中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「うつ病」か「更年期障害」か

2024年05月31日 | 情報
「うつ病」か「更年期障害」か 50歳代の男性管理職 
体の不調の原因を見極めるポイント…女性に比べて気づきにくいのはなぜ?
24.5.8 読売(精神科医 夏目誠先生の解説です)

精神科産業医として、企業で実施するストレスチェック検査で「高ストレス」となった人の面談をしていると、
40代後半になると不定愁訴が増えてきます。
イラつき、発汗、のぼせ、意欲低下などです。
女性なら一番に更年期障害を考えますが、実は男性でも更年期障害に苦労する人がいます。
いずれも性ホルモンの減少から生じますが、男女の違いも含めて事例と対処法を紹介します。

更年期の不調、会社では言いにくい
産業医面談に訪れた51歳の女性、中宮春子さん(仮名)の事例を私(産業医)と中宮さんとのやり取りで再現します。

産業医 : 高ストレスの判定ですが、心身症状が多いですね。
疲れやすい、集中出来ない、意欲がわかない、眠れない。また、職場では、上司のサポートが低いと出ています。
中宮さん: 実は……話しにくいのですが、更年期障害ではないかと思っていました。 

産業医 : それで?
中宮さん: のぼせ、ほてりが半年くらい前からあって、これがつらいですね。
でも、生理や女性ホルモンなどの話で、更年期のイメージに抵抗があって、やはり男性の上司や家族に話しにくいです。

産業医 : のぼせやほてりがある。
中宮さん: 汗がドッと出て、イライラする。我慢をしてきました。

ホルモン補充療法で落ち着く
産業医 : のぼせやほてり、発汗をホットフラッシュと言うのはご存じだと思いますが、更年期障害に特有の症状ですね。
中宮さん: どうすれば、いいのでしょうか?

産業医 : 更年期は症状発生の個人差が大きいのですが、あなたの場合、症状が強いので婦人科受診をお勧めします。
中宮さん: 婦人科ですね。

産業医 : 紹介状を書きます。治療すればイライラや集中できないなどのメンタル症状も軽快し、仕事に打ち込みやすくなりますよ。
中宮さんは婦人科を受診し、減少した女性ホルモン、エストロゲンを飲み薬や貼り薬で補うホルモン補充療法を受け、症状は落ち着きました。
婦人科受診の2か月後に中宮さんが相談室を訪れました。

産業医 : 中宮さん、見違えるようです。明るく表情も豊かになってね。
中宮さん: 症状が軽くなって楽になりましたね。更年期の症状は治療で和らげることができるんですね。

ストレスチェック検査で判定された「高ストレス」は、更年期障害の治療で落ち着いたわけです。

気力が衰え、意欲がわかない54歳の男性
男性の場合も、男性ホルモン、テストステロンの減少で、意欲がわかないなど更年期症状が出ることがあります。
しかし女性ホルモンが急減する女性と異なり、男性ホルモンの減少には個人差も大きいので、更年期障害とはなかなか思い至りません。
販売会社経理部次長の岡田太郎さん(仮名、54歳)が相談に来ました。

産業医 : 精神科産業医の夏目です、よろしく。
岡田さん: 経理部勤務の岡田です。病気というほど調子が悪いわけではないの
で、相談に来るのはためらいがあって……。

産業医 : メンタルの不調ではよくありますよ。なにがつらいのですか。
岡田さん: 気力が衰えてきたというか。

産業医 : いつ頃からでしょうか?
岡田さん: 1か月くらい前からです。意欲が出ない。

趣味は今まで通り
産業医 : 好きなことは、どうでしょうか?
岡田さん: 趣味は今まで通りできます。

産業医 : 気分は落ち込みますか?
岡田さん: 少し落ち込んでいるかもしれません。夜中に目覚めることが多いですね。

産業医 : 性欲はどうですか?
岡田さん: 年齢もあるでしょうが、落ちています。

産業医 : かなりですか。
岡田さん: 異性への興味はないです。考えたこともないから。

男性の場合、うつ病か更年期障害か
産業医 : お話を聞いていると、考えられる病名は「うつ病」と「更年期障害」の二つです。
岡田さん: (驚いた表情で)えっ、男なのに更年期障害ですか。 

産業医 : あまり知られていないからね。でも、ありますよ。
岡田さん: 私の場合、可能性があるのですね。

産業医 : そうですね。全体に意欲が低下しているようですが、疲弊しているというほどではなく、好きなことは楽しめるわけですね。
うつ病だと楽しめなくなりますよ。
岡田さん: どうすればい良いのでしょうか?

