厚労省のマニュアルに沿って、狙い通りの運用ができている企業・事業場は、対象ではありません。
・2020年ストレスチェック実施状況(労働安全衛生調査・実態調査)
事業所規模 30~49人 62.4%50~99人 79.6%、100~299人 92.7%
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r02-46-50b.html
さて、例えば、同じ設問のテストに5回トライするとどうなるのか、想像できますよね。
中学・高校時代のテストを振りかえることもなく、理解いただけることでしょう。
ストレスチェック制度は導入7年目になります。回答によって、どういう結果になるのか、
殆どの受検者は、もう理解しています。
現状では、産業医面談を避けたいと殆どの従業員は考えますから、殆どの企業・事業場では、
高ストレス者が、漸減しているはずです。ほぼゼロではないでしょうか。
わが社では、法令に則りストレスチェックを実施したことにより、高ストレス者が減少しており、
喜ばしい限りだなんて思っていませんか?
わが社は、健康経営の先陣を切っている、健康経営優良企業だ、なんて思いあがっていませんか?
逆に、わが社のメンタルヘルス対策は、効果を発揮しているなんて、ゆめゆめ思わないでしょう。
ましてやこのコロナ禍で、精神疾患のり患者が急激に増加しているのですから。閑話休題。
・医師面接及び相談対応実施状況(全衛連調査)例
http://www.zeneiren.or.jp/cgi-bin/pdfdata/20211004101358.pdf
受検者数 医師面接対象者数 医師面接実施数 相談対応実施数
2014年 55,450人 6,366人 11.5% 51人(6.5%) 71人 1.1%
2015年 420,533人 50,208人 11.9% 1,509人 3.0% 233人 0.3%
2016年 696,499人 88,430人 12.6% 2,242人 2.5% 523人 0.3%
2017年 603,700人 73,668人 12.2% 6,073人 8.2% 1,016人 0.5%
2018年 648,330人 67,860人 10.5% 1,835人 2.7% 918人 0.5%
2019年 618,528人 74,797人 12.1% 1,349人 1.8% 924人 0.5%
ストレスチェックが、「形骸化」しているという問題意識はありませんか。上述した現象面から、
そろそろ、御社のストレスチェックの在り方を見直さなくてはと考えていませんか。
真っ先に考えなければならないのは、制度の運用を専門機関に任せっぱなしにしていることです。
毎年、数十万円、中には数百万円の費用を計上していることでしょう。
高ストレス者が多くいるはずなのに、産業医面談に結びつかない、
分厚い集団分析の資料は報告されているが、そのまま放置しており、
埃を被ったままになっている、なんてことになっていませんか。
しかし、ストレスチェックは、50人以上の事業場においては、法令によって義務化されています。
ですから、やめるわけにはいきません。
そこで、小規模の企業・事業場であれば、そろそろ自社で運用してみてはいかがでしょうか。
それには、ストレスチェック制度の位置づけを少し変更すればよいのです。
すなわち、誰にも自覚症状はあるのですから、1年に1回実施するストレスチェックを、
自分はどのように行動したらよいのか考えてみる、あるいは産業医に相談してみるという、
従業員の意識変革の動機づけにしてみればよいのです。
ここで、あえて申し上げれば、これがストレスチェックの本来の目的(一次予防)なのですね。
さらに簡易的に運用する方法もあります。従業員が記入したチェックシートを産業医が回収し、
問題のある従業員をピックアップしてもらいます。
それから、産業医は、ピックアップした従業員に面談するのです。
たったこれだけで、ストレスチェックの目的は達成することができます。どうでしょうか。
次に、大きなポイントが見逃されている事実があります。
それは、通常、産業医に相談したこと、あるいは相談した内容は、
会社側には伝わらないということです。
ここがストレスチェックと大きく異なる点なのです。このことを社内に広報すれば、
前述したように「産業医に相談してみよう」という意識づけになると考えます。
参考までに、これは、従来からある産業医面談のことで、
ストレスチェックの医師面談の「バイパス」として、多く企業で利用されてきました。
さらに、「集団分析」を行うことによって、従業員の間に要らぬ「忖度」が起きてしまうという
弊害の大きさに注目すべきでしょう。
50~100人規模の企業であれば、どの部署に、どのような従業員がいるのか、
固有名詞や性格までも分っているはずですから、
「集団分析」などど大上段に構える必要はないのです。
小職は、当ブログにおいて、「努力義務」は義務と解釈すべきと主張してきました。
しかし、今回は、この努力義務を、態勢が整うまでしばらく先送りしたほうが得策でしょう。
ましてや「組織分析」ならば、学問的にも確立していますので、実施する意味はあるのですが、
集団分析にどれほどの効果が期待できるか、はなはだ疑問です。
今まで実施してきた「業務改善」でいいのではないでしょうか。
(参考)組織分析とは
組織分析とは、企業における問題や課題などを洗い出すために、
米国の経営コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱する
7つのフレームワークやテンプレートなどを通して、組織の全体像を把握することです。
さて、ここまでを整理すると、
〇ストレスチェックは、毎年1回実施していることになる。
〇外部への費用の流出を防ぐことができる。
〇産業医に相談することも必要という、従業員への意識づけができている。
〇集団分析は、社内の理解が出来上がるまで、先送りする。
ということになります。
加えて
〇倹約できた費用を、産業医の面談費用、心理カウンセラー、産業保健師等の採用に
振り向けてはいかがでしょうか。
どうでしょうか、少し乱暴かもしれませんが、ストレスチェック制度の現状を
反省してみるきっかけになれば幸いです。