中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

29~31日まで、休載します

2019年05月28日 | 情報

29~31日まで、出張します。ブログ再開は6月3日(月)の予定です。

今のところ、予定です。よろしくお願いします。

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(参考)政府の「働き方改革」を徹底批判!

2019年05月28日 | 情報

丹羽氏の指摘には、賛同できる部分があります。
労働者は、「働いているのか」、「働かされているのか」の違いで、大きな結果の違いが待ち構えていると考えています。

「心底失望した」伊藤忠元会長・丹羽宇一郎(80)が、政府の「働き方改革」を徹底批判!
「文藝春秋」編集部 2019/05/24

4月1日より働き方改革関連法が順次施行されて約1ヶ月半。
1947年に労働基準法が制定されてから70年ぶりとなる大改革で、
長時間労働の是正や同一労働・同一賃金の実現が謳われている。
これに対し「心底、失望させられました」と異を唱えるのが、丹羽宇一郎氏(80)だ。
「人は仕事で磨かれる」をモットーに、伊藤忠商事会長、中国大使を歴任した丹羽氏が指摘する、
政府の「働き方改革」の問題点とは――。

誰のために作ったのかわからない

丹羽 「仕事とは、すなわち人生そのもの――私は半世紀以上、この信念でやってきました。
そしてそれは今も間違った考えだとは思っていません。仕事は何よりも人に生きる喜びをもたらしてくれる。
働き方改革は、それが法律に反映されていないのです。誰のために作ったのかわからないような法律ばかりが並んでいる。
これからの50年、100年は、AIの進化やロボット技術の発展によって仕事のあり方そのものが大きく変化するでしょう。
その中で人口減少社会に突入している日本は、一人ひとりの生産性を高めていかなければなりません。
過労死の防止など、長時間労働に伴う問題を解決することは大切ですが、
働きやすい環境を作って労働者の意欲を高めることが喫緊の課題なのです。
働き方改革は仕事のあり方、ひいては国民の人生を決定付けるほど重要なのに、
それを理解した上で作られた法律だとはとても思えません」
改革の目玉となっているのが、残業時間の上限規制と年次有給休暇の取得義務だ。
今回、初めて法律に明記され、違反した場合には企業名の公表や刑事罰が科せられる可能性もある。

丹羽 「『上限を超えた残業はダメです』と、
マルとペケを付けて一律処理することによって労働者が働きやすくなるとは、到底思えません。
私はなにも『残業時間なんて気にせず、いくらでも働かせればいい』と言いたいわけではありません。
規制がなければ労働者に対して長時間労働を強いるブラック経営者がいることは事実。
弱い立場にいる人が安心して働けるルール作りの重要性は言うまでもありません。
ただ、もっと働きたいという意欲を持つ人に対して、十把一絡げの規制を設けてしまっては、
いたずらに勤労意欲を奪うことになりかねない」
これを残業と呼ぶのかどうか
丹羽氏の若手時代は、残業時間の上限を気にすることなく、自ら納得のいくまで仕事に取り組むことができたという。

丹羽 「入社7年目にニューヨークに赴任し、日本のほかにドイツやオランダなどヨーロッパ各国に
大豆を輸出する仕事をしていました。当時の駐在員は、机の中にウイスキーを忍ばせていたものです。
深夜になってアメリカ人の社員が帰って日本人だけになると、おもむろにウイスキーを取り出す。
オフィスには氷もなにもありません。ストレートでグイッと飲みながら、
『明日はヨーロッパにこの数字を出して交渉しようや』と打ち合わせをするのです。
これを残業と呼ぶのかどうか。決まった給料で残業代は無かったし、計算のしようもありませんでした。
ただそこには思う存分働ける環境がありました」

