中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

第12次労働災害防止計画案の変更

2013年01月24日 | 情報
12月19日に案内した計画案が修正されましたので、以下に概要を紹介します。

『修正計画案』概要
平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする。
(講ずべき施策)
a メンタルヘルス不調予防のための職場改善の取組
・メンタルヘルス不調の予防のためには、労働者がストレスチェック等に基づきセルフケアを行えるようにすることや日常的に労働者と接する管理監督者が適切に対応できるようにすることが重要であり、管理監督者と労働者への教育研修・情報提供の推進を図る。
b ストレスへの気づきと対応の促進
・労働者のストレスへの気づきを促すようストレスチェック等の取組を推進するとともに、事業場内での相談体制の整備を推進する。
c 取組方策の分からない事業場への支援
・職場でのメンタルヘルス対策は、ストレスへの気づきを促すための労働者への教育研修、職場復帰支援等を総合的に実施することが必要である。しかし、メンタルヘルス対策への取り組み方が分からないとしている事業場もある(20.1%(平成23年労働災害防止対策等重点調査))ため、事業者がこうした取組が行えるように支援措置を充実する。特に小規模事業場に対する支援の強化を図る。

『変更前』概要
平成29年までに労働者及び管理監督者への教育研修・情報提供を行っている事業場の割合を、それぞれ50%以上とする
◆メンタルヘルス不調予防のための職場改善の取組
・メンタルヘルス不調の予防のためには、日常的に労働者と接する管理監督者が適切に対応できるようにすることや労働者がストレスチェック等に基づきセルフケアを行えるようにすることが重要であり、管理監督者と労働者への教育研修・情報提供の推進を図る。
◆ストレスチェック制度の活用促進
・ストレスチェック制度の普及・実施を徹底する。
◆取組方策の分からない事業場への支援
・ストレスチェックや、希望する労働者への面接指導等の措置に加え、ストレスへの気づきを促すための労働者への教育研修、職場復帰支援等を総合的に実施することが必要である。しかし、メンタルヘルス対策への取り組み方が分からないとしている事業場が高い割合(42.2%(平成19労働者健康状況調査))となっているため、事業者がこうした取組が行えるように支援措置を充実する。特に小規模事業場に対する支援の強化を図る。

(参照)http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002rorz-att/2r9852000002rouv.pdf#search='%E7%AC%AC12%E6%AC%A1%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%81%BD%E5%AE%B3%E9%98%B2%E6%AD%A2%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%A1%88'

イ 重点とする健康確保・職業性疾病対策
○メンタルヘルス対策 (目標)
平成29年(2017年)までに労働者への教育研修・情報提供を徹底するとともに、
平成29年(2017年)までに労働者数50人以上の規模の事業場で、職場復帰における支援に取り組んでいる事業場の割合を、50%以上とする
(参考)過去の推移
・平成19年時点で労働者数5000人以上 100.0%
1000人~4999人 69.2%
300人~ 999人 38.7%
100人~ 299人 19.6%
50人~ 99人 8.8%(労働者健康状況調査)
◆メンタルヘルス不調予防のための職場改善の取組
・職場環境の改善・快適化を進めることにより、メンタルヘルス不調を予防するという観点から、
パワーハラスメントも含め、職場における過度のストレスの要因となるリスクを特定、評価し、
必要な措置を講じてリスクを低減するリスクアセスメントのような新たな手法を検討する。
◆ストレスチェック制度の活用促進
・新たに労働安全衛生法に取り入れられたストレスチェック制度の普及・実施を徹底する。
◆取組方策の分からない事業場への支援
・労働安全衛生法改正により、すべての事業場にストレスチェックや、希望する労働者への面接指導等の措置が導入されるが、
このほかにもストレスへの気づきを促すための労働者への教育研修、職場復帰支援等を総合的に実施することが必要である。
しかし、メンタルヘルス対策への取り組み方が分からないとしている事業場が高い割合(42.2%(平成19労働者健康状況調査))と
なっているため、事業者がこうした取組が行えるように支援措置を充実する。特に小規模事業場に対する支援の強化を図る。
◆職場復帰対策の促進
・メンタルヘルス対策の取組が進んでいない事業場でも、容易に職場復帰支援に取り組むことができるよう、
メンタルヘルス対策支援事業等を通じて、職場復帰支援の事例を収集し、事例集としてまとめる。
また、収集した職場復帰支援の事例について分析を行い、事業場の規模等に対応した職場復帰支援に係るモデルプログラムを作成する。
これらを働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」等を通じて広く提供する。
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うつ病の発症メカニズム解明?

