中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

ストレスチェック制度解釈⑳

2015年03月31日 | 情報
ストレスチェック制度の細則が決定しました。
予定より少し遅れましたが、4月中に公表されることになります。

平成27年3月24日
【照会先】労働基準局 安全衛生部 計画課

「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案要綱」の諮問と答申
~ストレスチェック制度、特別安全衛生改善計画制度、外国検査・検定機関制度についての細目を定めます~

厚生労働大臣は、2月16日、労働政策審議会(会長:樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授)に対して、
「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案要綱」について諮問を行いました。
この諮問を受け、同審議会安全衛生分科会(分科会長:土橋 律 東京大学大学院工学系研究科教授)で審議が行われ、
本日、同審議会から妥当であるとの答申がありました。
厚生労働省は、この答申を踏まえて速やかに省令の改正作業を進めます(平成27年4月公布・平成27年6月
(ストレスチェック制度関係は、平成27年12月)施行予定)。

【省令案のポイント】
<労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)の一部改正>
1.ストレスチェック制度関係
(1) 産業医の職務に、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「検査」)と
検査の結果に基づく面接指導(以下「面接指導」)の実施などに関することを追加します。
(2)  ストレスチェック制度の実施などに関する以下の事項を定めます。
・検査の実施時期を1年ごとに1回(定期)とすること。
・検査項目をストレス要因・ストレス反応・周囲の支援の3領域とすること。
・検査の実施者となることができるのは、医師、保健師、一定の研修を受けた看護師や精神保健福祉士とすること。
・結果の記録の作成・保存などについての詳細事項を定めること。
・事業者は、医師などの実施者に、検査の結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させるとともに、
その結果を勘案し、必要に応じ、その集団の労働者の実情を考慮して、心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めること。
・面接指導の対象となる労働者の要件や、医師などの実施者による面接指導の申出の勧奨について定める。
また、面接指導を行う医師が確認すべき事項などを定めること。
・事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、これを5年間保存すること。
・常時50人以上の労働者を使用する事業者は、 検査と面接指導の実施状況などを所轄労働基準監督署長に報告すること。
(以下省略)

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国家公務員、今夏は朝型勤務

2015年03月30日 | 情報
いよいよ首相主導で、早朝勤務が国家公務員に適用されます。
小生は、従来より「早朝勤務」の導入を主張してきました。
御社も、早朝勤務を検討してください。MH対策のみではありません。
「ストレスチェックで職場環境改善」という厚労省の主張より、はるかに効果が上がる対策と考えます。

国家公務員、今夏は朝型勤務 首相が始業前倒し指示
2015/3/27 日経

安倍晋三首相は27日の閣僚懇談会で「朝型の勤務を推進し国全体に浸透させたい」と述べ、
国家公務員の今夏の始業時間を原則1~2時間前倒しするよう指示した。
7~8月の間、通常は午前8時半~9時半の勤務開始時間を同7時半~8時半に早める。菅義偉官房長官が同日の記者会見で明らかにした。
早朝に出勤した職員の終業時間は午後4時15分~5時15分とし、できるだけ残業せずに退庁するよう求める。
育児など本人の事情で早朝勤務が困難な場合や、行政サービスの提供に支障がある場合は対象外とする。
菅長官は全国一律で時間を早める「サマータイム」の導入については「九州や沖縄は日の出の時刻が遅くメリットが乏しい」と慎重な姿勢を示した。
「朝型勤務」に関しては、公務員で実験的に実施したうえで民間企業にも同様の取り組みを呼びかけていく方針だ。

霞が関、夏は朝型勤務に 首相奨励「国全体に浸透させたい」
2015.3.28 産経

安倍晋三首相は27日の閣僚懇談会で、7、8月に全府省庁の職員を対象に朝型勤務と定時退庁を奨励する方針を打ち出した。
霞が関で目立つ深夜までの残業の削減や業務効率化を促すとともに、新たな需要創出につなげる思惑もある。
首相は「『夏の生活スタイル変革』に取り組む。国全体に浸透させたい」と述べ、民間企業や地方公共団体への推奨も指示した。
方針では、期間中は通常の勤務開始時刻を1、2時間早め午前7時半~8時半とし、
午後5時前後に退庁。政府全体で午後4時15分以降の会議を禁止し、毎週水曜日は午後8時までに消灯する。
法案の作成支援システムなどを開発し、業務の効率化も後押しする。
加藤勝信官房副長官は27日の事務次官級連絡会議で「朝方勤務だけではなく、早期退庁が非常に重要だ」と指摘。
世耕弘成官房副長官も「われわれも午前7時半からのレクは大歓迎だ」と語った。

