中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

自殺総合対策大綱

2017年07月31日 | 情報

公表の自殺者数は、自殺と特定できた人数です。そのほかに、死亡原因が自殺と特定できない
方々が数多くあるという事実があります。
わが国は、「自殺死亡率」が高いほかに、若年から中年層の自殺が多いのも特徴です。

過労自殺対策を推進 大綱閣議決定 
死亡率3割下げめざす
2017/7/25 日経

政府は25日、今後5年間の国の指針となる「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。
2026年までに人口10万人当たりの自殺者数である「自殺死亡率」を15年と比べ30%以上、引き下げる数値目標を掲げた。
自治体の対策を強化するほか、長時間労働解消で過労自殺の防止にも取り組み、
誰もが自殺に追い込まれることのない社会を目指す。
07年に初の大綱を策定。5年ごとに見直している。
国内の自殺者数は16年が2万1897人と7年連続で減少したものの、
新大綱では「非常事態はいまだ続いている」と警鐘を鳴らす。
背景にあるのが、日本の自殺死亡率が他の先進国と比べて高いことにある。
日本の自殺死亡率18.5人(15年)に対し、フランスは15.1人(13年)、米国は13.4人(14年)にとどまる。
新大綱では他の先進国と同水準まで自殺死亡率を引き下げると明記。
達成には年間の自殺者数を1万6千人以下にする必要があるとしている。
電通の新入社員による過労自殺問題を受け、新大綱では勤務問題による自殺対策の推進を新たに重点施策に位置づけた。
国は長時間労働是正に向け、企業への監督指導を強化。職場でのメンタルヘルス対策やパワハラ対策を進めていくとした。

▼自殺総合対策大綱 
2006年10月施行の自殺対策基本法に基づき、国の指針として07年6月に初めて策定された。
自殺を「心理的に追い込まれた末の死」と位置付け、相談・支援態勢の整備などを打ち出した。
多重債務や過労への対策、民間団体支援も提言。15年の自殺死亡率を05年より20%以上減少させる目標を明記した。
5年をめどに見直すとしており、12年8月にはいじめ自殺への対策強化や東日本大震災の
被災者のケア充実などを盛り込んだ。大綱の策定は07年、12年に続き今回が3回目となる。

自殺者年2万超「いまだ非常事態」 自殺大綱を閣議決定
2017年7月25日 朝日

政府は25日、新たな自殺総合対策大綱を閣議決定した。
かつて年3万人を超えた自殺者は減る傾向にあるが、
2016年は2万1897人など依然として年2万人を超す状況に「非常事態はいまだ続いている」と宣言。
長時間労働対策や若者対策に重点的に取り組み、人口10万人あたりの死亡者数を示す「自殺死亡率」を
10年間で3割以上減らすことを目指す。
大綱は自殺対策基本法に基づいて国や自治体などの役割を定めるもので、5年に1度見直している。
長時間労働による自殺対策は、広告大手電通の過労自殺問題などを受けて初めて重点施策に加えた。
労使が協定を結んでも時間外労働が年720時間を上回らないよう徹底することを掲げたほか、
職場のメンタルヘルス対策の推進やパワハラ防止対策も盛り込んだ。
全体の自殺者数が減る傾向にある中、未成年の自殺者数が横ばい状態のため若者対策も重視。
特に多い夏休み明けに小中高校などの見守り活動を進める。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で自殺をほのめかす情報がないかも確認する。
こうした取り組みで自殺死亡率を15年の18・5から26年までに13・0以下にし、
フランスの15・1や米国の13・4など主要先進国の水準にするとした。

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健康診断未実施など健康障害防止措置の不十分が2355カ所

2017年07月28日 | 情報

小職が注目したのは、健康診断未実施など健康障害防止措置の不十分が2355カ所で確認された。
厚労省発表では、さらに、
(3)主な健康障害防止に係る指導の状況 (1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
過重労働による健康障害防止措置不十分なため改善を指導したもの:20,515 事業場( 85.8
うち、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するよう指導したもの: 14,012事業場(68.3%)
労働時間の把握が不適正なため指導したもの:2,963 事業場( 12.4
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が80時間を超えるもの: 1,313事業場(44.3%)
という結果でした。

