中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

定期健康診断

2012年07月31日 | 情報
安衛法の一部改正を控えて、定期健康診断について再確認します。
以下の項目は、法令に定められていますので、事業者(会社)は、必ず、実行しなければなりません。
(ただし、6.と7.は努力義務)

1.「事業者は、常時使用する労働者(特定業務従事者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期的に、
一般項目について医師による健康診断を行わなければならない。」(安衛則44条1項)

2.「常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期の健康診断を行ったときは、遅滞なく、
定期健康診断結果報告書を所轄労基署長に提出しなければならない。」(則52条)

3.「事業者は、法第66条第1項[一般健康診断]の規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、
遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。」(安衛法66条の6)

4.「事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による
健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、
当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、
医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。」 (法66条の4)

5.「事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、
当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、
作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは
安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
(平成4年法律第90号)第7条第1項 に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への
報告その他の適切な措置を講じなければならない。」 (法66条の4)

6.「事業者は、法第66条第1項[一般健康診断]の規定による健康診断若しくは同条第5項ただし書
[労働者指定医師による健康診断]の規程による健康診断又は第66条の2[自発的健康診断]の規定による
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による
保健指導を行うように努めなければならない。」(法66条の7)

7.「労働者は、上記3.の規定により通知された健康診断の結果及び上記6.の規定による保健指導を
利用して、その健康の保持に努めるものとする。」(則51条の4)

8.「事業者は、法定の健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければならない。」
(則51条)

なお、所定の健康診断を実施せず又はその結果を記録せず又はその結果を労働者に通知しなかった場合には、
事業者は、50万円以下の罰金に処せられます(法120条)。

大丈夫でしょうか? 暑さでボッーとされないようにしてください。
定期健康診断だけで、以上のような規定があります。
安衛法には、事業者の義務が、たくさん列挙されています。
さらに安衛法が改正されると、これらに「メンタルヘルス診断」が加わります。
受け入れ体制だけは、今から整えておいてください。
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PTSDも「傷害」

2012年07月30日 | 情報
PTSD(心的外傷後ストレス障害)も「傷害」にあたるとした、最高裁判断が示されました。


2012年7月26日 読売新聞朝刊より

東京都内のマンションなどに女性4人を監禁、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させたとして、
監禁致傷罪などに問われた無職石島(旧姓・小林)泰剛やすよし被告(31)について、
最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は24日の決定で被告の上告を棄却した。

懲役14年とした1、2審判決が確定する。最高裁が、PTSDも刑法の「傷害」に当たると判断したのは初めて。

 弁護側は「PTSDのような精神的障害は傷害に含まれない」などと無罪を主張。
決定は、暴行や脅迫によるPTSDの発症を認定した1、2審の判断を踏まえ、
「精神的機能の障害を引き起こした場合も、刑法の傷害に当たると解釈するのが相当」と退けた。

 1、2審判決によると、石島被告は2003年12月~04年12月、
インターネットやイベントで知り合った女性4人(当時17~23歳)の顔や腹を殴ったり、
「親も兄弟も殺す」と脅したりして、ホテルや自宅マンションに最長100日余にわたり監禁。
睡眠障害などの深刻なPTSDを発症させた。

心的外傷後ストレス障害《 posttraumatic stress disorder 》とは。
忍耐の限界を超えたストレス、たとえば、戦争・災害(地震など)・テロ・事故・犯罪事件などを
体験した後に生じる心身の障害のこと。不安・うつ状態・パニック・フラッシュバックなどが代表的な症状。
日本では、平成7年(1995)の阪神大震災後に問題になった。

通常の企業活動では、考えられないのでは、と思う方へ。
例えば、今回の東日本大震災で、会社の建物、工場等が流された。
長年の同僚が被災された、亡くなった。
工場が火災爆発を起こした、社員が死亡した。
同僚が自殺した。等々、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる原因は日常的に起きています。
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深夜のテレビやPC使用

