中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

達成困難なノルマ

2015年05月29日 | 情報
一番の問題は、当該支店長が自殺したのは、5年も前の2010年であるという事実です。
被告・国側の考えによっては、さらに争いが長引くことになります。

支店長の自殺を労災認定…札幌地裁判決
2015年05月16日 読売

札幌支店長時代の勤務が原因で自殺したのに労災認定されないのは不当だとして、
札幌市在住の会社員男性(当時55歳)の妻(54)が国に対し、
遺族補償給付の不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が15日、札幌地裁であった。
本田晃裁判長は「男性の死亡は業務に起因する」と述べ、処分取り消しを命じる判決を言い渡した。
原告側によると、支店を束ねる役職者の自殺を労災として認める判決は珍しいという。
判決によると、男性は冷凍食品販売会社で営業を担当し、2009年9月からは札幌支店長となったが、
営業不振が続いて10年1月にうつ病を発症。同年2月に降格人事の内示を受け、同年3月に自殺した。
遺族の申請に対して札幌東労働基準監督署は11年6月、労災を認定せず、遺族補償の不支給を決めていた。
国側は「長時間労働は存在しない」などと主張したが、
判決で本田裁判長は「営業目標は相当な努力があっても達成困難で、会社も協力に欠けた」と指摘。
男性が重要な顧客からのクレーム処理に苦慮していた点も踏まえ、
男性の心理的負担は強い状態で業務が自殺を招いたと結論付けた。
過労自殺に詳しい和泉貴士弁護士は今回の判決を「時間外労働の長さではなく、
達成困難なノルマとペナルティーを受ける実態を評価して労災を認定した珍しいケース」と話している。

達成困難なノルマ…男性、うつ病発症し自殺 社の業務が原因と認定
2015.5.15 産経

食品会社の支店長だった夫がうつ病になり、2010年に55歳で自殺したとして、札
幌市の妻(54)が遺族補償給付の不支給処分の取り消しなどを国に求めた訴訟の判決で、
札幌地裁は15日、病気や自殺は業務が原因と認め、札幌東労働基準監督署の処分を取り消した。
判決理由で本田晃裁判長は、男性が達成困難なノルマを課され、
大口顧客を失いかねない状況に置かれていたことを挙げ「強い心理的負荷にさらされていた」と認めた。
判決によると、男性は10年1月ごろ、うつ病を発症した。同3月29日の出勤後に失踪。
翌30日に北海道室蘭市の海岸崖下で遺体が見つかった。
札幌東労基署は「裁判所の理解が得られず、残念。今後の対応を上部機関と協議したい」としている。
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「別室1人勤務」に賠償命令

2015年05月29日 | 情報
古典的な、典型的ないやがらせ行為です。
社員にどのような手落ちがあったのか不明ですが、記事のような行為をしてはいけません。
明らかな不当労働行為、ハラスメント行為です。
争ったら会社側は確実に負けます。
なぜなら、当該従業員の精神状態は、いたって正常ですし、考える時間は十分にありますから、
関係者にも相談できますので、証拠を集める時間もたっぷりあるからです。

「別室1人勤務」に賠償命令…嫌がらせと認める
2015年04月25日 読売

一人だけ別室で働かされて不当に退職を強要されたとして、大和証券(東京)から
関連会社の日の出証券(大阪市)に出向した男性(42)が、両社に200万円の慰謝料などを求めた訴訟で、
大阪地裁は24日、両社に150万円の支払いを命じた。

中島崇裁判官(三重野真人裁判官代読)は「ほかの社員から長期間隔離し、
退職に追い込むための嫌がらせだった」と述べた。
判決によると、男性は2012年10月、日の出証券に出向し、一人の部屋で顧客開拓を担当した。
労働組合を通じて抗議し、約4か月後、同僚らがいる部屋に移った。
中島裁判官は、出向直後で指導が必要なのに一人だけ別室としたのは極めて不自然だと指摘。
会社から与えられたパソコンでは、業務に必要な情報が閲覧できず、
会議にも呼ばれなかったことなどを踏まえ、「組織的な嫌がらせで不法行為にあたる」とした。
大和証券についても、日の出証券から男性の業務に関する報告を受けていたとし、賠償責任を認めた。
両社は控訴するか検討するとしている。

