中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

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精神不調、時計型機器や遠隔診療で把握

2022年07月22日 | 情報

精神不調、時計型機器や遠隔診療で把握 コロナで普及
2022年7月17日 日経

新型コロナウイルス感染症による行動制限で、気持ちがふさぐなど精神面の不調を訴えた人は多い。コロナが下火になっても影響は残る。腕などに身につけ心拍などを手軽に測れるウエアラブル機器で症状をとらえ、オンライン診療なども使って治療する手法に期待が集まる。

「2カ月先の新患受付が瞬く間に埋まってしまう」。心療内科・精神科を専門とする、きたなら駅上ほっとクリニック(船橋市)の松本悠院長はコロナ禍初期に患者の多さを実感した。特に2020~21年に学生や新社会人の抑うつ症状や不安、パニック発作が目立った。

多くの患者に共通するのが睡眠リズムの乱れだ。診察の際には、よく眠れているか聞くが、そもそも本人も寝ている間のことは正確にわからない。「睡眠の状態は多くの場合、ブラックボックスに近い。患者さんの話は前の晩など直前のことに左右されがちでもある」(同院長)。不十分な情報をもとに治療方針を考えなくてはならない。

そこで、21年から腕時計のように身につけて脈拍、活動量、睡眠の状態を測定できるウエアラブル機器を患者に使ってもらう試みを始めた。データはスタートアップのテックドクター(東京・港)に送られ、解析されて表やグラフに整理される。医師は患者のスマホに表示された結果を見ながら診察する。

「寝ても熟睡感が得られず困っている」。こう訴えて受診に来た30代の男性患者に対し松本院長は、眠っている時に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群を疑って検査したが、該当しなかった。ウエアラブル機器を付けてもらったところ、睡眠の乱れを検出した。仕事関連のストレスなどが原因とみられた。

仕事量の調整や生活リズム改善のアドバイス、心理療法などの治療で睡眠リズムは徐々に改善し、通院もいったん停止した。ところが、数カ月後にテックドクターからデータに変化が表れたと連絡があった。まもなく患者は不調を訴え、治療を受けた。データが症状の再発や悪化の兆しを早めに把握し、タイミングのよい治療をするのに役立つことがわかった。

精神科では今後、オンライン診療の活用にも期待がかかる。順天堂医院は積極的に利用を始めた。感染対策上、外出を控えたい人や、病院近くで勤務していたがテレワークが多くなり通院しづらくなった人、他人と会うのが怖い社交不安症の患者などが対象だ。海外ではコロナ禍の前から普及し、特に米国の大学病院の精神科などでは100%オンラインのところも多い。

「画像から患者さんの様子はだいたいわかる」と加藤忠史・順天堂大学医学部主任教授は話す。ただ、視線が合わない、あるいは話の微妙なニュアンスや表情の変化が伝わりにくいなどの課題はあるという。初診は対面で、オンライン診療中も3回に1回は対面受診としている。

規制上の問題もある。政府はコロナ対応でオンライン診療の規制を緩め、診療報酬を引き上げたが、精神科は例外扱いだ。オンライン診療の「医学管理料」から「精神医療に関するもの」を除外した。厚生労働省保険局医療課は「科学的なエビデンスがそろっておらず、学会にも慎重意見がある」と理由を説明する。「これではオンライン診療は事実上の持ち出しになる」(加藤主任教授)

慶応大学医学部の岸本泰士郎特任教授らは、日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトとして、対面のみとオンライン併用時の治療効果を比較検証する試験を実施中だ。抑うつ障害群、不安症群、強迫症および関連症候群の計200人の患者が参加し、半年かけて調べる。22年度内に結果がまとまる。

これらのデータでオンライン診療の効果を示せれば、中央社会保険医療協議会の議論を経て、24年度から診療報酬が認められる可能性がある。

順天堂大はさらに先を行く研究も計画する。日本アイ・ビー・エムと共同で、メタバース(仮想空間)でメンタルヘルスの診療ができないか探る。診療中、心拍、唾液量などはウエアラブル機器などで測る。メタバースで患者の苦手場面などをつくり、自律神経の反応を客観的に評価するといった利用法が考えられるという。

新型コロナはオミクロン型が拡大しているが、経済・社会活動をできるだけコロナ前に戻そうという流れは変わらない見通しだ。テレワークやオンライン授業が長期化したため、多くの人がいる場面に溶け込めず「コロナ・ロス」とも言える適応障害に悩む人が出てくると懸念する声も専門家の間にはある。外出を無理強いするより、オンラインやセンサーを上手に使い、誰もが抵抗なく治療を受けられるようにすることが大切だ。

 

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