(類似情報)
「労働時間等見直しガイドライン(通称)」を改定
2014年11月13日

小生は朝型勤務に、注目しています。そして、朝方勤務を推奨しています。
理由は、「朝日と共に起き、夕日と共に寝る」という、人間の基本的な生理に近い形で
働くことができるからです。やむを得ず深夜勤務をされている労働者もたくさんいますが、
MH対策上は、人間の生理に沿った働き方を選ぶことが、原則だからです。
次に、終業後の残業は、時間に余裕がありますので、どうしても「だらだら」残業になりがちです。
残業は効率よく処理したいものです。
生産現場等においては、労働者自身で勤務時間を設定できませんが、研究や物流部門等においては、
会社の工夫次第で勤務時間の改善を図ることもできます。
みなさんも事業所・企業においても、朝方勤務を研究してみませんか。
(以下略)

朝方勤務への移行を推奨します
14.10.2

以前より申し上げていますが、小生は、メンタルヘルス対策上、朝方勤務への移行を推奨します。
(以下略)

伊藤忠、残業削減へ早朝手当を厚く 全社員対象
2013/8/2 日本経済新聞
 
伊藤忠商事は社員の働く時間を朝方にシフトさせ残業を減らすため、新たな賃金制度を導入する。
(以下略)

早朝勤務なぜ広がる 残業減のほか思わぬ経済効果も
2015/3/24 日経

■夜の残業減り 能率アップ
最初に向かったのは伊藤忠商事の東京本社(東京都港区)。同社は昨年5月、午後8時以降の残業を原則、禁止した。
午前5時から9時まで(8時以降は始業時刻の条件付き)は深夜勤務と同様の割増賃金で、早朝勤務を促している。
同社食料カンパニーの小山真司さん(36)は東南アジアからの輸入業務が担当。
午前7時30分までに出社し、午後8時までの退社を前提に、価格や数量の交渉をまとめている。
「早朝は頭がすっきりして疲労感がなく、仕事に集中しやすいです。体調が良い人が多いためか、打ち合わせの効率も上がります。
帰宅時刻を決め、それまでに仕事を終わらせるようになったので、残業時間は減りました」
労働問題に詳しい日本総合研究所調査部長の山田久さん(51)に意義を尋ねた。
「朝の残業なら終了時間を区切れるので夜間より効率が良いでしょう。全体で残業時間が減っているのはよい傾向です」と評価した。
次の訪問先、インターネット広告のオプト(東京都千代田区)に到着すると、早朝勤務の常連だという畠山純さん(27)、
二宮和美さん(27)、加藤友史郎さん(24)が待っていた。
同社は夜間の残業を減らす狙いもあり、早朝勤務を推奨中。早朝出社した社員には午前8時45分に、おにぎりやシリアル食品を無料で提供している。
ネット業界では深夜勤務が多いイメージがあるが、「働く時間は自分で選ぶ」が会社の方針だ。
「早朝に取引先にメールを打ち、相手の反応を待つ余裕ができました」と畠山さん。
二宮さんも「早朝は取引先からの電話が少なく、周囲が静かなので仕事の効率が上がります」と早朝勤務の効用を実感している様子だ。
「朝食が用意されているのはいいな。仕事の効率とも関係するのかな」と章司。
新幹線に乗り、脳の働きと朝食の関係を研究している東北大学加齢医学研究所(仙台市)に野内類さん(34)を訪ねた。
「規則正しく起床し、朝食をしっかり取ると脳の働きが活発になり、
仕事や勉強の能率が上がることがわかっています」と解説を始めた。
磁気共鳴画像装置(MRI)を使った実験では、朝食を取った人は、1時間のうちに脳の前頭葉が活発に動き出し、課題への正解率が上昇するという。
 朝食と切り離した早朝勤務だけの実験はしていないが、同研究所がビジネスパーソンを対象にしたアンケート調査では
「自分は第1志望の道に進んでいる」とみる人は、午前中の時間帯を有効に活用していると回答する割合が高かった。
「脳の働きを妨げるのは疲労やストレス。夜間残業の効率が悪いのは当然です」

