中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職・復職問題Q&A⑪

2020年09月30日 | 情報

Q;社員80の卸売業で人事総務担当の管理職をしています。
社員の一人が精神疾患で休職することになりました。
当従業員との休職中のコミュニケーション手段について悩んでいます。
メール、文書、直接訪問、出社させる、TEL等いろいろと考えられますが、最善の手段は?

A;ご指摘のとおりで、お悩みはご尤もです。
従業員が休職する際には、事前の取り決めが大切です。
重要な取り決めの一つに、連絡・コミュニケーション手段の選択・決定があります。

以下、手段について検証しましょう。
1.電話(携帯)
メリット お互いに、いつでも時間を選ぶことなく、連絡できる。
     意思や感情を伝えやすい
     現状を推測できる
     コストが安価
デメリット 休職者からは、いつでも、深夜でも連絡することができる
      連絡しても、通話できないとトラブルが大きくなる
      通話内容の記録が残らない
      一対一だから、言った言わないの水掛け論になりやすい

2.メール
メリット お互いに、いつでも時間を選ぶことなく、連絡できる。
     コストが安価
     5W1Hで記録が残る
デメリット 意思や感情を伝えにくい
      一方通行で、誤解や不信を招きやすい

3.文書
メリット 会社としての、正式な意思表示になる、意思表示を伝えることができる
     5W1Hで記録が残る
デメリット 作成に時間がかかる
      会話に時間がかかる、タイミングを失うこともある
      文書作成が面倒

4.直接に訪問
メリット コミュニケーション手段としては、最善
デメリット 日程調整が大変
      コストがかかる、遠隔地であれば、なおさら

5.テレビ電話、ネット電話
メリット コミュニケーション手段としては、直接訪問に次ぐ
デメリット 設備がないとできない、設備投資が必要、コストがかかる 
      休職者は、時間をかまわず連絡してくる

6.休職者を出社させる
メリット コミュニケーション手段としては、最善
デメリット 出社させるリスクが大きすぎる
      居住地が遠隔地であれば、なおさら

結論
色々な手段を検証しましたが、それぞれにメリット、デメリットがあります。
従って、個別の事案によって、メリット、デメリットがあります。
ですから、事案によって、数種の手段を組み合わせて対応すべきでしょう。

以下、注意事項を列挙します。
1.会社側の窓口担当を1名、特定してください。人事労務担当、産業保健スタッフ等が相応しいでしょう。
休職者の上司、管理職は不可です。
2.休職者宅を訪問する場合は、トラブル回避のため、必ず、2名で対応してください。
3.関係者間で、情報を共有してください。その際、情報管理には、細心の注意が必要です。
(別項で、詳述予定)
4.記録を、5W1Hで、必ず残してください。後々、トラブルが発生した場合、有利になります。

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(再掲)令和2年度「全国労働衛生週間」

2020年09月29日 | 情報

令和2年7月10日(金)【照会先】労働基準局安全衛生部労働衛生課

令和2年度「全国労働衛生週間」を10月に実施

~今年のスローガンは「みなおして 職場の環境 からだの健康」~

厚生労働省は、10月1日(木)から7日(水)まで、令和2年度「全国労働衛生週間」を実施します。
今年のスローガンは、一般公募に応募のあった254作品の中から、
槙尾 浩二さん(埼玉県)の作品「みなおして 職場の環境 からだの健康」に決定しました。

全国労働衛生週間は、労働者の健康管理や職場環境の改善など、
労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して
労働者の健康を確保することなどを目的に昭和25年から毎年実施しているもので、今年で71回目になります。
毎年10月1日から7日までを本週間、9月1日から30日までを準備期間とし、
各職場で職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、
さまざまな取組みを展開します。(別紙1-8・10参照)

労働衛生分野では、過重労働等により労働者の命が失われることや健康障害、
職場における労働者のメンタルヘルス不調、病気を抱えた労働者に対する治療と仕事の両立支援
化学物質による重篤な健康障害などが重要な課題となっています。
このような状況の中、過労死等を防止するためには、働き方改革の推進と相まって、
長時間労働による健康障害の防止対策及びメンタルヘルス対策の推進、
病気を抱えた労働者の治療と仕事の両立支援を社会的にサポートする仕組みの整備、
化学物質対策については、特定化学物質障害予防規則、石綿障害予防規則等の関係法令に基づく
取組の徹底等を図るとともに、各事業場におけるリスクアセスメント及びその結果に基づく
リスク低減対策の実施を促進していくこととしています。

