中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「メンタルヘルス室」を新設

2024年02月29日 | 情報
「メンタルヘルス」をキーワードにネット検索していたら、素晴らしい情報を見つけました。
北関東を主な商圏とする大手スーパーのベルク社は、HPで以下の告知を行いました。

ベルク社HPより転載します。

〇組織改正及び人事異動に関するお知らせ 
当社は、2024年2月26日開催の取締役会において、
下記のとおり、組織改正及び人事異動について決議いたしましたので、お知らせいたします。

1. 組織改正(2024年3月16日付)
(4) 「メンタルヘルス室」を新設し、健康経営の推進及び従業員のメンタルヘルスに関する課題への対応に取り組む。
・初代室長は、女性で、前職は「システム改革部 チェッカートレーナー」です。 
推測するに、カスハラ対策に、早速対応したのでしょう。
「チェッカートレーナー」とは、推測するに現在教育職で、長年店頭でレジを担当された従業員なのでしょうね。
初代室長に相応しい人材という勝手な印象です。

〇流通業は、カスハラ対策に敏感です。
社労士として、このような優良企業をクライアントにしたいという思いです。

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寝不足は経営責任

2024年02月28日 | 情報
以下の記事では、勤務間インターバル制度の導入を推奨しています。
小職も勤務間インターバル制度の導入を強く、推奨しています。

銚子丸、インターバル制で離職率低下 寝不足は経営責任
日経ビジネス 2024年2月21日

従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する「健康経営」の重要性が叫ばれている。
中でも近年問題視されているのが、ビジネスパーソンの睡眠時間の短さだ。

日本人の睡眠時間は、他国と比べても低い。
2021年の経済協力開発機構(OECD)の調査によれば、
日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、調査対象となった33カ国中、最下位だった。

背景にあるのが日本人の労働時間の長さだ。
これには、高度経済成長期の成功体験を引きずる、企業経営者の意識が大きく関係している。
高度経済成長期、多くの企業は従業員同士を競わせ、業績を伸ばしてきた。
従業員側も「替えの利かない存在」になるべく、属人的な人脈やノウハウを積み上げ、
それを周囲に共有することなく、実績を積み上げて企業の期待に応えようとした。

しかし、こうしたやり方が通用するのは、働き手の数が多かった時代だけである。
今や、人手不足は加速度的に進行しており、もはや人材の「使い捨て」はできない。
少ない労働力で大きなパフォーマンスを上げるためには、
すべての従業員の業務量を能力に応じて適切に管理していく必要がある。
属人的な業務内容も、なるべく減らしていかなければならないだろう。

従業員の業務量を適正化できれば、皆がきちんと休みも取れるようになり、睡眠時間も確保できる。
「従業員が十分な睡眠時間を確保できない企業のトップは、経営能力があるとは言えないのではないか」。
ワーク・ライフバランスの浜田紗織取締役は、こう警鐘を鳴らす。

つまり、従業員の仕事に対する負荷や心身の健康を測る上でも、
これからの経営者は睡眠時間に着目しなければならないということだ。
睡眠に関するサービスを手掛けるニューロスペース(東京・墨田)の小林孝徳社長は
「うつ病患者は多くの場合、前兆として不眠症状の発症がみられることが分かっている。
そのため、うつ休職の防止策としても、睡眠状態の把握やケアは重要だ。
経営者の睡眠リテラシー向上も必須になるだろう」と話す。

休息を企業が確保する
時間管理型の職場における、睡眠時間の確保策として活用され始めたのが「勤務時間インターバル制度」だ。
これは、終業時刻から次の始業時刻までに、一定以上の休息時間(インターバル)の確保を義務付ける制度を指す。
これまでのように労働時間を規制するのではなく、休息時間をルール化し、それを厳格に守ることで、
労働者の働き過ぎを防ぐとともに、疲労の早期回復を目指すものだ。