■長時間労働の改革は途上
「早朝勤務はもっと広がりそうです」。東京に戻って報告する章司に「夜間と同様に早朝勤務も減らせないのか」と所長は再調査を命じた。
「夜も朝も残業はしない方がいいですが、仕事の量が減らないとゼロにはできません」。
行動経済学が専門の京大教授、依田高典さん(49)に電話で話を聞くと、最近の学説に従って、残業が発生するメカニズムを説明した。
依田さんによると、個人は記憶や認知などの「処理能力」、所得、時間の
3つの制約条件のもとで自分の満足度(効用)を最大にするように行動する。
就業時間という「時間制約」のもとで、締め切りがある仕事をこなしきれないと、残業して間に合わせる。
この間、目の前の仕事に意識がとらわれ、多大なエネルギーを使う。残業を繰り返すうちに、
ガス欠を起こして全体に仕事の「処理能力」が落ち、残業しても追いつかなくなる。
余暇や睡眠などの時間も奪われ、結局は効用を最大にできなくなる。
「夜間残業はこうした悪循環に陥りがちです。消費を手持ち資金の範囲内に収められず、
多額の借金をする人の行動にも似ています。結局は返済不能になり、効用が下がります。
残業せざるを得ないのなら終了時刻が明確で処理能力が落ちていない早朝の方がベターです。
夕刻以降の余暇が増え、生活が豊かになって満足度を高められる人もいるでしょう」と依田さんは早朝勤務に理解を示す。
「日本人は仕事量が多すぎるのかな」と表情を曇らせる章司。山田久さんの顔を思い出し、再び連絡を取った。
「多くの日本企業は、正社員の雇用を守る代わりに、勤務地や仕事の中身を選べないようにしています。
正社員は『何でもこなす』ことを求められ、労働時間も長くなりがちです」と山田さん。
個々の社員の職務を明確に定めるなど働き方そのものを大きく変えない限り、残業ゼロは難しく、早朝勤務はさらに広がると予想する。
「政府は成長戦略の一環で労働・雇用改革を検討中ですが、働き方の多様化や労働移動を促す本質的な議論にはなっていません」

■「朝活」に商機 経済効果も
“早朝勤務派”からは「生活のリズム」「健康」という言葉がよく出てくる。
伊藤忠テクノソリューションズでシステム開発に携わる広重仁美さん(26)は午前7時30分に仕事を始める。
同社は昨年から朝型勤務を奨励中だ。「以前なら繁忙期は午後10~11時ころまで残業でした。
夜間残業をやめるために仕事のやり方を工夫したら効率が上がりました。帰宅時間が早く睡眠もよく取れます」
 産業界では、早朝勤務や「朝活」に熱心な人を対象に新たな商機を探る動きも出始めている。
オムロンヘルスケアが2013年に発売した「ねむり時間計」は枕元に置くだけで睡眠時間や寝つきにかかった時間などを計測し、
眠りの状態をチェックできる。データを転送すると、眠りを改善するアドバイスがスマートフォンに表示される。
 マーケティング担当の船尾公喜さん(39)は「早朝勤務や朝活に熱心な30~40代の男女から、
朝型のライフスタイルを定着させるのに役立っていると聞きます」と話す。
 カルビーはシリアル食品「フルグラ」を企業に一定の期間、無料で提供し、早朝勤務の社員に朝食を取る習慣を根付かせようとしている。
インターネット広告のオプトもその一社で、無料期間の終了後も同製品を社員に提供している。
早朝勤務は夜間残業を減らすだけでなく、思わぬ経済効果も生んでいる。
(編集委員 前田裕之)
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質問に答えます②

2015年03月27日 | 情報
Q:精神疾患の治療のため休職中の従業員がいます。休職してから復職するまで何も連絡しないで
放任しておいては如何なものかと考え、定期的に出社させて病状の回復状況を確認したいと考えています。
注意することはありますか?

