中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

本年も閲覧いただきありがとうございました

2014年12月26日 | 情報
今年一年の間、閲覧、参照いただき有難うございます。
当ブログも2011年12月にスタートし、4年目に突入しています。
おかげさまで、スタートしてから、毎月のように閲覧数が増加しています。
このような特殊な分野で、当ブログの閲覧数が相当数に上っているのも、
メンタルヘルス問題への関心が高いことの証左であり、
問題の根深さ、深刻さを物語っているのでしょう。

本年は、本日が最後で、年末年始の休暇に入らせていただきます。
来年は、5日(月)より、再開します。

因みに、5月のゴールデンウィークと、8月のお盆休暇も長期休載させていただいています。
みなさま、よき新年をお迎えください。弥栄
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MH問題における社労士の役割

2014年12月26日 | 情報
小生が考えている、MH問題における社労士の役割です。小生はこの考え方に従い、日々活動しています。

企業・事業所におけるメンタルヘルス対策は、広範囲にわたる活動を必要としますので、
多くの部門・セクションが参画することになります。
すなわち、人事労務部門、健康管理スタッフ、産業医、外部の主治医、弁護士、社労士等々です。
企業・事業所で活動するみなさんは、当然にお分かりのことですが、企業・事業所はいわゆる「ピラミット」型の組織であり、
その業務分担は明確に規定されており、指揮・命令権もはっきりしています。
ですから、複雑・難解な業務もスムーズに運び、売上と利益を生みだすことができます。
一方で、メンタルヘルス対策チームは、組織横断型の人員構成になりますので、意思疎通は悪くなり、
それぞれが独走して活動することもあり、組織的な活動が難しくなります。
いわゆる「プロジェクトチーム」の難しさを抱えた、典型的な事例です。
なお悪いことに、チームリーダーがいない事例が多々あります。
これでは、各部門の主張がぶつかり、セクショナリズムの逆スパイラルにはまってしまいます。
成果を求めても無理があります。

小生は、まず、リーダーを決めるようお願いしています。
リーダーは誰でも良いのです。衛生管理者でもOK、人事課長でもOKです。
企業によっては、専属産業医というケースもあります。
そして、連絡協議会を設け、出来ればイントラネットを活用した情報共有の仕組み設けるようお願いしています。
これで、一応「かたち」は整うのですが、大切な意思が込められていません。

従って、社会保険労務士として、クライアントである企業・事業所のメンタルヘルス対策チームに、
「横ぐし」(横やりではありません)を刺し、有機的な組織として動くことが出来るようお手伝いすることが使命と考えています。

皆さまの企業・事業所においては、どのような態勢になっていますか?
社内の状況が硬直化すると、社内だけの議論では解決できないことが多々おきます。
そこで、外部の意見や知恵を借りることが、問題解決の近道になるのです。
企業において社外取締役を委嘱する理由がここにあります。

MH問題については、橋本社会保険労務士事務所がお手伝いします。
お問い合わせは、
s-hashi@ya2.so-net.ne.jpまでどうぞ。
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被告に続き、原告も控訴

2014年12月25日 | 情報
当ブログでたびたび取り上げてきた裁判です。
一審で敗訴した会社側が控訴したのに続き、勝訴した原告も「損害賠償額が不十分」として控訴しました。
しかし、既にお伝えしていますが、福井労基署は、男性は上司からのパワハラが原因で自殺したとして労災認定している事案です。
御社で、同様な事案が惹起した場合、どのように対処されますか?
小生の予測ですが、多分、高裁は和解勧告をするのではと考えています。
そうしないと、自殺された男性社員=当時(19)が気の毒なような気がしています。

パワハラ自殺訴訟で原告側も控訴 管理職の上司に対する責任争う
福井新聞 12月16日

消火器販売などの「暁産業」(福井市)で勤務していた男性社員=当時(19)=が
自殺したのは上司のパワーハラスメント(パワハラ)が原因として、男性の父親が損害賠償を求めた訴訟で、
原告の主張を認めて会社と直属の上司に約7200万円の支払いを命じた福井地裁の判決について、
原告側が15日までに名古屋高裁金沢支部に控訴した。控訴は12日付。
判決は、男性が手帳に書き残した上司の発言を「典型的なパワハラ」と認定し、会社と、この上司に損害賠償の支払いを命じた。
管理職の上司への請求は「パワハラの実態を把握するのは困難だった」と退けた。
原告側は会社と上司2人に対して、約1億1100万円の損害賠償を求めていた。
原告の代理人弁護士は、控訴の理由として「損害賠償額が不十分。棄却された管理職の上司に対する責任もあらためて争う」としている。
この訴訟では、被告側も判決を不服として同支部に控訴している。
被告側は控訴の理由として「パワハラと認定された23カ所の発言は、指導の範囲を超えるものではなかった」などとしている。

