中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

職場のパワーハラスメントの予防・解決

2012年10月31日 | 情報
厚労省が職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けたポータルサイトを開設しています。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002kqdw.html

以下に、厚労省のHPよりの転載です。

報道関係者各位
職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けたポータルサイト「あかるい職場応援団」をオープンしました。

厚生労働省は1日、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けたポータルサイト
「みんなでなくそう!職場のパワーハラスメント あかるい職場応援団」を開設しました。
これは、今年3月15日に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」(座長:堀田力 さわやか福祉財団理事長)が
発表した「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」をもとに、
予防・解決への社会的気運を醸成するための周知・広報ツールの一つとして開設したものです。
ポータルサイトではパワーハラスメントの概念や、職場での取り組みの必要性について説明しています。
また、パワーハラスメント対策に取り組んでいる企業の紹介や、部下への厳しい注意指導などが
裁判ではどう扱われるかといった裁判例の解説なども掲載していきます。

1 ポータルサイトURL
  http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/

2 運用開始日
  平成24年10月1日

3 主なコンテンツ
  ●なぜ、今パワハラ対策?:職場のパワーハラスメント対策の理念を紹介
  ●職場のパワーハラスメントを理解する3つの基本:「概念と類型」「対策の必要性」「予防と解決」の3つの観点から解説
  ●他の企業はどうしてる?:対策に取り組んでいる企業の取組例を紹介(連載)
  ●裁判事例を見てみよう:関連する裁判例のポイント解説(連載)
  ●言い方ひとつで次が変わる会話術:職場で役立つコミュニケーションスキルの一例の紹介(連載)
  ●数字で見るパワハラ事情:労働局への相談件数や労災補償の状況など統計調査結果からパワハラの動向を紹
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何もしていません(続編)

2012年10月30日 | 情報
次にしなければならないこと。それは、態勢づくりです。

まず、プライバシーの保護です。精神疾患にかかわることは、ほとんどのことが個人情報保護法の対象になると考えてください。
原則として、民法では家族も第三者です。家族に連絡するのにも本人の了承が必要になります。
ですから、プライバシー保護の社内規則を定めます。プライバシーとは何か。保護しなければならない対象は、関与する人たちは誰か。
それぞれの人たちが関与できる範囲等をきめることとします。
今までも、定期健康診断の結果の保存等でノウハウの積み重ねがありますので、
産業医の先生や保健師・看護師の方々の知識を利用してください。

次に、休業者との連絡窓口を担当する社員を決めます。
休業者は、一時的にも会社の情報から遮断された立場になりますから、情報の伝え方、情報の内容を管理する必要があります。
仮に、これを野放しにしておくと、いろいろな立場の人から、思いつくままに、休業者の都合をまったく考えず、
電話、FAX、メール、時には直接訪問などの手段により、コミュニケートしようします。
そうすると、情報の内容・質に差が出ますし、場合によっては正反対の情報が伝わることになり、休業者が混乱します。
従って、あらかじめ休業者の了解をとり、休業者との連絡窓口を担当する社員を決め、会社と休業者の連絡を一本化します。
連絡窓口は、直属の上司以外ならば誰でもよいのですが、人事労務担当、健康管理スタッフ、
MH推進担当者、職場の仲間等がよいでしょう。
なお、連絡窓口を担当する社員のは、業務以外の仕事ですし、心理的にかなりの負荷がかかりますので、
なにがしかの手当の支給も検討します。

最後に、休業者の職場復帰に備えて、職場復帰プログラムの検討に着手してください。
主治医の「復職可」の診断書が提出されてから、慌てても手遅れになりますので。

以上の2回の掲載で、概要は理解頂けたと思いますが、実際の現実に直面すると
わからないことが沢山出てきます。
その時は、橋本社会保険労務士事務所に、お問い合わせください。
メール等でのご相談は、無料で対応しています。s-hashi@ya2.so-net.ne.jp
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何もしていません

2012年10月29日 | 情報
社業に忙しく、何も対策を打っていないが、「うつ病」で休職する社員が出てしまった。
何をしてよいのか、アドバイスがほしいとの、依頼がありました。
以下に回答の要約を公開します。

なによりも初めにしなければならないことがあります。
それは、り患者が安心して治療・療養に専念できる環境をつくることです。
治療・療養は、第一義的にり患者本人の責任です。会社が、初めから「手取り足取り」をする必要はありません。
しかし、り患者自身は、どうしたらよいのか迷ってしまうのが実情でしょう。
家族も、どうしたらよいの、と困ってしまうでしょう。そこで、り患者本人や家族から会社に相談があるでしょうから、
会社は、そこで初めて、手を差し伸べればよいのが基本です。
り患者本人や家族が困っている様子がわかったら、(ないしはわかったふりをして)手を差し伸べることをお勧めします。
そうしないと、いたずらに時間だけが経過してしまい、状況は悪化の一途をたどるからです。

まず、会社の諸規定を説明します。一般的な従業員は、会社の諸規定を知りません。
ですから、休んでしまったら給料がもらえない、会社を解雇される、といった不安にさいなまれます。
具体的には、最初に有給休暇の消化を説明します。それから、会社の休職制度です。調査データによると
中小企業の休職期間は、1年間から2年間くらいのようです。休職制度を利用すれば、会社を解雇されることはないと説明します。
次に、健康保険の傷病手当金です。原則として1年6か月間、給与の60%が支給される制度です。

