中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

労災申請から違法残業が発覚

2017年10月31日 | 情報

会社は、私傷病として処理したかったのですね。
ところが、遺族が労災申請したことにより、次々と事実が明らかになり、
ついには、会社側が民事損害賠償責任を問われることになりました。

「過労などで息子が自殺」 両親、信州名鉄運輸を提訴
2017年10月4日 中日

2015年2月に自殺した信州名鉄運輸(長野県松本市)の元社員の男性=当時(28)=の原因は
長時間労働による過労やパワハラだったとして、この男性の両親が4日、
同社に慰謝料など7784万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁に起こした。
訴状などによると、男性は同社の長野支店(長野市)に異動した13年以降、
トラックの配車を担当しながら時間外の配送も担っていた。
地元の労基署が調べたところ、14年4月から自殺する前月の15年1月までの時間外労働が
少なくとも月100~175時間に上り、「過労死ライン」とされる80時間を超えていたという。
2週間以上連続で勤務した時期もあり、労基署は今年2月、過労自殺の労災認定をした。
上司からも「バカヤロー」などと日常的に罵声や叱責を浴び、暴行も受けたとされる。
男性は自殺した当日、別居している母親に「何のために生きているかわかりません。
つらい…もう限界です」とメールを送っていた。
4日に長野市内で会見した父親(61)は「国を挙げて働き方改革に取り組んでいるが、十分ではない。
裁判の場で違法であったと認めてもらい、息子のような悲劇を防ぎたい」と話した。

「息子救えず悔しい」 信州名鉄運輸提訴、過労自殺男性の父
17.10.5 中日

信州名鉄運輸(松本市)に勤務していた男性社員=当時(28)=が自殺したのは
長時間労働とパワハラが原因として、遺族が会社側に七千七百八十四万円を求めた損害賠償訴訟。
長野市で会見した男性の父親(61)は「ブラック体質の企業を容認できない社会にしていきたい」と
提訴への思いを語った。
父親と弁護人によると、安曇野市で両親と同居していた男性は二〇一三年春、
長野支店に異動し、長野市に引っ越した。
異動後は生活が一変し、父親が月二回、日曜日に男性のアパートを訪ねると、いつも死んだように眠っていた。
男性が「いつものように休みがキャンセルされた」と母親にメールを送ったこともあった。
父親は「息子は過酷な労働を強いられていた。助けてあげられなかったことが一番悔しい」と声を詰まらせ
「二十八年の人生を自ら閉じなければならなかったつらさ、苦しさ、悔しさを思えば、
このまま泣き寝入りすることなど到底できるわけもない」と語った。

労災申請から違法残業が発覚 信州名鉄運輸を書類送検 中野労基署
2017.07.03 労働新聞

長野・中野労働基準監督署は、時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)で定めた限度時間を
超過して労働者に残業させたとして、信州名鉄運輸㈱長野支店と同支店支店長を
労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで長野地検に書類送検した。
同社は平成26年7月、配車などを担当していた内勤の労働者1人に対し、
36協定で定めた1日2時間の限度時間を上回る5時間の残業をさせていた。
同労基署は28年5月、同労働者の関係者から「精神障害を発症した」とする労災申請を受けて調査を開始している。
29年2月には労災認定した。

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復職後、部長からヒラに

2017年10月30日 | 情報

「復職後、部長からヒラに」久光製薬社員が提訴
産経新聞 17.10.26

約1年の休職後、3回にわたり降格、減給されたのは違法として、
久光製薬(東京都千代田区)の男性社員(58)が、部長職の地位確認と未払い賃金約965万円の支払いを求め
東京地裁に提訴したことが26日、分かった。
弁護人によると、男性は子会社の副社長を務めるなど20年以上にわたり主に広告分野で活躍。
しかし、通販健康部の部長だった平成21年、会社の指示で参加した自己啓発セミナーをきっかけに適応障害となり
約1年間休職。復職後、3回にわたり降格されて一般社員となり、給与は約29万円減らされた。
男性は「『今は病気を良くすることだ。また戻れるから』と説明され総務部に異動となったが、
その後も2度にわたり降格された。会社にだまされたようなものだ」と訴えている。
久光製薬は「コメントは差し控える」としている。

