中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

労働生産性?

2017年01月31日 | 情報

長時間労働の削減と、労働生産性の低さをリンクさせて議論することには、違和感があります。
大勢としては、労働生産性の低さを、長時間労働や違法残業で補っている、というのが今日的な解釈なのでしょうが、
長時間労働や違法残業の問題は、喫緊の課題であることを認めるものの、
反対に、小生は、日本、または多くの日本人の「生産性」は、「高い」と感じています
そうでなければ、これまでの長期間にわたる、経済成長とそれによる日本の繁栄は、あり得ないでしょう。
例えば、以下に引用した黒田先生の論文に、「フランスは、米国をしのぐ労働生産性を実現させている」とありますが、
フランスは、米国をしのぐ産業競争力があるのでしょうか?
因みに、労働生産性が22位の日本より上位の国を、任意にあげてみましょう。
21位ギリシャ、20位イスラエル、19位アイスランド、18位英国、17位カナダ、16位スペイン、
14位オーストラリア、10位イタリア、7位フランス等々です。
この中のギリシャ、スペイン、イタリアは、EUの「お荷物同様」と言われていませんか?
以下の資料を参照してください。
労働生産性の国際比較 2016編版(日本生産性本部のHPより転載)
http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2016.pdf

それよりも、小生は、労働生産性の定義が間違っているのでは、という疑問を持っています。
労働生産性とは、労働生産性=GDP/就業者数(または就業者数×労働時間)と定義されています。
どう云う訳か、専門家が語る労働生産性の議論には、「ギリシャ、スペイン、イタリア」は、登場しません。
G7の中で、日本の労働生産性は最も低いとかという理由で、労働生産性を高めろ、それには労働時間の削減だと。
単純に労働時間を削減して、現在のアウトプットを維持しろ、ということでしょうが、
これでは、日本の労働者の心身にわたる疲労は、ますます深刻になることでしょう。

的外れな思いでしょうか?長時間労働や違法残業は事実で重要な問題であり、早急に解決しなければなりませんが、
問題の根幹は、現時点の労働生産性の定義による労働生産性の向上とは、異質で別次元のような気がします。
因みに、典型的な議論を掲載します。なお、黒田先生の論文がおかしいとか、間違っているとか、という理由で
引用しているのではないことを、ご理解ください。

日本の働き方の課題(上)時間当たり生産性 上げよ
労働時間規制、シンプルに 黒田祥子 早稲田大学教授
2016/12/19付日本経済新聞 朝刊

「できるだけ早期に、現在のアメリカ、イギリスの水準を下回る」ように労働時間を着実に短縮する。こ
のフレーズは、今年政府が始動させた働き方改革で示された方針ではない。
実はこれは1987年に政府の審議会が建議した「構造調整の指針」(新前川リポート)で示されたものだ。
この方針が示されてから30年。労災認定件数は引き続き増加傾向にあり、新入社員の過労自死という悲しい事件も起きた。
働き方改革の目玉として掲げられた長時間労働是正を巡る論議は膠着状態が続いている。
どうすれば長時間労働社会を変えられるのか。
総務省の「社会生活基本調査」を用いた筆者の試算によれば、
フルタイム雇用者のうち、直近調査の2011年時点で通勤や休憩時間を除いて
平日1日当たり10時間以上働く労働者は男性で44%、女性も19%にのぼる。
平日1日当たり12時間以上働く超長時間労働者も趨勢的に増加傾向にあり、11年時点では男性で16%、女性で4.3%存在する。
これまで長時間労働と健康の関係については身体疾患への因果性を認める研究はあるものの、
メンタル疾患への影響については必ずしもコンセンサス(合意)が得られていなかった。
しかし山本勲・慶大教授と筆者が経済産業研究所のプロジェクトで実施した最近の研究では、
性格やメンタル面の強さといった労働者間の個体差や仕事内容の違いなどを統計的に制御したうえでも、
週当たり労働時間が50時間を超えるとメンタルヘルスが顕著に悪化する傾向となることが分かってきた。
これは英国公務員の追跡調査をしたフィンランドの研究者らによる研究成果とも整合的だ。
1日11時間以上あるいは週当たり55時間以上の長時間労働をしていた労働者は、
5~6年後の大うつ病発症リスクが高まることを示した。
また筆者らの別の研究によれば、長時間労働はメンタルヘルスを悪化させるにもかかわらず、
逆に週当たり55時間を超えるような長時間になると労働者の感じる「仕事満足度」は
増加する傾向があることも明らかになってきた。
行動経済学の研究では、人々には自身の健康に過剰な自信を持ってしまう傾向や、
現在の状態が将来も続くと考えるバイアス(ゆがみ)が存在する。
筆者らの研究結果は、人々がこうした認知のゆがみを持っていることにより「自分は大丈夫」と
自身の健康を過信して無理をしてしまい、長時間労働になりやすい傾向にあることを示唆
している。
一方、健康確保のための長時間労働是正については、必要性を理解する人は多いが、
法規制の強化という形での是正に対しては慎重な意見も多い。
慎重派の懸念の一つは、長時間労働是正が経済成長を阻害するという点にある。