大和証券などに賠償命令=「追い出し部屋」で退職迫る―大阪地裁
時事通信 4月24日
大和証券(東京)からグループ会社の日の出証券(大阪)に転籍の上、
退職を迫る「追い出し部屋」で勤務させられたとして、
男性社員(42)が両社に200万円の慰謝料などを求めた訴訟の判決が24日、大阪地裁であった。
中島崇裁判官は「組織的、長期にわたる嫌がらせで悪質」と述べ、両社に150万円を支払うよう命じた。
中島裁判官は、一人きりの別室勤務や、新規顧客開拓業務への専従について、
大和証券から了解を得ていたと認め、「退職に追い込むための嫌がらせ」と指摘した。
転籍の無効確認については、男性が書面で同意しているため、請求を退けた。 

会社のいやがらせ行為として、有名な判例があります。

トナミ運輸事件です。
原告B氏は、当時所属していた営業所で、過当競争を避けるために談合し、
違法な割増運賃をとっていた状況に不満を持ち、最高幹部が営業所を訪ねてきた時に直訴をしましたが
「役員会で決めたことだ」と取り合ってくれませんでした。
そこで、原告はトラック業界の闇カルテルをY新聞社へ告発し、新聞に掲載されることになりました。
原告B氏は、告発後(1975年)以降、研修所に異動を命じられました。
2002年1月、B氏は、同社を相手取り、25年以上に及ぶ昇格差別、人権侵害による経済的・精神的損失として
4,500万円の損害賠償と謝罪を求める訴訟を富山地裁に起こしました。
2005年、富山地裁は同社に対し1,365万円の支払いを命じる判決を下しました。
その後、控訴審で1審判決の金額に上乗せした賠償金を支払うことで和解しました。
原告のBさんは、家族と生活を守るために、25年以上も我慢を強いられてきました。

この裁判は、今日の「公益通報者保護法」制定のきっかけを作りました。
しかし、内部告発する者を保護することを目的にしてできた法律ですが、
実際に内部告発することは、現代の企業社会において、余程の精神力がないとできません。
通常、内部告発者は、四面楚歌に逢って、精神的に多くの負担を背負う結果になってしまいます。
一個人と、企業という組織とが戦うことになるからです。

「公益通報者保護法」の概要を紹介します。

公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者
及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護等を図る、法律です。
(1)目的
公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を
図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資すること
(2)「公益通報」とは
()労働者(公務員を含む。)が、()不正の目的でなく、()労務提供先等について
()「通報対象事実」が()生じ又は生じようとする旨を、()「通報先」に通報すること
(3)「通報対象事実」()とは
① 国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として
別表に掲げるものに規定する罪の犯罪行為の事実
② 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが①の事実となる場合に
おける当該処分の理由とされている事実等
(4)「通報先」()と保護要件
① 事業者内部(内部通報)
:通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると思料する場合
② 通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関
:通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合(*)
③ 事業者外部(通報対象事実の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者)
:上記(*)及び一定の要件(内部通報では証拠隠滅のおそれがあること、
内部通報後20日以内に調査を行う旨の通知がないこと、
人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険があること等)を満たす場合
(5)公益通報者の保護
保護要件を満たして「公益通報」した労働者(公益通報者)は、以下の保護を受ける。
① 公益通報をしたことを理由とする解雇の無効・その他不利益な取扱いの禁止
② (公益通報者が派遣労働者である場合)公益通報をしたことを理由とする
労働者派遣契約の解除の無効・その他不利益な取扱いの禁止
(6)公益通報者・事業者・行政機関の義務
① 公益通報者が他人の正当な利益等を害さないようにする努力義務
② 公益通報に対して事業者がとった是正措置等を公益通報者に通知する努力義務
③ 公益通報に対して行政機関が必要な調査及び適当な措置をとる義務
④ 誤って通報を受けた行政機関が処分等の権限を有する行政機関を教示する義務
(公益通報者保護制度ウェブサイトより)





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ブラック企業、社名公表(続編)

