中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

28日~2日を休載します

2018年02月27日 | 情報

28日~2日は、休養を含めた出張をしますので、当ブログを休載します。
再開は、週明けの5日(月)です。
よろしくお願いします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

健康リスク高くても幸福度は上昇

2018年02月27日 | 情報

<調査>残業60時間以上、健康リスク高くても幸福度は上昇
2/9(金) 毎日

人材サービスのパーソル総合研究所と中原淳東京大准教授(人材開発)が共同で行った残業実態調査で、
残業時間が60時間を超えると健康リスクは高まるのに幸福度は上昇することが分かった。
幸福度は残業時間が長くなると少しずつ下がるが、60時間を超えると跳ね上がる。
会社への満足度や仕事への意欲も同様に60時間を超えると上がったという。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

調査は昨年10月、社員10人以上の企業に勤める管理職1000人と従業員5000人の計6000人を対象に
インターネットでアンケートを行った。8日に両者が共同で記者会見し、結果を発表した。
幸福度は五つの質問を7段階で評価してもらい35ポイント満点で測った。
幸福度が最も高かったのは、残業1~10時間未満(回答総数1046)で18.58ポイント、
最低は残業45~60時間未満(同193)で16.98ポイント。
残業60時間以上(同323)では17.54ポイントだった。
会社への満足度や仕事への意欲も残業45~60時間未満で最も低かったが、60時間以上では一転上昇した。
一方、幸福度や満足度は高いのに、就業継続意欲は低くなるという矛盾した結果も出た。
残業60時間以上で「この会社にずっと勤めていたい」と回答したのは28.8%で、
60時間未満の層よりも5ポイント低い。「働くこと自体をそろそろ辞めようと思う」という回答も18.6%に上った。
健康リスクも高い。残業60時間未満で「食欲がない」と回答したのは7.4%で、残業20~60時間未満の2.3倍。
「強いストレスを感じる」「重篤な病気・疾患がある」という回答も、残業時間が長くなるほど高くなった。
中原准教授は「幸福度や満足度、意欲は高いのに、ストレスは高く、休みたい、眠りたいと感じている。
意識や行動の不整合が起こっていて、正常な判断ができない状態なのではないか」と分析する。
自覚症状がないまま、病気や休職につながるリスクがあるという。

国会ではまもなく、働き方改革関連法案が審議入りする。
残業の上限を「月100時間未満、年720時間」までと定める罰則付き規制のほか、
高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設や
裁量労働制の対象拡大が盛り込まれる。
調査を手がけた小林祐児研究員は「長時間働いても幸福度も満足度も高い人にとって、
裁量労働制や高プロが天井知らずな働き方を促すことになるのではないか」と危惧する。
中原准教授は「もう少し分析が必要だが、残業60時間以上の人はランナーズハイのような状況なのではないか。
働くことを走ることに例えるなら、以前は中距離競走でよかったのに、人生100年時代の今は長距離競走。
バランスのとれた走り方をしないと、ランナーズハイでは完走できない」と指摘している。

中原淳准教授 プロフィール
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、
米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員などをへて、2006年より現職。
専門分野は人材マネジメント・人材開発。単著(専門書)に『職場学習論』(東京大学出版会)、
『経営学習論』(東京大学出版会)、『人材開発研究大全』(東京大学出版会)。
一般書に『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長戦略』『アルバイトパート採用育成入門』など、その他共編著多数。