A:会社が従業員の健康を配慮する「やさしい」企業文化なのか、担当の皆さんの「やさしい」心づかいの発露なのか、
よくわかりませんが、普通であれば日本人の心情としてこのように考えるでしょうね。
しかし、原則として、治療は休職中の従業員の責任で行わなければなりません。
会社は、それを「サポート」するに止めることが肝要です。必要以上の介入は問題です。
良かれと思ってやったことが、とんだトラブルに発展しかねないのです。

まず、原則として休職中の従業員を出社させることは、止めましょう。
必要であれば、大変でしょうが会社側の方が、従業員の居宅に出向いてください。
なぜか? 休職中ですから、会社は労働者には一時的に労働の義務を免じているものと解釈されます。
それなのに、休職中の従業員に出社させることは、「業務命令」を発する行為、即ち「労働をさせる」ということになるからです。
休職中の従業員に労働をさせることは、原則としてできない、のです。

さらに問題になるのは、居宅と会社との往復経路において、意図するしないは別として、事故とかに遭遇することもあります。
当然に労災保険は適用されませんので、従業員の健康保険で治療することになります。
しかし、その場合、会社の業務命令で、会社に出向くわけですから会社側の過失責任も問われることが考えられます。
もっと重大な事故になることも想定されます。それは「自死」の危険性です。
従業員が、からだを動かすことさえ嫌だと考えているときは、「自死」の危険性が低いのですが、
会社に出向くくらいの元気があるときは、その他にもあれこれと考える余裕があるということですから、
当然に「自死」念慮も起きるわけです。

だからと言って、復職するまで放任すれば良いということではありません。
病状や回復状況等の経過観察は、会社側の安全配慮義務の観点から、とても重要な作業です。
繰り返しになりますが、必要であれば、大変でしょうが会社側の方が、従業員の居宅に出向いてください。
標準的には、社会保険料の徴収を兼ねて、月に1回程度訪問するのが良いでしょう。
加えて、これらの作業については、5W1Hで記録を残すことが大切です。
この微妙なやりとりが、精神疾患で休職している従業員の対応が難しいと考えられている原因のひとつです。
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質問に答えます①

2015年03月26日 | 情報
Q:初歩的な質問で申し訳ないのですが、「事業場」ということばがよく出てきます。
「事業場」とは何ですか? 会社とか企業とかとは違うのですか、それとも単なる言葉の使い分けですか?

A:いえいえ、とても大切な質問です。経験を積んだ専門家(と称する?)でも、誤解、誤用しているのが現実ですから。
例えば、「衛生管理者」は、常時50人以上の労働者を使用する「事業場」ごとに選任することになっています(安衛法12条、令4条)。
このようにして労働基準法、労働安全衛生法では、「事業場」単位で法律が適用されます。会社とか企業単位ではありません。

それでは、事業場とは何か?
昭和47年9月18日発基第91号(厚生労働省が必要に応じて発する通達です)では、「工場、鉱山、事務所、店舗のごとく、
一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいう。
従って、一の事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、
同一の場所にあるものは原則として一の事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とする」とされています。

また、昭和63年9月16日発基601号の2では、
「規模が著しく小さく、組織的関連、事務能力等を勘案して一の事業場という程度の独立性がないものについては、
直近上位の機構と一括して一の事業場として扱うものとすること」とされています。
一方で、「同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、
その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場として捉えることによりこの法律(労働安全衛生法)がより適切に運用できる場合には、
その部門は別個の事業場としてとらえるもの」とされています。