2013年01月23日 | 情報
1月18日のNHKニュースで、うつ病の発症メカニズム解明、と報道されました。以下その内容です。

成長期のマウスにストレスを与えると、脳の活動を調節する遺伝子の働きが低下し、認知力の低下などにつながるとする、
うつ病発症のメカニズムを名古屋市の大学などの研究グループが発表し、新たな治療薬の開発に役立つとしています。
研究を行ったのは、名古屋市にある名城大学の鍋島俊隆特任教授と名古屋大学などからなる研究グループです。
研究グループでは、うつ病などを発症しやすくしたマウスを、集団と一匹ずつ隔離した場合に分けて、
それぞれヒトの思春期に当たる時期から3週間にわたって飼育しました。
そうしたところ、集団飼育したマウスには異常は見られなかったものの、隔離したマウスには、▽認知力が低下する、
▽動きに活発さがなくなるなど、うつ病や統合失調症の症状が見られ、
脳を刺激する「ドーパミン」という物質を作る遺伝子の働きが大幅に低下していたということです。
こうした症状は、集団飼育に戻しても治らなかった一方で、飼育の前に、
あらかじめストレスで分泌されるホルモンの働きを抑えておくと現れなかったということです。
こうしたことから研究グループは、ストレスによって脳の活動を調節する遺伝子の働きが低下してうつ病などが発症するという
メカニズムが初めて分かったとしています。
鍋島特任教授は、「発症の仕組みが分かり、新たな治療薬の開発に役立つ」と話しています。

一方、日経新聞では、「思春期のストレスがうつ病の一因に 名城大、マウスで解明」と報道されました。

 名城大学の鍋島俊隆特任教授らは、思春期に受けたストレスが成熟後の精神疾患につながる仕組みの一端をマウスを使った実験で解明した。精神疾患の遺伝要因を持つマウスを成長期に隔離してストレスを与えながら育てたところ、
意思決定や注意力に関係する脳の神経回路に異常が起きた。
 名古屋大学や京都大学などとの共同研究成果。18日付の米科学誌サイエンスに掲載される。
 うつ病などの精神疾患は成長・発達期の心理的ストレスなども原因とされるが、発症する詳しい仕組みは不明だった。
 研究チームは精神疾患の発症に関係するとされる遺伝子を持つマウスを人為的に作製。
人間の思春期にあたる生後5~8週に集団から隔離して飼育した。音に過敏に反応したり、意欲が低下したりするなどの症状が表れた。
集団で飼育した場合はマウスの行動に異常はなかった。
 発症したマウスは血液中のストレスホルモンの量が増えていた。注意力や意思決定に関係する神経回路で、
神経伝達物質のドーパミンが減り、働きが鈍っていることがわかった。一方、幻覚や妄想にかかわるとされる脳の部分では、
刺激を受けるとドーパミンが増えた。

ドーパミン
 脳の快楽物質として知られ、注意力、学習など様々な認識・運動機能に関わる。
欲しい物を手に入れてドーパミンが放出されると気分が高揚したり、集中力が高まったりする。
報酬や予期せぬ利益により強く反応する傾向がある。
1959年に大阪大学の佐野勇教授らが大脳基底核にドーパミンが多く集まっていることを発見し、神経伝達物質として認識された。
 パーキンソン病や統合失調症といった病気はドーパミンの異常が原因とされる。
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安衛法の一部改正案は廃案

2013年01月22日 | 情報
安衛法の一部改正案「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」は、
平成24年11月16日に衆議院が解散されたため、同法案は、審議未了により廃案になりました。
法案全文:http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
改正案の概要:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/179-11.pdf

今後の見通しですが、医師または保健師によるメンタルヘルス検査や医師による面接指導等については、再提案される可能性があります。
それは、厚労省がMH対策に危機感を持ち、重要視しているからです。
法案提出のための調査も入念に行ってきていました。
しかし、財界は、当法案について新たな出費になるとして反対していますし、
医師会は、費用対効果に疑問がある、検査方法に疑問があるとしていますので、
内容はかなりの見直しがあるのではと、勝手な想像をしています。

精神疾患のり患者または可能性を疑われる労働者を早期に発見するという法案の趣旨には、
反対する方はいらっしゃないと思います。
今後の動向は、随時お知らせします。
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労組を活用しませんか

2013年01月21日 | 情報
周知のとおり、中小企業の中には、MH対策がなかなか促進できない問題があります。
経営者や経営層が、その重要性になかなか気が付かないのですね。
気が付いていただければ対策は大幅に前進するでしょう。
一方で、企業の中には、企業内組合、または従業員組合があります。
従業員のみなさんは、意外と気が付いていなようですが、この組合が大きな力を持っているのは事実です。
中には、かたちだけの組合もありますが。

組合の現状を推測すると、現在のような不況下では、賃金問題はおろか、雇用の確保に関心が集中してしまい、
MH対策までにはまったく関心がいかないのではと認識していますが、
労働組合・従業員組合の存在理由、または組織の目標・目的を考えれば
当然にMH対策に大きな関心をもって、然るべきでしょう。