なお、本年については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、
いわゆる“3つの密”(1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、
2.密集空間(多くの人が密集している)、3.密接空間(お互いに手を伸ばしたら
届く距離での会話や発声が行われる))を避けることを徹底しつつ、
各事業場の労使協力のもと、全国労働衛生週間を実施することとしています。

令和2年度全国労働衛生週間実施要綱
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000645836.pdf

 

 

 

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市の労働環境に改善すべき点がある

2020年09月28日 | 情報

「市の労働環境に改善すべき点がある」とは、具体的にどういうことか?
記事中にある
「業務の外注を検討」を指すのか?
報道だけでは、分からないことが多いですね。

 

業務との因果関係「認められぬ」 能代市の第三者委

20.9.19 朝日

 

秋田県能代市教育委員会の男性職員(当時43)が自殺した問題で、
市は18日、第三者調査委員会(委員長=柴田一宏弁護士)の調査報告書を公表した。
自殺原因について「業務との間に因果関係があるとは認められない」としつつも、
市の労働環境に改善すべき点があると指摘した。

市によると、男性は生涯学習・スポーツ振興課の公民館文化係に所属していた。
手足に障害があり、他の人より時間がかかる業務があったため、自主的に朝は早く、
夜も遅くまで働くことが多かったという。昨年611日午前に早退。
夜になって自宅近くで亡くなっているのが見つかった。

報告書は、昨年5月ごろ、男性から笑顔が見られなくなったとして、うつ病になった可能性が高いと指摘。
1カ月前、同じ係の過半数の職員(4人)が入れ替わり、
同僚を助ける必要が増え「人事異動が心身の負担になった可能性がある」とした。
34月は月100時間近い時間外労働をしていたが「過労自殺と認定することまではできない」と評価した。

上司による男性へのパワーハラスメントを遺族が疑っている問題では、職員からの聞き取りで、
上司2人が5月末、男性に「大きめの声で業務上の指導をした」ことを認めた。
しかし「元々声が大きいタイプ」と記述。人格否定や侮辱する言動はなく、
パワハラに該当しうる叱責(しっせき)があったとまでは認められない、と判断した。

第三者委は今回、恒常的な長時間労働に加え、例年にはない業務が重なり
「男性の心身に大きな負担がかかっていた可能性は高いが、
これが自殺の原因となったとまで断定することは困難」と結論づけた。
市への提言として、職員の残業時間を把握し、その管理に努めるよう注文をつけた。

斉藤滋宣市長はこの日、記者会見し「1人の尊い命が失われたことは痛恨の極み」と話した。
職員数の減少とともに1人当たりの仕事が増えているといい、業務の外注を検討していく方針を示した。

一方、男性の母(74)は取材に対し「上司がどんな言葉を息子に投げかけたのか、それを知りたい。
言葉の暴力や、感情をぶつけたことがあったのではないか。調査結果には納得がいかない」と話した。

 

以下、同じような事案ですので、再掲します。

 

(再掲)長時間労働「隠す状況が負荷に」 町職員自殺で第三者委

202099日 朝日

 

山形県川西町の男性職員(当時25)が20166月に自殺した問題を巡り、町は8日、
第三者調査委員会(委員長=粕谷真生弁護士)の答申書について町議会全員協議会に報告した。
答申は、自殺の原因を「長時間労働、それを隠さなければならない状況が心理的負荷となった」と分析し、
再発防止策を提言した

 

職員は安部幸宗さん。144月に採用され、町財政の業務を担当していた。

答申書では、安部さんの時間外労働時間を、164月が114時間、5月が85時間、6月が140時間と認定。
4月と6月は厚生労働省が示す時間外労働の「過労死ライン」の月100時間を超えていた。

