中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

観察瞑想

2017年03月31日 | 情報

NHKマイあさラジオで紹介されていた、予防医学研究者の石川善樹さんの、「疲れない脳の作り方 科学から見る瞑(めい)想」を、
石川先生の「働く人のためのマインドフルネス講座」から転載です。
https://cakes.mu/posts/12431

はじめに
ああ、今日も1日疲れたなーー。
よく口にする、あるいは耳にする言葉ですね。
しかし考えてみれば不思議なことです。肉体労働をしている人は減り、オフィスワークでもITの普及で生産性が劇的に上がりました。
生産性が上がるということは、同じ仕事をより短時間で終わらせることができるということです。
そうして余った時間の分だけ、わたしたちの生活も余裕ができるはずです。

でも、現実はまったく違います。
せっかく世の中が便利になって自由に使える時間が増えたにもかかわらず、わたしたちはせっせと予定を詰め込み、
四六時中人とつながって、あれもしなければ、これもしなければと追われるように生きています。

先日、こんな光景を目にしました。
電車の中で、通学途中の女子高生が、携帯電話をいじりながら友だちとこんな会話をしていました。
「うわー、LINEで○○からメッセージ来たよ」
「あ、やばい! △△からのメッセージに返事してなかった」
「あれ、わたしには△△からメッセージ来てない!」
「えー、ブロックしてるんじゃないの?」

わたしはその様子を見ながら、朝からこの調子だと学校に着くころにはヘトヘトになって、
とても勉強どころではないだろうなと思いました。
20世紀の心理学者たちは、「人間が1日に使える意思決定の量は限られている」ことを発見しました。
つまり、朝、どの服を着ていこうかとか、あるいはLINEでどう返事をしようかと意思決定するたびに、
わたしたちの心はすり減っていくのです。
1日に許された量の意思決定を使い果たすと、あとは理性ではなく欲望がわたしたちを支配するようになります。
その結果、余計な買い物をしたり、暴飲暴食をしたり、あるいはイライラして相手につらくあたったりするのです。
1日の終わりに「ああ、今日も疲れたな」と思わず口にしてしまうのは、そういうわけなのです。
では、どうすればよいのでしょうか?
答えは「疲れない脳をつくる」ことです

幸いなことに、科学技術の進歩はわたしたちの脳への負荷を増やすと同時に、その負荷を減らすための方法をも、もたらしてくれました。
最新の脳科学の研究によれば、1日5分程度の瞑想がストレスを軽減し、免疫力を高める一方で、
さらには集中力や創造性を向上させてくれることがわかってきました。
もともとは仏教の修行者のものであった瞑想の習慣は、日々のさまざまな刺激に対してむやみに反応せず、
脳を疲弊させる「判断」の作業をいったん停止させるために非常に有効なのです。
瞑想によって自己の内面を静かに観察し、「いまここ」に集中することを最近では「マインドフルネス」と呼び、
生活や仕事の質の改善に役立てる動きが世界中でひろがっています。
たとえばグーグルは、社員のストレスを軽減し、生産性やクリエイティビティを高めるために
社員向けのマインドフルネス・プログラムを開発しました。
5万人の社員の10人に1人がこのプログラムに参加しているといいます。
グローバル企業の経営者、ウォール街のトレーダーのあいだでも、
心を落ち着かせてパフォーマンスを上げるために瞑想を実践する人が増えているといいます。
また、テニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチは毎日15分間瞑想することで自分のなかの「ネガティブな声の音量」を下げ、
本当に大切にしているものに集中できるようになったと自著で語っています。

マインドフルネスは、睡眠、姿勢、食事といった生活習慣を見直すことでさらに効果を感じやすくなります。
本書では瞑想によって得られる効果、その効果をさらに高めるための睡眠、姿勢、食事のあり方を、
最先端の科学的な裏付けとともに解説します。
最終章では、こうした習慣を取り入れることによって、疲れない脳をつくるための「1日の過ごし方」を紹介します。
そこに書かれたことを、まずは1週間実践してみてください。
「ああ、今日も1日疲れたな」という言葉を使わなくなっていることに気がつくでしょう。
そして驚くほど仕事のパフォーマンスが改善し、ストレスやイライラから解放されていることを実感できると思います。

