中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

本年は、今日のアップで終了です。

2022年12月27日 | 情報

1年間、閲覧いただきありがとうございます
来年は、1月5日(木)より再開します

みなさま、よき新年をお迎えください 弥栄

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メンタルヘルス対策は、なぜ難しいのか

2022年12月27日 | 情報

メンタルヘルス問題は、解決に向かっているのか、ますます難題化しているのか?年末にあたり少しばかりの考察をしたい。

命題;「なぜ、メンタルヘルス対策は難しいのか?」「なぜ、一向に解決に向かわないのか?」

1.原因がわからない
うつ病の原因については、残念ながら今日まで根本的な解明がなされていない。
もちろん、研究がかなり進んできているようですが、
これだという原因が明らかになっていないのが現状です。

厚労省ポータルサイト:みんなのメンタルヘルス

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html

「発症の原因は今のところわかっていません」

2.裁判ができない(判決をひねり出しているが)
医学的にうつ病を発症した原因を特定できないので、因果関係を解明することができない。
判例の中には、法令でもない「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を、
判決のよりどころにしているものまである。

3.休職制度 法令化されていない 
参考までに、厚労省策定のモデル就業規則には、以下のような表現がある。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

「休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。」

つまり、労基法等に規程がないので、各事業体が任意で対策を講じなければなりません。
事業体のメンタルヘルス対策で、現在最も混乱しているのが、休職・復職関連です。

4.関わる専門家が多岐にわたる 

精神科専門医、産業医、弁護士、企業の人事労務担当、産業保健スタッフ、社労士、産業カウンセラー、精神保健福祉士、臨床心理士等々、
すべてに精通している専門家がいない、即ち、合議体で対策を検討しなければならない。
それなのに、一人の専門家の責任で対策が講じられていることが多い。
しかも、専門家は「自尊心」が強いので、譲らない、協調しない。だから混乱しています。

5.日本の縦割り型組織が対策の推進・実効の邪魔をしています。
特に、人事労務部門と、産業保健スタッフ部門との不仲が未だに続いている企業が多いようです。

6.関連して、コラボヘルスの考え方が浸透していません。

改正「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針)

以下、主な改正内容
1 コラボヘルスの推進が求められていることを基本的考え方に追記したこと
2 健康保持増進措置の検討に当たり、
・ 健康診断の結果を保険者に提供する必要があること
・ 保険者と連携して事業場内外の複数の集団間のデータを比較し、
健康保持増進に係る取組の決定等に活用することが望ましいこととしたこと。
3 保険者から40歳以上の労働者の安衛法に基づく健康診断の結果を求められた場合に、事業者が当該結果を保険者に提供することは、
法律に基づく義務であるため、第三者提供に係る本人の同意が不要であることを明示したこと。

取り組むべきこと
〇保険者から健康診断の結果を求められた場合は提供してください。
・法律に基づく義務の場合は、第三者提供に係る本人同意は不要です。
・法律に基づかない場合は、労働者本人の同意を得る必要があります。
○ 「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」にある事例も参考に、
労働者の健康状況に応じて、健康保持増進対策を実施してください。
(※)保険者とは、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)等のことで、THP指針においては「医療保険者」と表記しています。

7.メンタルヘルスということばが、法令に出てこない
関連する法令等は以下のとおりですが、ずばり「メンタルヘルス対策法」はなく、
いろいろの法令の関係部分を寄せ集めて、論じているのでいろいろと齟齬が生じています。

・労働基準法 第1 条2 項、及び第2 条
・労働安全衛生法 第1条 
・労働安全衛生法 第66条の10 ストレスチェックの実施
・労働安全衛生法第66条の8第1項。労働安全衛生規則第52条の2 長時間労働者への医師による面接指導
・労働安全衛生法第66条の8第3項。労働安全衛生規則第52条の7の3第1項、第2項 労働者の労働時間の状況を把握
・労働者災害補償保険法 「心理的負荷による精神障害の認定基準」
・労働契約法第5 条 安全配慮義務(健康配慮義務)
・過労死等防止対策推進法 メンタルヘルス対策等の過労死等防止対策
・労働施策総合推進法 パワーハラスメント防止措置が事業主に義務付け

指針等
・厚生労働省:労働者の心の健康の保持増進のための指針
・厚生労働省:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
・厚生労働省:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策過重労働対策 等

 

 

 

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ストレスチェック制度は有用か?