(参考)パワハラ自殺訴訟、会社側が控訴 「指導の範囲を超えていない」
福井新聞 12月11日(木)

消火器販売などの「暁産業」(福井市)で勤務していた男性社員=当時(19)=が自殺したのは
上司の暴言によるパワーハラスメント(パワハラ)が原因として男性の父親が損害賠償を求めた訴訟で、
同社と当時の上司側が10日までに、原告の主張を認め約7200万円の支払いを命じた福井地裁判決を不服として、
名古屋高裁金沢支部に控訴した。控訴は6日付。
同社と上司の代理人弁護士は、控訴の理由として「パワハラだと認定された23カ所の発言は指導の範囲を超えていない。
仕事で注意すること自体がパワハラになってしまう。自殺との因果関係にも事実誤認がある」とした。
福井地裁は11月28日の判決で、男性は上司から言葉によるパワハラを受け、男性が手帳に書き残した
「死んでしまえばいい」「辞めればいい」などの上司の発言23カ所を「典型的なパワハラ」と認定。
うつ病を発症し自殺した男性に、業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないとし、同社と上司2人に約7200万円の支払いを命じた。
男性の父親の代理人弁護士は「遺族の願いを無視した控訴に憤りを感じる。明らかなパワハラだったと主張していく」とコメントした。

(参考)パワハラ自殺訴訟、認定の根拠は上司発言記した手帳 福井の会社・直属上司に賠償命令
福井新聞 11月29日(土)

自殺した男性が上司から言われた言葉を記したメモ帳。「辞めればいい、死んでしまえばいい」といった文字が並ぶ。
消火器販売などの「暁産業」(福井県福井市)に勤めていた男性社員=当時(19)=が自殺したのは
上司の暴言によるパワーハラスメント(パワハラ)が原因として、
男性の父親が会社と当時の上司2人に対し、慰謝料など約1億1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが28日、福井地裁であった。
樋口英明裁判官は「典型的なパワハラ」として、同社と直属の上司に対し約7200万円の支払いを命じた。管理職の上司に対する請求は棄却した。
原告側代理人によると、自殺の原因をパワハラと訴えた訴訟は県内で例はなく、未成年に対する認定は「全国でもおそらく初めて」としている。
樋口裁判官は判決理由で、男性がメモに残した直属の上司の暴言について「仕事上のミスに対する叱責(しっせき)の域を超え、
男性の人格を否定、威迫するもの」と認定。さらに自殺した本人の過失はない、として賠償額の過失相殺をしなかった。
会社についても、直属の上司に対する管理責任を認めた。管理職の上司については
「パワハラの実態を把握するのは困難」として責任は問えないとした。
判決文などによると、男性は2010年4月に正社員として入社。直属の上司から「死んでしまえばいい」「辞めればいい」などと
言葉によるパワハラを受け、同年12月に自殺した。福井労基署は12年7月、男性は上司からのパワハラが原因で自殺したとして労災認定した。
男性の父親は「当然の結果だと思っている。この判決を受け、社長はどう責任を取るのか」とコメントを寄せた。
同社は「担当者不在のためコメントできない」とし、被告代理人は「パワハラはなかったと確信しており、控訴する」とした。

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ストレスチェック制度解釈⑱(ストレスチェック制度に関する検討会報告書)

2014年12月24日 | 情報
平成26年12月17日、厚労省より、
「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」が公表されました。
この報告書により、今後の省令、通達等が発出されます。
なお、当報告書を読んだだけでは、全容を理解するのは至難の業です。
以下に概要を紹介しますが、ストレスチェック項目も何ら決定していませんし、
行間の意味を理解するのは、難しいでしょう。
ご質問、お問い合わせは、橋本社会保険労務士事務所まで。
また、セミナー、勉強会、企業へのアドバイス・制度設計等も応じています。
s-hashi@ya2.so-net.ne.jp