(参考)残業が最も多いのは「運輸業、郵便業」 民間調べ
2018/2/8 日経

パーソル総合研究所(東京・渋谷)は8日、長時間労働に関する実態調査をまとめた。
会社員からの聞き取りに基づいて業種別の残業実態を明らかにしたほか、残業発生のメカニズムなどについても調べた。
残業を適切に削減することで短期的な時間当たりの生産性向上につなげるだけでなく、
中長期的には人手不足などの課題対策にもつながると見ている。
東京大学の中原淳准教授との共同研究で、従業員数が10人以上の企業で働く一般的な会社員5千人、
係長級以上の上司層1千人を対象に大規模な定量調査を実施した。
管理職を除く一般的な会社員で残業が最も多い業種は「運輸業、郵便業」
(1カ月に30時間以上の残業をしている人の割合は37.7%)で、「情報通信業」(同32.1%)や
「電気・ガス・熱供給・水道業」(同32.1%)などインフラ系の業種が続いた。
上司層で残業が多い業種は「建設業」(同54.2%)、「製造業」(同51.7%)、「運輸業、郵便業」(同50%)だった。
「企業の残業抑制施策の結果、上司の残業が増える実態が垣間見える」(中原准教授)と述べた。
一般的な会社員にサービス残業時間についても聞いたところ、
「教育、学習支援業」(1カ月あたり12.26時間)や「不動産業、物品賃貸業」(同11.54時間)が多かった。
残業発生のメカニズムについても調べた。優秀な部下や上司に仕事が集中する「集中」、
職場内の同調圧力で帰りにくい雰囲気がまん延する「感染」、
残業時間が60時間を超えると幸福度が増す一方で食欲がないなど健康リスクが高まって
正常な判断力が失われる「麻痺(まひ)」、長時間労働の慣習が次の世代にも引き継がれる
「遺伝」の実態があることがわかった。
集中、感染、麻痺、遺伝の循環構造が残業発生につながっており、
これらの循環を適切に止めることが残業の抑制につながるという。
同調査では残業が発生しない組織のマネジメントの特徴や効果的な残業削減対策などについても調べ、提言をまとめている。
パーソル総研の渋谷和久社長は「働き方改革で長時間労働是正の機運が高まっているが、
残業時間の削減と組織コンディションの向上を両立させるには、
どのような取り組みが有効なのか明らかにしたかった」と調査の狙いを語った。(企業報道部 岩野孝祐)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1日7時間労働へ

2018年02月26日 | 情報

たいへん良い試みと思いますが、労働時間は結果であって、労働時間を目標にするのは本末転倒になる可能性があります。
分かりやすい、理解得やすい、ので、社内の賛同を得られやすいのでしょうが、
意思決定のプロセスを見直す、評価基準を見直す、職場環境を改善する等の対策を講ずることが、まず大切と考えます。
そうでないと、サービス残業の爆発的増大につながる可能性を否定できません。
成り行きを見守っていきたいと思います。
みなさんは、どのようにお考えですか?

味の素、1日7時間労働へ AI・ICTで業務標準化
2/25(日) 日刊工業新聞

■年間平均労働時間 20年度に80時間短縮
味の素は年間の平均労働時間を、2020年度までに1750時間(17年度見込みは1830時間)、
1日の所定労働時間を7時間(同7時間15分)に、それぞれ短縮する目標を定めた。
17年度に進めた会議の減少やテレワーク推進、ペーパーレス化で一定の成果が得られた。
18年度以降は人工知能(AI)やICTを活用した業務標準化などを目指す。
19年度にグループ共同の基幹システム稼働も計画する。
味の素はグローバル企業を目指す観点から、労働時間短縮やダイバーシティーの取り組みを進めている。
テレワークや、役員会議ペーパーレス化などオフィスワーカーの生産性向上はかなり浸透してきたとみており、
今後は工場など生産現場の改善を進める。
国内食品は味の素、クノール食品、味の素パッケージングの3社で工場統合やICT・自動化を進めており、
これらの動きとも連動を図る。
グループ会社で別々だった業務システムを統合し、小売店や得意先への提案活動など、迅速に対応できるようにする。
サテライトオフィスも有効活用し、時間や交通費の節約を図る。
また「必要のない人も含めて会議を行ったり、必要ない人へも一斉でメールを送ったりする例も多分にあった」
(栃尾雅也取締役専務執行役員)とし、洗い出しや見直しを進める。

働き方改革~味の素流「働き方改革」~
https://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2016/61-62.pdf#search=
%27%E5%91%B3%E3%81%AE%E7%B4%A0+%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9%27

味の素「水曜は午後5時に“強制”退社」の理由
西井社長に聞く(前編)「2年前倒しで世界基準の働き方へ」
日経ビジネス 17.4.14
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/041300663/

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(参考)産業医が勧める上司像

2018年02月25日 | 情報

産業医が勧める上司像 理想は「キャバクラの店長」型 
産業医・大室正志さんインタビュー(下)
17.12.20 日経

産業医の大室正志さんは「ストレスを与え、部下に最も嫌われるのが、キレるポイントが分からない上司。
目指すべき理想の上司はキャバクラの店長」という。その真意は何か。
前回の「過労自死を招く企業の構造 産業医が見た職場のリアル」に引き続き、お話を伺いました。