まずは姿勢と呼吸から
疲れない脳をつくるために、いまこの瞬間からできることがあります。
とてもかんたんなことですが、ほとんどの人がやっていないことでもあります。
それは、背筋を伸ばして、深い呼吸をすることです
現代人は呼吸が浅くなっているといわれていますが、その大きな理由のひとつは姿勢の悪さにあります。
ノートパソコンやスマートフォンを使うと、どうしても背中が曲がって猫背になりがちです。
背中が曲がっていると、横隔膜を使うことができないので、呼吸が浅くなってしまうのです。

呼吸は、その人の身体や感情のバロメーターです。ストレスやイライラは、浅い呼吸となってあらわれます。
十分な酸素が体にも脳にも行きわたらないのですから、心身が不調になるのは当たり前です。
「最近、ストレスがたまっているなあ」「体がすぐに疲れてしまう」と感じている人は、
いますぐ背筋を伸ばして、2、3分でもいいので、ゆっくりと深い呼吸をしてみてください。
深い呼吸のポイントは、ゆっくり吐くことです。鼻から5秒ぐらいかけて吸い、
吐くときは口からでも鼻からでもいいので、10秒から15秒かけます。
わたしたちの身体は、息を吸うときには交感神経が、息を吐くときには副交感神経が働いています。
交感神経は興奮や緊張状態にあるとき優位になるのに対して、副交感神経はリラックスした状態にあるとき優位になります。
ゆっくりと長く息を吐くことは、副交感神経を優位にするので、リラックスした状態を生み出しやすいのです。
息をゆっくり吐いているとき、体内に二酸化炭素がたまってきます。
血液中に二酸化炭素が行きわたると、幸せな気分をもたらす神経伝達物質であるセロトニンの分泌が増えていきます。
セロトニンには、気分や感情の高ぶりを抑えたり、衝動的な行動を抑制したりする効果があることが知られています。
つまり、脳内にこの物質が分泌されることによって、ストレスやイライラが取り除かれ、
心をゆったりとした状態に置くことができるのです。
1日のうちに、緊張状態や興奮状態にある時間が長いほど脳は疲れます。
ですから、意識して脳をリラックスさせてやる時間を増やすことはとても重要です。
1日に1回でもいいので、まずは姿勢と呼吸を整える時間をつくってみましょう。
とくに、プレゼンテーションや大事な商談、打ち合わせの前に呼吸を整えると、冷静な状態でのぞめるようになります。
背筋を伸ばして、深い呼吸をする——こんなかんたんなことを続けていくだけでも、脳の基礎力がはっきりと改善していきます。

(橋本追記)石川先生の「観察瞑想」も、昨年紹介した「マインドフルネス」の一種だそうです。
(当職のブログ)
マインドフルネス
2016年09月07日

「マインドフルネス」は、アメリカ精神医学会が推奨している、ストレス対処法の一つです。
(以下省略)

 

 

 

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(参考)ABCDE理論

2017年03月30日 | 情報

当職の勉強のために、アップしました。
参考までに申し上げると、当ブログの目的のひとつは、当職の勉強と資料保存のためにあると考えています。
言わずもがなですが、当ブログをご覧いただいている皆さまも、ご自分のブログを立ち上げることをお勧めします。

日経Gooday 30+
気付けばネガティブ思考 脱却に役立つABCDE理論って 
後ろ向き思考のクセを直したい(前編)

上司に注意を受けるとひどく落ち込み、自分が嫌われているせいだと思ってしまうあなた。
どうすればそんな「後ろ向き思考」の癖を改め、物事を前向きに考えられるようになるのでしょうか。
帝京平成大学現代ライフ学部教授の渡部卓さんに伺いました。

人にはそれぞれ、物事の考え方や受け止め方にその人なりの傾向や癖があります。
そうした思考の癖は、その人の育ってきた家庭や職場環境、受けた教育や人間関係、成功・失敗の経験などから
形成された価値観などに左右され、十人十色です。ただそれを将来に向けて変えていくことは可能です。
特に、物事の悪い面にばかり着目しがちな人は、「ABCDE理論」と呼ばれる手法を身につけることで、
徐々に物事を多面的に捉えられるようになります。