また、529日から、亡くなる2日前の624日まで27日間連続で勤務した。

こうした長時間労働の実態は同僚や上司に知られないようにしていたという。

長時間労働とそれを隠さなければならなかった要因として、

①職員の労働時間を正確に把握するシステムがなかった

②労働時間を正確に把握しなければならないとする意識が(職員間で)共有されていなかった

③(安部さんが)職務を遂行するための支援が不十分だったことを指摘した。

再発防止策としては、タイムカードなど職員の在庁時間を正確に把握できる制度の導入や、
職員の時間外労働に対する意識改革、研修・指導体制と相談窓口の充実などを挙げた。

遺族が指摘していた職場内でのパワハラやいじめについては「認められなかった」と結論づけた。

この日の全協で、原田俊二町長は「私自身もそうだが、職員一人ひとりが今までのあり方が良かったのか、
ということを見直し、変わっていかなければいけない」と述べた。

町は今後、職員に対する研修の強化や、来年度から使用が始まる予定の新庁舎で
職員の在庁時間を把握する仕組みの導入などを進めるという。
町民に対しても町の広報誌を通じて説明するという。

第三者委員会は計3人の弁護士で構成。
町の諮問を受け、今年2月から計9回の委員会を開き、町職員ら計234人にアンケートしたほか、
33人に面談するなどしてまとめた答申書を7日に町に提出していた。

 

遺族「残業隠す雰囲気、納得できない」

亡くなった安部幸宗さんの父・康幸さん(62)は8日に記者会見し、
「丁寧に調査してもらい感謝している」と語った。

一方で「残業を隠さないといけない雰囲気が町役場にあり、納得できない」とも話した。

康幸さんによると、幸宗さんは、職場で疑問があってもすぐに質問せず、
できるだけ調べて質問するよう上司に求められたり、経費が増える残業を隠していたりしていたという。

その結果、上司が幸宗さんの長時間労働の実態を把握できなかったとみている。

康幸さんは、こうした上司の指導や、入庁3年目の幸宗さんにこなせる業務量だったのかといった点に
疑問を示す。指摘したパワハラやいじめが認定されなかったことには「納得するしかない」と述べた。

康幸さんは「(幸宗さんが)頑張ってたんだなと思った。悔しかっただろう。

もっと楽しい人生もあったのに、と思う」と話した。

代理人の弁護士は、康幸さんが今後、公務災害の認定と補償を求めた上で、

町の責任を問うために損害賠償を請求する方針を明らかにした。

 

 

 

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25日は、休載します

2020年09月24日 | 情報

25日(金)は、出張のため休載します。
再開は、28日(月)です。よろしくお願いします。

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(参考)広がる「コロナ疲れ」

2020年09月24日 | 情報

(参考)広がる「コロナ疲れ」 ストレス多く在宅勤務で休職も
20.9.5 日経 産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。

「コロナ疲れ」「コロナうつ」という言葉が生まれるなど、新型コロナウイルスの感染拡大は、人びとの生活に色濃く影を落としています。それは思いも寄らぬところにも表れています。

4月の緊急事態宣言の発令で、テレワークによる在宅勤務が普及しました。在宅勤務は出社勤務に比べて自由度が高いため、当初は働き手への負荷が少ないと考えられていました。しかし、最近は在宅勤務が原因のひとつとなり、休職に至る事例が増えてきているように見受けられます。

実際、私も産業医として、在宅勤務によるメンタルヘルス不調を訴える人とオンライン面談することが多くなりました。会議に欠席したり、急に欠勤したり、業務日報を提出しなかったり――。上司がいつもと違う振る舞いに気づき、人事部を介して産業医による面談を求めることが多いようです。

症状はさまざまです。不眠、倦怠(けんたい)感、イライラ、落ち込み。怒りっぽくなったという人もいます。なかには面談で「体調不良で仕事が続けられません」「パソコンの画面を開くのが怖い」と訴える人もいます。

 

最大の要因は孤独感

 

さまざまな原因が考えられますが、最大の要因は精神的な孤立、孤独感だと考えられます。ひとり暮らしであれば、誰とも会わない日々が多くなります。毎日のように顔を合わせていた会社の同僚たちとの交流も途絶えがちとなります。こうしたなかでは、コロナ禍による将来への不安が増すばかりです。