しかし、組合の幹部は、歴史的に賃金問題には深い見識を持っていますが、
MH問題については、「MH対策って何?」くらいのレベルではないかと想像してしまいます。
組合関係者のみなさま、間違っていましたら謝罪いたします。
しかし、MH問題に関して、残念ながら組合が「表舞台」に登場してくるような現象を目にしていません。
組合関係者のみなさま、ぜひMH対策にも関心を持ってください。

必要であれば、橋本社会保険労務士事務所がお手伝いします。
メールアドレスは、s-hashi@ya2.so-net.ne.jpです。
または、拙著『中小企業の「うつ病」対策』をお読みください。
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週刊誌の記事より(2)

2013年01月18日 | 情報
週刊プレイボーイ44号'12年 10月15日「『社内うつ』が起きやすい10の職場」より

職場の飲み会は多すぎても少なすぎても「社内うつ」が発生しやすい

近頃あちこちで、20代、30代の若い社員の「社内うつ」が話題となっている。
得てしてそこでは「今の若者はストレスに弱い」という点が強調されがちだ。
しかし、近年の「職場環境の変化」で「社内うつが起きやすい職場」も確かに増えているようだ。

それはどんな職場なのか。約10の企業で産業医を務め、実際に「社内うつ」を診断してきた榛原(はいばら)藤夫氏に聞いた。
榛原氏が注目する変化のひとつは、職場の「飲み会」の減少だ。
かつて「昭和的慣習」としてヤリ玉にあげられてきた職場全体の打ち上げや、上司と部下で飲みに行く機会は、
バブル崩壊以降、確実に減ってきた。しかしそうした飲み会は、上司と部下が “コミュニケーションの下地”を
つくるきっかけでもあったと榛原氏は言う。
「部下世代がそういう場をうとましく思ってきたのは確かだし、上司も『嫌がる部下を連れていっても……』と思いがち。
また、私も管理職向けのメンタル講習で『抑うつ状態にある部下を飲みに連れていって励ますのは逆効果』と話しているし、
セクハラ講習では『飲み会でのふるまい』が細かく注意されるようになった。昔より気をつかう部分が増え、
上司が『そんなリスクを取ってまで誘いたくない』と思うようになったのもわかる。
ただ、飲みの場で、お互いに『この人はこういうキャラクターなんだ』と理解し合ったり、
あるいは上司が冗談交じりに部下をバカにしたりすることには、大きな意義があったのも事実です」(榛原氏)
そういったお互いのキャラを理解し、“コミュニケーションの下地”をつくる機会が減ると、
例えば、今までのように上司が部下の仕事に対し『バカか!』とちょっと叱っただけでも、
部下は『全人格を否定された!』と思い込んでしまうケースが生じやすい」と言う。
「『この上司は口が悪い人だしな』ととらえ、『“今の仕事に対して”怒られた』という解釈ができない。
結果、その思いが自分の中でどんどん膨らみ、『上司は自分を嫌っている』とか『同僚が皆、自分をできない奴と言っている』となる。
こうした“ネガティブな思い込みの膨張”を打ち消せなくなると、過度の緊張状態が続き、
自律神経のバランスが崩れ、睡眠障害や胃腸障害、過換気などの症状を引き起こす。
ここまできてしまうと『医療対応が必要』としか言いようがありません」(榛原氏)

それでは、飲み会が多い職場が いいのかというと、そういうわけでもないという。
「特に今の新人世代は、部活でさえ、さほど厳しい上下関係に接していない人がほとんど。
上司と一緒にいると、ずっと過度の緊張状態が続いてしまう社員もいるのです。
社員間のコミュニケーションを活性化させるために、入社後、いきなり研修合宿を行なう企業もありますが、
これが逆効果になるケースがあるのも同じ理由です」(榛原氏)
飲み会や研修合宿が多すぎると、「上下関係」に不慣れな若い社員は「上司から常に監視されている」という緊張感を
過度に高める場合があるというのだ。では、理想的な飲み会の頻度とはどのくらいなのだろうか。
「一概に言えませんが、理想は、社員がお互いのキャラクターを適度に理解し合い、
仕事においては、言うべきことを言いやすい環境にあることです」(榛原氏)
榛原氏は、職場からストレスや緊張をなくせばよいというわけでは決してない、と念を押す。
「自律神経は、『緊張状態=オン』のときに働く交感神経系と、『リラックス状態=オフ』のときに働く副交感神経系から成り立っている。
そして、オンとオフのバランスで人間は生きているんです。だから適度な緊張やストレスは、そもそも人間に必要なものなのです。
ただ、その状態がずっと続くようにわれわれの体はつくられていない。大事なのはオンとオフのバランスです」
「飲み会がなさすぎる職場」はダメだけども「飲み会が多すぎる職場」もつらい。大事なのはバランス。
人間も組織も、バランスの上に成り立っている。幸福に働くためには、
個人も組織もバランスの「ちょうどいいところ」を探していくことが大切だ。

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