■「悪い思考の癖」を自問自答で修正していく
ABCDE理論は、臨床心理の権威である米国のアルバート・エリス博士が提唱した認知療法の一つです。
ABCDEは、それぞれ次のような意味を示します。

ABCDE理論
A=Activating Event(出来事や外部からの刺激)
B=Belief(受け止め方、認知、解釈)
 RB=Rational Belief(合理的な良い思考)
 IB=Irrational Belief(非合理的な悪い思考)
C=Consequence(結果)
D=Dispute(反論、または「Dialogue」として自問自答)
E=Effect(効果や影響)

Aの出来事は現実に起きた事実で、変えることのできないものです。この事実をどう捉えるかは、Bの受け止め方次第です。
Bの受け止め方には、合理的な思考(Rational Belief=RB)と非合理的な思考(Irrational Belief=IB)があります。
合理的な思考はストレスを生みにくい「良い思考」、非合理的な思考はストレスを生みやすい「悪い思考」といえます。
このBの受け止め方は、自分で変えることができます。
つまり、事実を変えることはできないものの、受け止め方=認知は変えられるのです。
認知のしかた(B)によって、Cの結果は良い方向にも悪い方向にも変わります。
そして、自分の思考をストレスを生みにくい良い思考へと切り替えていくために、DとEのプロセスがあります。
DはオリジナルではDispute(反論)と定義されていますが、日本人にはきつく感じる印象があるため、
私はこのDをDialogueのD、つまり自分との対話、自問自答と置き換えています。Dによって、Eの効果や影響が生まれます。
つまり、出来事(A)に対して、悪い受け止め方(B/IB)をしたことによって、
不安やストレス、怒りや不満といったネガティブな感情を持ったときに(C)、自分の受け止め方を自問自答して(D)、
多面的に捉えて良い受け止め方(B/RB)に修正すると、適切な感情や行動が生まれる(E)…というのがABCDE理論の一連の流れです。ABCDE理論の過程は、その人の性格やその場の状況に応じても変わってきますが、分かりやすい例を挙げてみましょう。

「ABCDE理論」による考え方の例
A(出来事)
上司に提出した報告書のミスを指摘された。
  ↓
B(受け止め方)/ IB
上司は些細なミスでもすぐに指摘する。これくらいのミスは誰にでもあることなのに、私ばかり注意を受けているような気がする。
  ↓
C(結果)
自分ばかり注意する上司に対して怒りを覚え、「私を嫌っているのではないか」と不安にもなる。
  ↓
D(反論、自問自答)
上司は本当に私のミスばかり指摘しているだろうか。ミスがあれば、ほかの人でも同じように指摘しているのではないか。
私がミスを指摘されるのは、それだけ不注意なミスが多いせいかもしれない。
  ↓
E(効果や影響)
上司からミスについての注意は受けるが、私の仕事の能力や人格そのものを否定されるような叱り方はされていない。
まずは不注意によるミスをなくすように努力してみよう。

ABCDE理論は時折、ネガティブなことをすべてポジティブに反転していくものだと思われることがありますが、
決してそうではありません。どのように捉えてみてもポジティブになれないときは、
前向きにあきらめるように受けとめる場合もあるでしょう。
ABCDE理論はあくまでも、事実を客観的に俯瞰(ふかん)し、それまで一面的だった受け止め方を、
多面的に捉えていくための手法なのです。
ABCDE理論を活用して物事を多面的に捉えるようになるために、読者の皆さんにお勧めしたいのは、日記をつけることです。
私も「メンタフダイアリー」というABCDE理論を応用した日記のフォーマットを考案していますので、
後編では、そのフォーマットに沿って日記の書き方を紹介しましょう。

■この人に聞きました
渡部 卓(わたなべ たかし)さん
帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。
1979年早稲田大学卒業。米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得。
複数の企業勤務を経て、2003年会社設立。職場のメンタルヘルス対策、ワークライフコーチングの第一人者として活動する。
著書に「折れない心をつくる シンプルな習慣」(日本経済新聞社)など。

