中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

試し出勤制度にチャレンジ

2013年05月31日 | 情報
なぜ、試し出勤制度を拙著「中小企業の『うつ病』対策」で提案しているのか。

それは、労働判例のなかでもとくに重要な判例、片山組事件(最判平10.4.9)があるからです。
判決文の趣旨は、
「職種・職務内容を特定していない労働契約の従業員が、原職には復帰できないが復職を希望している場合ですが、
就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできなくても、
その能力、経験、地位、企業の規模・業種、企業における労働者の配置・異動の実情等を総合的に考慮して、
他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているのなら、
債務の本旨に従った履行の提供があるとして、新たな職務をつくる必要まではないものの、
他の業務への就労の可能性を追求することが求められています。」

ですから、うつ病等の精神疾患が回復し、労働者が復職を希望した場合には、企業側としては
何らかの業務に就労させなければなりません。そうかといっても、精神疾患の場合は、
慎重に対応しないと、再燃してしまう可能性が大きいのです。統計的には50%であるとされています。

一方で、多くの弁護士、産業医、精神科専門医等の識者から、試し出勤制度の必要性、重要性を強調していますが、
本日に至るまで、具体的に提案する専門書、あるいは講演はありません。たぶん、ないと思います。
なぜなら、法的根拠が乏しいこともあって、とても制度設計が難しいからなのです。
余計なことですが、このような場合には、弁護士の先生は、制度設計には関与されないと思っています。
加えて、試し出勤制度を導入したばかりにトラブルに遭遇し、制度を廃止してしまう企業も、現実にあります。
結果として、大企業でも試し出勤制度の導入率は50%に止まっているのが現状です。

従って、制度設計する場合には、慎重にも慎重を重ねて、「十二単状態」の、試し出勤制度の導入・実施が必要になります。
拙著は、このような現状や、中小企業の人事労務担当からの希望・要望に応えるために、出版しました。
試し出勤制度の詳細は、拙著を参照してください。

購入は、書店では取り寄せになります。アマゾンでは、送料無料で入手できます。
小売価格1,260円
著者:橋本社会保険労務士事務所代表 橋本幸雄
監修:精神科専門医・産業医 恵比寿メディカルクリニック院長 高岡 拓先生


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御社に休職制度はありますか

2013年05月30日 | 情報
休職制度は、労働法令で規定されているわけではありませんので、
就業規則に必ず盛り込まなければならない、という制度では「ありません」。

しかし、長年にわたり、会社に貢献してきた従業員を、けがや病気を理由にいきなり解雇するのは問題があります。
そこで、休職制度が必要になります。(独)労働者政策研究・研修機構のHPより転載し制度の概要を紹介します。

ポイント
1.休職制度とは、就業規則などの根拠に基づき、労働契約を存続させつつ労働義務を一時消滅させる制度ですが、
その性格に応じた解釈適用が必要になります。
2.傷病休職の期間が満了した労働者が職場復帰するためには、原則として以前の職務を行いうる状態に回復していることが必要ですが、
使用者に一定の配慮が求められることがあります。

〈休職制度の意義〉

一般に休職とは、労働者を就労させることが適切でない場合に、労働契約を存続させつつ労働義務を一時消滅させることをいいます。
その内容は様々で、業務外の病気や負傷を理由とする傷病休職、その他の私的な事故を理由とする事故欠勤休職、
起訴された従業員につき、社会的信用や企業秩序の維持、あるいは懲戒処分が決定されるまでの待機を目的として行う起訴休職、
他社への出向にともなう自社での不就労に対応する出向休職、留学や公職への就任に伴う自己都合休職、
労働組合の役員に専念する場合の専従休職などがあります。

休職は、就業規則や労働協約などに基づき、使用者が一方的意思表示により発令するのが通常ですが、
労働者と使用者の個別の合意にもとづき実施されることもあります。
休職中に賃金が支払われるかどうか、また、休職期間が勤続年数に算入されるかどうかは、
休職のタイプや個々の企業の取扱いによって異なります
(出向休職のような会社都合の休職の場合、休職期間は勤続年数に通算されることが通常でしょう)。
休職期間中は無給とされる場合は、当該休職措置が無効と判断されれば、賃金を請求することができます。

〈休職の要件〉

どのような場合に休職を命ずることができるかは、基本的には就業規則などの定めによりますが、
期間満了時に休職事由が消滅しない場合に自動退職の効果が発生するときには、
その場合に退職となることを正当化しうる事情(休職相当性)が要件となると考えられます。
また、起訴休職については、上に述べた制度の趣旨から、労働者の起訴により使用者の社会的信用が毀損され、
あるいは起訴に伴う勾留などにより労務提供が困難になるおそれがあることや、
あるいは懲戒処分の可否を決定するまでの間就労させることが適切でないことが要件となります。
さらに、解雇猶予としての性格をもつ傷病休職や事故欠勤休職の場合は、解雇をなすには30日の予告期間が要求されている
(労働基準法20条)こととのバランスから、休職期間は30日以上とすることが必要となると思われます。