長時間労働の是正は生産性を低下させるのだろうか。
図は、各年の米国を100とした時の各国の時間当たり労働生産性を過去40年間の時系列で示したものだ。
長時間労働を続けてきた日本は90年代以降、米国の6割程度の時間当たり生産性をどうにか保っているのに対して、
70年代以降時短を推進したフランスやドイツは徐々に生産性を上げ、90年代には米国をしのぐ労働生産性を実現させている。
各国間の生産性の違いは、長時間労働という形のインプット(投入)の追加は
疲労などによる限界生産性の低下を通じてむしろ効率性を低下させるという、海外の複数の最新研究とも整合的だ。
これまでの日本は「おもてなし」の精神に裏付けられた高品質・高サービスを売りとし、
長時間労働で対応することで高い経済成長を実現してきたと考えられてきた。
しかし数値的には日本の生産性は低い。おもてなしを細部に行き届かせることにとらわれすぎて、
その価値を消費者に納得させて高い値段で買ってもらうということに注力してこなかった結果といえる。
長時間労働是正は、高い価格が付かない非効率なおもてなしをなくし、
時間当たりの生産性を上げていくきっかけと位置付けるべきだ。
現在の日本はおもてなしの過当競争が隅々にまで浸透している。
個々人や個別企業は「ここまでやる必要があるのだろうか」と感じても、長時間労働が常態化する中で、
自分だけやめることは難しい。さらなるおもてなしの競争も起き、誰も望まない長時間労働社会が固定化してしまう。
このように個々の行動が他者にも影響を与え、社会全体で悪い帰結に陥ってしまうことを経済学では「市場の失敗」と呼ぶ。
長時間労働是正を巡っては、法規制の強化ではなく、産業・職種別の事情を考慮して労使の交渉に委ねるべきだとの意見もある。
だが同業他社に顧客を奪われるという危機感がある中では長時間労働に労働者側も強く反対できない。
また企業側がいくら長時間労働是正の旗振りをしても、顧客からの要望には対応せざるを得ないという現場の事情もある。
このように過当競争による市場の失敗が起きている状況では、市場に委ねた解決策は有効ではなく、
労働時間の総量規制といったマクロレベルのルールの整備が不可欠となる。

現行の労働時間に関する数量規制は「法定労働時間+三六協定(法定労働時間を超える労働に関する労使協定)
+特別条項付き協定」という非常に分かりにくい3階建ての構造になっている。
厚生労働省の「労働時間等総合実態調査」によれば、日本の事業場の約4分の1は三六協定の存在自体を認識しておらず、
現行の上限規制が十分に機能していないことが分かる。
他の法規制との矛盾も存在している。
例えば三六協定では月当たり45時間が所定外の上限となっているのに、
現行の労働基準法では月の時間外労働60時間以上に対して50%以上の割増賃金を支払うことを義務付けている。
また1カ月80時間の時間外労働は「過労死ライン」とされているが、労基法では過労死の認定基準を超える時間外労働が、
特別条項付き協定を結ぶことにより法的に認められるという状況になっている。
なお健康確保については、別途労働安全衛生法が存在するが、同法は個人のプライバシーを尊重しているため、
健康確保は限定的とならざるを得ない