マイナス思考からの脱却に 効果的な「日記習慣」 
後ろ向き思考のクセを直したい(後編)

何かあるとすぐに後ろ向きに考えたり、悪いほうに捉えてしまったりする癖を、どうすれば改め、
物事を前向きに考えられるようになるでしょう。帝京平成大学現代ライフ学部教授の渡部卓さんに話を伺いました。
今回は、前編「気付けばネガティブ思考 脱却に役立つABCDE理論って」で紹介したABCDE理論を
活用して物事を多面的に捉えるようになるために役立つ、日記の書き方を紹介しましょう。

■「日記」の習慣で自分を見つめる

ABCDE理論を活用して物事を多面的に捉えるようになるために、読者の皆さんにお勧めしたいのは、日記をつけることです。
以前「抱え込みがちな仕事や不安 上手に手放すには?」の記事で、不安を手放す方法として「コラム法」をご紹介しましたが、
コラム法の多くはABCDE理論に基づいています。
私も「メンタフダイアリー」というABCDE理論を応用した日記のフォーマットを考案していますので、
活用していただければ、心の状態を客観視できるとともに、自分の思考の癖が見えてくるので、
悪い思考の修正を図るのに役立ちます(ちなみに「メンタフ」というのは「メンタルタフネス=ストレス耐性」を意味する造語です)。
メンタフダイアリーは次の9項目に従って記入していきます。各項目のポイントと、前編で紹介した例での書き方を紹介しておきましょう。

1. 気になった出来事
「悲しかった」「ショックだった」「なんとなくモヤモヤした」など、心にひっかかる出来事があったときに、
いつ、どんな状況で、どんなことがあったのか。誰にどんなことを言われたのかなど、出来事の内容を具体的に書き出します。
その際、主観や想像は交えず、客観的な事実だけを書くようにします。
2. そのときの気分
[1]の出来事について、自分がどんなふうに感じたかを書きます。
例えば、「怒り」「嫌悪」「悲しみ」「驚き」「恐怖」「落ち込み・不安」といった感情に照らしてみるといいでしょう。
3. その気分の強さ
最悪の気分の限界を100%として、どのくらいの不快だったかを指数化して書きます。
「怒り85%」や、「怒り70%、悲しみ30%」など感情を組み合わせても構いません。
4. そのとき頭に浮かんだこと
そのとき頭に浮かんだこと、とっさに感じたことを書きます。
5. なぜそう考えたのか
なぜ[4]のように考えたのか、その理由を思い起こして書きます。
6. もう1人の自分ならどう思うか
[5]での自分の考えを客観的に見直します。これは、ABCDE理論でいえば、自分の認知(Belief)に反論
あるいは自問自答する(Dispute, Dialogue)ステップです。
7. 現実的な着地点
現実的な心の落としどころを書きます。
8. 気分の強さの変化
[3]で書いた気分の強さが、今はどう変わったか。変化を点数であらためて記入します。
9. 自分の考えはどう偏っていたか
[1]の出来事について、自分の受け止め方がどう偏っていたかを書きます。

これを実際にメンタフダイアリーとして書き込んでみたのが、次ページで紹介する例です。
メンタフダイアリーは2007年に書籍として出版されていますが、
近年ではストレス対策への関心が高まっている中国でも出版されました。
認知療法を解説した書籍は中国では珍しいようで、多くの読者から役立ったという感想が寄せられています。
「メンタフダイアリー」の記入例
ストレスを感じたことなどを記録し、その原因や背景を考え、自分の捉え方を客観的に見直し、
思考の癖や歪みを認知療法のステップを活用して修正していく方法は、欧米では「セルフヘルプカウンセリング」と呼ばれています。
近年では、インターネット上やスマートフォンのアプリケーションで認知療法によるセルフヘルプカウンセリングが
可能なアプリケーションの開発も進んでいます。
プライバシーに十分配慮されていれば、このようなサイトで蓄積された心理プロセスでのデータベースは
貴重な情報データベースとなります。
そしてこれを将来はAI(人工知能)を組み合わせながら、安価で汎用性をもったセルフヘルププログラムの開発が
産学官の連携により実現することを私は期待しています。
メンタフダイアリーの構造はシンプルなので、手持ちのノートなどに記してみてもいいですし、
パソコンやスマートフォンなどでフォームを作って記録してみてもいいでしょう。
すぐに実践できるセルフヘルププログラムのツールとして、活用してみてください。

【まとめ】
・考え方や受け止め方にはその人なりの傾向や癖があるが、変えていくことはできる
・「ABCDE理論」の実践で、 一面的な考え方を、多面的な捉え方に変えていくことができる
・自分の考え方の癖を修正するには「日記」も有効。「メンタフダイアリー」のように
  自分を客観視できるよう構造化された日記を活用してみよう

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「心身の健康問題」 対策検討へ

2017年03月29日 | 情報

自殺の動機、3人に2人「心身の健康問題」 対策検討へ
2017年3月23日 朝日

2016年中に自殺した人のうち、3人に2人が心身の健康問題が動機となったことがわかった。
一方、生活苦や家庭問題は2割程度だった。厚生労働省と警察庁が23日に分析結果を公表した。
自殺者数は7年連続で減っているが、厚労省はこうした結果を踏まえ、自殺防止対策を検討する。
16年中の自殺者数は2万1897人。そのうち1万6297人分の遺書などを分析し、1人最大三つまで自殺の動機をまとめた。
それによると、うつ病や体の病気など健康問題が1万1014人(67・6%)と最も多かった。
生活苦や借金など経済・生活問題の3522人(21・6%)、
夫婦の不和や将来に悲観したなど家庭問題の3337人(20・5%)が続いた。
15年も健康問題が最多の67・5%で、経済・生活問題が22・7%など同様の傾向だった。
厚労省の担当者は「自殺の多くは様々な要因が連鎖する中で起きている」としている。
16年中の自殺者数は前年より8・9%減り、12年の9・1%減に次ぐ過去2番目の大幅減となった。
東日本大震災に関連する自殺者数は前年より2人少ない21人。11年からの累計では183人となった。

自殺による損失額は4594億円 厚労省が生涯所得算出
2017年3月23日 朝日

厚生労働省の研究班は23日、2015年中に自殺した人が生きていれば得られていた生涯所得が推計4594億円だったと発表した。
失業率などを考慮して算出した。
自殺者数は減少傾向が続いており、損失額は自殺対策基本法が施行される前の05年に比べて992億円減った。
都道府県別では、東京都が最多で669億円、大阪府が365億円、神奈川県が364億円と続いた。
厚労省の統計では、全国の自殺者数は05年が3万553人で、15年が2万3152人。
研究班は、自殺総合対策推進センターの本橋豊センター長や一橋大の金子能宏教授らで構成した。

成人の4人に1人「自殺考えた」 増加傾向 厚労省調査
2017年3月21日 朝日

成人の4人に1人が自殺したいと考えたことがあることが、厚生労働省の調査で分かった。
21日に発表された意識調査で、過去に実施した2008年と12年の調査と比べて増加傾向にある。
別の統計によると自殺者数は減っているが、厚労省は自殺に陥るリスクは根強いとみて対策を検討する。
調査は昨年10月に全国の20歳以上の男女3千人を対象に書面で実施。2019人から回答があった。
それによると、23・6%が「本気で自殺したいと考えたことがある」と答えた。
08年の19・1%、12年の23・4%から増え続けている。
理由は質問していないが、自殺を考えたことがある人にどう乗り越えたのかを聞いたところ、
「趣味や仕事で気を紛らわせるよう努めた」(36・7%)、「身近な人に悩みを聞いてもらった」(32・1%)が多かった。
悩みやストレスを感じたとき、相談や助けを求めることにためらいを感じる人は46・9%いた。
警察庁の自殺統計(速報値)によると昨年の自殺者数は2万1764人で、7年連続で減少している。
政府は今回の調査結果を踏まえ、今夏に新しい自殺総合対策大綱を閣議決定して、対策を強化する方針だ。