海外ではすでに導入している企業も多い。
例えば欧州連合(EU)加盟国では11時間のインターバル確保が義務づけられている。
日本でも、医療従事者や運送ドライバーなど、働き手の心身のコンディションが人の命を左右する事故となる可能性の高い職種を中心に、
導入が進んでいる。
24年4月からはタクシーやトラックなど、ドライバーの11時間以上の休息時間確保が義務化される予定だ。

下記の表は、勤務間インターバル制度を導入した場合の1日のシミュレーションだ。
例えば11時間のインターバルを取得すると、うち6時間が睡眠に充てられる。
残業時間は上限ラインの80時間だ。
このように、インターバル制度は、労働時間の規制に比べて休息に主眼が置かれているため、睡眠も取りやすくなる。

だが、属人的な働き方を推奨してきた日本企業にこうした制度を普及させるには、業務のありかた自体を見直していく必要があるだろう。
1つに業務に従事する人員を増やすことで、そのノウハウを共有したり、権限移譲を進めたりする必要がある。
「自分と同じ仕事を誰かができる」という、環境が職場に定着すれば、休みを取ることに対する心理的な負担も少なくなる。

例えば、首都圏を中心に展開する回転すしチェーン「銚子丸」を運営する銚子丸は、
22年から働き方改革の一環で、11時間のインターバル制度を導入した。
17年ごろから働き方改革の一環で店舗の営業時間短縮や研修、会議のオンライン化が進んでいたが、
労働時間の削減が進んだ段階で、11時間の勤務間インターバルが実現できるようになった。
その結果、労働環境も改善し、離職率が10%超(18年)から7.5%にまで低下したという。
生産性も向上し、社員1人あたりの1時間当たり売り上げも、約4500円(18年)から約5100円(22年)と、大きく向上した。

東急建設でも18年から11時間の勤務間インターバル制度を導入している。
発注元となる顧客に部門長と営業社員が出向いて勤務制度について説明し、
理解を求めるなど、社外に対しても取り組みを強化した。
その結果、導入前の16年から22年にかけて、現場社員の総労働時間は10%削減した。
働き方改革への積極的な姿勢を見て、新卒採用でも応募者が増えているという。
同社管理本部人事部の太田喜剛参事は
「(現場社員も)自分たちのインターバル時間が確保できないことに課題感を持っていたことから、前向きな反応だった」と導入当時を振り返る。


勤務間インターバル制度の企業導入割合は21年で5%弱。
国は25年までに勤務間インターバル制度の導入割合を15%以上することを目標としているが、
現状の増加率では届きそうにない
(厚生労働省「これからの労働時間制度に関する検討会」2022年3月29日第11回資料「勤務間インターバル制度について」より)

昼寝を推奨する企業も
もっとも、業務インターバル制度の導入が難しい勤務形態や業種の企業もあるだけに、企業の施策に答えはない。
中には、夜間の睡眠不足を日中のパワーナップで補えるようにする、という取り組みを始めたところもある。
IT(情報技術)ベンチャーのネクストビート(東京・渋谷)は、社長自身が旗振り役となって働き方改革を推進。
17年に仮眠や休息のために自由に利用できる「ゆりかごスペース」、
18年にアロマなどを備えた個室の仮眠室である「戦略的仮眠室」を開設した。

ネクストビートの野田千有里CHROは「代表の生産性や健康経営に向けた先進的な姿勢と、
効率性を重視する社内風土が、仮眠室の積極的な利用につながったと考えている」と話す。

ネクストビートのように、社員の休憩時間を長めに確保し、昼寝を推奨する制度を設けている企業は増えている。
呼称もさまざまで「シエスタ制度」「昼寝制度」と呼ばれることもある。
「睡眠に関する施策はどの業界、職種でも工夫次第で必ず導入できる」と、前出の浜田氏は話す。

社員の生産性や創造力向上に、睡眠が関係していることを示す調査研究は進んでいるだけに、
今後従業員の「働き方」ならぬ「休み方」「眠り方」に注目する動きはますます広がりそうだ。
(日経ビジネス 馬塲貴子)
[日経ビジネス電子版 2024年1月29日の記事を再構成]
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26.27日は休載します