こうした複雑な建て増し構造や矛盾を抱える法規制を整理し、業種や職種にかかわらず
大きな傘の中にできるだけ多くの労働者を包含するようなシンプルで分かりやすいルールの整備が重要だ。

企業版の国勢調査「経済センサス」によれば、現在日本には約580万の事業所が存在する。
労働基準監督署がフル稼働したとしても、全事業所に監督指導に入ることは不可能だ。
シンプルな法制度の整備は、国民自身による法令違反企業への監視力を強化することにもつながる。
もちろんマクロレベルのルールの整備は長時間労働是正の十分条件ではない。
上限を設けるだけでは、サービス残業がさらに増えるという帰結につながる可能性もある。
働き方改革で最終的に追求すべきは生産性の向上だ。
市場の失敗を是正するためにマクロレベルで最低限のルールを整えつつ、
企業、職場、個人それぞれのレベルで時間当たり生産性を上げていく取り組みを併せて講じる必要がある。
30年後の日本で、長時間労働を巡り現在と同じ議論をしていることがないよう、
働き方改革は今、しっかりと進めていかなければならない。

くろだ・さちこ氏 71年生まれ。慶大経卒、日銀へ。慶大博士(商学)。専門は労働経済学

 

 

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精神疾患、平均39歳で発症

2017年01月30日 | 情報

わが国の精神疾患のり患者は、先進国の中でも多いのですが、特長として、働き盛りの労働者が多いと、
当ブログでも、以前より案内してきましたが、詳細な調査データで裏付けされました。

精神疾患、平均39歳で発症 
2017/1/24 日本経済新聞

過労死はもはや中高年男性だけの問題ではない。30~40歳前後の比較的若い世代が男女問わず心身の不調に陥るのが目立ち、
原因も変化している。
厚生労働省の調査では、脳・心臓疾患の労災請求件数は10年間、年700~900件だが、
うつ病など精神障害の請求件数は2009年度に1000件を超え、増加傾向にある。
労災認定事業の調査(10年1月~15年3月)によると、精神障害での認定は2000人で男女比は7対3。
精神障害の平均発症年齢は39歳と、脳・心臓より約10歳若い。
過労死問題に詳しい弁護士の玉木一成氏は「若い人の場合、数カ月で事態が悪化する例が少なくない」と指摘。
仕事がつらいと訴える若者に「『石の上にも三年』と言っている場合ではない」と警鐘を鳴らす。
慶応義塾大学ストレス研究センターの白波瀬丈一郎副センター長は
「豊かな時代に育った世代は、想定外の事態に直面した時の対応力や判断力を十分に養えていない面がある」と分析する。
「耐えがたい職場から離れることも含め臨機応変に行動する力をつけてほしい」と話す。

過労で心の病、30代が3割 労災認定で目立つ若者  厚労省研究班 
2016/10/25

過労によってうつ病などの精神疾患を発症し、労災認定を受けた男女はともに30代が3割超を占め、
年代別で最も多いことが25日、厚生労働省研究班の調査で分かった。
20代も含めると男性は約5割、女性は約6割を若年層が占め、深刻な現状が浮き彫りになった。
厚労省は今年度から若者に特化したメンタルヘルス事業を始めており、「心の病」を未然に防ぐ。
研究班は2010年1月~15年3月に支給決定された精神疾患による2千人の労災認定事案を分析した。
うつ病などの精神疾患の発症時の年齢をみると、男性は30代が436人(31.8%)で最も多く、
40代が392人(28.6%)、20代が262人(19.1%)と続いた。
一方で、女性も最も多かったのは30代の195人(31.2%)だったが、次は20代の186人(29.8%)と僅差だった。
自殺による死亡は男性352人、女性16人と男性が大半を占めた。
男性の場合、40代が101人(28.7%)で最も多かった。女性は20代が9人(56.3%)で半分以上を占めていた。
過労でうつ病などを発症し、自殺するケースは後を絶たない。
電通の新入女性社員だった高橋まつりさん(当時24)は過労でうつ病を発症し、昨年12月に自殺した。
遺族側代理人によると、今年9月に労災と認定された高橋さんの残業時間は昨年10月9日~11月7日で約105時間。
これを受け、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班などは電通の東京本社と3支社、
主要5子会社を労働基準法に基づき立ち入り調査した。
厚労省は、若者が過労による精神疾患で労災認定を受けるケースが多い事態を重くみている。
今年度から産業医や産業カウンセラーを企業に派遣する事業を開始。
若手従業員を対象とする研修会を開き、自分のストレスにどう気づくかなどを伝えている。
厚労省の担当者は「若者の心のケアに力を入れていきたい」と話している。

