中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

質問に回答します②

2018年08月31日 | 情報

以下、入門編のQ&Aです。

Q:メンタルヘルス不調になる従業員、また、それによる休職者を、未然に防ぐ方法はあるのでしょうか? 
さらに企業は何をすればよいのでしょうか?

A:まず、「未然に防ぐ方法」について、回答します。医学には、「予防医学」という領域があります。
疾病の予防を目的とするだけではなく、傷害防止、寿命の延長、身体的・精神的健康をも目的とする学問のことをいいます。
その「予防医学」には、一次予防、二次予防、三次予防とがありますが、予防医学はその目的から、
第一次予防の健康増進、疾病予防または特殊予防、第二次予防の早期発見・早期措置、適切な医療と合併症対策、
三次予防のリハビリテーションに区分されます。即ち、この一次予防策の実施が、ご質問の回答になります。

因みに、厚労省が策定した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(H18)において、メンタルヘルス領域での一次予防は、
1.メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供
2.職場環境等の把握と改善  としています。

さらに、厚労省は、一次予防を目的としてH28年に、安衛法第66条の10に「心理的な負担の程度を把握するための検査等」、
即ち「ストレスチェック制度」の実施が規定しました。
このストレスチェックの実施により、不調の未然防止としてのストレスへの気づき、
及び集団分析結果に基づく職場環境改善等を目指しています。

二つ目のご質問、「企業は何をすればよいのか」への回答です。
結論を申し上げれば、経営トップが、経営におけるメンタルヘルス対策の重要性を認識し、
経営トップのリーダーシップのもとにメンタルヘルス対策に取り組むことを、社内に意思表示することが第一義です。
多くの通常経営トップは、メンタルヘルス対策が企業経営に重大な影響を与えることを理解していません。
即ち、単なるリスク対策であり、メンタルヘルス対策が企業経営にどの程度貢献するのか疑問を持っています。
ですから、メンタルヘルス対策が単なるリスク対策ではなく、明日の経営に貢献する「先行投資」であることを、
先行する多くの成功事例や、厚労省・経産省等が提唱する「健康経営」政策を紹介し、
経営トップに認識させることから始めなければなりません。
担当部門が、あるいは担当者が、いくら問題提起しても、徒労に終わることは目に見えています。

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講師自殺事案で和解へ

2018年08月30日 | 情報

このような事案にたびたび言及していますが、事件の発生は2013年ですし、
公務災害にも認定されいるのですが、実に5年以上経過しての和解に、どうしようもない違和感が残りますね。

岐阜の講師自殺で和解へ 県が8千万円支払い 
中部 2018/8/22 日経

2013年5月に自殺し、公務災害と認定された岐阜県立郡上特別支援学校の男性講師(当時24)の遺族に対し、
県が約8千万円を支払い、和解する見通しとなったことが22日、関係者への取材で分かった。9月の県議会に関連議案を提出する。
男性は採用2年目だった13年5月、電話で上司から叱責された後に行方不明となり、同県関市の渓谷で遺体で発見された。
地方公務員災害補償基金岐阜県支部は17年3月、男性が職場の人間関係からうつ病を発症し、
上司の電話が強いストレスとなって自殺したとして公務災害と認定した。
関係者によると、遺族が今年2月、県に損害賠償などを求め、岐阜簡裁に調停を申し立てていた。
和解条項には和解金の支払いのほか、職場研修や労務管理の徹底も盛り込まれるとみられる。
県は1月、当時の上司ら11人を懲戒処分とするなどした。〔共同〕

支援学校講師自殺で和解へ
08月22日 NHK

5年前、岐阜県立の特別支援学校の男性講師が、上司からのパワハラや過度な労働で自殺したことを受け、
岐阜県が遺族側に8000万円余りの和解金を支払うなどし、和解が成立する見通しとなったことがわかりました。
5年前の平成25年、岐阜県郡上市の県立郡上特別支援学校の当時24歳の男性講師が自殺し、去年3月、
地方公務員災害補償基金岐阜県支部は、上司からのパワハラや過度な労働でうつ病を発症したことによる公務災害と認定しました。
遺族側は、ことし2月、県に対し損害賠償を求める調停を岐阜簡易裁判所に申し立て、
教職員の勤務についても配慮を徹底するよう求めていました。
これについて、県が、8000万円余りの和解金を支払うほか、講師が亡くなった5月に、
毎年、すべての県立学校で労働環境について考える研修会を開くことなどで、
和解が成立する見通しとなったことが関係者への取材でわかりました。
9月下旬に始まる定例県議会に、県教育委員会が必要な議案を提出するということです。
県教育委員会は「調停の具体的な内容についてはコメントできないが、
今後もご遺族と丁寧に話し合いを進めていきたい」と話しています。