「自殺考えた」微増23.6% 厚労省調査 
2017/3/21 日経

厚生労働省は21日、自殺に関する成人の意識調査の結果を公表した。
「自殺したいと思ったことがある」と答えた人は23.6%に上り、2012年の前回調査より0.2ポイント上昇した。
相談ダイヤルなど行政の対策が認知されていない実態も明らかになった。
厚労省によると、昨年の自殺者は2万1898人と7年連続で減少しているが、
厚労省の担当者は「自殺者はなお多く、対策の充実が必要だ」と強調。
「新たな自殺総合対策大綱に調査結果を反映させていきたい」と話した。
調査は昨年10月に全国20歳以上の男女3千人を対象に実施。2019人(回収率67.3%)から回答を得た。
「本気で自殺したい」と考えたことがある人の割合は女性が25.6%、男性が21.4%だった。
年齢別にみると、50代が30.1%で最多。30代が28.7%、40代が24.3%と続く。
20代は23.0%、60代は20.2%と2割を超えた。70代は19.1%だった。
自殺を考えた人の中で、1年以内に考えていた人は18.9%に上った。
自殺を考えたとき、どのように乗り越えたか複数回答で聞いたところ、「趣味や仕事など他のことで気を紛らわせるように努めた」が
36.7%で最も多く、「身近な人に悩みを聞いてもらった」が32.1%で続いた。
今後必要な対策としては、59.9%が「子供の自殺予防」を挙げた。
「相談窓口の設置」(51.2%)「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」(47.2%)とする回答も多かった。
自治体の電話相談に全国共通の電話番号を設定した「こころの健康相談統一ダイヤル」は47.6%、
厚労省の補助事業で運営されている電話相談「よりそいホットライン」は71.8%が、
「知らない」と回答し、対策の認知度不足が浮き彫りになった。

平成28年度自殺対策に関する意識調査 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000155452.html

 

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連続有給休暇のすすめ(続編)

2017年03月28日 | 情報

前日の当職のブログの参考とさせていただいた記事を紹介します。

有給休暇 取りづらい雰囲気を醸し出す「A級戦犯」の“腹の内”
プレジデント誌 3/15(水)配信

■「有給休暇の取得は後回し」せざるをえない“大人の事情”
「有給休暇の取得のしやすさ」は、働きやすい職場環境の構成要素のひとつとしてよく挙げられます。
しかし、厚生労働省「平成28年就労条件総合調査結果」(以下、「厚生労働省」)によれば、
平成27年の年次有給休暇の平均取得日数8.8日、取得率は48.7%に過ぎません。
この数値は、前年(平均取得日数8.8日、取得率47.6%)とほぼ同じ。有給休暇が取得しやすくなっているとはとてもいえない状態です。
今回は、有給休暇の取得を阻む要因について、各種調査の結果や、ビジネスパーソンへのインタビュー結果を踏まえて考えてみます。

▼有給休暇の取得を阻む要因1:休暇取得に強く伴う罪悪感
「世界26ヶ国 有給休暇・国際比較調査2016」(世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディア調べ)によれば、
諸外国12カ国で有休消化率を比較すると、日本は世界ワースト1位であることが示されています。
しかも、有給休暇の取得に対して「罪悪感を感じている人」の割合でも、
韓国(69%)に次いで、日本は第2位(59%)になっています。

今回独自にオフィスの管理部門で働く人を中心にインタビューをしたところ、有給休暇の取得がしにくい理由として、
「周囲の人に仕事を頼みづらい」といった内容を中心とした意見が多く寄せられました。
「皆が忙しそうにしているので、休み中に発生する自分の仕事の代理を頼みづらく、休みが取りづらい」
「休暇の取得を計画していても、突発的な仕事が発生してしまうと取得を途中であきらめることもある」
「自分の仕事が収まっていても、1人でも休むとそれなりにチームの他のメンバーに負荷がかかるので、休みが取りづらい」
なかには「育児休業から復帰して1年を経過していないので、ともかく周囲の迷惑にならないように、仕事のペースを早く取り戻したい。
有給休暇の取得は後回し」といった子育てをしながら働く女性からの意見も耳にしました。
周囲の人に迷惑をかけることに対する罪悪感や、休暇を取ることそのものへの罪悪感などが、
休暇の取得を心理的に難しくしていると感じます。