2012年07月27日 | 情報
深夜のテレビやPC使用は、うつ病リスクを増大するという米研究結果が報道されました。

ロイター 7月25日(水)配信
米国の研究者によると、夜遅くまでコンピューターやテレビの画面を見ていたり、
画面を付けたまま眠りに落ちたりすると、うつ病になるリスクが高まる可能性があるという。
この研究は米国防総省が資金面で協力し、オハイオ州立大学医療センターのチームが行った。
実験では、薄暗い部屋にテレビがついているのと同程度に照明を設定し、
そこにハムスターを4週間置き、通常の明暗サイクルに置いたハムスターと行動や脳の働きを比較した。
研究を主導したトレイシー・ベドロシアン氏は、ハムスターの状態の変化は、
人間のうつ病の症状と一致したと指摘。薄暗い部屋にいたハムスターは行動が減ったほか、
砂糖水への興味も低下したとし、うつ病の症状と類似していると説明した。

また、日本では「スマフォを手放せない症候群」もあるそうですね。
一日中、液晶画面を見ていると「VDT症候群」に罹患することもあります。

こうした状況を配慮して、厚生労働省は、既に平成14年4月5日
新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しています。
10年前のガイドラインですから、企業には既に周知徹底されていますので、大丈夫とは思いますが、
念のために確認しておきましょう。

ガイドラインの概要
1 対象となる作業
対象となる作業は、事務所において行われるVDT作業(ディスプレイ、キーボード等により構成される
VDT(Visual Display Terminals)機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の
作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業)とし、労働衛生管理を以下のように行うこととした。

2 作業環境管理
作業者の疲労等を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、照明、採光、グレアの防止、
騒音の低減措置等について基準を定め、VDT作業に適した作業環境管理を行うこととした。

3 作業管理
(1)作業時間管理等

イ  作業時間管理
作業者が心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次により作業時間、作業休止時間等について基準を定め、
作業時間の管理を行うこととした。
一日の作業時間 一連続作業時間 作業休止時間 小休止
他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより、
一日の連続VDT作業時間が短くなるように配慮すること。 1時間を超えないようにすること。
連続作業と連続作業の間に10~15分の作業休止時間を設けること。
一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けること。

ロ  業務量への配慮
作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない
適度な業務量となるよう配慮すること。

(2)VDT機器等の選定
次のVDT機器、関連什器等についての基準を定め、これらの基準に適合したものを選定し、
適切なVDT機器等を用いることとした。

イ デスクトップ型機器
ロ ノート型機器
ハ 携帯情報端末
ニ ソフトウェア
ホ 椅 子
ヘ 机又は作業台
(3)VDT機器等の調整
業者にディスプレイの位置、キーボード、マウス、椅子の座面の高さ等を総合的に調整させることとした。

4 VDT機器等及び作業環境の維持管理
VDT機器等及び作業環境について、点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じることとした。

5 健康管理
作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理を行うこととした。

(1) 健康診断等
イ  健康診断
 VDT作業に新たに従事する作業者に対して、作業の種類及び作業時間に応じ、配置前健康診断を実施し、
その後1年以内ごと1回定期に、定期健康診断を行うこととした。
ロ  健康診断結果に基づく事後措置
 健康診断の結果に基づき、産業医の意見を踏まえ、必要に応じ有所見者に対して保健指導等の適切な措置を講じるとともに、
作業方法、作業環境等の改善を進め、予防対策の確立を図ることとした。

(2)健康相談
メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての
健康相談の機会を設けるよう努めることとした。

(3)職場体操等 就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、
軽い運動等を行うことが望ましいこととした。

6 労働衛生教育
VDT作業に従事する作業者及び当該作業者を直接管理する者に対して労働衛生教育を実施することとした。
 また、新たにVDT作業に従事する作業者に対しては、VDT作業の習得に必要な訓練を行うこととした。

7 配慮事項
高齢者、障害等を有する作業者及び在宅ワーカーの作業者に対して必要な配慮を行うこととした。
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障害者雇用率の引上げ