過労死を防ぐのは「上司のケア」

働き方改革の必要性が盛んに叫ばれるようになった背景にあるのが、電通やNHKで起こった過労自殺や過労死の事件である。

丹羽 「特定の企業に起こった過労死という問題を、長時間労働に原因を求めてルール作りをしてしまうと道を誤る。
というのも過労死の原因には、往々にして上司と部下の関係があるからです。
つまり、過労死を防ぐために最も重要なのは、直属の上司によるケア。
一人だけ夜遅くまで残業する部下がいたら、上司が『君、大丈夫か?』と気遣ってあげないといけない。
『大丈夫です』と言われても、どう見ても無理をしているようであれば、
『いや、それにしても顔色が悪いから今日は帰りなさい』と言ってあげることが大事です。
『○時間以上は残業禁止』と法律で線引きをするより、
上司が個人の体調や働き方を見守ってマネジメントする方がよほど過労死の防止につながると思います」

丹羽氏は、 「文藝春秋」6月号 に寄稿した「『働き方改革』が日本をダメにする」で、
働き方改革関連法の問題点を指摘。日本人の「働き方」改善のための具体的提言もおこなっている。
「仕事をマイナス面ばかりから考えるのは間違いです。仕事は何よりも人に生きる喜びをもたらしてくれる」
――丹羽氏からのメッセージである。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年6月号)

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「一定の配慮」では、不十分

2019年05月27日 | 情報

記事中に「発症後は業務負担軽減など県側の一定の配慮がみられるものの、対応が不十分だった」とあります。
同様の判例にもあるとおり、「一定の配慮」では、不十分なのです。

県職員自殺、公務災害と認定 残業117時間で鬱病発症
2019.5.24 産経

平成29年5月に奈良県庁の主査だった西田幹(つよし)さん=当時(35)=が自殺したのは
長時間労働で鬱病を発症したのが原因だったとして、地方公務員災害補償基金奈良県支部が、
公務員の労働災害(労災)にあたる公務災害と認定していたことが24日、分かった。17日付。遺族が明らかにした。
県などによると、西田さんは26年4月から県教育委員会教職員課で勤務し、28年4月に県砂防・災害対策課に異動。
29年5月21日、自宅で首をつって自殺した。遺書はなかった。
同支部は公務災害認定通知書で、西田さんが27年3月に鬱病を発症し、
発症直前1カ月の時間外勤務が約117時間だったと認定。
当時新給与システムへの移行などを担当しており、「業務量が多く、責任ある業務を1人で行っていた。
質的に過重な業務に従事していた」と指摘した。発症後は業務負担軽減など県側の一定の配慮がみられるものの、
対応が不十分だった
として、自殺と業務との因果関係を認めた。

県は西田さんの自殺を受け、29年8月から職員の時間外労働を適切に管理するため、
文書による超過勤務申請・許可システムを導入。
事前に上司に文書で申請し、許可を得た職員のみが在庁して残業できる仕組みへと変えた。
奈良市内で会見した父、裕一さん(65)は「公務災害の認定は息子に対するいい供養になる。
今後については弁護士と相談して対応したい」と話した。
また、荒井正吾知事は「自死を防ぐことができなかったことを県として非常に悔しく思う。
この認定を真摯に受け止め、職員の働き方改革を引き続き進めてまいりたい」とのコメントを発表した。

(参考)類似の判例(ティー・エム・イーほか事件・東高2015.2.26)(労働判例1117号5頁)

うつ病にり患して通院加療中の派遣労働者が自殺した事案。
派遣元及び派遣先いずれにおいてもうつ病り患の事実までも認識し得ず、
かつまた、業務の過重性も認められない状況であったにもかかわらず、
当該派遣労働者の体調か十分でないことを認識した以上は、単に調子はどうかなどと抽象的に問うだけでは足りず
不調の具体的な内容や程度等をより詳細に把握し、
必要があれば産業医等の診察を受けさせるなどの措置を講じるべきであったとして、
派遣元及び派遣先両者の安全配慮義務違反を認めた例。