精神疾患の労災 30代多く 「若年労働者層の対策必要」
2016.10.25 産経

長時間労働やパワハラなどで精神疾患となり、労災認定された事案の発症時の平均年齢は39・0歳、
年代別では30代が最多だったことが分かった。
心筋梗塞など脳・心臓疾患の労災事案では発症時の平均が49・3歳、最多は50代だった。
厚生労働省が25日、過労死遺族らで構成する協議会に資料を示した。
厚労省は仕事が原因の労災認定件数を年度ごとに公表している。
今回は独立行政法人「労働者健康安全機構」が過労死の実態を調べるため、
平成22年1月~27年3月の労災認定事案(精神疾患が計約2千件、脳・心臓疾患が計約1600件)を独自に分析し、
発症年齢など、より詳しいデータをまとめた。
機構の報告書は「若年労働者のメンタルヘルス対策の重要性が示唆された。
脳・心臓疾患の死亡例も日本人の平均寿命より若くして亡くなっている」と指摘した。

 

 

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(参考)三菱電機、不起訴処分に

2017年01月28日 | 情報

1日数十分超過「強制といえず」 検察幹部 
2017/1/28付日本経済新聞

労働基準法違反の疑いで書類送検された三菱電機が嫌疑不十分で不起訴になったことについて、
検察幹部は「今回のケースは、1日当たりにすれば数十分程度の超過残業。
上司が残業を強いたといえるほどではなく、起訴するのは難しい
」と指摘した。
一方、厚生労働省幹部は「検察の判断については何も申し上げられない」としながらも、
電通問題などで長時間労働に対する社会の関心が高まっており、引き続き労基法違反に対して厳しく取り組んでいく」と話した。

三菱電機、不起訴処分に 長時間労働、嫌疑不十分で
朝日新聞デジタル 1/27

労使協定で定めた上限を超えた違法な長時間労働を入社1年目の男性(31)にさせたとして、
労働基準法違反の疑いで書類送検された三菱電機(本社・東京)と労務管理担当の社員1人について、
横浜地検は27日、いずれも不起訴処分(嫌疑不十分)とし、発表した。
厚生労働省神奈川労働局が11日、書類送検していた。
送検容疑は同社が2014年1月16日から2月15日までの間、
神奈川県鎌倉市の情報技術総合研究所で働いていた研究職の男性に対し、
労使で定めた月60時間の残業時間の上限を18時間超える計78時間の残業をさせたというもの。
捜査関係者によると、約1カ月後に時効が迫る中、横浜地検は神奈川労働局とともに補充の捜査を急いだが、
容疑を裏付けるだけの証拠がそろわなかったとみられる。
男性は精神疾患で同年6月から休業し、去年6月に解雇された。
神奈川労働局は昨年11月、長時間労働が精神疾患の原因になったとして労災認定していた。