男性ホルモンの数値を検査
産業医 : 泌尿器科や男性の更年期外来があるクリニックを受診してみませんか。
岡田さん: どこがいいでしょうか?

産業医 : クリニック宛てに、紹介状を書きます。採血して、テストステロンという男性ホルモン値を測定します。
岡田さん: その値でわかるんですか?

産業医 : そうです。数値も参考にしながら、総合的に判断します。
岡田さん: わかりました。

男性もホルモン補充療法で改善
泌尿器科を受診してから、面談に来てくれました。

産業医 : いかがでした?
岡田さん: 男性の更年期障害と診断されました。原因が分かってほっとしました。

産業医 : 治療を受けているのですか。
岡田さん: はい、男性ホルモン補充療法を受けています。

産業医 : 症状は、どうかな?
岡田さん: 意欲が出てきました。

産業医 : 良かったですね。
岡田さん: まさかと思っていましたが。

産業医 : 主治医のOKが出るまで通院を続けてください。

更年期障害に悩む男女の事例を紹介しました。
男性は気づきにくく、うつ病などメンタルの病気と似た症状が出ることがあります。
40歳代後半以降の男性にうつ的な状態が続いた時は、更年期障害も疑って専門医受診をお勧めすることがあります。
男性ホルモンの問題でないと分かれば、メンタル系の医師が対応します。(夏目誠 精神科医)

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職場のハラスメントに関する実態調査・厚労省

2024年05月30日 | 情報
「 職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
~全国の企業・労働者等を調査し、ハラスメントの発生状況や予防・解決に向けた取組の主な効果・課題を把握~
令和6年5月17日(金)照会先雇用環境・均等局 雇用機会均等課


令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」(調査実施者:PwCコンサルティング合同会社)について、このほど、報告書が取りまとめられましたので公表します。
この調査は、令和2年度に実施した職場のハラスメントに関する実態調査から3年が経過し、ハラスメントの対策に取り組む企業やハラスメントを受けている労働者の状況も変化していると考えられることから実施しました。今回の調査は、全国の企業と労働者等を対象に、令和5年12月~令和6年1月に実施したものです。
この調査結果等を踏まえ、厚生労働省では、引き続き職場のハラスメントの予防・解決に向けた施策を実施していきます。
調査結果の概要は、別添資料をご参照ください。

職場のハラスメントに関する実態調査報告書 概要
•ハラスメントの発生状況・ハラスメントに関する職場の特徴
•ハラスメントの予防・解決のための取組状況、その効果と課題
•ハラスメントを受けた経験
•ハラスメント行為を受けた後の行動、ハラスメントを知った後の勤務先の対応
•ハラスメントを受けていることを認識した後の勤務先の対応 等

〇報告書概要

【企業におけるハラスメントの発生状況】 
⚫ 過去3 年間各ハラスメント(パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為、就活等セクハラ)の相談件数については、セクハラ以外では「件数は変わらない」の割合が最も高く、セクハラのみ「減少している」が最も高かった(「件数の増減は分からない」を除く)。顧客等からの著しい迷惑行為のみ「件数が増加している」の割合の方が「件数は減少している」より高かった。また、該当件数の傾向としては、顧客等からの著しい迷惑行為については「件数が増加している」の方が「件数は減少している」よりも多かったが、それ以外のハラスメントについては「件数は減少している」の方が「件数が増加している」の割合より多かった。 
⚫ 相談件数の多かった業種としては、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメントでは、「金融業、保険業」、「教育、学習支援業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「医療、福祉」や「生活関連サービス業、娯楽業」が多い傾向にあった。顧客等からの著しい迷惑行為では、「医療、福祉」、「宿泊業、飲食サービス業」、「不動産業、物品賃貸業」(それぞれ53.9%、46.4%、43.4%)が、就活等セクハラについては、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「教育、学習支援業」の順に相談があった企業の割合が多かった(それぞれ2.9%、2.1%、1.4%) 