感染防止として、密集、密接、密閉の「3密」回避もストレスとなります。外出時のマスク着用や手指の消毒、ソーシャルディスタンス(社会的距離)など、いろいろなことに気を遣わなければなりません。結果として、生活の自由が大きく制限されるのです。

ストレスにさらされている人たちに共通しているのは「満たされない」「達成感がない」との訴えです。「この仕事にどんな意味があるのか考え込んでしまう」といった声を聞きくこともあります。

家族にうつすのではないかと…

IT企業に勤める50歳代男性の事例です。

緊急事態宣言の発令以降、在宅勤務となりましたが、6月末ごろから体調不良となりました。不眠気味でやる気が起きない。イライラする。集中力が続かず、気力が湧かないと訴えていました。

最大の不安は、自分がいつの間にかコロナに感染して、家族にうつしてしまうのではないか――ということでした。勤務先は出社と出張は禁止だったものの、顧客訪問は許されていて、同僚と客先を訪れるのが怖かったといいます。

不安障害と判断されたため、7月から1カ月間の休職となりました。

コロナ禍は人の心にいろいろな不安をもたらします。不安が高じると、不安障害に至る場合があります。原因としては、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れや、恐怖や不安に関係する脳の「扁桃(へんとう)体」の過剰反応などが考えられています。抗不安薬や抗うつ剤などによる治療が可能ですので、気になる症状が認められる場合は、早めにメンタルクリニックなどを受診することが望ましいでしょう。

 

在宅勤務で仕事量が増加

コロナ禍による仕事量の増減がストレスをもたらすこともあります。テレワークによる在宅勤務など、働き方の変化も大きな負荷となる場合があります。

イベント運営会社に勤める40歳代女性の事例です。

やはりコロナ禍で在宅勤務を強いられていました。リアルなイベントを開催できないため、ウェブ上でのセミナー「ウェビナー」などで代替する必要がありました。これまで手がけたことのない仕事で、かなり仕事量が増えたそうです。

これまでなら、大きなイベントがあれば一目瞭然ですので、社内で手分けして手伝ってもらうこともしばしばだったといいます。しかし現在は在宅勤務ということもあり、「全部ウェブだから大変じゃないでしょ」と理解されなかったといいます。

実際は各方面の関係者との調整や広報・宣伝、ウェブのデザインなど、やらなければならないことは山積。協力してくれる人は誰もいないなか、イライラしたり、夜眠れなくなったり、ドキドキするようになりました。

仕事量が増えた結果、残業時間はこれまでを大きく上回り、月間80時間以上になっていました。

産業医として面談した結果、休職には至らなかったものの、月間の残業時間を20時間以内に制限すると同時に、病院の心療内科などを受診するように指導しました。

 

孤立が悪循環招く

 

IT関係企業に入社したばかりの20歳代男性の事例です。

入社以来ほぼ出社することなく、テレワークによる勤務が続いていました。与えられた課題をこなすことができず、連絡をとれないことがしばしばあったことから、上司から産業医の面談を受けるように指示されました。

話を聞いてみると、不眠や倦怠感に悩まされているということでした。テレワークだと、先輩から教えてもらった内容がよく分からなくても、聞き返すことができないといいます。何度も同じことを聞くと、怒られてしまうのではないかと思い、そのまま放置してしまったというのです。その結果、与えられた課題ができず、悪循環に陥ってしまったようでした。

本人が「体調が悪いので休職したい」と訴えることから、その旨を書き添えた紹介状を用意して、心療内科を受診するように助言しました。結果、適応障害と診断され、現在は休職しています。

 

求められる寛容

コロナ禍の長期化で、メンタル不調を訴える人が目に見えて増えているようです。同じ職場にいれば、すぐに分かったような不調も、在宅勤務などで見えにくくなっています。出社することができていれば、周りにいる同僚に、分からないことを気軽に聞いたり、休憩時間には世間話をしてストレス発散したりできたはずです。

こんな状況だからこそ、職場では同僚のささいな変化も見逃さず、理解と寛容さをもって、対応することが必要です。真の意味でのニューノーマル(新常態)な働き方の定着が望まれるところです。

※紹介した事例は個人を特定できないように一部を変更しています。

 

植田尚樹氏

1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

 

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