2024年02月23日 | 情報
26.27日は出張のため、当ブログを休載します。
再開は、28日(水)です。
よろしくお願いします。
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「いのち支える自殺対策」毎年3月は自殺対策強化月間

2024年02月23日 | 情報
厚労省HP;自殺対策強化月間

自殺対策基本法(平成18年法律第85号)において、毎年3月が「自殺対策強化月間」とされています。
厚生労働省では、「自殺対策強化月間」の期間中、電話やSNSによる相談支援体制を拡充するとともに、
ポスターや動画、インターネットによる相談窓口の周知など、
関係府省庁、自治体、関係団体と連携し、自殺防止に向けた集中的な啓発活動を実施しています。
相談することで少しほっとするかもしれません。悩みがあるとき・困っているときは相談窓口をご利用ください。

〇「まもろうよ こころ」(厚生労働省) 

〇「自殺総合対策大綱」(令和4年10月閣議決定)(概要)

〇厚労省;自殺対策



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問題は個人の能力か体制か?

2024年02月22日 | 情報
東京都の動きが典型ですが、いま、カスハラに注目です。
以下、具体例の紹介です。
精神科医の夏目先生の講義を複数回、拝聴した経験があります。
いつも、具体的で示唆に富んだ内容でした。

カスタマー対応部員が次々とストレス相談…問題は個人の能力か体制か?
24.2.7 読売 精神科医 夏目誠氏

長い間、精神科産業医をしていますと様々な相談があります。
私が担当するメーカーでの話です。同じ部署の社員が次々とストレス相談に訪れたことがあります。
お客様に電話対応をする営業本部のカスタマー部の社員たちでした。
どなられ、なじられ、無理な言い分にも言い返すわけにはいきません。
カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)を受け続けるような電話対応の日々に精神的に厳しくなってきたのです。
個人がプロとしてスキルを身につければすむことなのでしょうか。
それとも組織の運営に改善の必要があったのでしょうか。

カスタマー部異動後不眠に
最初に相談に訪れた31歳の野中太郎さん(仮名)は不眠の訴えでした。

産業医 : 精神科産業医の夏目です。どうしましたか?
野中さん: 夜寝つけないんですよ。仕事のイライラがよみがえってってきて。
産業医 : いつ頃から?
野中さん: 4月に営業からカスタマー部に異動してからです。
産業医 : 仕事内容が大きく変わりましたね。
野中さん: 全く違う仕事です。お客様のクレームを受け付けて対処する部で、電話で言われっぱなし、
大きな声、どなり声もあって耳がガンガンします。
産業医 : 言われっぱなし……か。

どなり声がフラッシュバック
野中さん: ていねいに事情を説明するわけですけど、何倍も言い返されますから。
布団に入っても、どなり声がフラッシュバックして眠れないことがあるんです。

産業医 : 上司に相談しましたか?
野中さん: 課長に言いましたが、真剣に取り扱ってくれません。
産業医 : 治療として寝つきを良くする睡眠導入剤と、イライラが収まらない時に飲む抗不安剤を出しますね。
取りあえず、それで様子を見ましょう。

どんな苦情も最後まで1人で対応
3日後に今度は、野中さんの上司である高田課長(仮名)が相談に訪れました。

高田課長:野中君から「カスハラのストレスで悩んでいる」と
相談を受けていまして、何かいい対処法がないかと相談に来ました。
産業医 : 課長としては何か対応をしていますか?
高田課長: うちの部では、電話を受けたら1人の社員が最初から最後まで対応することにしているんですが、
新しく来た社員が難しい案件にぶつかると大変だと思います。
産業医 : 対応しやすいケースから難しいケースまでいろいろでしょうから、慣れない人には厳しいですね。
高田課長: 部長が5年も在籍しているので、これまでのやり方をずっと続けているんです。
ストレスを抱えている部下がいると伝えても、「経験を積むうちに慣れていくから、最初は仕方がない」という態度です。
なんともしようがなくて……。
産業医 : 部下の意見を聞いてくれないんですか?
高田課長: まあ、そうです。
産業医 : 困ったものですね。
高田課長: 実は、うちの課の風祭由美さん(仮名)という新人社員も先生に相談したいと言っているので、よろしくお願いします。