【企業におけるハラスメントに対する取組状況】 
⚫ パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業・介護休業等ハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為、就活等セクハラに対して予防・解決のために実施している取組として、「相談窓口の設置と周知」の割合が最も高く、約7割以上の企業が実施している。次いで「ハラスメントの内容、職場におけるハラスメントをなくす旨の方針の明確化と周知・啓発」の割合が高く、約6割以上の企業が実施している。業種別にみると、いずれのハラスメントにおいても、「金融業、保険業」、「複合サービス業」などで、取組を実施している割合が全般的に他の業種より高かった。
⚫ また、顧客等からの著しい迷惑行為に関する取組について業種別にみると、一般消費者との接触頻度が高い「医療、福祉」、「金融業、保険業」、「宿泊業、飲食サービス業」などにおいて、取組を実施している割合が他の業種より高く、また、そうした企業では取組を進める上での課題として「迷惑行為に対応する従業員等の精神的なケアが難しい」との回答が他の業種より多かった。 
⚫ 就活等セクハラに関する取組として実施している取組を業種別にみると、「金融業、保険業」、「情報通信業」などでは、各取組の実施割合が他の業種より高かった。 

【企業におけるハラスメントに対する取組の効果・課題】
⚫ 予防・解決以外の副次的効果としては、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」(39.1%)の割合が最も高く、「会社への信頼感が高まる」(34.7%)が続いた。
⚫ ハラスメントの取組を進める上での課題について、取組を実施している企業では、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」(59.6%)が最も高く、取組を実施していない企業においては、「特にない」(42.6%)が最も高かった。 

【今後必要なハラスメントに対する取組】 
⚫ 今後必要なハラスメント予防・解決のための取組としては、「企業の自主的な取組の促進・支援」(54.7%)が最も高く、次いで「ハラスメント(ハラスメントの行為者)に対する規制」(36.5%)が高かった。
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不正を公益通報(続編)

2024年05月29日 | 情報
〇「不正を公益通報」の事例編です。

〇ちょうど、NHKが、報道番組「クローズアップ現代」において三菱電機を好事例として紹介していました。

「“守られない通報者” 内部告発を社会の利益に」
初回放送日:2024年5月21日 NHKTV

会社や組織の不正を通報窓口・行政機関・マスコミなどに通報する「公益通報」。調査によると通報者の3割が「後悔したことがある」と回答。
通報したことで不利益を被ったという訴えが各地でおきている。
職場での嫌がらせ、異動や降格など不当な人事が行われたというのだ。
通報者を守る法律があるにもかかわらず、実態は逆だ。
通報者を守るには何が必要なのか?不正に声をあげる人を表彰する企業も。
通報を社会の利益へ。

〇やっと、三菱電機も改革の一歩を踏み出したのだなと受け取りました。
期待したいのですが、しかし、企業風土は、そう簡単に変えられないのが現実です。
企業風土って、目に見えない魔物なのですね。

〇当該企業には、甚だ失礼ですが事実が事実ですから致し方ありません。
大企業・三菱電機は、「労務問題のデパート」と云っても過言ではない過去があるのです。

〇番組を視聴しての率直な感想です。
時間の制約があるからなのでしょうが、
・社長をはじめとする経営トップが登場しない
・なぜ、取り組んだか理由が語られない

ということは、「大山鳴動して鼠一匹」になりはしないかという印象です。

〇(参考)三菱電機HPより引用
「当社が進める3つの改革の進捗について 」2023年4月14日

・当ブログで好事例としてたびたび取り上げてきましたが、
胆管がん事件を克服し、再生した「SANYO-CYP社」と比較してほしいのです。小職には圧倒的な彼我の差を感じます。