〈休職の終了〉

休職期間中に休職事由が消滅すれば、休職は終了します。
また、休職期間が満了した場合の扱いとしては、労働者が職場に復帰するものと、
期間満了の時点で休職理由が消滅していないときには解雇がなされ、
あるいは労働契約の自動終了(自動退職)という効果が発生するものとがあります。
傷病休職や事故欠勤休職では後者の扱いがなされることが多くありますが、
その場合、休職は、出勤できない労働者に対して一定期間解雇を猶予する機能を果たすことになります。

また、傷病休職などで期間満了により自動退職の効果が生ずる場合、期間満了時に傷病から回復(すなわち治癒)していれば、
使用者の復職の意思表示がなくとも、労働契約の終了という効果は発生しないと解されます。
ここで、治癒したといえるためには、従前の職務を支障なく行いうる状態に復帰したことが原則として必要となります。
ただし、休職期間終了時にそうした状態に達していない場合でも、相当期間内に治癒することが見込まれ、
かつ当人に適切なより軽い業務が現に存在する場合などには、使用者は労働者を治癒までの間その業務に配置すべき信義則上
(労働契約法3条4項)の義務を負い、自働退職の効果は生じない(復職を拒めない)と考えられます
(東京地判昭和59.1.27 エール・フランス事件 判時1106・147、大阪地判平11.10.4 東海旅客鉄道事件 労判771号25頁など)。
特に最近、メンタル面の不調を理由とした休職の例が増えているように思われますが、
身体的な怪我や疾病の場合に比べ、メンタル面の不調の場合は、治癒したか否かが使用者にとって
(あるいは労働者自身にとっても)わかりにくい、判断が難しいという特徴があります。
治癒の有無は、基本的には使用者が就業規則の規定など休職制度の趣旨に沿って判断、決定することになると思われますが、
後々の紛争を避けるという意味でも、治癒したか否か(復職を認めるか否か)の判断には慎重な対応が求められるといえるでしょう
(メンタル面の不調を理由とする休職については、企業内だけで判断するよりも、
精神科医など専門家と連携して対応することがより望ましい場合も多いといえるでしょう)。

関係法令・資料
労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第20条
労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第4条
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衛生委員会を活性化するには(続編)

2013年05月29日 | 情報
さらに、衛生委員会に関する質問が続きます。
本社では、まずまずの状況だが、支店・営業所、さらに地方の事業所での衛生委員会が問題です。
どうしたら、効率的に衛生委員会を定着・活性化すことができるのでしょうか。

衛生委員会は、安衛法で設置・開催が義務付けされているので、開催しなさい・実施しなければならない、
という指示書で周知徹底できればよいのですが、そうは簡単にいかないのですね。

そこで、次善の策です。
支店・営業所、さらに地方の事業所の責任者の業務に、「(安全)衛生委員会の開催」を加えます。
そして、業績評価点に、「(安全)衛生委員会の開催・運営・結果」を与えます。
業績評価点が、全体の5%程度でも、責任者にとっては大きな影響を与えます。
例えば営業拠点の場合であれば、業績評価点が50%の販売目標を達成するより簡単に達成することができるからです。
要するに、目的や背景を責任者が理解できれば、あとは内部でのわずかな努力で実現できるのです。

次に、(安全)衛生委員会の記録を定期報告させます。
記録は法令で定められていますから、記録を残さなければなりません。

安衛則第二十三条  
事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。
2  前項に定めるもののほか、委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める。
3  事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて
労働者に周知させなければならない。
一  常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
二  書面を労働者に交付すること。
三  磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、
かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
4  事業者は、委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存しなければならない。

話はワキにそれますが、決して望むことがない、労基署が御社を訪問(易しく表現しています)されたら、
「(安全)衛生委員会を実施していますか?」と聞かれます。はいと答えると次に「記録を見せてください」と言われます。
ここで、やや自慢げに(余分ですが)、記録を提示できればよいのですが、
もし記録がない場合は、(安全)衛生委員会を実施しているとはみなされないことになりますので、ご注意を。

記録が報告されたら、記録をチェックしながら、アドバイスを与えます。
さらに、他の支店・営業所、さらに地方の事業所における好事例を紹介し、実績・ノウハウを共有化します。

加えて、本社の衛生委員会の事務局、具体的には衛生管理者は、年に1回程度は、支店・営業所、さらに地方の事業所を
巡回して、実地指導をします。

どうでしょうか。2回にわたる活性化策を実行できれば、御社の労働安全衛生対策は、及第点を得ることができるでしょう。
そして、「ヒヤリハット」対策が実現でき、大きな事故の防止に役立つことでしょう。
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衛生委員会を活性化するには

2013年05月28日 | 情報
衛生委員会がうまく行かない、マンネリ化する、議題が見つからない等で
衛生委員会を活性化するにはどうしたらよいのか、という質問をたくさんいただきます。

