中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

最近の調査結果2本

2013年01月08日 | 情報
以下の調査データは、専門誌に掲載されたものです。
社内の検討資料、提案資料の補完データとしてご活用ください。

ほぼ全事業場が「MHに関心あり」(中災防:安全衛生通信’12.12.5より)

中災防が製造業2,000事業場、サービス業等1,000事業場を対象に「事業場におけるMH対策に関するアンケート」(回答数:256事業場)を
行ったところ、99%にあたる254事業場が「取り組んでいる」あるいは「関心がある」と回答するなど、
職場でのMH対策が重要視されていることが分かった。実際に「取り組んでいる」と回答したのは、
製造業80.2%、サービス業等62.3%で、実施率は製造業のほうが高い。
MHを担当する部署を「決めている」事業場は78.5%、また「決める予定」の事業場は10.5%となっている。
また、相談窓口を設置している事業場は77.7%で、今後設置する予定のあのある事業場と合わせると85.5%の事業場で
従業員がMH関連の悩みなどを相談できる体制が整っていることになる。相談窓口を設置している割合は
サービス業等より製造業のほうが高いが、サービス業は製造業に比べて「事業場外」に窓口を設けているケースが多いのが特徴。
このほか、衛生委員会でのMHについての調査審議について「ある」と回答した事業場は52.0%、「実施予定」が27.7%だった。
また、MH関連で困っていることを聞いたところ、3割強が「不調者の増加」を挙げた。
また、「社員の関心が低い」、「従業員への教育方法が分からない」、「対応するスタッフがいない」などの声も多く、
急増が懸念されているMH不調者への対応、予防対策などに苦慮する現状がうかがえる。
MH教育を実施している事業場は73.8%。今後実施予定の事業場と合わせると84.8%が実施すると回答した。
教育対象としては「従業員対象」より「管理職対象」のほうが多く、その傾向は製造業もサービス業等も変わらなかった。
一方、従業員のMHの実態調査を行っている事業場は41.8%となっている。
また、MH対策に役立てている情報の入手方法を聞いたところ、最も多かったのは「セミナー」の63.3%。
次いで「インターネットの情報」(50.0%)、「書籍」(36.3%)の順だった。

MH取組み企業アンケート調査(日本生産性本部調査:労経ファイル'12.12.15より)

心の病増加の割合が7ポイント減、30歳代は23ポイント減り35%に、早期対策の効果は半数にとどまる。
生産性本部の「MH取組企業アンケート調査」では、最近3年間の「心の病」が増加しているとの回答が37.6%で、
2年前の調査に比べ7ポイント減少し、「増加傾向に歯止めがかかった」とレポートしている。
30歳代が23ポイント強減少する一方、40歳代が13.9ポイント増えている。不調者の早期発見・対応策で効果を挙げている割合は半数にとどまる。

1.最近3年間の「心の病」の増減傾向
最近3年間における「心の病」の増減傾向についての結果は、2010年実施の前回調査よりも「横ばい」が増加し、
51.4%と半数を占めた。前回よりも「心の病」の増加傾向にさらに歯止めがかかってきているといえる。
過去のトレンドを見ると、「増加傾向」は2006年の61.5%をピークに、2008年56.1%、2010年44.6%と「増加傾向」が減少してきているが、
今回はさらに37.6%に減少した。「増加傾向」の数値としては、2012年の37.6%は過去最低の数値である。
とはいえ、「増加傾向」の企業はまだ4割近くある。
また、「減少傾向」は前回の6.4%から7.8%に増えたものの、減少傾向が勢いを持っているとまでは言えない。
要約すれば、「横ばい」が増加し、「心の病」の増加傾向にさらに歯止めがかかったものの、「減少傾向」は微増にとどまっている。
「増加傾向」も割合は減少したものの、依然4割近くを占めている。

2.企業のかかえるMH問題
(1)「心の病」の最も多い年齢層
これまでの調査では30代という回答が最も多く、次いで40代、10~20代、50代と続いていたが、今回、これが大きく変わった。
40代の割合が増加し、最も多くなり、30代、10~20代、50代と続く。40代が最も多くなった。
また、2割近く(18.8%)の企業で10~20代が最も多いという結果になった。
(2)MHの取り組みを通じて期待する内容と効果
MH対策への期待の第1位は、「不調者が早期に発見できる」ことである。2番目が「不調者に適切な対応ができる」である。
「不調者に適切な対応」とは、治療につなげる対応と考えれば、早期発見・早期対応が期待のトップであるということもできる。
ちなみに「不調者が早期に発見できる」と答えた企業は188件あり、そのうち「不調者に適切に対応できる」を同時に答えているのは、
163件で、全体の74.8%となる。この数値でも期待内容のトップは早期発見・早期対応(二次予防)であるということができる。
しかし、早期発見・早期対応(二次予防)について効果が出ている(「十分効果が出ている」、「まずまず効果が出ている」)企業は
半数である。「全く効果が出ていない」「どちらともいえない」があわせて47.3%となっており、効果が実感できていない企業も半数ある。

3.職場や働き方に関する変化
職場や働き方についての変化の有無について、「そう思う」「ややそう思う」をあわせて、変化が起きている割合は、
「職場に人を育てる余裕がなくなってきている」(76.2%)が最も高く、3/4を超える企業でこうした変化が起きている。
次いで、「管理職の目が一人一人に届きにくくなってきている」(69.7%)、
「仕事の全体像や意味を考える余裕が職場になくなってきている」(68.4%)という変化が、それぞれ7割近くの企業で起きている。
これらの項目を組織のタテ、ヨコとのコミュニケーションという観点で見ると、いずれの項目もコミュニケーションの減少と関わる項目であるだけでなく、
組織のタテ、ヨコの結束性を弱めたり、これまでの蓄積を次の世代に繋いでいくという、
組織の継続性にまで大きな影響を与えうるものである。
なお、これらの上位3項目それぞれについて、そうした変化があてはまる肯定的な回答をした企業群と、
変化があてはまらないとして企業群について、この3年間の「心の病」の増減傾向との関係を見た。(図省略)
こうした変化が起きているという企業では「心の病」の増加傾向が多く、変化があてはまらないとした企業では、
増加傾向が低く、かつ、減少傾向が高めになっている。
健康な活力ある職場づくりのために、いわば企業の「土壌改善」にあたる一次予防を継続して行っていくことは非常に重要であり、
この調査結果も、その必要性を示唆するものである。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする