中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(プラス情報)ストレス要因 公立校調査 「保護者対応」教員の重荷

2024年07月22日 | 情報
記事は、学校の教職員のメンタルヘルス問題ですが、企業に就労する労働者にも参考になりますので、紹介します。

〇ストレス要因 公立校調査 「保護者対応」教員の重荷 理不尽な要求・苦情 「学校怖い」
2024/06/30 読売

全国の公立小中高校の教職員が加入する「公立学校共済組合」の調査で、強いストレスを感じている教職員の割合が2023年度、過去最高の11・7%に上った。特に保護者の過度な要求や苦情への対応に疲弊する教職員が増えており、負担を軽減する対策が急務だ。

順位に変化 

夜や週末も
「平日夜や週末も保護者対応に追われた。学校に行くのが怖くて、つらかった」。関東地方の公立小学校に勤める男性教諭(35)は、教員4年目の秋を忘れられない。
担任した5年生のクラスで、休み時間に私物の破損を巡るトラブルが起きた。被害児童の保護者は「これは犯罪だ。相手を出席停止にしてほしい」と要求してきた。保護者会を開いて経緯を説明し、休み時間も子どもたちを見守るなど対策を取ったが、保護者の怒りは収まらなかった。
年度末まで対応に追われ、ストレスで朝、体が動かない日もあった。副校長に電話対応を代わってもらうといったサポートを受け、休職には至らなかったが、「同じようなことが起きたら、今度は耐えられるか分からない」と語る。

業務量過多
長時間勤務が常態化する学校現場では、うつ病などの精神疾患で休職する教員が年々増加している。文部科学省によると、公立学校では22年度、過去最多の6539人に上った。
共済組合は今回、16~22年度に「ストレスチェック」を受検した延べ約172万人分のデータを初めて分析し、ストレスの具体的な要因を調べた。
分析の結果、明らかになったのは「保護者対応」がストレス要因として高まっていることだ。22年度には12・4%が要因(二つまで選択可能)に挙げ、それまで4位だった「同僚との人間関係」を上回った。
東京都内の公立中学校に勤める50歳代の女性教諭は「最近、保護者の理不尽な要求や高圧的な態度が増えた。教育というサービスを受ける『客』の振る舞いで、 躊躇なく不平不満や怒りをぶつけてくる」と現場の実態を明かす。
「保護者対応」をストレスと感じる割合は、20~30歳代の教諭が高かった。若手にとって保護者のほとんどは年長のため対応が難しく、ストレスを感じやすいとみられる。
全体で、ストレスの要因として最も多かったのは、報告書の作成など「事務的な業務量」で、回答者の2割が負担に感じていた。次いで、「対処困難な児童生徒への対応」や学校の業務を分担する「校務分掌」を挙げる人が多かった。主なストレス要因は固定化され、長年解消されていない実態が浮かんだ。

やりがい
だが、共済組合の調査では、「働きがい」を感じている教職員は多かった。他業種の平均を50とした場合、22年度は男性の教職員が55、女性は57だった。
教員のメンタルヘルスに詳しい近畿中央病院(兵庫)の井上麻紀・公認心理師は「子どもの成長に関わりたいという熱意の表れだろう。一方で、やりがいや責任感で仕事を抱え込んでしまう側面もある」と危惧する。
実際、教職員の「やりがい」が多忙な学校現場を支えているとの声は多いが、「かえって仕事を減らす取り組みが進まなくなっている」とも指摘される。
共済組合の丸山洋司理事長は「授業の充実や子どもへの指導など、教員でなければできない仕事に集中できるよう、教育委員会や学校は、学校が担う業務の整理をより進めるべきだ。働きやすい職場づくりに努め、教職員のストレスを軽減してほしい」と訴えている。