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休職・復職に関する諸問題

2019年05月24日 | 情報

メンタルヘルス問題で最もトラブルが多いのが、この休職・復職に関する事案です。
最近でも、当ブログで休職・復職に関するQ&Aを16例紹介しました。

ところで、「労働判例」誌2019年1.1と1.15の合併号において、6~50ページの45ページにわたって、
「休職・復職をめぐる裁判例と課題」のもとに大特集が組まれました。
鼎談と参考判例が紹介されいています。
鼎談には、有識者として法政大学法学部講師の山本圭子氏、経営側の弁護士として指宿昭一氏、
労働側の弁護士として山中健児氏の3名の先生が参加されています。
「労働判例」誌は、タイトルどおり労働判例に特化した専門性の高い雑誌です。
当誌では、時々特集記事が掲載されるのですが、今回は、なんと「休職・復職をめぐる裁判例と課題」なのです。
特集の理由としては、記事中でも紹介されていますが、労災休業等を含め、争点に休職ないし復職を含む事件が、
平成26年16件、27年15件、28年41件、29年34件、30年16件(7月現在)と、増加傾向にあり、
無視することができない状況になっていることにあります。

鼎談の内容を簡単に紹介しますと、これまでの行政政策を紹介した後、
リーディングケースとして、電電公社帯広局事件(最一小判昭和61.3.13)、
片山組(差戻審)事件(東京高判平11.4.27)、
岡田運送事件(東京地判平14.4.24)、東海旅客鉄道(退職)事件(大阪地判平11.10.4)、
西濃シェンカー事件(東京地判平22.3.18)の紹介があり、詳細検討事件として、
(1)NHK(名古屋放送局)事件ーリハビリ勤務の法的位置づけ
(2)東電パワーグリッド事件ーリワークプログラム
(3)日本電気事件ー傷病休職中の障害(アスペルガー症候群)判明
(4)Chubb損害保険事件ー復職後の処遇(降格)の4事案が取り上げられました。
企業の関係者には、とても参考になる特集ですので、一読されてはいかがでしょうか?

以下、感想記です。
(1)大企業と中小規模の企業とでは、体力が大きく異なるので、判例を参考にして対策を講じるには、
大きな隔たりがあることだろうと出席者も繰り返し、述べていましたが、全く同感です。
(2)裁判例に登場する企業は、休職中のリワークと、復職後のリハビリ勤務との峻別ができていないようです。
ことばが違うのではなく、休職中と復職後とでは、全く異なる対応しなければなりません。
先生方が指摘していますが、各裁判における企業側の認識不足が生んだ当然の帰結なのですね。
(3)学者や弁護士の先生は、当然に法令や判例には詳しいのですが、企業内の人事労務問題については、
知識も経験もないので、当然のことでしょうが確答はありませんでした。
ということは、現場での人事労務問題は、
知識と経験がある社労士等の助言や提案を参考としていただくことが望ましいと感じました。

因みに、「労働判例」誌は、一般書店では販売されていません。
普通の図書館にも、蔵書はないでしょう。

 

 

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(参考)血液検査や表情のAI解析で診断

2019年05月23日 | 情報

うつ病など気分障害 血液検査や表情のAI解析で診断 
発症は年100万人 より良い治療法探る
2019/5/6付 日本経済新聞 朝刊

うつ病などの気分障害は毎年100万人前後が発症するが、精神の状態を正確に診断するのは難しい
薬を服用しても効果がよくわからない場合もあるという。
改善へ向けて最新の研究成果や診断機器を使って症状や原因に関するデータを集め、
科学的・客観的な診断や治療につなげる取り組みが本格化してきた。

「どうも、調子がおかしい」。こう言って20代後半の男性会社員が約2カ月ぶりに川村総合診療院を受診した。
半年ほど前、うつ病と診断され抗うつ薬を処方されたが自身の判断で薬をやめていた。
川村則行院長は再発を疑い、血液検査を勧めた。結果は見立て通りうつ病であることを示していた。
男性は納得し、通院と服薬を再開した。

血液検査で調べたのはリン酸エタノールアミン(PEA)という微量の化合物の濃度だ。
うつ病患者で数値が低くなる。ベンチャー企業ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(山形県鶴岡市)と
組んで診断システムを実用化した。