(考察)
結論は、「降職は可能だが、降格は難しい、」です。
なお、小職が述べるより、参考になる情報を見つけました。
(独)労働政策研究・研修機構のHPより、いただきました。
http://www.jil.go.jp/rodoqa/07_jinji/07-Q15.html

降格については、人事上の降格か懲戒処分としての降格かをまず区別する必要があります。
人事上の降格は、役職(職位)の引下げに関しては企業に裁量が認められ、
権利濫用等にあたらない限り行うことができますが、資格(職能資格)の引下げは、労働契約上の根拠、
降格に値する能力低下の有無、企業の権利濫用の有無などがより厳しく問われることになります。
降格には (1)職位(役職)を低下させる降格(昇進の反対)と
(2)資格(職能資格)を低下させる降格(昇格の反対)があります。
同じ「降格」の表現を用いるので、中身がどちらを指しているのか事案ごとに注意する必要があるでしょう。
また、以下では人事権の行使の一環としての降格について解説しますが、
懲戒処分として降格がなされる場合もあります。その場合は、懲戒処分として法規制を受けることになります。

人事権の行使としての降格について、まず (1)職位(役職)の低下(昇進の反対)の場合、
使用者の裁量の幅が広いのが特徴です。成績不良、適格性の欠如など業務上の必要性があれば、
権利濫用(労契法3条5項)にあたらない限り裁量によって行うことができると解されています
(東京地判平成2・4・27 エクイタブル生命保険事件 労判565号79頁など。
理論的には、職位の引下げに関しては使用者の裁量で行うことができるということが、
一般に労働契約の内容として含まれていると解されます)。

次に (2)職能資格の低下(昇格の反対)の場合、(1)に比べて使用者の裁量の幅が狭いとされるのが特徴です。
理由として、職能資格の低下は多くの場合基本給の変更をもたらす労働契約上の地位の変更といえるからです
((1)の場合は、役職手当等が減ることで収入額は減少したとしても、
資格に基づく基本給は変わらないと考えるわけですね)。
よって、(2)の降格を適法に行うためには、前提として労働契約上の根拠が必要です。
降格に対する労働者の同意や、就業規則上の(合理的な)根拠規定が必要ということになります
(広島高判平13.5.23 マナック事件 労判811号21頁)。
そして、たとえ労働契約上の根拠があったとしても、実際に降格に値する能力の低下があったか否か、
使用者側に権利濫用があったか否かが法的に問題となります
(東京地判平成16・3・31 エーシーニールセン・コーポレーション事件 労判873号33頁など)。
例えば、降格に際し基本給が著しく大きく引き下げられるといった事情があれば、
権利濫用の判断の際に考慮されることになるでしょう。(成蹊大学法学部准教授 原 昌登氏)

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「再発防止チーム」って

2017年10月27日 | 情報

「再発防止チーム」を立ちあげたと、2年近く前の報道がありました。
今回の事案とどのように関連付ければよいのか、悩みますね。

兵庫県警の機動隊員自殺「パワハラが原因」 遺族が提訴
10/20(金) 朝日

兵庫県警機動隊の巡査だった木戸大地さん(当時24)が2015年10月に自殺したのは
警察内部のパワーハラスメントが原因だったとして、広島市在住の両親が19日、
兵庫県に計約8千万円の損害賠償を求める訴えを広島地裁に起こした。
会見した父親の一仁(かずひと)さん(69)や訴状などによると、
木戸さんは09年に採用され、12年から機動隊に配属。
13年9月の重機操作に関する試験の際、同僚に解答を見せたと直属の上司ではない巡査長(当時)に
言いがかりをつけられ、カンニングさせたことを認めるよう執拗(しつよう)に迫られたという。
また、別の上司の命令で会合の際に裸踊りをさせられたほか、日
ごろから暴言を言われたり、体罰を加えられたりしていたという。
遺族側はこうした一連の行為をパワハラと主張。15年7月にはうつ病を発症し、
同8月ごろから婚約者に「死にたい」と言うようになったという。
隊舎で自殺を図って意識不明になった同10月6日にも、
2年前のカンニングを認めるよう迫られたことが、直接の原因と訴えている。木戸さんは同15日に死亡した。
一仁さんは「無念でたまりません。何があったか真実を明らかにしたい」と涙ながらに語った。
木戸さんの自殺の前月にも機動隊の同僚が自殺していたことを受け、県警は内部調査を実施。
組織を適正に管理運営できていなかったと、同12月に当時の機動隊長を本部長注意処分とした。
一方、「個々の隊員に配慮を欠く言動があったが、パワハラやいじめと言えるような行為ではなかった」と
結論づけていた

