中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

リカバリー全国フォーラム2012

2012年08月31日 | 情報
リカバリー全国フォーラム2012  ~これから10年のビジョン;精神保健福祉医療領域の社会運動とリカバリーフォーラムの役割~が、
8月24日(金)・25日(土)の2日間にわたり、東京で開催されました。

今年で4回目を迎えるリカバリー全国フォーラムは、毎回1,000人を超える参加者を集めていますが、
今年も1,000人を超える参加者を集めて、「日本の精神保健福祉サービスを”当事者中心”に変革するために」を
メインテーマに開催されました。
当事者活動や家族支援、根拠に基づく実践プログラム(EBP)、アンチスティグマ、
そしてリカバリーフォーラムの「これから10年」について議論されました。
回を重ねる中で、当事者・家族・精神保健福祉関係者・市民など職種・所属を超えた仲間が全国から集い、
活発な議論を行う場として定着しているようです。

なお、このフォーラムの様子は、NHKニュース(8月26日朝7時)でも紹介されました。

以下、フォーラムの詳細です。
主催:   特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構(コンボ)
       財団法人精神・神経科学振興財団
会場:   帝京平成大学(池袋キャンパス)
プログラム:                   
・前夜祭:本邦初公開! イタリアのテレビ放映で大ヒットドラマの上映会
  「昔あるところに「精神病院Mattoの町」がありました」
・トークライブ:新しい自分の発見~1枚の写真が何かを変える~
  「こころの元気+」表紙モデルの皆さん
・記念講演:「アメリカにおけるピア活動~その発展と将来への可能性」
  講師:マシュー・フェデュリーチ(コープランドセンター事務局長/全米ピアスペシャリスト協会理事)
・シンポジウム:
  シンポジスト:磯田重行(福岡・地域活動支援センターぷらっと)、岡田久実子(さいたま市もくせい家族会)、
伊藤順一郎(国立精神・神経医療研究センター)、高橋清久(精神・神経科学振興財団)、大島巌(日本社会事業大学)、他
  司会:後藤雅博(新潟・南浜病院)、宇田川健(NPO法人コンボ)
・分科会:全22分科会
  私のリカバリー宣言、アンチスティグマとリカバリー、WRAP、ピアサポート、デイケアにおけるリカバリー、
看護とリカバリー、仕事とリカバリー、権利擁護とリカバリー、家族とリカバリー、精神保健医療福祉システムとリカバリー、
ストレングスモデルによるケースマネジメント、ピア活動により切り開く新たな地域移行、ACT、IPS・就労移行支援、
IMR、地域における家族支援、家族 による家族学習会、被災地支援、他
・情報交換/交歓会
・クロージングセッション

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男(おとこ)は敷居を跨(また)げば七人の敵がある

2012年08月30日 | 情報
これは、江戸時代(たぶん)からあることわざで、
「男は社会に出て活動するようになると、多くの敵と出会うということのたとえ。」という意味です。
昔は、外へ出て働くのは、主に男の役割でしたから、「男」と特定していますが、
平成の時代では、「ひと」と置き換えて解釈すべきでしょうか。

筆者が、日常的に使用する慣用句「不条理で暴力的」な社会構造は、今に始まったわけではなく、
少なくとも江戸時代においても、このように一般的な認識になっていたのですね。
「ひと」は、この世に生を受けて、「いじめ」を耐え抜いて成長し、
「不条理で暴力的」な社会を生き抜いていかなければならない宿命にあるのです。

ですから、いじめのない、みんな仲良く暮らしていけるような社会の到来を望んでも無理な話です。
「人が3人集まれば派閥ができる」ということわざがあるくらいです。
「いじめ」はなくならない、という視点から議論を進めるべきでしょう。

ここでは、遡って学校教育を論じても致し方がありませんので、新入社員教育についての基本的考え方を述べます。
まず、新入社員を高等教育を受けた、一成人としてみなすことを止めるべきです。
昔風に言えば、採用後は「読み書きそろばん」から始め、合わせて人間教育を「一から」しなければなりません。
いわゆる「若年性うつ」が、「うつ」か否かを議論しても、企業の実務には関係のないことです。
教育期間中に「これはダメだ」と思えば、その企業にふさわしくない人材は辞めていくでしょう。
新入社員教育がしっかりできていれば、配属先の管理職、同僚社員も安心して受け入れることができます。
配属先に、イロハの教育を委ねるようなことは本末転倒でしょう。
新入社員の採用・教育に携わる、人事労務部門の役割は重要性を増しており、企業の存亡権を握っているといっても
過言ではないでしょう。
プロ野球に例えていえば、資金が豊富なジャイアンツが強いのは当たり前、資金のないカープが
頑張っているのは、なぜなのでしょうかね。スカウトが優秀で将来性のある人材を集めている、
コーチが優秀だから、育成力がある、いろいろと考えられますね。

それから、「インターンシップ」制度の導入を検討してはいかがでしょう。
日本の労働環境は、海外先進国と比べ、いったん採用してしまうと簡単には解雇できない法制度になっています。
企業が望む人材を確保するには、採用時にさまざまな工夫をしなければなりません。
これから先は、専門分野を離れますので、実施に当たっては、経団連の倫理憲章等を参照してください。
http://www.keidanren.or.jp/policy/2011/001.html
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「物より心」過去最高64%

2012年08月29日 | 情報

内閣府は25日、「国民生活に関する世論調査」の結果を発表しました。

(読売新聞12.8.26朝刊より転載)
「精神の世紀」と「物の豊かさ」のどちらを重視するかという質問では、「心の豊かさ」が、64.0%に上り、過去最高となった。
「物の豊かさ」は、30.1%だった。20歳代~70歳以上のすべての年代で「心の豊かさ」が「物の豊かさ」を上回り、
年代を問わず心の豊かさを重視する傾向が見られた。
充実感を感じる時(複数回答)では、「家族だんらん」が51.3%で過去最高となった。
今後の生活の力点(複数回答)は、「レジャーや余暇」が37.7%と最多だった。
内閣府は「東日本大震災の後、家族や友人とのつながりや時間を大切にする傾向が強まっている」と分析している。
一方、日常生活で悩みや不安を感じる人は、69.1%に上った。
悩みや不安の原因(複数回答)は「老後の生活設計」(55.3%)が10年連続でトップだった。
調査は今年6~7月に全国の20歳以上の男女1万人を対象に実施した。回収率は63.5%。原則、毎年行われている。

高名な文明学者の分析を引用しますと、人類社会は、有史以来、世界的な規模で「精神の世紀」と「物質の世紀」が繰り返されており、
20世紀を分析すると「物質の世紀」であり、21世紀は「精神の世紀」になると予測されていました。
筆者は、日本人が大震災を経験したこともあるのでしょうが、世論調査の上では、日本が、
このようなかたちで「精神の世紀」になるとは、想像していませんでした。
しかし、21世紀はまだスタートしたばかりですから、温暖化や人口爆発などの影響も考えられますので、
今後どうなるかは判然としませんが、結果として「心の豊かさ」が重視されるようになることは、
よい傾向であると素直に喜んでいます。

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うつは、うつる

2012年08月28日 | 情報
精神疾患の問題で、不謹慎な語呂合わせをして申し訳ありません。
しかも、「うつは、うつる」は、精神医学的に正しいことではありません。

しかし、「うつは、うつる」と言っても、あながち見当違いではないと考えています。
たとえば、うつ病をり患した部下から上司へ、女性に多いうつ病をり患した友人に同情して、
うつ病をり患したご主人の看護疲れとも相まって奥さんがり患する、というような事例を聞いています。

「アエラ」誌の'12.8.27号にも、「新型うつ社員でうつになる」というタイトルのもとに、
同様な事例が紹介されています。

ほっとしたのもつかの間だった。「課長、Aさんが軽度のうつだと診断されたそうです」
従業員数千人のメーカーで人事一筋20年の男性課長は、耳を疑った。
うつ病社員の退職が決まった翌週のことだった。それにかかわった人事担当の若手社員のAが、
よりによってうつになるなんて…。
この春入社した有名大学卒の新入社員が、研修中から「同期とうまくいかない」と休み始めた。
付箋を同じ位置に平行に貼らないと気が済まない几帳面さの一方で、学生時代から同級生と
うまくコミュニケーションできなかったことなどが、後になってわかった。
「みんなと雑談ができない」と落ち込み、自殺願望を口にするようになった。
最終的には退職したが、それまでこの社員に対応していたのがAさんだった。電話口で「死にたい」と
言われれば、アパートまで駆けつけた。その回数は片手では足らないほどだ。
残業中に電話がくれば、仕事の手を止めて話を聴いた。
「今度は俺が代わりに行こうか」男性課長が助け船を出しても、Aさんは首を横に振った。
「初対面の課長が行くと、あの子緊張しちゃって、かえって状況は悪くなると思います」
そう言われると、任せるしかなかった。
通常ならば配属先の上司らも対応するので、ケアする側の負担は分散されるが、このケースは
まだ配属先も決まっていない研修中の新入社員。人事が介入する度合いが高くなった。
結局、新入社員の退職直後から、Aさんは3週間ほど休んだ。「あのときはかなり慌てました。
でも、Aが心のバランスを崩すのも無理はない。とにかく仕事がハードですから。」
他の部署に勤務時間を早く切り上げるように言いながら、人事担当者の残業時間は増えるばかり。
給与や保険関連、社員研修、定期異動など、人事担当者の職務は多岐にわたる。本来やるべき
人事の仕事は山積みなのに、最近は社員のメンタルヘルスケアに奔走する。(以下省略)

事例として納得性が高いので、紹介しました。
職務に熱心な社員ほど、危険性が高まる傾向にあります。しかし、管理職の関心は、往々にしてまじめな社員、
業績の良い社員には、目がいかないものです。部下の健康を管理する管理職の役割はますます重要です。

なお、当記事を参照される方に、注意です。
本文中に、「最近はうつ病と書かれた診断書を社員が提出しても、『自社の産業医がうつ病と診断しない限りは
認めない」といった企業もあるという。」表現があります。
これは、危険です。
産業医が精神科専門医であればよいのですが、産業医のなかには外科医等もおり、ほとんどの産業医は、
精神科専門医ではありません。産業医も判断を誤る場合もあります。産業医の判断に100%従うのも配慮が必要です。
一方で、主治医の診断書は重く受け止めなければなりません。

それでは、どうすればよいのか?
詳しくは、橋本社会保険労務士事務所までお尋ねください。
企業の個別の課題・問題点の相談に応じています。



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福島原発の東電社員 差別、中傷、心の傷3倍

2012年08月27日 | 情報
重大事故は、社員をはじめとする関係者の「こころ」に重大な影響を与えるとともに、
事故を起こした企業は重大な経営危機に直面することになります。
中小零細企業には、国からの支援はありません。自らの知恵と努力で解決しなければなりません。

埼玉新聞 8月15日(水)15時21分配信

 東京電力福島第1原子力発電所の事故当時、同第1、第2原発に配属されていた東電社員に対する差別や中傷が
心の健康に多大な影響を及ぼしていることが14日、防衛医科大学校(所沢市)と愛媛大学大学院の研究グループの調査で分かった。
差別、中傷を受けていない社員と比べると、心理的苦悩や心的外傷後ストレス反応(PTSR)を生じる割合は2~3倍に上る。
研究グループは「社会的支援をすることが心理的苦悩の軽減につながる」としている。
 防衛医大の野村総一郎教授と重村淳講師、愛媛大大学院の谷川武教授の公衆衛生・健康科学分野の研究グループが、
事故当時に福島第1原発、第2原発所属だった東電社員1495人(第1原発=885人、第2原発=610人)を対象に、
震災2~3カ月後に心の健康に関する初の調査を実施。調査結果を米国医師会雑誌「JAMA」の8月15日号に発表した。

 調査結果によると、第1、第2原発の社員は
(1)業務上のストレス(爆発事故、津波からの避難など)
(2)悲嘆体験(身内、同僚の死亡など)
(3)被災者としてのストレス(財産喪失、避難生活など)
(4)差別・中傷によるストレス-を複合的に体験。その割合は第2の社員よりも第1の社員が高い傾向を示している。
また第1の社員は第2の社員と比べ、
(1)心理的苦悩(第1・412人=46・6%、第2・226人=37・0%)
(2)PTSR(第1・261人=29・5%、第2・117人=19・2%)の割合が高い。

東電社員であることによる差別や中傷を受けた社員は受けていない社員に比べ、心理的苦悩やPTSRを生じる割合が2~3倍も高い。
研究グループの聞き書きによると、事故翌日から東電の制服を着ているだけで中傷されることもあった。
借りようとしたアパートの契約を断られたり、契約できても「東電社員は出て行け」とドアに張り紙をされたり、
子どもがいじめに遭ったりしたという。
 事故の復旧作業に従事する人は業務を通じ被ばくするなどの被害を受けるため、一般被災者以上に心の影響を受けやすいとされる。
チェルノブイリ事故の復旧作業では、作業員にさまざまな心の変化が高率で生じたことが報告されているが、
研究グループは「差別や中傷が災害後の復旧業務従事者の心の健康に影響することを示したのは、今回の研究が初めて」と強調。
同様の現象はベトナム戦争から帰還した米軍兵でも認められ、戦場体験に加え、社会からの拒絶、
支援の乏しさが精神的な問題につながったという。
研究グループは「復旧業務に当たる者に社会的支援をすることが心理的苦悩の軽減につながる」と指摘。
現場が命懸けの作業をしていることを社会が認識し、「敬意とねぎらい」を送り続けることが望ましいとしている。


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