「SANYO-CYP社」 HP

〇(参考報道)
1.名古屋の三菱電機社員、労災認定 長時間労働でうつ発症
23.6.28
三菱電機名古屋製作所でソフトウエア設計開発担当として働いていた男性(35)について、うつ病を発症したのは、長時間労働が原因として、名古屋北労働基準監督署が労災と認定していたことが28日、分かった。代理人の岩井羊一弁護士が明らかにした。
岩井弁護士によると、男性は2013年に入社。16年10月に社内で発生した事故の対応で業務量が大きく増え、時間外労働は1カ月間で約101時間に上り、前月の倍以上になった。同12月に病院を受診し、うつ病と診断され、休職した。
同労基署は21年、労災を認めない決定をした。男性側が労働者災害補償保険審査官に審査請求したところ、労災と認定された。

長時間労働でうつ発症 名古屋北労基署 三菱電社員労災認定 /愛知
毎日新聞 2023/6/29

三菱電機名古屋製作所でソフトウエア設計開発担当として働いていた男性(35)について、うつ病を発症したのは、
長時間労働が原因として、名古屋北労働基準監督署が労災と認定していたことが28日、分かった。代理人の岩井羊一弁護士が明らかにした。
男性は2013年に入社。16年10月に社内で発生した事故の対応で業務量が大きく増え、時間外労働は1カ月間で約101時間に上り、前月の倍以…


2.上司から「飛び降りるのにいい窓」遺書に残す…三菱電機の新入社員自殺、遺族と会社が和解
2022/08/26 読売

三菱電機(東京)の新入社員の男性が2019年8月、上司から「死ね」などと言われたと遺書に記して自殺した問題で、男性の遺族と同社が和解したことがわかった。遺族の代理人弁護士が26日、記者会見を開いて明らかにした。和解は23日付。
代理人弁護士や同社によると、和解の合意書には、同社が遺族に解決金(金額非公表)を支払うほか、再発防止に真剣に取り組むことなどが盛り込まれた。同社は役員や社員を対象にハラスメント防止研修などを行い、今後5年間、再発防止策の実施状況を遺族に報告することなどを誓約した。
男性は19年8月、社員寮近くの公園で自殺。現場に残されていた遺書には、上司から「死ね」「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで」などの発言を受けたことが記されていた。尼崎労働基準監督署が21年2月、上司のハラスメントが原因で精神疾患を発症したとして労災認定した。
遺族は「三菱電機は息子の死を無駄にすることなく、二度とこのようなことが起こらないよう改善してほしい」とのコメントを出した。三菱電機は「ハラスメント行為を絶対に許さないとの強い決意のもと、再発防止と組織風土改革に全力で取り組む」としている。

3.他、ここ数年の間においても同様な事例があります。

〇労務問題の再発防止および組織風土改革の取り組みについて
2022 年 8 月 26 日 三菱電機株式会社

2019 年 8 月に当社の新入社員(当時)が亡くなられ、2021 年 2 月に尼崎労働基準監督署より労災認定されました。改めまして故人のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆さまに心からお詫び申し上げます。
当社は、痛ましい労災事案を重く受け止め、再発防止のための種々の施策を進めておりますが、この度、ご遺族に改めてお詫び申し上げるとともに、労務問題の再発防止を経営の最優先課題として引き続き全力で取り組むことをお誓いし、ご遺族との間で和解に至りました。
当社は、大切な従業員の尊い命が失われた事実を厳粛に受け止め、ハラスメント行為を絶対に許さないとの強い決意の下、2020 年 1 月から「職場風土改革プログラム」を展開し、全従業員が心身の健康を維持し、いきいきと働ける職場環境の実現に向けて、グループをあげて全力で取り組んでいます。
さらに、今年 4 月からは、新しい三菱電機の創生に向けた抜本的な組織風土改革を始動し、「上にものが言える風土」「失敗を許容する風土」「共に課題を解決する風土」の実現に向けて、日々、具体的な取り組みを進めているところです。
風通しのよい企業風土への変革、誰もがいきいきと働ける職場環境の実現に全力で取り組むことで、労務問題の再発防止を徹底するとともに、新しい三菱電機の創生に努めてまいります。