2022年12月26日 | 情報

発表を探しているうちに、紹介することを失念してしまいました。

令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況です。
ここで大切なのは、一次予防を目的とするストレスチェック制度なのですが、
新型コロナの影響ではないかとの推測があるものの、制度の実施効果がほとんどないということがわかります。

令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
令和4年7月5日 【照会先】厚労省 政策統括官付参事官付賃金福祉統計室

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r03-46-50b.html

【事業所調査】
1 メンタルヘルス対策に関する事項
(1) メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者の状況

過去1年間(令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%[令和2年調査9.2%]となっている。
このうち、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は 8.8%[同 7.8%]、退職した労働者がいた事業所の割合は 4.1%[同 3.7%]となっている。
また、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は 0.5%[同 0.4%]、退職した労働者の割合は 0.2%[同 0.1%]となっている。(第1表)

(2) メンタルヘルス対策への取組状況

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は 59.2%[令和2年調査 61.4%]となっている。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「ストレスチェックの実施」が 65.2%[同 62.7%]と最も多く、次いで「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」が 54.7%[同 55.5%]となっている。(第2表)

(3) ストレスチェック結果の活用状況

ストレスチェックを実施した事業所のうち、結果の集団(部、課など)ごとの分析を実施した事業所の割合は76.4%[令和2年調査 78.6%]であり、その中で分析結果を活用した事業所の割合は 79.9%[同 79.6%]となっている(第3表)。

【個人調査】

1 仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項
(1) 仕事や職業生活に関する強いストレス

現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレス(以下「ストレス」という。)となっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%[令和2年調査54.2%]となっている。
ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者について、その内容(主なもの3つ以内)をみると、「仕事の量」が43.2%[同42.5%]と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が33.7%[同35.0%]、「仕事の質」が33.6%[同30.9%]となっている。(第14表、第1図)

(2) 仕事や職業生活に関する不安、悩み、ストレスについて相談できる人の有無等

現在の自分の仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人がいる労働者の割合は92.1%[令和2年調査90.8%]となっている。
ストレスを相談できる人がいる労働者について、相談できる相手(複数回答)をみると、「家族・友人」が80.1%[同78.5%]と最も多く、次いで「上司・同僚」が75.2% [同73.8%]となっている。
これを男女別にみると「家族・友人」が男性76.2%、女性84.1%、「上司・同僚」が男性79.0%、女性71.1%となっている。(第15表)
また、ストレスについて相談できる相手がいる労働者のうち、実際に相談した労働者の割合は69.8%[同74.1%]となっており、その中で相談した相手(複数回答)をみると、「家族・友人」が71.5%[同73.5%]と最も多く、次いで「上司・同僚」が70.2%[同67.6%]となっている。
これを男女別にみると「家族・友人」が男性64.8%、女性78.1%、「上司・同僚」が男性73.4%、女性67.2%となっている。(第16表)

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メンタルヘルス推進担当者

2022年12月23日 | 情報

◎忘れていませんか?
メンタルヘルス対策には、事業場内メンタルへルス推進担当者の選任が大切です。
衛生管理者の知識では、メンタルヘルス対策を進めていくには不十分です。
衛生管理者+メンタルへルス推進担当者は、企業・事業場において重要な役割を担っているのです。
「法令で決まっているので、コストアップになるが、致し方なく」という考え方は、間違っています。