ストレスチェック制度に関する検討会報告書の概要

1 ストレスチェックの実施について
○ 実施に当たり、衛生委員会で必要事項を審議・確認し、労働者に周知。
<ストレスチェックの実施方法>
○ ストレスチェックは、1年以内ごとに1回以上実施(一般健診と同時実施も可能)。 調査票によることを基本とする。
○ ストレスチェックの実施者となれる者は、医師、保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士とする。
○ 実施者には、事業場の状況を日頃から把握している産業医等がなることが望ましい。
○ 労働者に対する人事権を有する者は、実施者にはなれない。
<ストレスチェック項目>
○ 3つの領域(「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」)を含めることを必須とする。
○ 標準項目は、旧労働省委託研究により開発された、職業性ストレス簡易調査票(57 項目)とする。
 なお、中小規模事業場等向けに、より簡易な項目も示す。
○ 標準項目を参考としつつ、各企業が独自に項目を選定できることとする。
<同意の取得>
○ 個人のストレスチェック結果を事業者に提供する際の労働者の同意の取得は、以下の方法に限定
 (事前同意やストレスチェック実施時の同意は不適当)。
・ 結果の本人への通知後に、個々人ごとに同意の有無を確認。
・ 本人から面接指導の申出があった場合に、同意があったものとみなす。
<ストレスチェック実施後の対応>
○ 個人のストレスチェック結果の保存は、事業者が、実施者に行わせる(実施者による保存が困難な場合は、実施事務従事者(実施者を除く)に
 保存させることも可能)。
○ 高ストレスと評価された者のうち、面接指導の申出を行わない労働者に対して、実施者が面接指導の申出勧奨を行うことを推奨。
○ 相談窓口を広げ、相談しやすい環境を作り、適切な対応を行うため、産業医と連携した保健師、看護師等による相談対応も推奨。
○ 医師の面接指導を経ずに、ストレスチェックの結果や保健師、看護師等による相談対応の結果だけで就業上の措置を講じることは不適当。
○ 事業者が入手した個人のストレスチェック結果については、就業上の措置に必要な範囲に限定せず、そのまま上司、同僚等に共有することは不適当。
<集団分析と職場環境の改善>
○ ストレスチェックを職場環境の改善につなげるため、集団的な分析の実施と分析結果に基づく職場環境の改善を事業者の努力義務とする。
○ 集団分析結果は原則として本人同意なく事業者が把握可能であるが、10 人未満の集団では、分析対象となる労働者全員の同意がない限り不適当。
2 面接指導について
○ 面接指導は、労働者から申出があった後遅滞なく行うことが適当であり、当該事業場の産業医等が実施することが望ましい。
3 派遣労働者の取扱いについて
○ 派遣労働者個人に対するストレスチェックの実施、本人通知、面接指導については、法令上、派遣元が実施義務を負う。
  一方、集団的な分析については、派遣先の努力義務とする。
4 労働者に対する不利益取扱いの防止について
○ 面接指導の申出に対する不利益取扱いは法律で禁止。
○ 以下の行為は禁止されるべき。
① ストレスチェックを受けないことを理由とした不利益取扱い。
② ストレスチェック結果の提供に同意しないことを理由とした不利益取扱い。
③ 高ストレスと評価された労働者が面接指導の申出を行わないことを理由とした不利益取扱い。
④ 面接指導の結果を理由とした以下の行為。
・ 解雇
・ 雇用契約の不更新
・ 退職勧奨
・ 不当な動機、目的によると判断される配置転換、職位(役職)変更
・ 労働契約法等の労働関係法令の定めに反する措置を講じること
⑤ 医師の意見と著しく内容・程度の異なる措置(労働者の不利益となるもの)を講じること。
5 その他
<外部機関への委託>
○ 事業者はストレスチェックを外部機関に委託する場合は、予めその機関の実施体制や情報管理の適切さなどを十分に確認することが望ましい
 (確認事項を国が示す)。
<実施状況の行政への報告>
○ ストレスチェックや面接指導の実施状況を労働基準監督署に報告させることとする。

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書(全文)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000069002.pdf
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障害者虚偽報告に学ぶ

2014年12月23日 | 情報
当問題は、当ブログでも紹介してきましたが、問題は深刻ですね。
何しろ、本家本元が法令違反したのですから言い訳ができません。
しかし、批判しているだけでは得るものがありません。
私たちは、この問題から沢山のことを学びましょう。

1.法令遵守できていないことは、当然に問題です。 
 「ばれなきゃ、いいや}という意識は危険です。特に当ブログに最も関係がある安衛法違反は、
 往々にしてこのような傾向が見られます。「ばれなきゃいいや、ばれたら対応すればよい」と。