2012年07月26日 | 情報
企業に義務付けられている、障害者雇用率が、平成25年4月1日から1.8%から2.0%に引き上げられます。

まず、障害者雇用制度とは
「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、事業主に対して、その雇用する労働者に占める
身体障害者・知的障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるよう義務づけています
(精神障害者については雇用義務はありませんが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます)。
この法律では、法定雇用率は「労働者※の総数に占める身体障害者・知的障害者である労働者※の総数の割合」を
基準として設定し、少なくとも5年ごとに、この割合の推移を考慮して政令で定めるとしています。
今回の法定雇用率の変更は、同法の規定に基づくものです。 ※失業中の人も含みます。

すべての事業主は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。
この法定雇用率が、平成25年4月1日から1.8%から2.0%に変わります。

今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない事業主の範囲が、
従業員56人以上から50人以上に変わります。また、その事業主には、以下の義務があります。
・毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません
・ 障害者雇用推進者※を選任するよう努めなければなりません

詳しくは、厚生労働省のHPを確認してください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/dl/120620_1.pdf

うつ病に罹患した人が、うつ病を克服して原職復帰することができれば理想的なのですが、
残念ながら、なかなかそうはいかない場合が多いものです。
次善の策として、障害者として職場復帰できることも可能なのです。
今回の法改正によって職場復帰できる可能性が高まるのです。
なお、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を所有していれば、障害者雇用の対象なることを付記しておきます。
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主治医の診断書

2012年07月25日 | 情報
1月4日に同タイトルでアップしました。
前回は、復職可とする診断書の取り扱い方でした。
今回は、休養を必要とする診断書の取り扱いです。

従業員から休養を必要とする診断書が提出されたら、必ず休ませなければならないのか。

骨折や感冒等では、従業員から休暇の申請があれば、ほぼ自動的に認められています。
しかし、精神疾患の場合、企業の人事労務担当の中には、どう取り扱っていいのか迷っている方も散見されます。
その理由は、診断書には、個人情報の保護という観点から、主治医は必ずしも正確な病名を記述しないからです。

まず、精神疾患等で、従業員から診断書が提出されたら、上司は直接、あるいは上司から診断書受け取った人事労務担当は、
産業医に診断書を示し、意見を求めてください。
多分、産業医は、精神科領域は専門外ですので、主治医に診断書の詳細を問い合わせることになります。
主治医は、守秘義務がありますので、患者の了解を取り付けたかどうかを確認するはずです。
場合によっては、書面での確認を求めてくることもあります。
主治医は、患者が了承していることを確認できれば、産業医に所見の詳細を開示します。

なお、主治医に問合せできるのは、産業医だけです。産業医以外の、産業保健スタッフや人事労務担当が
問合せしても、主治医は、守秘義務がありますから、回答を保留又は拒否するでしょう。
ですから、産業医は必要なのです。

産業医が、当該従業員の休養が診断書通りに必要であると認めたら、上司と人事労務部門は、理由を確認の上、
はじめて当該従業員の休養、休職を認めることになります。

また、産業医が主治医の所見に疑問を抱いた場合、主治医の了解を取り付けた上、
産業医、人事労務担当は、当該従業員に理由を説明し、別の精神科医に受診するよう指示します。
所謂、セカンドオピニオンを求めることになります。
最近多い、「新型うつ」と云われるような精神疾患の場合には、考慮されることをお勧めします。
なお、このような一連の対応要領を、就業規則に規定してあれば、何ら問題はありませんが、
多分、就業規則には規定がないでしょう。しかし、「安全配慮義務」の観点から、受診命令を出すことは可能です。
ただし、産業医の勧告があって初めて可能になりますので、ご留意ください。
しつこいですが、産業医は必要ですね。

産業医がセカンドオピニオンに従い、当該従業員の休養と治療が必要との意見が出されれば、
初めて、当該従業員に治療のための休職を許可する(命ずる)ことになります。

では、それからはどうしたらよいのでしょうか?
詳細は、拙著「中小企業のうつ病対策」に。
または、s-hashi@ya2.so-net.ne.jpへお尋ねください。
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