストレスレッグス症候群(RLS)とは
 助教 増田 史  客員助教 角 幸頼 
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)は、主に下肢の不快感と、動かしたくなる衝動を特徴とする疾患です。 
レストレスレッグス症候群は、小児から高齢者まで幅広く見られる疾患であり、
全世界で有病率は7%とされ、女性は男性より2倍多く発症すると言われています。
下肢の不快感は夕方から夜にかけて悪化する傾向があり、睡眠が妨げられる患者が多くいます。
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