校長OBを配置・弁護士から助言…国や自治体 対策急ぐ
 教職員に理不尽な要求を繰り返す「モンスターペアレンツ」と呼ばれる保護者への対応を巡っては、国や自治体に支援の動きが広がる。
文部科学省は今年度、校長OBらを「学校問題解決支援コーディネーター」として配置して、学校を支援するモデル事業を始めた。学校と保護者だけでは解決が難しいトラブルを、双方から話を聞いて解決策を提示する。最近では、三重県が6月、県教育委員会に相談窓口を設置した。
学校が抱える問題に法的な見地から助言をする弁護士「スクールロイヤー」の導入も進む。2022年度時点では39都道府県教委が配置していた。文科省は3月、全国の教委にさらに幅広く活用するよう求める通知を出した。
高校教師で弁護士でもある兵庫教育大の神内聡教授(学校経営学)は「SNSで教員を個人攻撃したり、一方的に罵倒したりするなど一部の保護者が悪質化しており、学校だけで対応するには限界がある。警察の力も借りるほか、弁護士と学校が日頃から意思疎通を深め、子どもと教員の双方にとって良い解決法を目指してほしい」と求めた。
ストレスチェック 2014年の労働安全衛生法の改正で一定規模の企業などに義務付けられた。心身のストレス反応が強い場合は「高ストレス者」とされ、医師による面接が行われる。
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前時代的な体育会系の指導

2024年07月22日 | 情報
企業にとっては、またひとつ難題がふえました。
  • 労基署に労災を申請したが、不認定とされたため、労災と認めるよう国に求めた訴訟の判決で、労基署の処分を取り消した。
  • 労働者の労災が国に認定された場合、最高裁は、事業主は取消訴訟を提起できないとする初めての判断を示した。(小職24.7.5掲載ブログを参照)

また、小職が以前より申し上げてきましたが、労働者は、長時間労働にはある程度の耐性がありますし、
パワハラがあっても、「柳に風」のたとえ通り、ただひたすら受け流せばよいのですが、
この二つが重なると人間は耐えられなくなります。


住友林業社員自殺 長時間労働とパワハラ認定 福岡地裁判決
毎日新聞2024/7/5 

大手ハウスメーカー「住友林業」(本社・東京)の熊本支店の新入社員だった男性(当時24歳)が2016年1月に自殺したのは、
長時間労働や上司のパワハラによるうつ病発症が原因だとして、男性の父親が労災と認めるよう国に求めた訴訟の判決で、
福岡地裁は5日、労災不認定とした熊本労働基準監督署の処分を取り消した。
中辻雄一朗裁判長は長時間労働とパワハラを認めた上で「前時代的な体育会系の指導で不適切だった」と非難した。
判決によると、男性は15年4月に入社して熊本支店に配属後、16年1月1日に自殺した。
両親は17年2月に熊本労基署に労災を申請したが、不認定とされたため、20年2月に提訴した。

判決は、同社の1日の休憩時間は2時間と規定されているが、男性が取得できたのは1日1時間だったと指摘。
自殺の半年前から1カ月の時間外労働が69~104時間に達していたと認定し、精神疾患に起因する過労自殺の基準に迫る状況だったとした。
さらに上司が同僚の面前で男性を叱責したり、「気合が足りない」と発言したりしたことなどをパワハラと認定し
「自死という最悪の結果につながりかねない不相当な指導と言わざるを得ない」と非難。
長時間労働とパワハラにより、うつ病を発症し自殺したと判断し、労基署の処分を取り消した。
男性の母親は判決後の記者会見で「長男の霊前にやっとあなたの苦しみがわかってもらえたよと報告できます。
長男の死を無駄にしてほしくないと願うばかり」と涙ながらに訴えた。
熊本労基署は「今後の対応は判決内容を検討し、関係機関とも協議した上で判断したい」などとコメントした。

過労とパワハラで自殺認定 住友林業社員、福岡地裁
2024年7月6日 日経

住宅メーカー大手、住友林業(東京)の熊本支店で働く男性新入社員(当時24)が2016年に自殺したのは、
長時間労働や上司のパワハラが原因として、父親(64)が遺族補償を不支給とした熊本労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、
福岡地裁は5日、業務起因性を認め処分を取り消した。
中辻雄一朗裁判長は判決理由で、月100時間を超える時間外労働(残業)があったと認定。
上司が同僚らの面前で叱責したり、「気合が足りない」などと前時代的な指導をしたりしたことで
「自尊心を損なわせて無抵抗な状態に追い込み、不相当で適切性を欠くものだった」と指摘した。
判決によると、15年4月に入社し、顧客への電話営業などに従事。
11月17日ごろに精神疾患を発症し、16年1月1日に自殺した。父親が17年2月に労災を申請したが、12月に不支給処分となり、審査請求も退けられた。
母親(58)は記者会見で「こんなにつらい悲しみ、苦しみをもう誰にもしてほしくない」と涙ながらに話した。
労基署は「関係機関とも協議をした上で判断したい」とコメントした。〔共同〕
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18.19日は当ブログを休載します