違法残業1万272カ所 厚労省が是正勧告
7/26(水)  産経

厚生労働省は26日、月80時間超の時間外労働が疑われる2万3915事業所のうち、
43%に当たる1万272事業所で違法な時間外労働を確認し、
是正勧告を行ったとする平成28年度の監督指導結果を発表した。
月100時間超の時間外労働が疑われる事業所を対象にした前年度に比べ、監督指導の数は大幅に増えた。
厚労省によると、違法な時間外労働があった事業所のうち“過労死ライン”とされる
月80時間を超えていたのは7890カ所。
月200時間を超えていた事業所も236カ所あった。
また、残業代などの賃金不払いが1478カ所、
健康診断未実施など健康障害防止措置の不十分が2355カ所で確認された。
製造業や運輸交通業で違法な時間外労働が多かった。
厚労省は「指導により是正されても違反を繰り返す恐れがあり、粘り強く指導していく」としている。

(厚労省HPより)
報道関係者各位 平成29年7月26日
【照会先】労働基準局監督課 過重労働特別対策室

長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します
厚生労働省では、このたび、平成28年4月から平成29年3月までに、
長時間労働が疑われる23,915事業場に対して実施した、
労働基準監督署による監督指導の実施結果を取りまとめましたので、公表します。
この監督指導は、月80時間を超える時間外・休日労働が行われた疑いのある事業場や、
長時間労働による過労死等に関する労災請求があった事業場を対象としています。
対象となった23,915事業場のうち、10,272事業場(43.0%)で違法な時間外労働を確認したため、
是正・改善に向けた指導を行いました。なお、このうち実際に月80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、
7,890事業場(76.8%)でした。
厚生労働省では、今後も月80時間を超える時間外・休日労働が疑われる事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、
長時間労働の是正に向けた取組みを積極的に行っていきます。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172536.html

 

 

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職場復帰支援⑤

2017年07月27日 | 情報

Q④:(続編)産業医が作成した「復職を可とする」診断書は、信用できないことが度々です。拒否することができますか?

 A④: もっと、穏やかで、会社側、復職希望者側の双方が納得できる解決策です。
ポイントは、会社側の周到な準備に求められます。
基本的な考え方として、会社側は、当事者の主治医と良好な関係を築くことが大切です。
まず、メンタルの問題で休職者が出たら、会社側は、当事者の同行、又は、了承を前提に、当事者の主治医に面談を求めます。
当事者が同行しない場合は、当事者の同意書が必要ですし、また、診療時間に面談を求めるのですから、
相当の謝礼が必要になります。

さて、主治医との面談ですが、当事者の病状や回復見込みなどは、聞く必要はありません。
疾病の治療は、当事者の責任なのですから。それでは、なにをするかなのですが。
まず、はじめに当事者(主治医から見れば、患者)の仕事内容、労働環境などを説明します。
主治医は、大学からこれまで、医療一筋ですから、企業活動などについては全く知識を持っていないからです。
参考までに、主治医のなかには、「企業」について、あまり良いイメージを抱かない方もいらっしゃいます。
それは、企業といっても様々ですから、過去に嫌な体験をしたことがあって、
企業関係者との接触を、はなから拒否される方も実在するのです。
このような医師に面談を求めるのは、さぞや一苦労することでしょう。

次に、会社の人事規程、復職支援規則等を説明します。それに、休職期間中の待遇等です。
そして、最も大切なことは、復職時に会社が求める、当事者の体調、または回復具合についてです。
当事者に会社が求める能力、資質等を説明することが求められます。

主治医にこのようなオリエンテーションをしておけば、当事者が復職を希望する際に惹起すると思われるトラブルの大半を、
回避することが可能になるでしょう。

それに加えて大切なのは、会社と当事者との定期的なコミュニケーションです。
これができていれば、当事者がいつ頃復職の希望を表明するかがわかりますし、
会社側の受け入れ準備もスムーズに運ぶことになります。
そして、なんのトラブルもなく、復職希望者の復職を実現できることになります。
休職者から、「突然に」復職を可とする主治医の診断書が提出されたら、
その時点で、会社に求められる管理能力に、不備があるということになります。

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職場復帰支援④

2017年07月26日 | 情報

Q③:産業医が作成した「復職を可とする」診断書は、信用できないことが度々です。拒否することができますか?