2015年05月27日 | 情報
数日前に、新聞報道を紹介しました。
新聞報道前に、厚生労働省は、5月18日に臨時の全国労働局長会議を開催しました。
因みに、臨時の会議は年1回あるかどうかだそうです。
つまり、行政は「本気で」ブラック企業名の公表に踏み切るようです。
多くの「ホワイト企業」のみなさんは、「なぜ、ブラックな労務管理をするのだろう?」と
素朴な疑問を持つでしょうが、企業の実態は百社百様で、分からないものなのですね。

この会議で確認された内容は以下の通りです。

違法な長時間労働を繰り返している企業に対する指導・公表について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000085142.html

概要
長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すため、
社会的 に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、
都道府県労働局長 が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表する。【平成27年5月18日より実施】

都道府県労働局長による指導・公表の対象とする基準
指導・公表の対象は、次のⅠ及びⅡのいずれにも当てはまる事案。
Ⅰ 「社会的に影響力の大きい企業」であること。
⇒ 具体的には、「複数の都道府県に事業場を有している企業」であって
「中小企業に該当しないもの(※)」であること。
※ 中小企業基本法に規定する「中小企業者」に該当しない企業。

Ⅱ 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、
このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと。
1 「違法な長時間労働」について
⇒ 具体的には、①労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、
かつ、➁1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること。
2 「相当数の労働者」について
⇒ 具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者 において、「違法な長時間労働」が認められること。
3 「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」 について
⇒ 具体的には、概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。
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ストレスチェック制度解釈 25

2015年05月26日 | 情報
産業医が不足します。これは、間違いありません。

厚生労働省主催の説明会において、産業医が不足するのでは?と質問しました。
すると、「50人以上の事業所は、全国18万か所、産業医は9万人であるから、産業医が不足することはない」
(産業保健支援室 中村室長補佐)との、説明がありました。

過去のデータを当たってみると、
厚生労働省が発表した「『産業医・産業医科大学のあり方に関する検討会』報告書」(2007年)では、
こうした条件を満たした産業医有資格者は約7万人超。
日本の医師数がおよそ30万人であることを考えると、4人に1人が有資格者であることが分かります。

しかし、産業医は、産業医職を専らにしている医師もいますが、
多くは、開業医、臨床医が業務時間の一部を割いて産業医活動を行っています。
しかも大多数の内科医は、学校医も兼任しているのが実態です。

さらに、50人未満の事業所を対象にした、新たな助成金制度は、産業医との契約が前提です。
総務省統計局の調査によると、「平成24年2月1日現在の我が国の企業等の数は412万8215企業、
事業所数は576万8489事業所、従業者数は5583万7千人」です。
全事業所数は、何と577万箇所です。

これで、産業医は不足しないのでしょうか?
少なくとも、優秀で、良心的な産業医は、不足することでしょう。
「これを小生が心配してどうするのか」、と突っ込まれるのは分かっていますが。
しかし、良質な産業医が不足することは、容易に推測できます。

なぜ、こんなに心配するのか?
それは、今回のストレスチェック制度の主役が、まさに「産業医」だからなのです。
改正安衛法の条文、安衛則、指針、通達、マニュアル等たくさんの情報を精読していただければ、
そのキーとなる役割は誰かという問いに容易に答えることができるでしょう。

巷では、今回のストレスチェック制度で、産業医が「ストレス」を受けているとのことです。
御社では、既に、頼りにできる産業医との契約は、お済ませですか?

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ストレスチェック助成金(仮称)(続編)

2015年05月25日 | 情報
ストレスチェック実施促進のための助成金の概要が公表されました。

しかし、スタート前にこのようなことを申し上げるのは失礼なのでしょうが、あえて申し上げます。
当助成金は、50人未満の事業場を対象としていますが、
本当に、中小企業のことを考えて組み立てているのでしょうか?
はなはだ疑問です。
むしろ、たくさんの50人未満の事業場を抱える「大企業」が喜ぶ助成金ではないでしょうか。