■フラットな職場環境の落とし穴
白河 働き方改革などで労働環境が大きく変わる中、上司たちは多様な部下をマネジメントする上で、
何に気を付ければいいのでしょうか。
大室 まずは期待値の調整です。僕は、人間関係による問題の大部分は「期待値」だと考えています。

例えば、月に行けないことに対して不自由を感じる人は、ほとんどいないじゃないですか。
人は、最初から期待値の外にあるものには、ストレスを感じないんです。
今、「フラットな職場環境」をうたう企業が多くありますよね。
そのワードを見て、学生たちは「本当にフルフラットなんだ」と受け取ります。と
ころが実際は違う。言語化していないところに真実があるのです。
劇作家の寺山修司は、「書を捨てよ、町へ出よう」と言いましたが、彼の家は本で潰れそうでした。
言葉に出す部分というのは、自分に足りていない部分なのです。
つまり、「フラットな職場環境」をアピールする企業の多くは、
「昭和時代の当社と比べて相対的にフラットになった」という意味なのです。
本当にフルフラットだと捉えてしまった学生たちは、期待があった分、入社するとストレスになってしまいます。
だから上司は、まずは新入社員たちの期待値をうまく調整することが必要なんじゃないでしょうか。
もちろん、やり方は注意しなければなりませんが。

白河 まず、部下に対しては比較対象を明示した上で発言したり、きちんと言語化をしなければならないわけですね。
大室先生は、「トリセツが分かりやすい上司や指示が的確な上司が、評価が高い。
キレるポイントが分からない上司が最も部下にストレスを与える」と、著書で書いていらっしゃいましたね。

大室 子どもがAという行動をしたら、親はお尻をたたくとします。
子どもは、お尻をたたかれる行為自体は、それほどショックなことではありません。
ただ、子どもがAをしたら、親は昨日はニコニコしていたのに、
今日はお尻をたたいたというように一貫していない場合が問題なのです。
つまり、親が情緒不安定で対処が気分によって異なりますと、子どもにとってはキレるポイントがよく分からず、
何が正解か分からなくなってしまい、いつもおどおどするようになります。こうして、子どもも情緒不安定になるわけです。
だから、一見怖い上司であっても、「この人はこうすると怒る人なんだ」
「こうすると評価してくれるんだ」ということが一貫していれば、部下は「信頼できる」と感じるわけです。

大室 最近は、上司のみならず部下や同僚、顧客などさまざま々な立場から評価をする「360度評価」の導入が
進んでいますから、部下も上司を見る機会があります。
しかし、少し前は上司からの評価しかありませんでしたから、部下に対しては粗雑に扱う人が結構多かったんです。
部下が評価する制度を導入することで、上司のマネジメントもずいぶん改善されるでしょう。
これからは、部下を導くのが上手な人、ファシリテーション能力が高い人が評価されるのではないかと思います。

■「俺ってすごくない?」と確認する上司
白河 体育会系の「俺についてこい」というマネジメントではなくて、ちゃんと説明したり、
言語化できたり、フィードバックが適切なマネジメントが求められるわけですね。

大室 そうです。かつては、高圧的な「親父」的な上司のほうが評価される傾向が強かったのですが、
今はタモリさんや内村光良さんのように、一見すると薄味だけど、
自然に周りを導くような感じの人のほうが評価されると思います。

白河 自分がガーっと行くよりは、周りにいる人を輝かせるような人ですね。

大室 ただ、困った傾向も出てきました。ミドルマネジメントが、
部下に「俺って、すごくない?」と聞くケースが増えているのです。ちょっと気持ち悪いですよね。

大室さんは「マウンティングのようなプチパワハラ」が増えているという

白河 なぜ、そんなことを聞くのでしょうか。

大室 昔、上司と部下との関係は、親子ほどの年の差がありました。
しかし今は、両者の関係はフラットに近づきつつあります。
年齢だけではありません。今はプレイングマネジャーが増えているので、
かつてのように「監督と選手」のような明確な違いはなくて、「キャプテンと選手」くらいの差になっているわけです。
人は、近しければ近しいほど、「自分のほうが上だ」と確認したくなります。
例えば会議中、本来ならば部下をもり立てるのが上司の役割なのに、「俺のほうがすごい」と言ってしまう。
すると、部下がしらけてしまうんです。
つまり、上司というアイデンティティーが揺らいでいるから、マウンティングのような形のプチパワハラが増えているんです。
一つ一つは小さなものかもしれませんが、積もり積もってゆけば、パワハラと認定されてしまう恐れがあります。