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障害者雇用へ環境整備

2018年08月29日 | 情報

中小企業は、法令遵守に熱心に取組んでいます。
一方で、一般論として嘘をつく、嘘をつきとおす、ことには、企業にも、担当にも大きなストレㇲがかかるものです。
全てとは申しませんが、中小企業の現場と、各行政機関との大きなギャップに言葉を失います。

障害者雇用へ環境整備 能力引き出す工夫と待遇 千葉県内中小企業
8/23(木)  千葉日報オンライン

専用の机で商品の梱包(こんぽう)作業を行う男性(手前)=船橋市海神町南の小売業「三和商事」

国や千葉県などで「障害者雇用水増し」が相次いで発覚する一方で、県内には障害者雇用に力を入れる中小企業がある。
障害者それぞれに合った環境を整備し、能力を引き出す工夫を凝らしている。
障害者雇用促進法が4月に改正・施行され、障害者の「法定雇用率」が引き上げられた。法改正前より多くの企業が対象となった。
船橋市高瀬町の総合改修工事業「ティーエスケー」は、およそ10年前から障害者雇用に力を入れる“先進企業”。
広々としたフロアの中に机1台が置かれ、壁で仕切られている。用意された業務日報には「気分レベル」と書かれた欄に数字が並ぶ。
従業員192人の同社では、精神障害や視覚障害がある30~40代の男女5人が勤務。
総務部で名刺作りや資料の電子化、物品の管理や発注作業などを行っている。中には社会経験がなかった40代の男性も。
同社の本多俊行常務は「社員からの相談で雇用した人がほとんど」と職場の理解が進んでいると強調する。
障害者雇用で重視するのは「働きやすさ」の環境づくり。視覚障害の男性には、パソコンの画面を拡大する設備を用意。
周囲の音に敏感な発達障害の男性は、机を壁で囲って集中できるよう変えた。
ほかにも、オリジナルの業務日誌を作成。個別にフォーマットを変え、業務内容だけでなく疲労や気分などのコンディションも記入。
指導役などが毎回コメントを寄せる情報交換ツールとして活用している。
一方、雇用義務の対象ではないが、積極的に障害者を雇用する企業も。船橋市海神町南の小売業「三和商事」は従業員約20人。
5年ほど前に職場体験実習を通じ、軽度の知的障害がある男性(23)を雇用した。
男性は主に学校の歯科や耳鼻科健診に使う器具の消毒、防災備蓄商品の梱包(こんぽう)作業を行う。
漢字が苦手なため、ひらがなで一日の作業をホワイトボードに掲載。
写真で作業過程を示し、数えやすいようシートを作るなど工夫を重ねる。
倉持晃所長は「外注の作業を彼に任せるようになった。その人の特性を考えて仕事を任せる。互いに成長するチャンス」と意義を強調。
船橋市は、障害者雇用に優れた取り組みをする中小企業として、両社に市障害者雇用優良事業所表彰
「ふなばし●あったかんぱにー」を贈った。
厚労省も支援策を拡充。
4月から雇用義務に加わった精神障害者を試行的に雇用する「障害者トライアル雇用」の期間や助成金を充実させた。
ハローワークには、発達障害者の雇用をサポートする専門家を増員。
企業向けに「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催し、職場での障害者との接し方などを学べる。
千葉労働局は「職場の理解が大切。就労者だけでなく事業者に対するチーム支援、医療機関との連携などを実施したい」と
社会全体での支援が必要とした。
※●は白いハート