■休みづらい雰囲気を醸し出す男性管理職の「腹の内」
▼有給休暇の取得を阻む要因2:休めるのに「休まない」男性管理職

上述の通り、日本は諸外国に比べて罪悪感を感じている人の割合が高く、有給休暇の消化率が低いです。
しかし、意外なことに、「休み不足を感じている人」の割合が世界26カ国中で最も少ないのも日本であることが明らかになっています。
厚生労働省が算出した男女別の有給休暇の取得率を見ると、男性は44.7%、女性は53.3%であり、
男性は、女性に比べて休暇を取得していないことが明らかになっています。
特に、国内では、未だに旧態依然とした働き方が残っていることが問題となっていますが、
そのボトルネックの1つとなっているのが、男性管理職の存在です。
日本総合研究所が東京圏に勤務する40~50代の男性管理職516人を対象に実施したアンケート調査によれば、
男性管理職の約3割が「昇進のためには、夏季・冬季休暇以外に有給休暇を取得できないのは仕方がない」と回答しています。
昇進のために、夏季・冬季休暇以外の有給休暇を取得できない現状を許容しているマネジメント層が一定割合存在しているのです。
もちろんそうした男性管理職のなかには、業務量の多さや部下を優先的に休ませなければならないといった使命感から、
休暇が取りたくても物理的に取れない不憫なケースも存在します。
しかし、その一方で有給休暇の取得が十分にできる環境にありながらも、休暇を取得しない男性管理職がいるのも事実です。
インタビューのなかでも、こんな意見が寄せられました。
「休みづらい雰囲気を醸し出している男性管理職が多くて、休みづらい」
「自分の職場とは異なり、配偶者の職場の男性管理職は、そもそも遊び上手で、休みを取るのが上手な人が多く、羨ましく感じている」
「男性管理職が率先して休暇を取得するということが、部下の休みやすさの前提となる」
こうした意見は、これまでも幾度となく指摘されてきたことではあります。

■「組織一体感・終身雇用・年功賃金」に執着するから休めない
▼有給休暇の取得を阻む要因3:休暇取得を阻む日本型雇用慣行

「1:休暇取得に伴う強い罪悪感」、「2:休めるのに『休まない』男性管理職」では、
従業員個人が有給休暇の取得がしづらいと感じる代表的な理由を述べました。
では、なぜそのような事象が生じてしまうのでしょうか。
独立行政法人労働政策研究・研修機構「第7回勤労生活に関する調査」(平成28年9月)によれば、
調査を開始した1999年以降、「組織との一体感」(88.9%)、「終身雇用」(87.9%)、「年功賃金」(76.3%)を支持する人の割合は、
いずれも過去最高の水準となっています。
加えて、ひとつの企業に長く勤め管理的な地位や専門家になるキャリアを望む人の割合は50.9%と過半数を占め、
1999年以降、年々増加傾向になっています。
これらのことからは、未だに多くの人が、日本型雇用慣行を望んでいる実態が窺えます。
職場で休暇の取得がしづらいということと、この日本型雇用慣行は、決して無関係ではないと考えます。
例えば、上記の調査結果で挙げられていた「組織との一体感」の重視は、個性よりも調和が重視され、
結果として、個人ではなくチームの成果が重視されることにもなります。
チームでの成果を重視すれば、チームで柔軟に対応し成果を上げることが求められ一方で、
個人の業務分担が曖昧になってしまうことはやむをえません。休暇を取得する上でも、チームへの配慮が求められることになります。
また、「終身雇用」や「年功賃金」の重視は、定年まで現在の職場で
少しでも波風を立てずに居心地良く仕事ができることを優先する心理につながります。
職場の人間に対して、過度に気を遣うようなるのもこのためです。
特に、管理職ともなれば、「年功」で得た現在のポジションや給与水準を何とか維持し続けようとして、
会社からの人事評価に極端に敏感となり、結果的にできるだけ会社を休まず、
働こうとする態度を示すことになることが理解できないわけではありません。
多くの人が日本型雇用慣行を望み、日本型雇用慣行が定着しつづけている実態が、
結果として、休暇の取得を阻む組織風土を作り出しているのではないでしょうか。
それは、休暇の取得をしやすい職場づくりが、個人の努力だけでは難しいことを意味しています。
働き方改革が、一部の個人の努力だけでは実現が難しいからこそ、
残業時間の上限規制やプレミアムフライデーの導入といった政府や企業サイド主導の取り組みに頼らざるをえないという面は
否定できないでしょう。
ただ、本質的な問題(日本型雇用慣行を脱することができないこと)を放置すれば、
職場では、非正規社員などの弱者へのしわ寄せが増大し、ホワイトカラーでは、実質的な持ち帰り残業が増えるだけで、
職場のストレスが高まるだけになりかねません。
有給休暇取得を阻むのは、無意識のうちに企業や個人に内在する「変化することに対する抵抗感(現状維持への執着)」のように
思えてなりません。

