中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(おまけです) 完全予防プロジェクト第1弾“うつ病”

2013年05月20日 | 情報
テレビ東京系列 2013年5月13日に放送されました。
精神疾患、うつ病等については、NHKでの放映が多いのですが、
民間放送でも、まじめに制作している番組がありますので、紹介します。
詳しくは、HPを検索してください。
http://www.tv-tokyo.co.jp/shujii/backnumber/130513/index.html

完全予防プロジェクト第1弾“うつ病”
眠れない、朝起きた時に体がだるい、考えがまとまらない、仕事が以前の様にテキパキこなせない…
最近、この様な症状が思い当たるなら、それは「うつ病」のサインかも!
そこで今夜は、うつ病の原因はもちろん、うつ病にならない為の予防法も、お教えします!

うつ病とは?
担当医師 姫野医師・廣瀬医師 ◆問題(1)◆
うつ病にかかりやすいのは、男性と女性のどちらでしょうか?
≪主治医解説≫
廣瀬医師:
女性の方がなりやすい。
女性は、生理などがあり、女性ホルモンの周期にかなり影響を受ける。
出産に伴う体の変化が起きた時期や、更年期などは、うつ病になる確率が高くなる。
海外の様々な調査でも、女性の方が、約2倍なりやすいという結果が出ている。
さらに、脳の構造が男女で違う事も、関係があるのではないかともいわれている。
上山医師:
男性と女性それぞれに本を読ませると、男性は、脳内の、本を読む為の部位だけ働くが、女性は、脳全体を使う傾向がある。
女性の方が脳の動きも複雑なので、うつ病にもなりやすいのではないか。
▼うつ病になると?
廣瀬医師:
まず体がだるくなってくる。その他、睡眠障害、食物の味が分からないなど、気分が落ち込むだけでなく、体も変化してくる
姫野医師:
最悪のケースは自殺。
うつ病になると、「皆さんに申し訳ない。自分なんて価値がない。生きていて申し訳ない。」などと考えてしまって、命を絶ってしまう。
うつ病の自殺に関しては、男性の方が圧倒的に多い。
男性は、弱音を吐きたくない、こういう姿を人に見られたくないなどと思い、我慢をしてしまって、
抱え込んでいる内にどんどん悪くなって自殺に追い込まれる。
●あなたは大丈夫?うつ病になりやすい人チェック●
8つの質問に自分はどうか、○か×で答える
①仕事熱心  ②几帳面  ③責任感が強い  ④凝り性
⑤生真面目  ⑥我慢強い ⑦NOと言えない ⑧頑固
≪主治医解説≫
姫野医師:
8個のうち、4個以上ついた方は要注意。
心が弱い人が、うつ病になるイメージだが、本当は、心が強い人がなる。
うつ病は、我慢に我慢を重ね、遂にポッキリと折れてしまうという、「心の骨折」でもある。
発症年齢50代 女性のケース
担当医師 姫野医師・廣瀬医師 ○性格…几帳面、真面目、完璧主義
夫と2人の子どもに恵まれたごく普通の専業主婦。
子どもの面倒に加え、住宅・教育ローンなどの家計も1人でやりくりし、主婦として家庭を守ってきた。
そして51歳の時に、長男が独立。
翌年には長女も1人暮らしを始め、ローンの返済も完了。
「ようやく肩の荷が下り、これからは好きな事ができる」そう思った矢先…体調が少しずつ悪化。
やる気も出ず、訳もなく悲しくなって、泣き出してしまう。
さらには夜も寝られず、夕食の献立も全く思いつかない…
訪れた病院で「うつ病」と診断された。
≪主治医解説≫
姫野医師:
何か大切なものを失う喪失感は、うつ病を引き起こすきっかけになる事がある。
女性は元々、巣を作る本能がある。
結婚して子どもを産んで、子どもを巣の中で育て、夫が外で仕事ができる様に家事をやりくりし、皆が居心地いい様にすごく頑張る。
