「努力義務は、義務」というのは当ブログにおいて、小職が再三主張している「原則」です。
〇 努力義務は対処しなくてもよいとアドバイスする社労士も少なくないようです。
しかし、これは、何も問題、トラブルがない場合であって、いったんことが起きると、対処しなければならないことが噴出します。
即ち、努力義務違反には、罰則はありませんが、リスクはあるということです。
例えば、第三者に損害が生じた場合、「努力義務規定を守らなかったからだ」と主張されて、御社に損害賠償請求されることも想定されます。
そのほかに、努力義務の遵守を担保するために、労働局や労基署から行政指導を受けるリスクもあります。
〇 現下の事例として、第14次労働災害防止計画が推進中ですが、
アウトプット指標の一つに、50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合について、
「2027年までに50%以上」を目標に掲げています。
そして、その進度チェックを綿密に実施しています。
50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施は、「努力義務」のはずです。
〇なぜ、このようなことが惹起するのかを推測すると、
現在進行中の「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」におけるおもな論点が、
現在努力義務となっている50人未満の事業場へのストレスチェックの導入(義務化)だからです。
(参照)
〇ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第1回資料
1 目的
事業場におけるメンタルヘルス対策については、
メンタルヘルス不調の未然防止である一次予防の強化等の観点で、平成 27 年 12 月にストレスチェック制度が導入され、
当該制度の推進等を通じて、取組は進んできている。
一方で、精神障害の労災支給決定件数は、700 件超(令和4年度)と過去最も多くなっている。
また、「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業場割合は、
この3年間、約1割で推移しており、
労働者数 50 人未満の小規模事業場においては、メンタルヘルス対策に取り組む割合が
30~49人の事業場で73.1%、10~29 人で 55.7%(50 人以上の事業場においては91.1%)であり、未だ取組が低調である。
こうした中、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(骨太の方針 2023)」(令和5年6月 16 日閣議決定)では、
「メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進め」ることとされたところである。
また、労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成 26 年法律第 82 号)の附則第7条において
「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、改正後の労働安全衛生法の施行の状況について検討を加え、
必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされており、
平成 26 年改正労働安全衛生法の施行状況について議論された第 134 回労働政策審議会安全衛生分科会において、
今後、ストレスチェック制度について効果検証を行い検討していくべきであると指摘されている。
これらのことを踏まえて、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について、
実施状況等を踏まえながら検証するとともに、検証の結果必要なものについて対応を検討することとする。
2 検討内容
(1)ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検証等について
(2)事業場におけるメンタルヘルス対策について
(3)その他関連する事項について
〇 さらに、人事労務管理上のポイント③で述べている、「メンタルヘルス推進担当者」の選任も努力義務ですが、第14次労働災害防止計画のメンタルヘルス対策においても、メンタルヘルス推進担当者の選任を「事業場に対し確実に指導する」と記述しています。
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