事業場内メンタルへルス推進担当者は、労働安全衛生法にもとづく「労働者の心の健康保持増進のための指針
(健康保持増進のための指針 公示第6号、平成27年)」で
「産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルへルスケアの実務を担当する者」として位置づけられており、
事業者は「事業場内メンタルヘルス推進担当者」を選任することが努力義務となっています。

事業場内メンタルヘルス推進担当者の主な役割は、次の4点です。

事業場内メンタルへルス推進担当者の役割としては、次の4つが主なものです。
 ① 心の健康づくり計画の策定・労働者への周知・実行状況の把握の実務
② セルフケア、ラインによるケアを推進するための労働者教育、管理監督者教育の計画・立案・実施・評価の実務
③ 事業場内のメンタルへルスに関する相談窓口
④ 事業場外資源との連携の窓口

なお、事業場内メンタルへルス推進担当者には、教育や相談そのものを直接担当することは求められていません。
事業場内で行われるメンタルへルス対策がスムーズに推進されるよう調整する機能を果たすことが期待されています。

◎事業場内メンタルヘルス推進担当者 テキスト (中央労働災害防止協会)平成20年3月  ・平成22年2月 改訂

https://www.jaish.gr.jp/information/mental/mental_text_201002_1.pdf

〇独学で、十分に学習できます。
何回も申し上げてますが、資格取得者にはそれ相当のメリットを与えてください。
例えば、月1000円程度の資格手当でも十分かと。

◎参考;従業員数によって、衛生管理者、または衛生推進者を配置することについては、殆どの企業で実施済みでしょう。
以下に再確認しましょう。

◎衛生管理者

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任しなければなりません。

安衛法第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

安衛則第7条1項4号
次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。(表;省略)

◎安全衛生推進者又は衛生推進者

常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業者は、安全衛生推進者、衛生推進者のいずれを選任しなければなりません。

第12条の2 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。

安衛則第12条の2 法第十二条の二の厚生労働省令で定める規模の事業場は、常時十人以上五十人未満の労働者を使用する事業場とする。

 

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「適応障害」だと言う部下

2022年12月22日 | 情報

テレワーク中にサボり? 「適応障害」だと言う部下をどう扱えば
第3回 問題のある部下は人事部と連携してケアする
2022.12.1 奥田 弘美 精神科医(精神保健指定医)・産業医(労働衛生コンサルタント)・株式会社朗らかLabo代表取締役

今回の「お悩み」その1

本当に「適応障害」? 部下がリモートワーク中にサボりがち
リモートワークが中心の職場です。リモートワーク中に、レスポンスが悪く、仕事も遅い社員がいて困っています。
実を言うと、リモートワークが始まる以前から、オフィスに出社していたときもサボりがちで、パフォーマンスが低いタイプの社員でした。
管理者として何度か注意していましたが、さらに返信が来なくなりました。
面談をすると、本人は「仕事をしようとすると体調が悪くなる、適応障害だ」と言います。
こちらが注意している内容は棚に上げて、適応障害だなんて……。納得がいきません。どう話せばよいのでしょうか。
(Aさん 48歳 中間管理職)

 

問題のある部下の勤務態度がリモートワークでますます悪化

 もともと勤怠や勤務態度に問題があった社員が、リモートワークになって管理監督者の目が行き届かなくなったことで、さらに問題が悪化したというケースは、筆者が産業医を担当している企業でもチラホラ出ています。

例えば、リモートワークになったことで、上司が直接、勤務状況を監督できなくなったのをいいことに、就業中にこっそり私用のために仕事場を離れ、必要なときにすぐに連絡が取れなくなったり、出社しなくてもよいために夜更かしするようになって生活習慣が乱れ、就業中やオンライン会議中に頻繁に居眠りする……といったトラブル事例もありました。

Aさんの部下も、リモートワークでさらにパフォーマンスが低下し、業務に支障が出ているようですね。

しかもAさんの指導に対して、「適応障害」という言葉まで出してくるとは……。部下から、実際に医療機関に通院して医師の診断を受けたという報告はあったのでしょうか?