白河 大室先生は、著書の中で「目指すべきはキャバクラの店長」と書いていらっしゃいましたね。
これについてちょっと説明してください。

大室 先ほども述べましたが、「オレについてこい」と言うような上司に、現在では若い部下はついてきません。
上司・部下だけの関係で多様化した人材をマネジメントするには限界があるのです。
いわゆる体育会系の上司・部下の関係は部下も自分と同じような文化環境で育ったという前提で、
言語化して説明するというプロセスを省略してしまいがちです。
むしろ、現在では部下は自分と全く違った環境で育っているので、もともと感じ方や考え方が違うのだという
「諦め」からスタートしたほうがコミュニケーションがうまくいく場合もあります。
自分とまったく違った文化環境の人々をマネジメントしている例として分かりやすいのがキャバクラなど
夜の接客業の男性店長ではないでしょうか。
そもそも、店員と自分は性別が違いますし、一人ひとりが能力給のため、
「店長だから偉くて給料も高い」という図式は通用しません。
共通要素が少ない存在ですから、男性店長は、「この部下たちのために、
このチームの能力を最大化するために自分がやれることは何か」を純粋に考えられるのです。
また、キャバクラは離職率が極めて高い職場ですので、部下を職場に引き留めておく「リテンション」も
店長の重要な役割になります。店長は部下に気持ちよく働いてもらうためには高圧的な態度を取りません。
むしろ店長はよく部下を褒めます。
企業は最近、すぐに辞めてしまう社員、
あるいは組織に属することよりも自分というものを大事にする社員を多く抱えています。
キャバクラのマネジメントは、彼らをマネジメントする上で参考になるのではないかと思ったのです。

白河 日本企業は45歳以上の男性が占める割合が非常に大きいといわれています。
日本は容易に社員を解雇することはできませんから、
その人たちをどのように活性化するかが重要課題になっていると感じます。
つまりおじさん改革ですね。急な環境変化の中で、彼らは上司としての役割を担い、
働き方改革で負担がどんどん大きくなっています。この世代のメンタルヘルスはどのようにしていけばいいのでしょうか。

■日本人男性は、日ごろから感情を言語化せよ
大室 個人的な感覚ですが、日本の文化というのは、口に出さないことが美徳とされます。
「下手なことを話すと、損をする」という意識が、社会の中で培われてきたのです。
一方、外資系企業は言いたいことをズバズバ言います。
なぜかといえば、話さない人間は、マイナスの評価になってしまうからです。
今は環境がどんどん変わってきています。プロジェクト型の業務が増え、雇用の流動性も高まりつつあります。
今までやったことのない業務をやらねばならない局面も増えてきました。
すると、ちゃんと話さなければ分からないことが多くなるわけです。
それを環境に置き換えようとするならば、ちゃんと言葉にして発する人を評価できるような仕組みを作らなければなりません。
というのは、人間は、自分の意見を言い慣れていないと、いざというときに言えなくなってしまうからです。
僕がさまざまな会社でメンタル不調で面談をするとき、特に男性社員は、感情言語が一切ありません。

白河 ええっ、感情を言葉にできないんですか? 例えば、彼らはどのように話すのでしょうか。

大室 上司にひどいことを言われて傷ついていたとしても、ただ「頭痛がして、頭痛薬を3錠飲んだらよくなった」という
事実しか言わないんです。背景には上司とうまくいかないことがあるわけですが、そこに対する感情言語を言わないんです。
こういう人は男性が圧倒的に多い。「感情を出すことがはしたない」と育てられているのか、なかなか言えないのでしょう。

白河 「男はこうでなければならない」と。

大室 でも、本当は心の奥底に感情はあるんですよ。感情を抑え続けているとどうなるかと言えば、
急に頭痛や吐き気が起こったり、電車に乗れなくなったりします。
感情は、普段からある程度は出しておかなければ、いざというときに本当に出せなくなるのです。