しかし、巣からヒナが育っていって、気が付いたらその大切な巣に、誰もいなくなってしまったと感じる事で発症。『空の巣症候群』という。
また、ローンの返済を終えるなど、大きな目標を達成し、肩の荷を下ろす事で発症する、『荷降ろし症候群』というものも。
廣瀬医師:
対象が喪失した事から、うつ病を発症するケースがある。
愛する人やペットをなくすなど、大事にしていた対象をなくす(喪失)する事でうつ病を発症する。
父親の形見であった車が大破してしまい、うつ病になってしまった人もいる。
◆問題(2)◆
「憂うつ」と「うつ病」はどう違う?
≪主治医解説≫
姫野医師:
憂うつ気分は、誰にでも起こるが、数日で良くなる事が多い。
憂うつな気分が2週間以上続くかどうかが、うつ病の診断基準の1つになる。
人によっては、頭痛やめまい、倦怠感が続くなど、身体症状が出てくる人もいる。
新見医師:
うつ病は、血圧などと違い、ハッキリと数字にならないアナログ疾患なので、医者によって、診断が変わってしまう事もある。
★うつ病を理解する上で、大切なポイント!
うつ病=脳の病気
うつ病は心の病気ではなく、脳の病気である。
脳の中に、色々な変化が起きる事で発症する。
脳の中には様々な脳内ホルモンがあり、それらが感情などをコントロールしている。
うつ病の発症に関わる脳内ホルモンは、主に3種類。
・幸福感の「セロトニン」
・ワクワク感の「ドーパミン」
・やる気や判断力の「ノルアドレナリン」
これらのホルモンは「脳のバッテリー」で、どれかの量が減ったり、バランスが崩れたりするとうつ病を発症しやすくなる。
つまり、うつ病は脳のエネルギーがダウンした状態、脳のバッテリー切れである。
草野ポイント(1)
うつ病は「心の病気」と誤解されがちだが、脳の中のホルモンが不足したり、バランスが崩れたりする事で起きる「脳の病気」である。
発症年齢40代 男性のケース
担当医師 姫野医師・廣瀬医師 ○性格…真面目、正義感が強い、何事も根性で取り組む
一部上場企業に勤めるエリートサラリーマン。
46歳の時、下痢や便秘を繰り返す様になり、病院で「過敏性腸症候群」と診断される。
しかし、薬を飲んでも症状は改善せず。
当時は仕事が忙しく、睡眠時間は約3時間、食事は、弁当や店屋物ばかり。
そのうち「不眠」や「嘔吐」「めまい」など、次から次へと症状が。
やっと眠ったとしても「悪夢」にうなされる。
ようやく辿り着いた心療内科で、うつ病である事が発覚した。
≪主治医解説≫
姫野医師:
ストレスだらけの生活で、脳内ホルモンを著しく消耗させている。
まず、ハードな仕事。成功すれば達成感があるが、成績が上がらなくなると、もっとやらなければと思う様になり、
頭の中のバッテリーを沢山使って、消耗してしまう。
バッテリーを充電するには、きちんとした食事をしないといけない。
しかし、大した食事をとっていないので、充電できない。
さらに、寝ていないというのも問題。人間にとって寝る事はすごく重要で、体も脳も、寝ている間に修復する。
つまり、寝ないとバッテリーがどんどん切れていく。
気力で頑張ろうとしても、食事もとらず寝てもいない人は、脳内ホルモンは作れないし出ないので、頑張れない。
うつ病を予防する為の4つのS
1つ目は『食事』
主にタンパク質、そこに、ビタミンB群や鉄などが加わり、脳内ホルモンが作られる。
つまり、これらの材料を、絶えずバランス良く摂る事が大事。
タンパク質、ビタミンB群、鉄、すべて入っている食材
≪肉(赤身)、マグロ(赤身)、ウナギ、カツオ、レバー、たまご≫
うつ病を予防する為の4つのS
2つ目は『睡眠』