ここまで説明すれば、り患者本人も家族も、まずは一安心でしょう。安心して治療・療養に専念できます。

次は、精神科医を選びます。
り患者が診察に訪れるのは、最初は、内科や心療内科、ひょっとして外科かもしれません。
しかし、最終的には、精神科専門医に受診することが必要です。しかも、り患者が信頼できる、精神科医を選ぶことが大切です。
アメリカの中上流層では、身近に牧師・弁護士、それに精神科医がいることが必須とされていますが、
日本では日常的に、精神科を受診することは、まずありません。ですから精神科医が町のどこにあるのかもわかりませんし、
優良な精神科医は誰かなどの知識もありません。
そこで、筆者は、内科のかかりつけ医に紹介してもらうことを推薦しています。
会社が、紹介することもあるでしょう。しかし、会社が「指定」した場合、その精神科医での治療が順調であれば問題は
ありませんし、感謝されるでしょうが、治療が不調に終始し、病状が悪化することもあります。
この場合、り患者本人や家族から会社に責任を追及されことも考えられます。
ですから、会社が精神科医を紹介する場合は、必ず複数の精神科医を紹介し、選定はり患者本人や家族の責任にすることも
考慮する必要があります。

次回に続きます。
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「職場うつ病対策」セミナーの案内(再掲)

2012年10月26日 | 情報
JCPTDは、うつ病の予防・治療日本委員会のことで、当団体には、樋口先生をはじめ
主だった日本の精神科医の半数くらいの先生が参加している一般社団法人です。
東京開催ですので参加できる方は限られますが、無料ですので「うつ病の予防・治療」に
関心がある皆様には、聴講をお勧めします。

うつ病のJCPTD「職場うつ病対策」シンポジウム
多様なうつ病-職場における対応と予防-

2012年12月7日(金) 14:30-17:30
浜離宮朝日ホール
東京都中央区築地5-3-2 朝日新聞東京本社新館2 階 TEL 03-5541-8710

職場でみられる多様なうつ病
樋口輝彦(国立精神・神経医療研究センター 総長)

うつ病労働者への心理的理解や周囲の支援の在り方
堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター/認知行動療法センター 研修指導部長)

うつ病の発症と民事上の損害賠償責任
-最近の裁判例を素材として-
山田長伸(山田綜合法律事務所 所長)
   
企業におけるメンタルヘルス施策
大野和人(キヤノン株式会社執行役員 人事本部長)

職場における効果的なうつ病予防
-睡眠・認知行動療法・フェアマネジメント教育の実践とその効果-
田中克俊(北里大学大学院 産業精神保健学教授)
座長:中村 純(産業医科大学 精神医学教室教授)

職場うつ対策に求められること
座長:樋口輝彦

主催:一般社団法人うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)
対象:産業医、産業保健職、人事労務担当者等 定員:400名(先着順)
申込締切日:11月30 日(金)
申込方法:裏面のFAX 送信票にてお申込みください

(裏面)
JCPTD「職場うつ病対策」シンポジウム 参加申込用紙
ご氏名
ご所属
FAX番号
うつに関することで何か質問がございましたら、お書きください。
(なお、質問は一般的な内容に限らせていただきますのでご了承ください)
※ご提供いただきました個人情報は、参加に関連した目的のみに使用し、法令に従い、厳重に管理します。
ご住所
〒      ―
お申込・お問合先(JCPTD事務局:太田)
FAX:03-3416-8639
〒157-0073 東京都世田谷区砧2-21-5
※先着400名とし、発表は参加証の送付といたします。

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取材のエッセンスです

2012年10月25日 | 情報
取材を受けたことは報告しましたが、原稿をそのまま掲載することはできませんので、
そのエッセンスを以下に報告します。

普通に考えれば、衛生委員会は、生産手段ではないですから、
商品を作り出すことに関与することは出来ません。
ですから、対策費は「費用(コスト)でしょう」というのが常識的な回答でしょう。
しかし、はたしてそうでしょうか?

結論から云うと、「リスクマネージメント」であると理解しましょう。
つまり、企業にとっては、「先行投資」なのです。

D事件(最高裁第2小 H12.3.24、労判779-13)では、会社側は、16,800万円を支払って解決しています。
その他類似の裁判例はたくさんあって、会社側が敗訴すると、1億円前後の賠償命令が出されています。

衛生委員会で、長時間残業の実態を共有化し、長時間労働の削減を実行していれば、
うつ病をはじめとする精神疾患の発症を防ぐことが可能になります。
会社には、役員会や人事労務部門の会議、労使協議会などで、長時間労働について討議することができますが、
衛生委員会は、労働安全衛生の観点から、一般従業員や組合員の視点で、
労使が一体となって、討議できることにメリットがあります。

次に、うつ病をはじめとする精神疾患の発症が労災であると認定され、
会社が民事損害賠償責任を問われた場合、一次予防をしっかりと実施していれば、
万一の場合でも、会社にとって過失相殺の割合が有利になります。
衛生委員会を開催し、調査・審議し、記録を保存し、決議事項を実行しておくことは、重要な一次予防対策です。

さらに、貴重な人材を失うことは、会社にとって大きな損失です。
採用から、数年かけて教育して、一人前の人材に育てるまでには、多くのコストを投入されています。
社員が1年間休職すると、その社員の年収の3倍の損失が、発生するとの試算もあります。
会社が元気になるためには、従業員一人一人が元気でなければなりません。
衛生委員会は、会社を、従業員を、元気にする会議体であると位置づけるのです。
衛生委員会の名称を、職場活性化委員会と変更して、審議内容も拡大してもよいでしょう。
委員会の長は、トップが就任し、毎回必ず、そして最後まで出席していただきましょう。

経営者のみなさま、人事労務担当部門のみなさま、
厳しい経済環境にあっては、売上を伸ばして収益を確保することも重要ですが、
無駄なコストの発生を抑制するとともに、
従業員が元気に働くことができるような環境をつくることに、
経営の焦点を当てることが大切ではないでしょうか。
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