具体的な企業名をあげて考えると分かりやすいでしょう。
申し訳ないのですが、厚労省関係ですから、
例えば、薬の小売が業界トップの「マツモトキヨシ」社、
売上高3000億円、従業員数8000名、600店舗です。
当社の殆どの店舗、即ち「事業場」は、従業員50人未満です。
「同一の都道府県内にある複数(2から10まで)の」が条件ですから、
東京都内の10店舗が共同でストレスチェックを実施すれば、助成金の対象になります。
ということで、@500円×8000名+産業医@21500円×3回×(600÷10事業場)=約800万円
アバウトな計算ですが、当社に毎年800万円の助成金が交付される計算になります。
当社は、本部機能がしっかりしていますから、やろうと思えば簡単に実行できます。

一方で、50人未満の小規模の企業を考えてみましょう。
助成金の条件に、「集団を構成」とありますが、いったい誰が「音頭」を取るのでしょうか?
地域産保や医師会、商工会議所、労基署等が積極的に関与しない限り、実現するのは至難の業です。

しかも当助成金の原資は何か、考えてみましょう。
すべての企業が、強制的に拠出させられている労働保険料が、その原資なのです。
これで、良いのでしょうか?
念のために申し上げますが、「マツモトキヨシ」社は、業界トップの優良企業ですから、
多分、このような助成金目的の制度運用はなさらないことと信じていますが。

http://www.rofuku.go.jp/sangyouhoken/stresscheck/tabid/1006/Default.aspx
1 助成金の概要
事業場の所在地が同じ都道府県である、複数の従業員数50人未満の事業場が、
合同でストレスチェックを実施し、
また、合同で選任した産業医からストレスチェック後の面接指導等の産業医活動の提供を受けた場合に、
各事業主が費用の助成を受けられる制度です。

2 助成金を受けるための要件
助成金の支給申請をする前に、小規模事業場の集団を形成し、支給要件を満たしているかの確認を受けるため、
あらかじめ労働者健康福祉機構への届出が必要になります。

◆届出前に、次の5つの要件を全て満たしていることを必ず確認してください。
① 常時使用する従業員数が50人未満であり、同一の都道府県内にある複数(2から10まで)の
  小規模事業場を含む事業場で集団を構成していること。
② 集団を構成する小規模事業場の事業者が産業医を合同で選任し、
  ストレスチェックに係る産業医活動の全部又は一部を行わせること。
③ ストレスチェックの実施者及び実施時期が決まっていること。
④ 集団を構成する全ての小規模事業場において、ストレスチェック及び面接指導を行う予定であること。
⑤ 集団を構成する小規模事業場の代表者と②の産業医(合同選任産業医)が同一者でないこと。

3 助成対象
(1)ストレスチェック
  年1回のストレスチェックを実施した場合に、実施人数分の費用が助成されます。
(2)ストレスチェックに係る産業医活動
  ストレスチェックに係る産業医活動について、実施回数分(上限3回)の費用が助成されます。
【ストレスチェックに係る産業医活動の例】
・ストレスチェックの実施について助言すること
・ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること
・ストレスチェックの結果について、集団分析を行うこと
・面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること    など

4 助成金額
次の費用が助成されます。
助成対象 助成額(上限額)
①ストレスチェックの実施 1従業員につき500円
②ストレスチェックに係る産業医活動 1事業場あたり産業医1回の活動につき21,500円(上限3回)
※ 500円と21,500円はそれぞれの上限額ですので、
実費額が上限額を下回る場合は実費額を支給します。

5 届出・申請の期限
(1)小規模事業場団体登録届
平成27年6月1日から平成27年12月10日まで(消印有効)
※ ただし、届出期間中でも団体登録の受付を終了することがありますのでご了承ください。
(2)ストレスチェック助成金支給申請
平成27年6月15日から平成28年1月末日まで(消印有効)
※ ただし、申請期間中でも助成金支給申請の受付を終了することがありますのでご了承ください。

助成金に関するお問い合わせは、労働者健康福祉機構又は最寄りの産業保健総合支援センターで
お受けしております。
◎ 労働者健康福祉機構 産業保健・賃金援護部 産業保健業務指導課
電話番号 : 044-556-9866
受付時間 : 平日 9時15分~18時 (土曜、日曜、祝日休み)
住  所 : 神奈川県川崎市幸区堀川町580番地 ソリッドスクエア東館17階
◎ 全国の産業保健総合支援センター
http://www.rofuku.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx
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