まず、何回も言及していますが、50人以上の事業所においては、法令で定められていますので、
(安全)衛生委員会を毎月1回実施しなければなりません。
ですから、最初に法令通り、(安全)衛生委員会を設置して、毎月1回以上実施しましょう。

しかし、平成22年労働安全衛生基本調査(厚労省)http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/49-22.htmlでは、
安全衛生委員会等を設置している事業所の割合は84.7%[前回76.2%]となっています。
なかでも設置義務のある50~99人の事業所では、78.8%に止まっており、
2割以上の事業所に安全衛生委員会等が設置されていません。

次に、設置している事業所での悩みは、(安全)衛生委員会で取り上げる議題がない、ということです。
それから、(安全)衛生委員会を実施しているのだけれども、マンネリ化している、または盛り上がらない、という問題です。

解決策を提案します。
・委員会の委員長は、必ず事業所トップにしてください。中堅以上の企業であれば、人事部長でしょう。
・委員長は、委員会開始から終了まで、必ず出席してもらってください。
・事務局は、事前に委員長に対し、議題を案内しておきます、即ち、根回しです。
・委員長は、必ず定時までに出席します。
これだけで、、(安全)衛生委員会は劇的に変化します、間違いありません。
少し時間が経過すれば、委員から事務局に対し、事前に議題について問い合わせが入るようになります。
なぜなら、日本の殆どのビジネスパースンは、上を向いて仕事をする、いわゆる「ひらめ人間」だからです。
ただし、これだけでは「かたち」作りだけに終わる可能性があります。

次に、産業医には必ず出席してもらいましょう。
上記の調査で、衛生委員会への産業医の出席率は、34.8%にすぎません。
安衛法上では、産業医は、(安全)衛生委員会に出席しなければなりません。
付け加えれば、(安全)衛生委員会においての、産業医という「第三者」の視点はとても重要です。
・議題は、定期健康診断の受診率向上対策から始めましょう。
・さらに、記録をとり、必ず事業所全員がチェックできるようにします。
・議題には、番号を振り、何時、誰から発案されたのか明確にしておきます。
・解決しない議題は、解決するまで継続して審議します。
・走り出したら、あとは止まることなく、PDCAサイクルで進めます。
 
とりあえず、以上の項目が実行できれば、(安全)衛生委員会は、成功の軌道に乗せることができます。
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話すチカラ

2013年05月24日 | 情報
話すチカラ、コミュニケーション能力は、やはり毎日の積み重ねが大切です。
毎日の無意識の、「何気ない」訓練のたまものです。
もっとも、ディベートの訓練をしている人以外は、ほとんどの人は「訓練」しているという意識はないでしょうが。

日本人なら自然に日本語を身に着けます、中国人なら自然に中国語を身に着けます、アメリカ人なら自然に米語(英語)を身に着けます。
日本人ならば、生まれてから日常的に日本語を話しているのですから、
何も厳しい練習をしなければ、日本語の会話能力を会得できないわけではありません。
当たり前のことを申し上げているだけなのですが。
ところが、若い人たちは、小さいころからコンビニと、ケータイ、スマホと、PCですから
「話すチカラ」を養う必要性を感じていないのでは、と想像してしまいます。
会話の技術を「研ぎ澄ます」必要はないのでしょうね。
その結果、必然的に会話能力が身に付きませんので、当然に、自分の意思、考えを相手に伝える能力が身に付きませんし、
さらに、相手が話す言葉の真意を汲み取る能力も養うことができません。

会話能力が身についていない、あるいは著しく低いのですから、上司との会話にも自信がないので、
自分から積極的にコミュニケートしようとする意思が起きないのですね。
上司から見れば、コミュニケーションがなければ、「あいつはなんだ、何者だ」という思いが、ふつふつとわきあがってきます。
このようにして、上司や管理職と、部下や後輩との意思疎通がうまく行かなくなれば、結果は簡単に想像できますよね。

数日前に、NHKの番組を見ていたら、あるエアラインの整備部門では、専門別のグループごとに昼食を一緒にとることを
習慣にしているとのことでした。弁当でも社食でもよいのですが、食事をしながらコミュニケーションをとることにより、
グループとしての一体感を醸成できますし、整備部門として最も大切なミスの極小化を図ることが可能になるとのことでした。

繰り返しになりますが、「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002qx6t.htmlによると、
パワーハラスメントが発生する職場の特長として、
「上司部下のコミュニケーションが少ない」が51.1%で、2位の「様々な立場の従業員がいる」21.9%を圧倒的に
引き離して、ダントツの1位となっています。

繰り返しになりますが、「話すチカラ」は「難しい技術」でありません。
事業所内では、朝のあいさつからはじめましょう。
そして、日常的な会話を増やすことが、明るい、楽しい職場をつくることになるのだと体感しましょう。
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