白河 どのように促せばいいのでしょうか。

大室 もちろん、感情的になり過ぎるのは幼稚ですが、感情がないように振る舞い過ぎるのも大人ではないですよね。
適度に感情を出して、感情とうまく付き合うのが大人です。感情を抑えるのが大人ではないんですよ。
嫌なものは嫌、やりたいことはやりたいと適度に出す。その上で、やるべきことをやるんです。
忙しいところに急に仕事を頼まれたら、「はい」とは言わず、「えーっ、今から?」と言ってみる。
そのように言えない人のほうが、仕事を辞めてしまう確率が高いので。中長期的に見て、組織としてどちらが得でしょうか。
感情言語を抜いて、無理やりロジックの言語で解釈することもオススメしません。
例えば、上司のことが明らかに嫌いなのに、「彼の言っていることは間違っていない」と
無理に合理化しようとする人も多いです。そんなことをすると、だんだんおなかが痛くなってくるんですよ。
でも、そこで合理化する必要はありません。「上司の言っていることは間違っていない。
でも、上司の言い方はムカつく」と、分けて考えなきゃいけない。
この2つを無理やり統合しようとすると、だんだんストレスがたまってきます。

白河 うつになりやすい人は弱みを見せられない人が多いと書かれていましたが、まさにそうなのですね。
企業は、「自分の弱みを言語化する研修」をやったほうがいいのではないかと思います。

大室 感情の言語化は、訓練でできるようになります。日本人男性ができないのは、そのスキルがないだけです。
その点では、欧米のほうが進んでいるでしょう。欧米には「懺悔(ざんげ)」というカルチャーが
あることも影響していると思います。
もちろん感情で我を忘れろというわけではありませんが、特に日本人男性のミドルマネジメントは、
自分の感情を認めて、感情とうまく付き合っていくことを考えていかなければならないと思います。

白河 日本企業は45歳以上の男性が占める割合が非常に大きいといわれています。
日本は容易に社員を解雇することはできませんから、
その人たちをどのように活性化するかが重要課題になっていると感じます。
つまりおじさん改革ですね。
急な環境変化の中で、彼らは上司としての役割を担い、働き方改革で負担がどんどん大きくなっています。
この世代のメンタルヘルスはどのようにしていけばいいのでしょうか。

■日本人男性は、日ごろから感情を言語化せよ
大室 個人的な感覚ですが、日本の文化というのは、口に出さないことが美徳とされます。
「下手なことを話すと、損をする」という意識が、社会の中で培われてきたのです。
一方、外資系企業は言いたいことをズバズバ言います。
なぜかといえば、話さない人間は、マイナスの評価になってしまうからです。
今は環境がどんどん変わってきています。プロジェクト型の業務が増え、雇用の流動性も高まりつつあります。
今までやったことのない業務をやらねばならない局面も増えてきました。
すると、ちゃんと話さなければ分からないことが多くなるわけです。
それを環境に置き換えようとするならば、ちゃんと言葉にして発する人を評価できるような仕組みを作らなければなりません。
というのは、人間は、自分の意見を言い慣れていないと、いざというときに言えなくなってしまうからです。
僕がさまざまな会社でメンタル不調で面談をするとき、特に男性社員は、感情言語が一切ありません。

白河 ええっ、感情を言葉にできないんですか? 例えば、彼らはどのように話すのでしょうか。

大室 上司にひどいことを言われて傷ついていたとしても、ただ「頭痛がして、頭痛薬を3錠飲んだらよくなった」という
事実しか言わないんです。背景には上司とうまくいかないことがあるわけですが、そこに対する感情言語を言わないんです。
こういう人は男性が圧倒的に多い。「感情を出すことがはしたない」と育てられているのか、なかなか言えないのでしょう。

白河 「男はこうでなければならない」と。

大室 でも、本当は心の奥底に感情はあるんですよ。感情を抑え続けているとどうなるかと言えば、
急に頭痛や吐き気が起こったり、電車に乗れなくなったりします。
感情は、普段からある程度は出しておかなければ、いざというときに本当に出せなくなるのです。