3つの脳内ホルモンは、日中の活動時に消費されて、夜、寝ている間に作られる。そのため、睡眠はしっかりとらないといけない。
草野ポイント(2)
うつ病は、脳内のホルモンバランスが崩れる事で発症する。そのホルモンは、様々なストレスで減ってしまう。
発症年齢60代 男性のケース
担当医師 姫野医師・廣瀬医師 ○性格…明朗、親分肌
食品会社の経営者。明るい性格で親分肌、会社の業績も良く、家庭も円満で、精神的には何も問題なかった。
59歳の時に、耳の近くに腫瘍ができ、手術を受ける事に。
簡単な手術で、本人も特に心配する事もなく、手術は無事終わった。
しかし、退院後、風邪を引いた様な微熱が出て、それが半年以上も続く。
それ以来、「体がだるくなる」「やる気が起こらない」などの症状が。
病院をいくつも回ったものの、原因は不明のまま。
ようやく辿り着いた心療内科で、うつ病である事が判明した。
≪主治医解説≫
姫野医師:
手術は体を傷つける為、肉体的なストレスを受ける。
肉体的なストレスも、脳内ホルモンを消耗する原因の1つになる。
手術がうまくいく・いかないは関係なく、肉体のどこが傷ついてもなるので、場所も関係ない。
小さなおできの手術でも、なる時はなってしまう。
上山医師:
難治性の動脈瘤の患者は、色々な所で治療ができないと言われているため、大きなストレスを抱えている。
すると、手術がうまくいっても、元気になって帰った後に、うつ状態になる事がある。
ストレスのある状態がずっと続くと、ストレスが取れた後にうつ病になる事もある。
▼うつ病で気をつけるべき事は?
姫野医師:
焦って早く治そうと思わない事。
「心の骨折」とも言われており、治るには時間がかかると認識しておく事。
うつ病を予防する為の4つのS
3つ目は『生活リズム』
脳内ホルモンは、分泌される時間帯が決まっている。
不規則な生活をしていると、決まった時間にホルモンが出てこない。
朝からちゃんとホルモンを出す為には、規則正しい生活が必要。
また、朝、同じ時間に起きて朝日を浴びると、セロトニンが増えると言われる。
そして、同じ時間に食事をして、同じ時間に寝ると、自律神経のバランスも良くなる。
リズムを整える事が、うつ病の予防には非常に大切。
うつ病を予防する為の4つのS
4つ目は『スイッチ』
溜まった脳内ホルモンを、無駄に消耗しない様に上手に使わないといけない。
その為には、仕事と休養のバランスのスイッチを、上手に切り替える事が大切。
脳は同じ所をずっと使っていると疲れてしまうが、別の所を使うと、いつも使っている所が休まる。
ただボンヤリして休むのではなく、何か別の事をするのが良い。
草野ポイント(3)
うつ病を予防する為のカギとなるのは、「食事」「睡眠」「生活リズム」「スイッチ」
この4つのSを意識して、正しく行う様に普段から心がける事。
うつ病についてのまとめ
担当医師 姫野医師・廣瀬医師 姫野医師
今回の患者さんのケースは、全ての方に当てはまる訳ではない。
うつ病は、様々なシチュエーションがあって、症状も様々。
何かちょっと変だなと思ったら、気軽に病院に相談する事。
早いうちに対応すれば、長引かないで治っていく病気なので、重症になる前に予防策をとったり、医療機関を受診したりする事が大切。
廣瀬医師
うつ病は、気付きにくい病気。周りで見ている人が、勇気を出して受診を勧めてあげる事も大事。
姫野医師
心療内科と精神科のどちらを受診すれば良いかについては、吐き気やめまいなど、身体症状が先行している場合は「心療内科」がおすすめ。
自分には価値がないと思い込むなど、精神症状が強い場合は「精神科」をおすすめする。
※うつ病の発症原因には、現在様々な説がありますが、
 今回は、脳内ホルモンバランスの乱れを原因とする説(モノアミン仮説)を元にしています。