県警の倉野喜朗監察官室長は「亡くなった職員のご冥福をお祈り申し上げる。
訴状が届いておらず、コメントできない」としている。(小林圭、高橋健人、川田惇史)

機動隊員自殺問題で再発防止チーム 兵庫県警
2016/1/19神戸新聞

兵庫県警の機動隊員2人が昨年9、10月に相次ぎ自殺した問題で、県警は18日の県会警察常任委員会で、
再発防止に向けプロジェクトチーム(PT)を立ち上げたことを明らかにした。
隊内の風通しや業務管理など4項目を柱に課題を洗い出し、3月末までに改善の方向性をまとめる。
自殺した2人はともに20代で、同隊の独身寮(神戸市須磨区)で亡くなった。
県警は上司や同僚らの聞き取り調査を基に「パワハラやいじめとまでいえる言動はなかった」と結論づける一方、
機動隊長については「組織の適正な運営管理に徹底を欠いた」として本部長注意処分とした。
PTでは、機動隊を含む警備部や警務部の幹部ら約20人を中心に課題などを協議。
若手隊員への指導の在り方をテーマにした冊子の作成や外部講師の研修、
それぞれの希望や適性が反映される人事システムの構築などに取り組むという。
警備部の田中求部長は同委員会での答弁で「(方向性のとりまとめ後も)定期的な検証
見直しを重ねることで全隊員が真の信頼関係を結び、やりがいと誇りのある部隊をつくる」と述べた。

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是正せず対応を放置

2017年10月26日 | 情報

ところが、良い流れに逆らって、反省しない事業場もあるようです。
御社は、対応策を講じていらっしゃいますか?

新潟市民病院自殺 遺族が刑事告発へ 「是正せず対応を放置」
17.10.25新潟日報

新潟市民病院が今年1~6月に、延べ90人の医師に労使協定を違反する長時間労働をさせていたとして、
2016年に過労自殺した同病院の医師、木元文さん=当時(37)=の夫が、
新潟市と篠田昭市長、市民病院の片柳憲雄院長を新潟労働基準監督署に刑事告発する方針であることが23日、
分かった。代理人弁護士が明らかにした。
木元さんの夫らは、市民病院は半年間で延べ90人の医師に、
時間外労働の上限を定める協定(三六協定)違反の長時間労働をさせたと主張している。
病院側のデータを基に調査したという。
木元さんの夫と代理人の斎藤裕弁護士は文さんの自殺を受けて16年11月、
市民病院で長時間労働がまん延しているとして、市に改善を申し入れた。
病院は長時間労働の違法性を認識したにもかかわらず、その後も是正しなかったとしている。
26日に新潟労基署へ刑事告発する予定。
斎藤弁護士は「(今年6月の)是正勧告が出てから、
ようやく市民病院は救急患者の受け入れを減らすなどの対応を取った。
16年の申し入れの時点で改善できたのに、放置していたことが分かる。
病院が自主的に改善できるとは思えない」と、刑事告発に踏み切る理由を説明している。