白河 どのように促せばいいのでしょうか。

大室 もちろん、感情的になり過ぎるのは幼稚ですが、感情がないように振る舞い過ぎるのも大人ではないですよね。
適度に感情を出して、感情とうまく付き合うのが大人です。感情を抑えるのが大人ではないんですよ。
嫌なものは嫌、やりたいことはやりたいと適度に出す。その上で、やるべきことをやるんです。
忙しいところに急に仕事を頼まれたら、「はい」とは言わず、「えーっ、今から?」と言ってみる。そ
のように言えない人のほうが、仕事を辞めてしまう確率が高いので。中長期的に見て、組織としてどちらが得でしょうか。
感情言語を抜いて、無理やりロジックの言語で解釈することもオススメしません。
例えば、上司のことが明らかに嫌いなのに、「彼の言っていることは間違っていない」と
無理に合理化しようとする人も多いです。そんなことをすると、だんだんおなかが痛くなってくるんですよ。
でも、そこで合理化する必要はありません。「上司の言っていることは間違っていない。
でも、上司の言い方はムカつく」と、分けて考えなきゃいけない。
この2つを無理やり統合しようとすると、だんだんストレスがたまってきます。

白河 うつになりやすい人は弱みを見せられない人が多いと書かれていましたが、まさにそうなのですね。
企業は、「自分の弱みを言語化する研修」をやったほうがいいのではないかと思います。

大室 感情の言語化は、訓練でできるようになります。日本人男性ができないのは、そのスキルがないだけです。
その点では、欧米のほうが進んでいるでしょう。欧米には「懺悔(ざんげ)」というカルチャーが
あることも影響していると思います。
もちろん感情で我を忘れろというわけではありませんが、特に日本人男性のミドルマネジメントは、
自分の感情を認めて、感情とうまく付き合っていくことを考えていかなければならないと思います。

取材を終えて
あとがき:大室先生は長時間労働撲滅プロジェクトのシンポジウムに登壇してくださった方。
そのときの「男性は40歳まで自分がロボットだと思って働いている」という言葉が印象的でした。
電通の過労自死では「パワハラやセクハラが原因」で「長時間労働ではない」という言説もありましたが、
もともとコップの水があふれんばかりになっている状態が長時間労働によってできており、
そこに一滴足したらあふれてしまう……そのような状況で起きた悲劇だったのではと想像できます。
制限速度のない高速道路で犠牲を払いながら突っ走るような働き方だった日本。
しかし労基法70年の歴史の中初めての制限速度ができる、これが「働く時間の上限規制」です。
「社員の時間は有限だと思っていなかった」と発言する社長がいるうちは、
まだまだ「時間を規制するのはおかしい」という議論は時期尚早と思います。

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。
東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、
「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。
「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。
最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(参考)原因の7割は上司

2018年02月24日 | 情報

(参考)「壊れた職場」なぜ生まれる? 原因の7割は上司
18.2.13 日経

日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在、
見波利幸氏の書いた新書「上司が壊す職場」(日経プレミアシリーズ)が話題です。
どのような人がメンバーの心を壊し、チームの生産性を下げるのか。本書の一部を抜粋して紹介します。

■壊れた職場があれば、まず「上司の存在」を疑う
これまで私は産業カウンセラーとして、メンタル不調者が発生してしまった会社から数多くの相談を受けました。
「営業部の若手社員がメンタル不調になり休職になりました。
その欠員補充のために異動させた社員も、今月から休職することになってしまいました。
営業部ばかり不調者が出るので困惑しています。一体なぜなのでしょうか?」
カウンセリングでは、不調になった当事者だけでなく、その周囲で働く上司や同僚も含め、たくさんの人と向き合います。
そして、いろいろな話を聞いていくうちに、ひとつの大きな疑問が生じました。

なぜ特定の部署にだけ不調者が続出するのだろうか――。
その部署の業務が極端に重く、ある意味「ブラック企業」的な職場になっているのではないか、
と想像する方もいるかもしれません。
ところが多くの場合、仕事量や勤務時間の長さなどが主たる原因になっているわけではないのです。
もちろんメンタル不調を起こす人の中には、過剰な業務負荷によって自由な時間が取れないこと、
さらには成果を出せないことに悩んで自分自身を追い詰めてしまうケース、
顧客との関係などで苦しめられている例は少なくありません。
しかし、カウンセリングを通して感じるのは、仕事そのものへの悩み以上に、職
場内における「人間関係」の問題によって不調になっている人が非常に多いということです。
この「人間関係」においても、読者の皆さんが想像する通り、同僚同士のトラブルによって精神的に追い詰められる人は、
それほど多いわけではありません(もちろんゼロではありません)。
私が「特定の部署でメンタル不調者が続出している」という相談を受けた場合、その原因としてまず考えるのは、
その部署の上司―部下関係に問題があるのではないか、その部署を統括する上司に問題があるのではないか、といった点です。
残念なことではありますが、ほとんどのケースで私の推測は当たってしまいます。
やはり上司―部下関係で何らかの問題が生じているのです。