即ち、「場所的に分散しているものは原則として別個の事業場」として、取り扱います。
例えば、東京と大阪の場合は当然でしょうが、隣の町、さらには、数百メートル離れた事業場も原則、別個の事業場です。
また、同じ場所にあっても、独立した一つの事業所として扱うこともあります。
例えば、工場内にある診療所、食堂、自動車の販売会社に附属する整備工場、学校に附置された給食場等が該当します。
しかし「一の事業場という程度の独立性がないものについては,直近上位の事業場と一括して扱うものとすること」、
つまり、このような場合には一つの事業場として良いことになります。
例えば、現場事務所のない建設現場、従業員がひとり、ふたりで、判断・指示できる従業員がいない出張所、支所等が該当します。

ですから、一つしか事業場がない中小の会社は、会社=事業場になりますが、
大企業の場合は、日本全国に営業拠点を持っていたり、幾つもの工場を稼働させていますので、会社≠事業場になります。
即ち、複数の事業所から成り立っている経営体、企業ということになります。
例えば、ファーストフードや薬のチェーン店の場合、一つの店舗が従業員50人未満でも一つの事業場として見なされますから、
全国に1000店舗あれば、一つの会社(=企業)のもとに1000か所(正確には本社を加えて1001か所)の事業場を抱えている、
という解釈になります。

(参考)安全衛生委員会の設置事業所とは
14.7.15

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JR西日本及び公立八鹿病院訴訟から学ぶこと

2015年03月25日 | 情報
JR西日本の場合を考えてみましょう。
はじめに、自殺した男性が自己申告した2009年3月の時間外労働は月72時間などでしたが、
自殺前9カ月間の時間外労働は、月約113~254時間だったと訴えていました。

しかし、JR西日本の調査において、自殺後の社内調査で厚生労働省が示す過労自殺の認定基準(月160時間)を超える
約162時間だったことが判明したこともあって、
同社は、「男性に、長期間にわたる休日出勤や長時間労働があったことは事実です。」と認めており、
裁判でJR西日本は、長時間労働を放置した責任についてさえ、争うこともできませんでした。

同社は、長時間労働についての事実認定において、ほぼ全面的に認めたこともあって、
判決において「社員の労働時間管理が十分ではなく、時間外労働が適正な範囲を大きく超えていた」と指摘されました。

従業員の労働時間管理は、企業労務管理における「基本中の基本」です。
基本中の基本が疎かにされていたのですから、原告の弁護人が「勤務時間を把握するという労務コンプライアンスの根幹に関わる問題だ。
現場だけではなく、トップを含めた企業体質の問題だ」と指摘したのは、当然のことでしょう。

次に、損害賠償額です。
自殺した男性は、院卒の28歳です。
妻と両親が同社に計約1億9千万円の損害賠償を求めたのは、電通事件を意識した額ではないでしょうか。
電通事件は、16800万円の賠償額で和解が成立しています。
この判例から類推すると、判決では約1億円の高額賠償を命じていますが、
被告側の企業規模から考えて、額が少なすぎるのではないかと考えます。
その他の多くの判例から推測すると、司法は賠償額について被告側の支払い能力を斟酌しているようですが、
それでも1億円を超える賠償を命じる判例が多く出ていることを、多くの企業は肝に銘じなければなりません。
しかし、ひと一人の命の価値が被告側の支払い能力を考慮し、賠償額に大きな差異が生じていることは、納得できないものが残ります。

過去の高額の損害賠償額例
電通事件(最H12.3.24)1億6800万円(和解)
川崎製鉄(水島製鉄所)事件(広島高H12.10.2) 1億1100万円(和解)
オタフクソース・石本食品事件(広島地H12.5.18) 1億1111万円
音更農業協同組合事件(釧路地H21.2.2)1億900万円、札幌高裁7500万円(和解)
康正産業事件(鹿児島地H22.2.16)1億9491万円、2億4千万円(裁判外での和解)

加えて、このようにして被告の企業名が公けになることを理解してください。
計り知れないダメージです。企業のイメージダウンだけではなく、営業活動に影響しますので、
業績にも悪影響を及ぼしますし、優秀な人材の確保という面でも、ハンディキャップを背負うことになります。

従業員の労働時間管理という単純な労務管理作業を疎かにしたばかりに、当該企業は想像を超えるダメージを受けることになります。
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