本日のおさらいクイズ
Q:「うつ病」は、心の病気と思われがちですが、実は、何の病気なのでしょうか?
A:脳の病気
Q:「うつ病」は、脳内のホルモンのバランスが崩れる事で起きますが、
  そのホルモンが減ってしまう、主な原因は何だったでしょうか?
A:ストレス
Q:うつ病を予防する為の「4つのS」は、「食事」「睡眠」「生活リズム」、
  あともう1つは、何だったでしょうか?
A:スイッチ
本日のポイント
(1) うつ病は脳の病気
(2) 脳内ホルモンはストレスで減る
(3) 予防には4つのSが大事。「食事」「睡眠」「生活リズム」「スイッチ」

MC 草野仁、東野幸治
アシスタント 森本智子(テレビ東京アナウンサー)
ゲスト 内藤剛志、羽野晶紀、森口博子(五十音順)
医師 秋津壽男(あきつ としお)秋津医院 院長/専門:内科
上山博康(かみやま ひろやす)禎心会病院 脳疾患研究所 所長/専門:脳神経外科
南雲吉則(なぐも よしのり)ナグモクリニック 総院長/専門:癌・乳腺専門・形成外科
新見正則(にいみ まさのり)帝京大学医学部附属病院 准教授/専門:外科・漢方
姫野友美(ひめの ともみ)ひめのともみクリニック 院長/心療内科・栄養療法
≪ゲスト医師≫
廣瀬久益(ひろせ ひさよし)新宿OP廣瀬クリニック 院長/心療内科・精神科
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診断書ならば、なんでもOKではない

2013年05月20日 | 情報
通常、精神疾患をり患した場合を含め、休業・休職が必要な場合には、当該従業員より医師の診断書が提出されます。
あらためて確認しますが、就業規則に規程されていますよね。
医師の診断書ですから、上司や上級職を通じて、健康管理室や人事労務部門に診断書が提出された場合、
事業所としては正式に受理しなければなりません。
しかし、病名が精神疾患の場合には、診断書を発行した診療所名を確認しなければなりません。
精神科やメンタルヘルス科(最近は、大手の病院でも精神科ではなく、メンタルヘルス科と標榜している場合もあります)ならば、
そのまま産業医に判断や見解を仰いでもよいのですが、心療内科や内科等の場合には、産業医と相談のうえ、
再度、精神科専門医の診断を仰ぐよう、診断書提出者に指導する必要もでてきます。

5日の全国紙朝刊に、「神経内科をご存知ですか?」というタイトルで、日本神経内科学会の広告が掲載されています。
そして、神経内科の診療対象となる病気の具体名が掲載されています。「頭痛、脳卒中、認知症、パーキンソン病、てんかん」です。
一般的な労働者であれば、「神経内科」であれば精神疾患の診断をしてくれるのでは、と思うのでないでしょうか。
たぶん、そのような誤解が数多く惹起している現状があるので、このような新聞広告を掲載したのではと、推測しています。

現状、診断書は、専門外の医師でも発行することができますし、精神疾患の場合でも同様です。
しかし、精神疾患を疑われる場合には、「精神科専門医」資格を取得している医師の診断書でないと、
後々問題を引き起こす可能性があります。スタートを間違える、または誤った方向に行くと、
当該従業員の病気の回復が遅れることはもとより、当該従業員が所属する事業所の負担も格段に増えることになります。

また、事業所内で精神疾患を疑われて、精神科専門医に受診を指示されても、当該従業員が精神科専門医への受診を
躊躇することも往々にあります。産業医や健康管理スタッフの指導により、最終的には精神科専門医への受診に
結び付けていくことが大切です。



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