2024年07月17日 | 情報
18.19日は出張のため、当ブログを休載します。
再開は、来週月曜日の22日です。
よろしくお願いします。
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主治医・産業医シリーズ⑦(50人未満の事業場はどうする)

2024年07月17日 | 情報
1.産業医の安衛法での規定
・従業員50人以上の事業場(註;企業ではありません)では、産業医の選任義務があります。
・従業員50人未満の事業場(註;企業ではありません)では、
産業医の要件を備えた医師等に労働者の健康管理を行わせることが努力義務となっています。(安衛法第13条の2)

2.企業と事業場は、どう違うのか?
・安衛法は、事業場を単位として、その業種・規模等に応じて適用しており、事業場の適用単位は、労働基準法における考え方と同一です。
・つまり、一の事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定し、
同一の場所にあるものは原則として一の事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とします。
・例外としては、場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、
組織的な関連や事務能力等を勘案して一の事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一の事業場として取り扱います。
・また、同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、
その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場としてとらえることにより、
安衛法がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえることとしています。
この例としては、工場内の診療所などがあげられます
根拠;(補足)基発第566号 平成8年9月13日

3.産業医の選任義務のない事業場、つまり従業員50人未満の事業場の労働者の健康管理等(第13条の2関係)
本条は、すべての事業場において労働者の健康の確保が図るには、
産業医の選任義務のない事業場においても産業保健サービスが提供される必要があり、
事業者は、これらの事業場については、当該事業場の状況に応じ、
必要な場合に、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他労働省令で定める者に、
労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるよう努めなければならないものとした。
(発基第91号の第2の3「事業場の範囲」昭47.9.18付け)

4.小職の提案
・多くの従業員50人未満の事業場・企業では、産業医を選任する資金力がありません。
しかし、50人未満の事業場の場合は努力義務ですから、安衛則第14条に規定されたすべての職務を依頼する必要はないはずです。
・従って、必要とする職務、例えば、健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
(安衛則第14条の7)のみにすることもできますし、
ストレスチェックの実施結果の精査と、要面接者との面接・指導というように限定することも可能ですので、
安価で効果の最大化を目指すこともできるはずです。

・また、保健師を採用する方策もあります。
産業医報酬に比べ安価にすみますし、優秀な保健師(できれば産業保健師)

〇今回で、主治医・産業医シリーズは、とりあえず終了です。

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主治医・産業医シリーズ⑥(主治医・産業医シリーズ①の続編)

2024年07月16日 | 情報
『主治医・産業医シリーズ①・なぜ、主治医の診断書は、信用できない』で 
「それでは、受け取る側の企業の対応はどうすればよいのかは、別項です。」としました。以下に対策を紹介します。

主治医・産業医シリーズ⑥
主治医からの診断書を受け取った企業・事業場はどのように対応すればよいのか?
休職希望者、復職希望者から送られてきた、医師の診断書をどう取り扱ったらよいのか?

受け取った人事労務担当者は、産業医に判断を仰ぎます。
通常、産業医はそれまでの経緯を認識しているはずですが、担当者は、それまでの経緯を一通り産業医に説明します。
産業医は、自身が理解できない部分について、主治医に診療情報の提供を要請する依頼状を認めます。
そこでは、通常、正確な診断名と詳細な説明を求めます。
後日、主治医から産業医宛に、書面で回答が送られてきます。
人事労務担当者は、産業医から当該書面を受け取り、産業医の見解を聞き取ります。
そして、人事労務担当者は、個人情報保護のため、限られた関係者を招集して会議を開き、休職を認めるかどうか、
あるいは、復職を認めるかどうかを判定します。

念のために申し上げますが、医療情報の交換は医師間、すなわち主治医と産業医間でのみ成り立つことですので、
人事労務担当者等が、主治医に対して診断書の内容について問い合わせても、主治医からの回答は期待できません。
むしろ、主治医の当該企業への不信感が惹起する等、今後に差支えがありますので、決してなさらないようにしてください。


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