中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職復職Q&Aシリーズ①

2022年07月25日 | 情報

久しぶりに、休職復職Q&Aシリーズです。参考にしてください。
企業のメンタルヘルス対策で、最も多い課題、問題は休職復職関連の問題であると考えています。

Q;卸売業で人事課長をしています。うつ病で休職中の従業員が、主治医の復職可の診断書を持って復職を申請してきました。
しかし、診断書を精査していた産業医が、体調が回復していないことを理由に復職に反対しました。
会社としては、主治医の診断書もありますので復職を認めてもよいと考えていますが、助言をお願いします。

A;嘱託の産業医は、専属の産業医に比べて、どうしても会社の方針、人事労務管理の考え方等に理解がたりません。
また、会社側の産業医への情報提供が不十分であることや説明不足も否めないでしょう。

一方で、会社側として、復職申請した従業員の主治医が、復職を可とする診断書を認めたから復職を認めた、
という結論にも問題があるでしょう。
原則として、主治医は患者ファーストですから、患者から求められれば復職を可とする「診断書」を認める場合もあります。
さらに「残業はダメ」「出張は、当分認めない」「元の職場には戻さない」等、患者の言いなりと疑われるような
ただし書きを記す主治医もいます。

本来であれば、休職復職規程について会社としての対応方針と諸規程が整っていれば、
産業医も会社の方針に沿って検討・判断することができますが、
どうも御社にはそのような規程・考え方がないようですので、取りあえずの対処方法を説明します。

・会社側は会社の方針、人事労務管理の考え方を産業医に説明し、理解を得ます。
併せて、当該従業員の職務歴、職務内容、健康診断結果、ストレスチェックの結果、及び直属上司の意見等を共有します。

・診断書に付記事項があれば、産業医から当該主治医に質問状を提出してもらい、経緯や主治医の考え方を確認します。

・産業医、及び人事労務部門の担当者は、復職希望者を出社させ(多くの課題がありますが)、それぞれに面談します。
産業医は、会社から得た情報や、主治医の診断書をもとに、復職希望者の回復状況を精査します。

・また、人事労務部門の担当者は、まず病状の回復を労い、復職申請以後の諸手続きについて説明するとともに、
復職の意欲について確認を進めます。

・産業医、産業保健の専門職(保健師、看護師等)、衛生管理者を含む人事労務部門が集まり、現状を認識・分析し対応策を検討します。

・当該会議体の意見一致により、復職を認めるかどうかの結論を得ます。

・復職を認める場合は、復職先(原則として元職、後任人事を発令している等で元職に戻せない場合は、
異動先とその理由)、時間外労働を当分認めない等の労働条件を検討し、発令します。

・復職を認めない場合は、その理由と復職を認める条件を検討の上、当該従業員に伝えます。
併せて、会社(産業医の意見書を添付)から、当該従業員の主治医にも伝え、了承を得ます。

・会社側は、あらためて、主治医に対して会社側が復職を認める条件を提示し、理解を得ます。

・当該従業員に対しては、会社側が復職を認めない理由を説明し、早期に復職できるよう会社側も支援する旨、伝えます。

・ここで、最も重要な検討課題は復職希望者の残りの休職期間関連ですが、これから先は別稿に譲ります。

 

 

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