2011年から血液検査で問診を補う臨床研究を始め、計約5300人を調べた。
うつ病患者のPEA値は治療とともに上昇し、再発すると下がるなど有用性を確認できた。
ヒューマン・メタボロームは診断用品としての承認取得をめざす。

うつ病患者は問診に正確に答えない場合も多い
勝手に治ったと判断したり、回復したのに病気のままだと思い込んだりする人もいる。
川村院長は「PEAのデータを示して病状を説明すると説得力がある」と実感している。

慶応大学の岸本泰士郎専任講師らは、うつ病患者の診断の際、机の上にマイクやカメラを設置している。
患者の声、会話速度、表情などを記録するためだ。
データを専門家による重症度の評価と合わせて人工知能(AI)に学習させ、発声の様子、表情などから
うつ病の症状の重さを判定できるシステムを、データ解析のFRONTEOの子会社などと共同で開発した。
臨床研究として15年冬~19年春に250人の患者に使い、見ただけではわかりにくい、症状のわずかな悪化もとらえられた。
通常、30分程度かけて実施する問診はうつ病患者には負担で、医師も時間が足りない。
AIだと5~10分の会話からある程度の判定ができ、双方に役立つと岸本専任講師はみている。

うつ病患者の脳内の信号のやりとりの変化を調べ、問題部分をみつけて根本から治したい。
そんな発想で磁気共鳴画像装置(MRI)を使ったうつ病診断や治療の試みを始めたのは、広島大学の岡本泰昌教授らだ。

脳内のどの領域どうしの活動が似ていて、つながりが強いかという脳内ネットワークの「機能的結合」を調べてきた。
14個の結合がうつ病と関係があると判明し、これらを健康な人と同じ状態にすれば治療効果が得られるとみている。

やり方はこうだ。患者はMRIで画像をとりながら頭の中で計算やしりとりをし、
目の前の画面で脳の特定領域の活動がどう変わるか確認する。その関係を使って自ら活動を強弱できるよう練習する。

最終的に、うつ病と関係の深い機能的結合を自分で調整し症状の回復につなげる。
「ニューロ・フィードバック法」と呼ばれる方法だ。これまでに6人で実施し一定の症状改善が見られた。
同じ呼称で効果が不確かな民間療法もあるが「検査精度の向上やデータの集積により、
科学的根拠に基づく治療の実現へ近づきつつある」(岡本教授)。

毎年約2000人の新入生に協力してもらう、大がかりなMRI検査計画も今春から始めた。
5年間で約270人のうつ病患者のデータを集め、健康な人と比べる。
発症し、症状が進むにつれて機能的結合がどう変わるのか。追跡を続けてよりよい治療法を探る。

■関連遺伝子の解明進む

精神疾患の原因をたどっていけば、最後は遺伝子の問題に行き着くのではないか。
こう考えて患者の症状を遺伝子解析結果と結びつける研究が国際的に活発だ。
診断・治療の現場や新薬開発に応用できそうな成果も出始めている。

比較的進んでいるのは統合失調症やそううつ病だ。
日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトなどで、
約30の遺伝子領域がそううつ病の発症と関係していることがわかった。
脂肪代謝にかかわる領域が含まれ、米欧の患者でも同じ傾向が報告されている。
ここに作用する薬がみつかれば、画期的な治療効果が得られる可能性がある。

うつ病についても米欧で遺伝子検査会社と組んだ大規模な解析が始まり、関連性が推定される遺伝子領域がみつかっている。
ただ、外部からのストレスなど環境要因も大きく、そううつ病や統合失調症に比べ明確な結論は出しにくいという。

今後研究が進めば「遺伝子検査をもとに発症リスクが比較的高い人を見つけ、
予防策を考えるのに役立つだろう」と藤田医科大学の岩田仲生教授は期待する。
ただ、遺伝子による見分けが教育や仕事、社会生活の面で差別を生むなど倫理的問題が生じないよう、
仕組みを整えることも必要だ。(編集委員 安藤淳)

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