院長ら労基署に告発へ 研修医自殺後も放置
毎日新聞2017年10月24日

新潟市民病院(新潟市中央区)で勤務していた研修医、木元文(あや)さん(当時37歳)が
過労自殺した問題を巡り、同病院が今年1~6月に延べ90人の医師に
労使協定違反の長時間労働をさせていたとして、木元さんの夫が26日にも、市と篠田昭市長、片柳憲雄院長を、
労働基準法違反の疑いで新潟労働基準監督署に刑事告発する方針を固めた。夫の代理人弁護士が明らかにした。
木元さんは2016年1月に自殺。
夫は同年8月に労災申請し、11月には同病院で違法な長時間労働が横行しているとして市に改善を申し入れた。
しかし市は具体的な改善策を取らず、今年1~6月に延べ90人の医師に
労使協定(36協定)に反する最大月177時間の残業をさせていたことから、告発に踏み切ることにした。
労働時間は市への情報公開請求で把握したという。
新潟労基署は今年5月、木元さんがうつ病を発症する直前1カ月の残業時間が160時間を超えていたとして、
自殺を労災と認定。その後同病院に対し、長時間労働の改善などを求める是正勧告をした。
それらを受け、市は7月から、紹介状のない一般外来患者の受け入れ停止や救急搬送の受け入れ削減など
過重労働の軽減策を講じている。
夫の代理人である斎藤裕弁護士は「新潟市民病院は遺族の申し入れを無視して長時間労働を放置し、
労基署に言われてようやく動き出した。自主的に改善できるとは思えない」と告発理由を説明。
夫は「法にのっとり適切と思える行動をする」とコメントした。同病院は「事実確認中」としている。

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過労自殺で和解(続編)

2017年10月25日 | 情報

昨日「今後は、このような流れが定着することを期待します。
ということは、企業の人事労務管理が大切な経営計画に組み込まれることになります。」と記しました。
そのような流れになっているので、まあ良しとしましょう。
しかし、鵜sべ手の企業・事業場には、
そもそもの問題解決に繋がるような対策を講じてほしいと、切に願っています。

過労自殺認め遺族に謝罪 大阪地裁、訴訟が和解 
2017/10/16 日経

会社員の夫(当時57)が単身赴任中に自殺したのは会社が長時間労働の対策を取らなかったためだとして、
50代の妻ら遺族が大阪市のシステム開発会社「オービーシステム」と代表取締役らに
計約1億4千万円の損害賠償を求めた訴訟が16日、大阪地裁(倉地真寿美裁判長)で和解した。
会社が過重労働による自殺と認めて謝罪したほか、
代表取締役が労働環境への配慮を全従業員に口頭で説明するなどの内容が盛り込まれた。
解決金は非公表としたが、同社側は「社会的に相当な額」としている

訴えなどによると、夫は1977年に入社し、システムエンジニアとして勤務。
2013年2月から東京に転勤し、東京消防庁のシステム開発事業を担当したが、
14年1月に赴任先のマンションから飛び降り自殺した。
品川労働基準監督署は13年9月ごろにはうつ病を発症したとして、自殺を労災と認定。
会社への自己申告に基づく時間外労働は発症前6カ月間で月約20~89時間だったが、
労基署は職場のパソコン記録などから月最大約170時間だったと判断していた。
和解後に記者会見した長女(29)らは「二度と父のような自死が起こらないように
健全な会社経営をしてもらいたい」と訴えた。〔共同〕

過労自殺の男性遺族、システム開発会社側と和解
2017年10月17日 朝日

システム開発会社「オービーシステム」(大阪市)に勤務していた男性(当時57)が
うつ病になり自殺したのは長時間残業のためだったとして、
大阪府内の50代の妻ら遺族が同社側に計約1億4千万円の賠償を求めた訴訟が16日、
大阪地裁(倉地真寿美裁判長)で和解した。会社側が過重労働への配慮不足を認めて謝罪し、解決金を支払う。
訴訟記録などによると、男性はシステムエンジニアとして同社に長年勤務。
2013年2月に東京へ単身赴任し、同年9月ごろにうつ病を発症、
14年1月、マンションから飛び降りて亡くなった。
品川労働基準監督署は、長時間労働が原因として14年9月に労災と認定。
男性は、発症直前6カ月の残業時間を月20~89時間と自己申告していたが、
労基署は推計で月127~170時間と認定した。
和解条項で会社側は、過重労働がうつ病の発症や自殺につながったことを認め、
「十分な配慮を欠いていた」として謝罪。再発防止に努めることも盛り込まれた。解決金の額は明らかにしていない。
原告の妻は「和解成立に安堵(あんど)している。
今後、社員がかけがえのない人であることを認識し健全な経営をしてほしい」との談話を出した。
同社は「労働時間の管理が万全ではなかった。男性と遺族の方々におわび申し上げます」としている。

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