■メンタル不調の7割は、上司が原因
私が携わったメンタル問題の個別ケースについて、上司―部下関係を調べていくと、
「部下に原因がある」「上司に原因がある」の2つがあり、まれに「上司と部下、双方に原因がある」という場合もあります。
これまで多くの会社を観察してきた例を振り返ると、
部下に問題があって不調になってしまうケースは、全体の3分の1程度です。
そして残り3分の2、つまり7割近くは上司が抱える問題によって引き起こされています。
この話をすると、こんな反論が聞こえてきます。
「部下に問題があるケースが、そんなに少ないはずがない。仕事ができない社員、甘えた社員は非常に多い。
何でも上司のせい、会社のせいにしていては、部下を甘やかすことになって、問題の本質的解決につながらないのではないか」
こうした発言をするのは、多くが経営者、あるいは管理者の立場にいる方々です。
では、部下側に問題があるとして、具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。
実際にメンタル不調になった方から話を聞くと、自身のスキルや経験の不足によって仕事がうまく進められず、
自らを追い込んでしまうケース、さらには本人のキャラクターにより職場や仕事にうまくなじめず、
周囲から孤立してしまっている状況などが原因になっていることは、確かに少なくありません。
この場合、上司から見れば、「何度教えても仕事を覚えない」「少し指導しただけで、必要以上に落ち込んでしまう」
「周囲と打ち解けようという意思がない」といった印象となって胸に刻まれるのは間違いないでしょう。
スキル不足、コミュニケーション不全などによって、同僚の負担を増やしたり、職場の和を乱したりして、
周囲の人に「なぜ自分たちが、あいつのフォローまでしなければいけないのか」という思いを抱かせる事例は数多くあります。
ただし「部下の問題」は、職場全体を機能不全にすることはあまりなく、影響の大きさという意味では非常に限定的です。
しかもスキルや経験の不足であれば、実務経験の蓄積や上司の適切な指導やカウンセリングなどによって、
解決に導きやすい側面があります。
また、部下のキャラクターが原因となっているケースでも、会社側がしっかり社員の特性を見きわめて、
業務負担を考慮したり、本人の適性に合った部署へ異動させたりといった対応が可能になります。

■「部下も悪い」と考える会社は危ない
その点、上司に原因がある場合、事態は深刻です。
マネジメントに問題があっても、部下から上司に対して「あなたは職場のメンバーにストレスを与えています」と
指摘することはまず不可能です。
上司の立場にいる人が職場を壊していても、それが相当にひどくない限りは、
さらに上位の役職者(課長にとっての部長など)の目に届きにくく、放置されやすいため、なかなか解決に結びつきません。
一般的な組織では、上司という立場にいれば複数の部下を抱えています。
マネジメントに問題があれば、その悪影響は職場全体に広がってしまうのです。
このような要素があいまって、上司サイドの問題は、部下サイドの問題に比べて、
長期化、悪化しやすい傾向があると言えます。
先に部下に原因があるのは3分の1程度と書いたのは、あくまで個別のケースについての全体の印象です。
会社によっては、上司が非常にしっかりしていて、問題の多くは部下側にその原因がある、というケースもありえます。
その意味では、「部下由来の問題が、そんなに少ないはずがない」という主張も論理的には、成立可能なわけです。
ただし、こと「特定の職場で問題が続出する」というケースでは、詳しく話を聞いていくと、先述したように、
やはり上司側のマネジメントに何らかの原因がある、というのがほとんどです。
そして、私の経験則ではありますが、「部下由来の問題が、少ないはずがない」と経営者や管理者が発言するような会社ほど、
上司が原因となって「職場が壊れる」という危険が高まると思います。

見波利幸
エディフィストラーニング主任研究員。1961年生まれ。
外資系コンピューターメーカーなどを経て98年に野村総合研究所入社し、
メンタルヘルスの黎明期から管理職向け1日研修を提唱。日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在に。
2015年から日本メンタルヘルス講師認定協会専務理事。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする