中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

30,1日は休載します

2023年11月29日 | 情報
30日、1日は出張しますので、当ブログを休載します。
再開は、12月4日(月)です。
よろしくお願いします。
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休職・復職Q&A⑦

2023年11月29日 | 情報
Q; 従業員70人程度の流通業で、管理部門の管理職をしています。
うつ病で休職中の従業員から復職申請がありました。
主治医の診断書には、「復職可とする。ただし、当面はリモートワークでの復職であれば差し支えない」とありました。
貴重な人材ですのでリモートワークでの復職を認めたいのですが、アドバイスをお願いします。

A; 
〇繰り返しになりますが、復職する場合は、
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に記載の通り、原則として「元の職場」です。

〇最初に、会社が受け取った主治医の診断書を産業医に提出し、内容をチェックしてもらいます。
診断書の疑問点は、産業医と主治医間で解決してもらいます。
それから復職希望者には、まず、会社の始業時間(午前9時)に出社してもらい、産業医との面談を実施します。

〇面談結果は、以下のように想定できます。
想定1.前提条件なしに、元の職場への復帰は、問題ない。
想定2.数週間の復職訓練後であれば、復職に問題はないであろう。
想定3.病状は「寛解」しているかもしれないが、睡眠状況も改善しておらず、復職させるのは問題がある。
想定4.復職希望者は、会社指定日の指定時間に出社できなかった。

〇小職が推量するに、「リモートワークでの出社」というのは、
復職希望者の強い願望を主治医が最大限に受け入れて、認めたものと考えます。
リモートワークでは、復職希望者の顔色など、健康状態を正確に把握することは困難ですし、
産業医も恐らく復職には慎重な見解になると想定できます。

〇復職を認めるか否かは会社側の権限ですから、今回は産業医の見解を添えて、復職を認めないとしてはいかがでしょうか。
ただし、当事者の自主的な復職訓練には、会社側もできる範囲内で協力することが求められます。

◎企業のメンタルヘルス対策において、この「休職・復職」問題が、大きな問題となっているのは、事実です。
今回の「休職・復職Q&A」シリーズは、これで終了しますが、大きな反響がありましたので、これからも役に立つ情報を発信して参ります。

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休職・復職Q&A⑥

2023年11月28日 | 情報
Q;従業員120人のソフト開発企業で、人事労務担当の管理職です。
うつ病治療のため、休職中の従業員がいます。
しかし、職場の同僚にSNSで「現在ハワイにいます」と動画付きで連絡があったそうです。
しかも、さらにこの事実が事業場内に知れ渡ることになりました。
どのように対処すればよいでしょうか。

A;うつ病疾患のなかには、仕事は病状からできないが、プライベートになると元気がでるという、
困った症状(精神科専門医情報;いわゆる、新型うつのような)も散見されるようです。

〇従業員には健康保持義務がありますので、療養・病状の回復に専念させることが基本です。
会社は、療養施設ではありませんから、休職中に会社側があれこれと指示する必要はありません。
しかし、問題のある素行が他の従業員までにも知れ渡るようでは、会社の人事労務管理体制に問題があると指摘されても反論できません。
情報を入手した以上は、対応しなければなりません。

〇休職中でも労働者性がないとはいえ、御社の従業員であることには間違いがありませんので、
安全配慮義務の履行の観点から然るべき対処が求められます。
例えば、定期的に実施していると思われる、休職者との面談時において、
まず、会社は従業員に復職してほしいという考え方を説明の上、
本人に復職する意思があるのかどうかを確認します。
そして、問題行動を繰り返さないことを確約させ、
休職中は、健康を回復させることが第一義であることを理解させましょう。


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休職・復職Q&A⑤

2023年11月27日 | 情報
Q.現在、うつ病治療のため休職中の従業員がいます。
休職に入る際には、休職中の待遇、会社との連絡方法、診断書の提出、社会保険料の徴収等を綿密に打ち合わせ、
その結果を文書にし、当該従業員に渡しています。
その後、確認した文書に従って、治療に専念しているものと理解していました。
しかし、突然に、メール、電話等による定例の連絡が取れなくなりました。
心配なのですが、どのように対処したらよいでしょうか。

A; 原則として、会社側は休職者と「つかず離れず」の関係が大切と当ブログでも申し上げてきました。
休職中は給与が支給されませんから、会社側は社会保険料等の徴収が必要になりますので、
その機会を利用して面談できるチャンスができるはずです。
ですから、月に1回は、当事者と面談できる機会ができるはずです。

〇とりわけ、休職者が単身者の場合は、不足に事態に備えて絶やさず連絡ができる手段を確保してことが大切です。
なお、家族との連絡については、当事者の事前の承諾が必要です。
しかし、手立てを尽くしても連絡が取れない場合には、万が一の事態に備えて、警察署に申告し協力をお願いしてください。

〇このような事態になっても、当事者は意外とあっけらかんとしている可能性もあります。
なお、当事案が該当していました。

〇万が一の場合には、会社側の安全配慮義務を問われることもあります。
当該休職者とは、再発防止策を念入りに打合せしておくことが重要です。

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(プラス情報)実態映さぬ労基法制

2023年11月25日 | 情報
在宅勤務・副業…実態映さぬ労基法制、見直し急ぐとき
日経 編集委員 水野 裕司 2023年11月2日

働き方の多様化やデジタル化の進展を踏まえ、労働基準法制の課題を整理するため厚生労働省が設けた有識者研究会が報告書をまとめた。労働時間管理のあり方や「労働者」概念の見直しなどに加え、人権や個人情報の保護といった世界で対策の強化が叫ばれている点にも言及している。制度改革の枠を超え、企業の労使が注力すべき点も浮かび上がる。

工場労働者を想定した労働基準法、実態とズレ
学識者や企業の人事担当役員、民間シンクタンクの研究員らによる「新しい時代の働き方に関する研究会」が10月半ば、報告書を公表した。
1947年制定の労働基準法を軸に、そこから分かれた最低賃金法などを含めた労働基準法制は、労働条件を決める際の基本原則を定める。労働分野のなかでも基盤となる法制度だ。だが、工場労働者の保護を目的とした戦前の工場法の流れをくみ、経済のソフト化・サービス化が進んだ現在は時代に合わなくなった点がみられる。見直しに向けた論点を有識者研究会で議論してきた。
現行の労基法は対象として、製造現場などに集合し、使用者の指揮命令のもとで画一的に働く人の集団を想定している。指揮命令に従い、賃金を支払われる者を「労働者」として保護する。物理的な「事業場」を単位に法制度が組み立てられている。
こうした労基法の考え方が現実にそぐわなくなってきた一つが、労働時間管理のあり方だ。新型コロナウイルス禍で在宅でのリモートワークが急速に普及し、オフィスに集まる働き方が一般的とはいえなくなってきている。
これまでは事業場以外での労働を特殊な働き方ととらえ、労働時間の把握が難しい場合、あらかじめ定められた時間働いたとみなす「事業場外みなし労働時間制度」などの特例を設けてきた。しかし、事業場以外での労働はもはや例外的な働き方とはいえなくなっており、その法制のあり方をどのように考えるべきか、報告書は議論が必要であると提起した。
働く場所が複数になる副業・兼業も、労基法が想定してきた労務管理ではそぐわなくなっており、たとえば労働時間の算定で支障をきたしている。この点でも現行法制の見直しが求められそうだ。

