以下の新聞報道のみからの印象ですが、誤解を恐れずに申し上げれば、
「同社が全社員の3分の1にあたる約1万人に適用」とありますので、対象を大幅に拡大しすぎた結果と受け止めます。
当該企業は、裁量労働制を正しく理解していないように推測できます。
裁量労働制は、考え方として決して悪い制度ではありません。問題は運用にあると考えます。
三菱電機、裁量労働制の3人労災 過労自殺も
9/27(木) 朝日
三菱電機の男性社員5人が長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症して2014~17年に相次いで労災認定され、
うち2人が過労自殺していたことがわかった。5人はシステム開発の技術者か研究職だった。
3人に裁量労働制が適用されており、過労自殺した社員も含まれていた。
労災認定が直接のきっかけではないとしながらも、同社は今年3月、
約1万人の社員を対象に適用していた裁量労働制を全社的に廃止した。
16年11月、情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)に勤めていた研究職の30代の男性社員が、
長時間労働が原因で精神疾患を発症したとして労災認定され、本人がその事実を公表した。
柵山正樹社長(当時、現会長)は17年1月の記者会見で「二度とこのような事態が起こらないように取り組む」と陳謝し、
労働時間の正確な把握に力を入れる考えを示していた。
朝日新聞の取材で、これ以前にも労災が2件、17年にも2件認定されていたことが新たにわかった。
関係者によると、5人のうち裁量労働制を適用されていたのは3人。
このうちコミュニケーション・ネットワーク製作所(兵庫県尼崎市)に勤務していた40代の社員は、
長時間労働が原因で精神障害を発症して自殺したとして17年6月に労災認定された。
若手のため裁量労働制を適用されていなかった名古屋製作所(名古屋市)勤務の社員(当時28)も精神障害を発症し、
14年12月に過労自殺と認められており、4年間に2人が過労自殺していた。
三田製作所(兵庫県三田市)に勤めていた40代の社員は13年に脳梗塞(こうそく)を発症。
東京・丸の内の本社勤務だった40代の社員も、16年にくも膜下出血を発症した。
この2人も長時間労働が発症の原因だったとして、それぞれ15年3月と17年8月に労災を認められた。
裁量労働制は実際に働いた時間にかかわらず、一定時間を働いたとみなして残業代込みの賃金を払う制度。
労働時間管理が甘くなり、長時間労働を助長する危険性が指摘されてきた。
制度の廃止により、対象だった社員は原則として残業時間に基づいて残業代を受け取る働き方に変わった。
同社は多少の人件費の伸びを見込んでいるという。
三菱電機は朝日新聞の取材に対し、新たにわかった4件の労災認定の事実をすべて認めた。4件とも社内に周知していないという。
それぞれ「個別の事情がある」(人事部)として、労務管理に構造的な問題はないとしている。
残業5倍…過労自殺の再発防げず 三菱電機
2018年9月27日 朝日
大手電機メーカー、三菱電機で裁量労働制を適用されていた技術系社員が相次いで労災認定を受けていたことが明らかになった。
長時間労働を助長するとの批判が根強い裁量労働制の危険性が改めて浮き彫りになった。
同社が全社員の3分の1にあたる約1万人に適用してきた裁量労働制を全廃したことも判明。
安倍政権がめざす裁量労働制の対象拡大に向けた議論に影響を与えそうだ。
通信システムなどの開発を手がけるコミュニケーション・ネットワーク製作所(兵庫県尼崎市)に勤務し、
2016年2月に過労自殺した男性社員は亡くなる4カ月ほど前から法定時間を上回る残業がそれ以前の約5倍に急増。
月80時間前後の「残業」が続いた。この時期に精神障害を発症したとして、17年6月に労災認定された。
車載用機器を手がける三田製作所(兵庫県三田市)で13年6月、本社(東京)でも16年4月に男性社員が脳疾患を発症し、
その後労災と認められた。3人はいずれも40代のシステム開発の技術者で、「専門業務型」の裁量労働制を適用されていた。
12年8月にも名古屋製作所(名古屋市)の技術者の男性社員(当時28)が自ら命を絶った。入社4年目だった。
11年にシステム開発プロジェクトの担当に任命されたが、システムに次々と不具合が発生した。
完成が予定に間に合わず、遅れを取り戻すために月100時間を超す残業が数カ月続いて、精神障害を発症。
14年12月に労災認定された。