 

適応障害というのは、医師が診断して初めて認められるものです。

簡単に説明すると、「何らかの明確なストレス因によって発症し、心や体に不調が起きている状態」であり、よくある症状としては、気分の落ち込み、意欲低下、不眠、ひどい不安感、焦燥感などのメンタル症状のほか、腹痛、吐き気、めまい、動悸、頭痛、倦怠感などの身体症状が出現することもあります。

ちなみに、アメリカ精神医学会による精神疾患の診断基準で国際的に利用されている「DSM-5」では、適応障害は「きっかけとなるはっきりとしたストレス因子があり、そのストレスが始まって3カ月以内に発症」し、「原因となっていたストレス因子やその結果がなくなれば6カ月以内に回復する」とされています。(ストレス因子が解消されない場合には長期間続く場合もあります)。

また診断には、「そのストレス因子に不釣り合いなほどの症状・苦痛がある」、または「社会的、職業的、あるいは他の重要な領域での機能的な、著しい障害がある」ことや、「その症状は、他の精神疾患の基準を満たさないし、既存の精神疾患の増悪でもない。通常の死別による悲しみの表現ではない」などを精査・鑑別することが必要とされています。

この基準からも分かるように、適応障害の診断には専門的な医学知識と臨床経験が必要とされるため、心療内科医や精神科医といったメンタル疾患を専門とする医師が診断を行わなければなりません。まずはこの部下がきちんと医師の診断を受けているのかどうか、診断を受けているのならば現在の病状が就労に耐えられる状況なのかなどを確かめる必要があります。

 

中間管理職が抱え込まず、早急に人事に連絡する

しかしAさんが直接部下と面談して、こうした詳細な状況を確かめる必要はありません。すぐに会社の人事に連絡して対応をお願いしましょう。

「リモートワークで勤務態度が悪くコミュニケーションが取れなくなっている部下がいる。指導すると『適応障害』による体調不良を主張する」などと、詳細な状況説明とともに報告し、できれば早急に人事面談してもらうとよいと思います。

社員が「適応障害で体調が悪いため、十分に仕事ができない」と言っているわけですから、会社側は、「安全配慮義務」を履行するために人事面談を行い、必要に応じて産業医面談や保健師面談を設定する必要があります。

労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と安全配慮義務が会社に課せられています。

もしこの部下が実際に適応障害の診断を医療機関からきちんと受けているのであれば、会社側は産業医や保健師と協同しつつ、主治医からの診断書や意見書などを取得して病状の確認を行い、適切な就業制限(残業の免除や業務軽減)を一時的に行うなど、会社が定める就業規則に基づくルールに従った判断、処理をしていくことになると思います。

逆にこの部下が、そのような診断をきちんと受けておらず、自己診断で「適応障害だ」と言い張っている場合は、産業医や保健師に面談を依頼したり、きちんと診断や治療を受けるように心療内科や精神科などの医療機関の受診を促したりする必要が出てきます。

どうしても医療機関を受診しようとしない場合や、適応障害の原因が会社のせい(パワハラ、長時間労働など)だと主張してくるような場合には、弁護士等の専門家を交えた対応が必要になるかもしれません。

こうした一連の安全配慮義務に基づく面談や采配、労務調整は、専門的な労務知識や医療判断が必要ですので、会社の保健衛生を担当する人事スタッフや産業医、保健師の仕事です。

Aさん自身が抱え込まずに、早急に人事に報告して、この部下をしかるべき会社の健康管理ルートに乗せるようにしましょう。

 