お客様相談がストレス発散の対象に
風祭さんが訪れました。
産業医 : カスタマーハラスメントの件ですね。
風祭さん: 新人として配属されて8か月目です。もう心身ともに持たない感じがしています。
産業医 : 何が一番つらいのですか?
風祭さん: 製品クレームは初めだけで、会社の悪口を言い続ける方もいて、聞いているのもつらいし、なんともお答えのしようがありません。
産業医 : それで。
風祭さん: 急に話題が変わって、その方の知人の悪口をしゃべりだす人までいらっしゃるんですよ。
ストレスの発散相手にされている感じです。
産業医 : お客様相談窓口でストレス発散ですか。

会社を辞めたい
風祭さん: 「製品のお話とは違いますが?」と言えば、大声で「上司を出せ。
下っ端では、分からない話だ」とどなられたこともあります。
産業医 : 上司は?
風祭さん: 課長に相談したら1回だけは代わりに対応してくれたのですが、次からは「自分で対応してくれ」と言われました。
産業医 : 部長はどうなの?
風祭さん: 「担当者が最初から最後まで対応するのがルールだ」と言うだけで、取り合ってくれません。
入社してから、ずっとこのお仕事ですから、入る会社を間違えたと思っています。
産業医 : う~ん。 
風祭さん: もう辞めようかと。

専門家を交えた部員懇談会
1人目の野中さんの時は、薬で状態が改善すればと考えましたが、
課長や女性社員の話を聞いていると、カスタマー部のストレスは個人の問題ではなさそうです。
産業医としては、社員の安全配慮義務上、マネジメント上の問題もあると考えざるを得ません。
早急な対応が必要と思い、人事部長と話し合いの場を持ちました。

状況を説明すると、人事部長は、「部長のマネジメントに問題があるようですね。
若手社員にこういう形で辞められたら困ります。
カスタマー部の運用を検討する必要があります」と受け止めて、早速動いてくれました。
カスタマーハラスメントの専門家を招いて、部員一同と懇談の場を設けたのです。

苦情の難度によって対応者を変える
 部員懇談会を基に人事部、カスタマー部と専門家で対策を検討し、
次のように部の業務の運用方法を改めることにしました。
1.電話がつながると、「お客様の要望に正確、的確に対応するため、
話の内容を録音いたしますので、ご承知ください」とメッセージを流す。
2.初期対応は経験が浅い人。
3.多少難しい案件とわかれば、ベテランや役職者が引き継ぐ。
4.困難案件は専門家(委託した専門企業からの派遣)の対応とする。

運用変更でストレス減
 産業医としてもフォローアップを1か月ごとに行っていて、2か月後にそれぞれに話を聞きました。
野中さん: ストレスがかなり減りました。こじれそうな難しい案件は、ベテランが対応する体制ができたので安心です。
高田課長: みんな、前よりも元気に仕事をしているように見えます。あれから訴えはありません。
風祭さん: 段階に分けて対応者を変えるという今の方法を、なぜもっと早くから取らなかったのか。
私が苦労した8か月は何だったのか、怒りがこみ上げますよ。

大企業に意外と多い以前からのやり方順守
5年在籍の部長は他部の参事として配置転換になり、ラインの部長から外されました。
新しい対応システムの導入で部員のストレスは減ったようです。
問題は個人の資質ではなく、組織の運用体制でした。

古い体質の大企業に、従来の運用を疑いもなく続けることで職場にストレスを招いているケースは意外と多く見られます。
続けてきたやり方に固執し、新しい方法を考えない。
変えることに、本能的に反発する社風・文化が残っている印象を受けます。
このようなことを続ければ、SNSや口コミで噂が広がり、若者の入社希望が減っていくでしょう。

(註)夏目誠先生 精神科医、大阪樟蔭女子大学名誉教授、株式会社夏目こころのコンサルティング
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