中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

質問力を磨こう

2022年01月21日 | 情報

心の不調で休職、復帰に備えるには 質問力を磨こう、そのコツは
2022年1月10日 朝日

心の不調で仕事を休む可能性は、誰にでもあります。復職後、再び不調に陥ることがないようにするには、どうすればよいのでしょうか。復職に向けたプログラムを実施しているNTT東日本関東病院(東京都品川区)の精神科医・秋山剛さんに聞きました。

二十数年前に病院に赴任する前、複数の企業の顧問をしていたことがあります。精神科担当の産業医です。そこでは、心の不調で休んだ人のうち一定数は復職後に再び不調となりました。診察室での指導だけでは防ぎきれないと感じていました。

心の不調には、大きく二つの要因があります。環境によるストレスと、本人の特性です。このうち本人の特性は、一度病気になると、そうなる要素が増す、とされます。仮に何もしないまま職場に復帰して以前と同じストレスに遭うと、また不調になるのは当然のこと。このため、ストレスへの対処法を身につけることが必要だと考えました。

病院に赴任して翌年、作業療法室を使って復職に向けたリハビリを始めました。今は「リワークプログラム」とも呼んでいます。

人によってストレス対処法は違いますが、一般的に上司とのコミュニケーションが取れていれば、そう簡単に病気にはならない。仕事を指示されて「無理」と言えず抱え込めば、残業も増えて病気にもなるリスクも高まります。コミュニケーション能力を高めることが、対処法の一つです

もちろん上司が悪いこともあります。上司がハラスメントにならずに指導するスキルは、今の日本企業では不足しているように思います。上司の研修も必要です。ただ、通常の人間関係において、100%どちらかが白でどちらかが黒、にはならない。リワークでは、本人の努力も促していきます。

リワークで重視しているのは、なぜ病気になったのかを振り返ってもらい、深く分析し、自分のもろさがどこにあるのかを認識してもらうことです。

例えば、自ら進んでどんどん仕事をする人がいる。「自分がやらないと迷惑をかけてしまう」。そんな思いで限界を超えて取り組んでしまい、周りもなかなか止めてくれない。リワークの中で作業していると、同じようにやり過ぎる様子が見えます。それをスタッフが指摘すると、本人も「あっ」と気づく。本人が意識していないことを診察室で聞き出すのは難しいですが、リワークによる作業療法で発見できることがあります。

また、言葉で説明されないことをうまく理解できない人がいます。人の動きから察する、といったことが苦手な人たちです。言葉の理解力は高いので学校のテストの点は良く、職場などでは立派な学歴で能力が高いと思われています。ただ、社会では言葉で説明されないことも多いので、そこについて「なぜできないのか」と責められてしまう。このほか、同時に複数の仕事をすることが苦手な人もいます。

自分は言葉で説明されないと理解しにくい、順番に一つひとつしかできない――。そんな人は、そうした自分の特性を職場に分かってもらう必要があります。

そこで、やはり上司とのコミュニケーションが重要になります。カギになるのは、自分が分からないことを遠慮せず質問すること。質問にはコツがあります。まずは、相手の話に整合性があるかを確認する。最初と最後に言っていることが違えば、そこを質問する。次に、自分の経験や知識、ほかで聞いたことと比較し、その違いを質問する。上司にこうした質問をすることは建設的なやりとりとなり、上司も「仕事を理解しようとしているんだな」と好意的に受け取ってくれるはずです。

まだまだリワークプログラムを受けられる医療機関は限られています。一般社団法人日本うつ病リワーク協会に加入する医療機関は全国で200程度。ほかに独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の地域障害者職業センターが実施するリワークもあり、職場を含めて支援しています。企業自身が手がけるリワークもあります。

医療機関で治療を受けながらリワークに取り組む需要はもっとあるように感じます。ただ、リワークを実施するには人手もかかり、リワークだけで収支を成り立たせるのは難しい。職場復帰しようとする人をサポートする態勢を整えるために、診療報酬でリワークの加算をすることも必要だと思います。

秋山先生略歴(小職編集)
昭和54年3月東京大学医学部卒業。昭和54年6月東京大学医学部附属病院分院神経科入局。平成3年1月同医局長。平成8年4月~現在、関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)精神神経科部長。平成30年2月~現在、一般社団法人うつ病リワーク協会理事。その他多数。

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