オンライン会議のストレスから不眠に

今回の「お悩み」その2
オンライン会議で大きなストレスを感じる
オンライン会議でうまく話せなくて、会議がすごくストレスに感じます。
話すタイミングが重なって、人の話をさえぎってしまったり、逆に人に譲って自分が話すタイミングを逃し、その結果「何も話さない人」扱いされたり……。
いつも会議が終わったあと、悶々としてしまい、その日は眠れません。そんな日が続いて、ほとんど夜眠れなくなりました。 どうしたらいいでしょうか。(Bさん 38歳 会社員)

 

Bさんのように、オンライン会議ではうまく話せないという方は、実はかなりたくさんいらっしゃいます。かくいう筆者自身も、オンライン会議は対面の会議より非常に話しにくいと感じています。

まずは、そう感じているのはご自身だけではないことを知って、安心してください。

オンライン会議でうまく話せない原因を一言で言うと、全体の空気が読めないため、日本人が得意とする「阿吽(あうん)の呼吸」が使えないということに尽きると思います。

対面の会議では、周りの人の様子がつぶさに分かるので、何か質問や意見があった場合、挙手したり口を開いたりするタイミングがつかみやすいですし、司会進行役のファシリテーターも発言したそうにしている人や手を挙げかけた人を見逃さず、話を振りやすいですよね。

しかしオンラインでは、会議の参加人数が増えれば増えるほど、小さな顔がずらりと画面に並ぶだけで(ひどいときは顔出しすらしないことも)、その人たちが醸し出す雰囲気を細かく読むことができません。

司会進行役の人も、周りの人たちの素振りや様子が分からないので、実際に声を出して発言を要求されたり、オンライン会議のソフトウェアの機能で「挙手」してもらわなければ気づくことができません。

そんな中で勇気を出して発言してみたら、運悪く上司やクライアントとタイミングが重なってしまって、ヒヤッとすることも。そうなると当然、発言は相手に譲ることになってしまい、気がつけば会議時間が終了となり、言いたいことが言えずに終わってしまった……なんてことが、頻繁に起こりがちなのです。

他者を尊重する思いやりが強い方や、控えめな方ほど、オンライン会議での発言はしにくいと思います。

Bさんが、そのことで夜も眠れないほどストレスを感じているのであれば、まずは上司に相談されてみてはいかがでしょうか?

Bさんが発言したくても発言できない状況であることを上司が知れば、ファシリテーター役に、「オンライン会議では発言したい人がいるかどうか、丁寧に確かめるように」などと指導できると思います。

もしクライアントが主催する会議であっても、一緒に出席する同僚や、クライアント先に親しい担当者がいれば、「オンライン会議で発言が苦手なタイプなのでフォローをお願いします」と事前に伝えておくと、Bさんが発言するチャンスづくりに協力してくれるかもしれません。

オンライン会議が苦手な性格の人が、自分の努力だけで苦手を克服するのは、非常に困難です。まずは、オンライン会議が苦手な人がいる事実を一緒に働く人たちが知り、適切なサポート体制を構築することが大切ですので、ぜひ勇気を出して上司や同僚に相談してみてください。

 

眠れないのは「過緊張」の症状?

それと同時に気になるのが、Bさんがすでに不眠状態になっているかもしれないということです。もし週のうち2日以上、「寝つきに1時間以上かかる」「途中で何度も目覚めてしまう」「早朝に覚醒して眠れない」などの症状が出ていて、睡眠不足が慢性化してきているようであれば、ぜひ心療内科か精神科に相談してください。

不眠状態を放置しているとパフォーマンス低下につながるだけではなく、自律神経系が乱れて本格的な体調不良が出現することが多々あります。不眠が続いているなら、ぜひ医療のサポートを受けてください。

眠れない日が続いているのは、「過緊張状態」が起こっている可能性もありますので、前回の記事「部下に仕事をうまく振れず、『過緊張』から夜眠れなくなった」で紹介した「過緊張状態の緩め方」も、ぜひ参考にしてください。

※筆者が本文で取り上げた事例は、実際にあった例から個人情報保護のため設定や内容を一部変更したものです

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00283/110200159/

 

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