中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

週刊誌の記事より(2)

2013年01月18日 | 情報
週刊プレイボーイ44号'12年 10月15日「『社内うつ』が起きやすい10の職場」より

職場の飲み会は多すぎても少なすぎても「社内うつ」が発生しやすい

近頃あちこちで、20代、30代の若い社員の「社内うつ」が話題となっている。
得てしてそこでは「今の若者はストレスに弱い」という点が強調されがちだ。
しかし、近年の「職場環境の変化」で「社内うつが起きやすい職場」も確かに増えているようだ。

それはどんな職場なのか。約10の企業で産業医を務め、実際に「社内うつ」を診断してきた榛原(はいばら)藤夫氏に聞いた。
榛原氏が注目する変化のひとつは、職場の「飲み会」の減少だ。
かつて「昭和的慣習」としてヤリ玉にあげられてきた職場全体の打ち上げや、上司と部下で飲みに行く機会は、
バブル崩壊以降、確実に減ってきた。しかしそうした飲み会は、上司と部下が “コミュニケーションの下地”を
つくるきっかけでもあったと榛原氏は言う。
「部下世代がそういう場をうとましく思ってきたのは確かだし、上司も『嫌がる部下を連れていっても……』と思いがち。
また、私も管理職向けのメンタル講習で『抑うつ状態にある部下を飲みに連れていって励ますのは逆効果』と話しているし、
セクハラ講習では『飲み会でのふるまい』が細かく注意されるようになった。昔より気をつかう部分が増え、
上司が『そんなリスクを取ってまで誘いたくない』と思うようになったのもわかる。
ただ、飲みの場で、お互いに『この人はこういうキャラクターなんだ』と理解し合ったり、
あるいは上司が冗談交じりに部下をバカにしたりすることには、大きな意義があったのも事実です」(榛原氏)
そういったお互いのキャラを理解し、“コミュニケーションの下地”をつくる機会が減ると、
例えば、今までのように上司が部下の仕事に対し『バカか!』とちょっと叱っただけでも、
部下は『全人格を否定された!』と思い込んでしまうケースが生じやすい」と言う。
「『この上司は口が悪い人だしな』ととらえ、『“今の仕事に対して”怒られた』という解釈ができない。
結果、その思いが自分の中でどんどん膨らみ、『上司は自分を嫌っている』とか『同僚が皆、自分をできない奴と言っている』となる。
こうした“ネガティブな思い込みの膨張”を打ち消せなくなると、過度の緊張状態が続き、
自律神経のバランスが崩れ、睡眠障害や胃腸障害、過換気などの症状を引き起こす。
ここまできてしまうと『医療対応が必要』としか言いようがありません」(榛原氏)

それでは、飲み会が多い職場が いいのかというと、そういうわけでもないという。
「特に今の新人世代は、部活でさえ、さほど厳しい上下関係に接していない人がほとんど。
上司と一緒にいると、ずっと過度の緊張状態が続いてしまう社員もいるのです。
社員間のコミュニケーションを活性化させるために、入社後、いきなり研修合宿を行なう企業もありますが、
これが逆効果になるケースがあるのも同じ理由です」(榛原氏)
飲み会や研修合宿が多すぎると、「上下関係」に不慣れな若い社員は「上司から常に監視されている」という緊張感を
過度に高める場合があるというのだ。では、理想的な飲み会の頻度とはどのくらいなのだろうか。
「一概に言えませんが、理想は、社員がお互いのキャラクターを適度に理解し合い、
仕事においては、言うべきことを言いやすい環境にあることです」(榛原氏)
榛原氏は、職場からストレスや緊張をなくせばよいというわけでは決してない、と念を押す。
「自律神経は、『緊張状態=オン』のときに働く交感神経系と、『リラックス状態=オフ』のときに働く副交感神経系から成り立っている。
そして、オンとオフのバランスで人間は生きているんです。だから適度な緊張やストレスは、そもそも人間に必要なものなのです。
ただ、その状態がずっと続くようにわれわれの体はつくられていない。大事なのはオンとオフのバランスです」
「飲み会がなさすぎる職場」はダメだけども「飲み会が多すぎる職場」もつらい。大事なのはバランス。
人間も組織も、バランスの上に成り立っている。幸福に働くためには、
個人も組織もバランスの「ちょうどいいところ」を探していくことが大切だ。

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