2.うそは、さらに大きなうそを呼び込みます。
 虚偽を隠ぺいしようとすると、さらに大きく、複雑なうそをつかなければならなくなります。
 トップは、常にこうした虚偽報告を見抜く経営センスを磨かなければなりません。
 これが出来ないと、経営の屋台骨を揺るがしかねない事態に追い込まれます。

3.従業員のモラルに影響します。
 会社のうそは、直接業務に携わる、現場の従業員がいちばん熟知しています。
 箝口令を引いていても、何れどこかの傷口から事実がふき出します。
 隠ぺいに加担している従業員・部門から、就労意欲の低下がはじまります。

4.経営環境が悪化します。
 この傷口を、早期に手当して膿を出し切らないと、やがて組織全体に膿がまわり始め、
 組織全体の機能が低下し始めます。まさに経営の危機です。

5.優秀な従業員が離散します。
 一度、経営の歪みが露見すると、経営陣が何を言おうと、従業員は耳を貸さなくなります。
 そして、優秀であればあるほど、従業員は組織を見はなし、組織はガタガタになるでしょう。

6.問題の本質を追求しましょう。
報告書には、「不正が長年続いた背景を「組織防衛」と指摘」とあります。
これでは、問題解決になりません。2000年ころに何があったのでしょう?
これが分らないと根源的な解決になりません。
日本人や日本の風土が最も苦手とする領域なのですが、勇気を以って踏み込まないと、
不正の火種を残したままの再出発になってしまいます。

今回の問題を起こしたのは、独立行政法人という準公的機関ですから、
民間企業のように、あっという間に組織が瓦解するようなことはないでしょうが、
今後、厚労省は、障害者雇用率の遵守について、どのように行政指導していくのでしょうか。
私たちは、この事件を他山の石とし、経営の王道を邁進しなければなりません。

障害者雇用水増し2000年から 33人関与、厚労省所管独法
日本経済新聞 2014/12/18

全国の労災病院などを運営する厚生労働省所管の独立行政法人「労働者健康福祉機構」(本部・川崎市)が
障害者雇用率を水増しし虚偽報告していた問題で、機構の第三者委員会が17日、
「遅くとも2000年ごろから、 継続的に行われてきた」との報告書を発表した。
委員長の手塚一男弁護士らが東京都内で記者会見した。
報告書は、残された記録から少なくとも06~14年に歴代の理事や総務部長、人事課長ら33人が不正に関与したと 認定した。
中には厚労省からの出向者も含まれていた。
障害者雇用促進法は障害者を一定の割合以上で雇うよう求め、企業や独立行政法人は毎年雇用状況を厚労省に報告する。
機構は報告の際、職員数や障害者数を操作し、法定の雇用率を上回ったように見せかけていた。
報告書は、不正が長年続いた背景を「組織防衛」と指摘。関与した職員らは世間の批判を恐れ、事実を 隠蔽したとした。
会見に同席した機構の武谷雄二理事長は「厳しい報告書で、再発防止に努める」と述べ、関わった職員らを 処分する考えを示した。
この問題では厚労省が11月、障害者雇用促進法違反の疑いで機構に対する告発状を横浜地検に提出。
不正に 関わったとして、総務部長だった同省幹部らを更迭した。〔共同〕

雇用障害者数水増し、労働者健康福祉機構を告発
読売新聞2014年11月17日

厚生労働省が所管し、全国で労災病院を運営する独立行政法人「労働者健康福祉機構」(川崎市)が
雇用する障害者数を水増しして虚偽報告していた問題で、神奈川労働局は17日、
機構に障害者雇用促進法違反(虚偽報告)の疑いがあるとする告発状を横浜地検に提出したと発表した。
障害者の雇用を巡る虚偽報告の告発は全国で初めてだという。
発表などによると、機構は、実際の障害者雇用率が2012年は0・94%、
13年は1・42%だったにもかかわらず障害者数を増やすなどして、
12年は2・12%、13年は2・32%と法定雇用率(2・1~2・3%)を上回るよう虚偽報告をしていた疑いがある。
虚偽報告は遅くとも10年からあったが、告発は公訴時効(3年)にかからない2年分が対象。
機構は弁護士などを交えた第三者委員会を設置して詳細を調査しており、
同労働局は虚偽報告を指示した職員らを特定して追加告発することも検討している。虚偽報告の罰則は30万円以下の罰金。
厚労省は、機構に出向していた同省幹部職員に虚偽報告の認識があったとして、
18日付で高崎真一・大臣官房審議官を大臣官房付とするなど4人の更迭人事を発表した。
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