<横浜地検>三菱電機と上司を不起訴 違法残業立証できず
毎日新聞 1/27

横浜地検は27日、新入社員だった男性(31)を違法に長時間働かせたとして労働基準法違反(長時間労働)容疑で
書類送検された三菱電機と当時の上司を不起訴処分(容疑不十分)とした。
「起訴するに足る証拠を収集できなかった」としている。違法な残業をさせていた認識の立証が難しかったとみられる。
同社と当時の上司は2014年1~2月、神奈川県鎌倉市の同社情報技術総合研究所に勤務していた当時入社1年目の男性社員に、
労使協定の上限の60時間を超え、約78時間の違法な残業をさせた疑いがあるとされていた。
神奈川労働局藤沢労働基準監督署が今月11日に書類送検した。
男性は取材に「残念で納得がいかない。不起訴になったことで、
企業は社員を好き勝手に働かせてよいという風潮にならないことを願う
」と話した。
厚生労働省労働基準局のある幹部は「捜査を尽くした結果を検察に受け取ってもらったにもかかわらず、
こういう判断になったことは意外、残念というほかない」と厳しい表情を浮かべた。

三菱電機社長、長時間労働問題で謝罪 
2017/1/19 日経

三菱電機の柵山正樹社長は19日、大阪市内で記者会見を開き、
長時間労働による疑いで書類送検された問題について「大変深く受け止めている」と陳謝した。
柵山社長は従業員が職場にいる時間を客観的に把握する仕組みを全事業所に導入したことを説明したうえで
IT(情報技術)環境の整備、仕事のスリム化などに取り組み、管理者や従業員の意識改革を図っている」と話した。
厚生労働省神奈川労働局は11日、労働基準法違反の容疑で三菱電機を書類送検した。
研究職だった30代の元社員に労使協定の上限を上回る残業をさせていた疑いがある。

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4,416(43.9%)事業場

2017年01月27日 | 情報

過労死ラインの「残業月80時間超」3450件
2017年01月18日 読売

厚生労働省は17日、労働基準監督署が昨年4~9月に立ち入り調査した全国約1万の事業所のうち、
約44%の事業所で違法な長時間労働を確認し、是正勧告したと発表した。
同省は2015年度から、事業所への立ち入り調査の結果を発表しているが、
今回の調査から、調査対象の事業所を「月100時間超の残業の疑い」から、過労死ラインとされる「月80時間超」に拡大した。
その結果、立ち入り調査に踏み切ったのは、前年同期の4861事業所から1万59事業所へと倍増。
長時間労働の疑いで是正勧告した事業所も、前年同期の2917事業所から4416事業所に急増した。
このうち残業時間が月80時間超だったのは、80%に近い3450事業所に上った。月200時間を超えるケースも116事業所あり、
過労死ラインを超える残業が横行している実態が浮き彫りになっている。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000148739.html
報道関係者各位 平成29年1月17日 労働基準局 監督課
長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します

厚生労働省は、このたび、平成28年4月から9月までに、長時間労働が疑われる 10,059 事業場に対して実施した、
労働基準監督署による監督指導の実施結果を取りまとめましたので、公表します。
この監督指導は、1か月当たり80時間を超える残業が行われた疑いのある事業場や、
長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場を対象としています。
対象となった 10,059 事業場のうち、違法な時間外労働を確認したため、
是正・改善に向けた指導を行ったのは4,416(43.9%)事業場でした。
なお、このうち実際に月80時間を超える残業が認められた事業場は、3,450事業場(78.1%)でした。
厚生労働省では今後も、月80時間を超える残業が疑われる事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、
長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行っていきます。

 

 

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和解は、当然の帰結

2017年01月26日 | 情報

和解は、当然の帰結です。が、推測するに、遺族にとっては、解決には程遠いでしょう。納得できる和解ではないでしょう。
皆さまの企業では、そもそもこのような事案が惹起されることはあり得ないことだと、理解されているでしょうが、
当ブログでも紹介しているように、不幸にも同様な事案に遭遇した時は、
当事者や家族の心情や状況をくみ取り、争いなどに持ち込まず、早期に解決していただきたいと思います。
併せて、二つの電通事件を担当された川人博弁護士の所感が掲載されていましたので、引用します。