榎本久代
日本総合研究所にて人事・組織コンサルティング業務に従事。現在、リサーチ・コンサルティング部門のマネジャー。
近年、女性活躍推進をテーマに管理職及び女性社員の意識改革研修等を担当。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170315-00021568-president-bus_all&p=3

 

 

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連続有給休暇のすすめ

2017年03月27日 | 情報

現在、安倍首相の主導で、働き方改革が進められています。
安倍首相主導の、働き方改革政策が脚光を浴びる以前から、労基法の改正は検討されてきたのですが、
現在では、どうも労基法の改正の中心テーマではなかった、残業時間の上限問題に議論が集中しているようです。

さて、当ブログは、メンタルヘルス対策がテーマであることは、言うまでもありません。
ですから、国会を中心に議論されている「働き方改革」について、当職の考えを述べます。
結論を、最初に申し上げますと、働く人にとって最も有効で、メリットのある対策は、
「有給休暇の連続した取得」を可能にする職場風土の醸成、にあると考えます。
このことは、当職が考え出したオリジナルではありません。従来より多くの識者が提言しています。
現時点での有力な対策と考えられている、残業時間の上限に制約を設ければ解決するのか、
と言われれば、首をかしげざるをえません。
「働き方改革」の議論が残業時間の上限問題に偏っている現状を考えると、
「いや、そうじゃないよね」と云いたくなるのです。

メンタルヘルス対策上、最も有効な「働き方改革」は、「連続有給休暇の取得」であると考えるのですが、
厚生労働省の「平成28年就労条件総合調査結果」によれば、
平成27年の年次有給休暇の平均取得日数8.8日、取得率は48.7%に過ぎません。
年次有給休暇を取得できない原因は、「職場の文化」すなわち、
「たいして仕事もできないのに、有給休暇を取得するなんて、とんでもない」
「みんなが、深夜、休日までもはたらいているのに、有休を取得する気持ちが理解できない」等々でしょう。

長時間残業を削減する、または、なくすことも働き方改革の有力な対策であることは、云うまでもありませんが、
長期間残業をするな、させるな、というと、必ず「サービス残業」や「仕事の家への持ち帰り」現象が
起きることは、容易に想像できます。
ですから、実態として総残業時間、または総労働時間を削減することは、容易ではありません。
「何を言ってんだ、やらなければ、いけないんだよ」という声が聞こえてきますが。

それでは、連続有給休暇のメリットは、何か?
第一に、忙しい日常が、一時的にせよ、無くなってしまうことです。
忙しさが「断絶」するわけです。突然に「空白の時間」が現れるのです。まさに「バカンス」です。
当職には、医学的な知見はありませんが、精神的にはとても多くの効用があるように思えるからです。

第二に、連続有給休暇の取得が、目標化するのです。
要するに、もう少し頑張れば、連続有給休暇が取得できるという動機づけができるのです。
人は、エンドレスの忙しさには耐えることが出来ないのです。
しかし、近くに目標があれば、そこまでは頑張るぞ、頑張れるという心境になるのです。

第三に、連続有給休暇明けには、気分が一新しているのです。
仕事に取り組む意欲が、「それなりに」醸成されているはずです。
人は、不思議なもので、連続して休んでいると、働くのもいいことだと思えるようになるのです。

「有給休暇の取得のしやすさ」は、働きやすい職場環境の象徴と考えます。
そして、メンタルヘルス対策になる具体的な手法と考えています。

 

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