フリーランスは保護対象外 変化に後れ取る現行法制
労基法が適用される「労働者」の概念についても報告書は検討を求めた。フリーランスの人は保護対象になっていないが、実質的に取引先から指揮命令を受けて働いている例も少なくない。家事使用人もいまは適用対象外だ。報告書は「労働者」の基本的概念について、「経済社会の変化に応じて在り方を考えていくことが必要」と明記した。
就業形態の多様化が進んで働く場所の自由度が増し、労働時間管理は健康確保に留意したうえで柔軟さが求められている。人工知能(AI)やロボットを活用した企業の省人化が広がれば、個人事業主が増える可能性がある。経済・社会の構造変化に合わせて労働法制を使いやすいものに改めていくことは不可欠だ。
報告書を受け労働政策審議会で法改正の議論を始めるかどうかなどは、厚労省は未定としている。ただ現行法制の考え方と実態とのズレを修正する必要があるのは確かだ。具体的な議論を急ぐべきだ。

欧州では労働者の同意を条件に適用除外
世界の潮流を視野に入れながら法制度のあり方について問題提起した点も今回の報告書は注目される。
労働時間制度では企業から、労働者の同意を条件に、使いやすい仕組みにすることを認めてほしいとの要望がある。報告書は「労働基準法制については、労使の選択を尊重し、その希望を反映できるような制度の在り方を検討する必要がある」とした。
欧州連合(EU)では労働者の同意を前提に、週あたりの労働時間の上限を超えて働けるようにする「オプトアウト」という適用除外規定がある。海外では労働条件決定のルールを定めたうえで、労使が合意すれば例外を認める仕組みがみられる。日本も取り入れる余地があるのではないかと提言した形だ。
個人情報保護の重要性についても指摘した。デジタル技術で個々人の睡眠時間やメンタルヘルスの状態をつかめるようになり、その際、業務遂行に直接関係する部分を超え、労働者の健康情報をどこまで企業が把握していいか検討が必要だとした。労働法の分野でも個人情報保護を十分考える必要があると警鐘を鳴らした。
「ビジネスと人権」への言及もある。「企業グループ全体やサプライチェーン(供給網)全体で働く人の人権尊重や健康確保を図っていくという視点」を持つことを企業に求めた。自社の従業員に対してだけでなく、原材料の生産や物流など企業活動に欠かせない部分を担っている労働者に対しても、責任意識を持つ必要があるという認識がある。

重要性が増す労使コミュニケーション
使用者と労働者の意思疎通はこれまで以上に必要になる。労働者の同意のもとで制度の適用除外を求める仕組みでは、その狙いについて労働者の理解や納得を得ることが必須だ。個人情報保護や人権重視も、問題を発見して改善策を講じるには、経営者が現場の様子を常時把握しておくことが欠かせない。
報告書は「労使コミュニケーション」の重要性を指摘。労働組合が果たす役割は引き続き大きいものの、多様で複線的な集団的労使コミュニケーションのあり方を検討すべきだとした。企業が個人の健康情報を把握する場合、労働者が必要に応じて使用者と十分な意思疎通を図れる環境の整備が求められるとしている。従業員一人ひとりと対話を深めるなど、社内各組織の管理職の役割も重くなるだろう。
グループ企業や取引先を含めた人権重視の取り組みでは、人権侵害の防止策や問題発生時の対応について、経営者による説明や情報開示も大事になる。
企業や働く人を取り巻く環境の変化は法制度の見直しを迫るにとどまらず、労使の関係にも新たな課題を投げかけている。

山口利昭法律事務所 代表弁護士
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別の視点働き方の多様化が進む中で、労働基準法制を柔軟なものに変えていくことには賛成です。ただ、報告書資料にもあるように、日本企業の従業員エンゲージメントが欧米諸国と比べて圧倒的に低く、さらに若年労働力の流動性も低い現状を前提としますと、労働時間の上限規制を労使合意によって安易に適用除外とすることには反対です。企業側の都合によって合意が強要されてしまうと低賃金の温床となり、報告書が掲げる労働者の健康確保の増進目的に反する結果を招来します。「適用除外」は、働き方の多様化によって、労働者側がキャリア形成や成果への対価を強く望むような職種のみに限られるべきであり、労働者ファーストで導入されるべきでしょう。
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