電通と遺族が再発防止で合意 改善状況を毎年遺族に報告
2017年1月21日 朝日

広告大手、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が2015年12月に過労自殺した問題で、
高橋さんの遺族と電通は20日、再発防止策や慰謝料などの支払いに関する合意書に調印した。
電通は今後、再発防止策の実施状況について年1回、遺族側に報告することを約束した。
まつりさんの母、幸美(ゆきみ)さん(54)と代理人の川人博弁護士らがこの日、記者会見して明らかにした。
合意書の調印には、23日に引責辞任する電通の石井直社長が出席。
「会社における働き方を根本から改善したい。遺族との合意事項を着実に実行することを誓う」と述べたという。
合意の主な内容は、電通がまつりさんの自殺について深く謝罪する▽18項目の再発防止策を講ずることを明確にし、
遺族側に実施状況を毎年12月に報告する▽「慰謝料等解決金」を支払う――など。
再発防止に向け、電通が川人氏を講師とする管理職向けの研修を3カ月以内に開き、幸美さんが発言する時間を設けることも盛り込んだ。
再発防止策には電通がすでに打ち出した内容も含まれるが、川人氏は「遺族側が毎年報告を受けることについて約束した。
本当に再発防止策が実施されるのか懸念されたので、報告をきちっとするよう強く要求した」と合意の意義を強調した。
幸美さんは、合意に踏み切った理由として、電通がサービス残業をなくすこと、
パワハラの防止に全力を尽くすと約束したことなどを挙げ、「強い決意を持って改革を実行していただきたい」と強く求めた。
電通はこの日、「改めて高橋まつりさんのご冥福を深くお祈りするとともに、ご遺族に心よりおわびする。
二度と同じような出来事が起こらないようにするため、すべての社員が心身ともに健康に働ける労働環境を実現するべく、
全力で改革を進めていく」とのコメントを出した。

■合意書の骨子
・高橋まつりさんが過労・ストレスが原因で自殺したことに対し、電通は深く謝罪
・代理人弁護士と遺族が参加し、3カ月以内に電通の管理職が受講する研修会を実施
・毎年12月に電通が遺族に再発防止措置などの実施状況を報告
・電通は慰謝料等解決金を遺族に払う(金額は非開示)

■「頑張りすぎず、SOSを出して
「まつりが今でも東京のどこかで元気に暮らしているような気がしてなりません。
まつりに会いたい。でも二度とかなうことはないのです」高橋まつりさんの遺影とともに記者会見した幸美さんは、
時折涙ぐみながら娘への思いを語った。
合意書には、社内の懇親会の準備で過重な負荷がかからないようにすることや、パワハラの防止など、
まつりさんが苦しんだとされる労働環境の改善策が盛り込まれた。
「娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死を無駄にしないために、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしい」。
幸美さんはそう訴えた。
川人氏も電通の姿勢に注文をつけた。電通では13年にも社員が過労死し、労災認定されている。
「このケースがもっと社内で総括され、反省されていれば、まつりさんが亡くなることはなかった」
「長時間労働に悩んでいる人に伝えたいことは」と問われると、
幸美さんは「頑張りすぎず、SOSを出してほしい。逃げてほしい。どこかに戻るところがあれば、戻ってほしい」と呼びかけた。

<電通過労自殺>再発防止で遺族と「和解」 謝罪と解決金も
毎日新聞 1/20

◇「鬼十則」使用した労務管理、新人研修しないなど盛り込む
広告最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した問題で電通と遺族は20日、
電通が謝罪し、再発防止の取り組みを強化するとともに、解決金を支払うことで合意した。
東京都内で記者会見した母の幸美さん(54)は涙をこらえ
「娘は二度と帰って来ないが、二度と悲劇を繰り返さないよう改革に向かってほしい」と述べた。
会見に同席した遺族代理人の川人博弁護士は「電通社員で過労死の疑いがきわめて強いと思われるケースが少なくとも他に2人いる。
業務上の原因で病気になった人も2人以上いる」と述べ、再発防止策の履行を迫った。
一方、電通は同日「高橋まつりさんのご冥福を深くお祈り申し上げるとともに、
ご遺族の皆さまに心よりおわび申し上げます」とのコメントを発表した。
両者の合意書で、電通は高橋さんの死を踏まえ「再発防止に向けた改善の決意を表明する」とした。
23日付で引責辞任する石井直社長が合意書に調印し、口頭でも謝罪した。
解決金の額は非公開で慰謝料と未払い残業代も含まれる。
川人弁護士は「電通が全面的な責任を負うことを前提とし、社会的に相当な金額」と述べた。
1981年に過労自殺した男性社員の場合、電通は約1億6800万円の損害金を支払うことで遺族と和解した。
今回の合意事項に盛り込まれた電通の長時間残業やパワハラの再発防止策は以下の通り。
▽役員を含む局長以上の管理職向けに長時間労働についての研修会を3カ月以内に行う▽研修会で幸美さんに発言の機会を与える
▽持ち帰り残業の原則禁止▽過重労働を助長すると批判された社員の行動原則「鬼十則」を新人研修などに使わない
▽高橋さんを苦しめた職場の懇親会の準備や反省会で過重負荷を発生させない
▽社員の残業時間と入退館記録のずれが30分以上ある場合には調査する▽遺族に毎年12月、再発防止策の実施状況を報告する--など。