◇法定雇用率
障害者雇用促進法の規定により、事業主には「常時雇用している労働者数」の一定率以上の障害者を雇用する義務がある。
厚労省は4月、企業の法定雇用率を0・2%引き上げ、雇用義務に精神障害者も加わった。
障害者雇用義務の企業は従業員50人以上から、45・5人以上となり、新たに雇用義務対象となる企業も。
千葉労働局によると、2017年6月1日までの県内の雇用障害者数は9937・5人で14年連続で最多。
ただ、実雇用率は1・91%で全国平均1・97%を下回り全国ワースト3位となっている。

(参考)障害者雇用、37府県で不適切な算入…読売調査
2018年08月29日 読売

中央省庁で明らかになった障害者雇用割合の問題を受け、読売新聞が47都道府県(教育委員会、警察含む)の状況を調べたところ、
障害者手帳を確認しないなど不適切に算入していたのは37府県に上った。
このうち千葉、神奈川、石川、静岡、長崎の5県は、知事部局、教委、警察のいずれについても、
厚生労働省の指針に沿わないケースがあった。
調査は都道府県の知事部局と教委、警察それぞれの担当部署を対象に実施。28日までの回答を集計した。
3組織とも「指針に沿っている」と回答したのは東京、京都、鳥取、岡山、山口、福岡の6都府県だった。
20政令市(教委含む)にも同様の調査を行った結果、指針に沿わない算入は
千葉、新潟、静岡、岡山、広島、北九州、熊本の7市で確認された。

(参考)“水増し”2000人超か 中央省庁の障害者雇用
8/22(水) テレビ朝日

霞が関の中央省庁が障害者の雇用数を水増ししていた疑いがある問題で、
水増しされた職員数は全体で2000人を超えるとみられることが分かりました。
厚生労働省によりますと、去年6月の時点で中央省庁など国の33の行政機関全体で約6900人の障害者を雇用していました。
政府関係者によりますと、このうち2000人を超える職員が国が定めた障害者の雇用に関するガイドラインに合わないなど、
水増しにあたる可能性のあることが分かりました。
ANNの取材で、これまでに国土交通省など複数の省庁で障害者の職員を水増しして算入していたとみられます。
厚労省は6月から障害者の雇用水増し問題の調査を行っていて、近く結果をまとめて公表する方針です。

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27.28日は休載します

2018年08月24日 | 情報

27.28日は、予定外の出張のため、休載します。
再開は、29日(水)です。よろしくお願いします。

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質問に回答します①

2018年08月24日 | 情報

久しぶりのQ&Aです。

Q:障害者雇用率の引き上げがありました。当社は除外率制度の対象業種ですが、それでも引き上げなければなりませんか?

A:結論は、当面の間、H22.7から適用されている除外率が適用されますので、大丈夫です。
 しかし、ここからが問題です。ご指摘の除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から、H14年の法改正により、
 H16年4月に廃止されています。ただし、経過措置として、当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、
廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小されることとされています(法律附則)

ですから、除外率制度は、あくまでも「暫定措置」なのです。すでに、法的には「除外率制度」はなくなっています。
御社においては、法令遵守の考えが徹底されていると推察できますので、
長期的な障害者の雇用率アップと、その背景となる社内体制の構築を、いまから検討されることをお薦めします。

(解説)
〇障害者雇用率制度

社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用の場を確保するため、常用労働者の数の一定割合(法定雇用率)に見合う数の
身体障害者又は知的障害者を雇用する義務を事業主に課している制度

 〇除外率制度

雇用義務となる障害者数を算出する際に、障害者が就業することが困難とされる職種の労働者が
相当の割合を占める業種の事業所について、業種ごとに定めた割合(除外率)により雇用義務の軽減をする制度
(例)常用雇用労働者が 1,000 人の事業所の雇用義務数
除外率0%   →       1,000 人        ×  1.8%  =  18 人
除外率 40%   →  (1,000 人-400 人)×   1.8%  =  10 人
           ∟除外率 40%相当の労働者数

〇除外率設定業種と除外率
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/18.pdf#search=%27%E9%99%A4%E5%A4%96%E7%8E%87%E5%88%B6%E5%BA%A6+%E6%B3%95%E5%BE%8B%E9%99%84%E5%89%87%27

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