A③:原則として、主治医が認めた「診断書」は、尊重しなければなりません。
医師は、国が正式に認めた資格ですし、医師は、法律と医学的知見に基づいた診断書を認めるのです。
この診断書を、何ら医学的知識を持たない「会社」が、基本的に拒否することなぞできません。

一方で、よく聞かれる、「産業医の判断で、主治医の判断を覆すことができる。」
つまり、産業医の判断が優先される、という考え方です。
しかし、法令のどこを探しても、「主治医の診断より、産業医の判断が優先される」ということは、記述されていません。
それでは、なぜ、このような「風評」が伝搬するのかですが、
主治医の診断書と、産業医の見解とで、どちらが信用できるかが、法廷で度々争われることがあるのです。
結果は、圧倒的に産業医の診断書が信用できるとされています。これが要因となって、短絡的に、
「主治医の診断より、産業医の判断が優先される」という考えに結びついているようです。

また、ご質問にもあるように、主治医が作成した診断書が、会社側にとって信用できないと受け取られるのは、
主治医の立場が「患者ファースト」であるからなのです。
患者が、「復職を可とする」診断書が欲しいと要求すれば、主治医は、原則として、
患者の希望に沿った診断書を作成するのが普通です。
ですから、会社側から見れば、とうてい復職できるような状態に見えなくても、
当事者は、主治医の診断書を盾にして、復職を要求してくることになります。

それでは、会社側は、どうすればよいのでしょうか?
まず、主治医に対して、診断書を撤回してほしい、あるいは、書き換えてほしいという要求は、受け入れられないでしょう。
主治医としては、医師の立場上、あり得ません。それに、復職希望者が、納得するはずがありません。
「診断書」が提出された後に、会社側ができることは、中立な第三者の意見を求めることです。
それでも、復職希望者が納得しない場合は、争いに持ち込まれることになるでしょう。
なにしろ、往々にしてあることなのですが、就業規則に規定されている
「休職期間」の満了が近づいている場合などには、当事者にとっては、当然のことと考えてよいでしょう。

もっと、穏やかで、会社側、復職希望者側の双方が納得できる解決策は、次稿に譲ります。

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新国立 ・現場監督

2017年07月25日 | 情報

電通の事案を例に引くまでもなく、「他山の石」としなければならないのに、
わが社は関係ない、わが社には起こらないことと「高をくくっている」ようですね。
未だに、「対岸の火事」と受け止める風潮があることは、危機管理意識がないとことになります。
トップは、経営に忙しいし、下は下で、余計なことを言っても致し方がない、ということでしょうか。
大企業には危機管理部門がありますが、これからは中小規模の企業においても、
自社の危機管理を専門とする部署が必要でしょう。

新国立 ・現場監督、過労自殺か 残業月200時間近く
毎日新聞2017年7月20日

2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設を巡り、
下請け業者で現場監督を務めていた男性(23)=都内在住=が自殺したのは月200時間近い残業を
強いられ精神疾患を発症したためだとして、両親が東京労働局上野労働基準監督署に労災申請した。
両親の代理人の川人博弁護士が20日、明らかにした。

遺族が労災申請
申請は12日付。都内で記者会見した川人弁護士によると、工事現場の入退場記録を基に月々の残業時間を調べたところ、
過労死ライン(月80時間)を超えており、16年12月が約94時間▽今年1月が約142時間半
▽同2月には約196時間--に達し、2月は徹夜勤務が3回あった。
男性は大学卒業後の16年4月に都内の土木工事会社に入社し、
12月中旬から同競技場の地盤改良工事の施工管理業務を担当。
今年3月2日、勤務先に「今日は欠勤する」と電話した後に行方不明になり、4月15日に長野県内で遺体で発見された。
「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした。
家族、友人、会社の方、本当にすみませんでした」と書かれた遺書が遺体の近くに残され、県警から自殺と判断されたという。
母親の証言では、午前4時半に起床し深夜1時ごろの帰宅が多かった。
生前、両親に「機械の調子が悪く、日程がタイト(ぎりぎり)だ」と話していたといい、
川人氏は「五輪開催という国家プロジェクトに間に合わせねばという重圧が現場にあった」と指摘した。
男性の勤務先の土木工事会社は毎日新聞の取材に「遺族に対し大変申し訳ない。真摯(しんし)に受け止めている」と答え、
元請けの大成建設は「専門工事業者に対し、今後も法令順守の徹底を指導する」とのコメントを出した。

工期短縮迫られ
新国立競技場を巡っては、総工費が膨らんだことが批判され15年7月に旧計画が白紙撤回され、
本体工事は当初予定から約1年2カ月遅れて16年12月に着工。
発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)は事業主体の選定にあたり、工期短縮を求めていた。
20年大会に向けて各競技会場の整備が進む中、川人弁護士は20日、
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長宛てに、長時間残業撲滅を求める要請書を提出。
「国家的行事であるからといって、その準備のために労働者の命と健康が犠牲になることは
断じてあってはならない」と訴えた。
今後は、東京都の小池百合子知事や丸川珠代五輪担当相、JSC宛てに同様の要請書を出すという。

 

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