(参考)
高橋まつりさんの過労自殺事件を担当する川人博弁護士は20日の記者会見で、
「今こそ職場の改革を実現することを訴える―2人の電通社員過労死事件を担当した者として―」と題する文書を配布した。
全文は次の通り。(2017年1月21日 朝日に掲載)

2人の電通社員過労死事件を担当した者として、意見を述べる。
(1)1991年8月、電通男性社員(当時24歳)が入社2年目に死亡した原因は、
3日に一度は徹夜という「常軌を逸した」(東京地裁判決の表現)長時間労働による過労、ならびに上司によるパワハラが原因であった。
下級審判決にとどまらず、最終的に最高裁判決(2000年3月24日)によって企業の責任が明確にされ、
その後、会社が遺族に謝罪し、再発防止にとりくむことを約束して、訴訟上の和解が成立した(最高裁以降川人が遺族代理人を務めた)。
そして、電通は、現在の本社建物に移転した後に、フラッパーゲート記録で従業員の入退館時刻を管理し、
労働時間短縮・健康管理にとりくんでいる旨をメディアを通じて広報した。
(註:小生もこのような対応を承知していました)
にもかかわらず、最高裁判決から15年経過した年に、高橋まつりさんが、前記事件と全く同じような原因で死亡に至ったことは、
実に深刻な事態と言わざるを得ない。
電通における犠牲者は、この2人にとどまらず、いま報道されているだけでも、
さらに1人の死亡(2013年)につき労災認定(昨年)されており、
加えて、過労死の疑いの強い在職中死亡は、これら3名以外にも相当数発生している。
死亡に至らずとも、業務上の過労・ストレスが原因と思われる疾病に罹患した人も数多い。
高橋まつりさんの死は、まさに起こるべくして起きたものと言わざるを得ない。
会社経営者の責任、管理者の責任は、極めて重大である。
と同時に、かかる異常な職場の状態を放置していたことにつき、行政当局も、深く反省しなければならない。
(2)昨年10月7日の労災認定記者会見以降、かつてない報道がおこなわれ、また、行政当局も機敏な動きをおこなった。
この結果、電通にとどまらず、日本の企業全体に対して、長時間労働を削減すること、
過労死をなくすことの重要性・緊急性が指摘されることとなり、現在に至っている。
その意味で言えば、現在、わが国の長年にわたる職場の長時間労働、過重労働を改革していく社会的条件が熟しており、
この機会を逃がすことなく、確実な改革を実現しなければならないと考える。
電通の役員諸氏は、社長交代の有無にかかわらず、職場改革のために全力を尽くしていただきたい。
また、日本のすべての企業において、企業トップが先頭に立って、改革を実行していただきたい。
政府・行政当局においては、過労死等防止対策推進法(2014年成立)に定める「国の責務」を、
しっかりと自覚して、過労死ゼロの社会へ向けて、具体的な措置を早急に講ずることを求めたい。
とくに、現在審議されている「働き方改革」において、時間外労働時間の上限規制を法律・政令で定めることを強く訴えたい。
また、長時間労働、過重労働を促進するような法律の制定・改正は、断じておこなってはならない。
当職は、今後とも、働く者のいのちと健康を守るために、微力を尽くしていきたいと考えます。
以上

 

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