■主な取り組み
・ハラスメント教育強化と管理職任命時の見極め強化、管理職層への 360 度評価の導入
・全役員・全従業員によるハラスメント行為を行わない旨の宣言書提出
・意識調査を活用した定量的な職場風土分析と分析結果に基づく継続的な改善の実行
・個々人の負荷や職場内の人間関係、ストレスの状況などを確認する定期アンケートの実施
・相談窓口の充実(複線化)
・職場におけるハラスメント実態調査の定期的な実施と、申告案件について人事部門に加え外部専門家の窓口を新たに設置し、心理的安全性を確保した実態把握の実施
・ハラスメントに関する懲戒規則の改定、厳罰化と全従業員への周知徹底
・パワーハラスメント事例やパワーハラスメント相談件数等の従業員への適時適切な情報開示
・オープンな風土形成に向けた経営陣自らの変革(社長・執行役によるタウンホールミーティング、全執行役へのコーチングの実施)

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27.28日は、休載します

2024年05月24日 | 情報
27.28日は、出張しますので当ブログを休載します。
再開は、29日(水)です。
よろしくお願いします。
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不正を公益通報

2024年05月24日 | 情報
ダブルスタンダード状態に陥るくらいなら、社内通報制度は止めた方がよいでしょう。

〇公益通報後に配置転換でうつ病に 大塚食品を社員が提訴 大津地裁
毎日新聞 2024/5/13

食品メーカー「大塚食品」(本社・大阪市)であった不正を公益通報した後、配置転換で仕事をほとんど与えられなかったとして、
男性社員が13日、同社に220万円の損害賠償を求める訴えを大津地裁に起こした。
男性はうつ病を発症しており、「上司の監視を受けて『軟禁状態』での勤務を強いられた」と訴えている。
大塚食品は大塚ホールディングスの子会社。
男性は滋賀県湖南市にある大塚食品滋賀工場の品質管理課で、製品サンプルの品質検査に従事してきた。
訴状によると、滋賀工場内で2021年11月、粉末タイプの「ポカリスエット」などを包装していた袋について、
食品用ではないポリ袋を使っていたことが判明。
その袋からほこりなどが検出されたことを踏まえ、男性は滋賀県食品安全監視センターの公益通報窓口に連絡した。
調査に入った監視センターは22年8月、食品衛生法に抵触する恐れがあるとして工場に再発防止を指導。
男性は23年4月に別の部署への配置転換となり、後にうつ病と診断されて同9月から約4カ月間にわたって休職した。
男性側は新しい部署での仕事について、大半はパソコンに向かって待機しているだけだったとし、
「管理職に囲まれた状態で、監視カメラを自分の席に向けて設置された」と主張。
こうした処遇は公益通報が要因になっているとし、会社は通報者の不利益な取り扱いを禁じる公益通報者保護法のほか、
社員の就業環境への配慮義務に反していると訴えている。
提訴後に大津市内で記者会見した男性は「法律で決められたように製造すべきなのに、消費者への裏切り行為だ。
自浄作用が働く会社に変わってほしい」と話した。
大塚食品は「訴状を入手しておらず、内容を確認できていないのでコメントは控える」としている。


公益通報後に異動でうつ病 従業員が大塚食品を提訴
2024年5月13日 東京

大塚食品滋賀工場(滋賀県湖南市)で製造する食品に異物混入があったと公益通報をした後、
部署を異動させられ不利益な扱いを受けうつ病を発症したなどとして男性従業員が13日、同社に220万円の損害賠償を求めて大津地裁に提訴した。
訴状によると21年11月、粉末状の食品を入れていたポリ袋から黒いほこりや緑色の樹脂片などを検出。
男性が所属する品質管理課が調査した結果、食品の包装に使ってはいけないポリ袋を使用していたことが判明し、
22年6月に滋賀県食品安全監視センターへ公益通報した。
男性従業員は「会社は内部通報者に対し報復しないとうたっているが、実際は報復人事が横行している」と訴えた。
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