中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

永遠のテーマ?を解決

2022年01月14日 | 情報

永遠のテーマ?を解決しましょう。

衛生委員会で調査・審議する事項について

再三、当ブログにおいて紹介してきましたが、多くの企業・事業場の(安全)衛生委員会、
特に衛生委員会においては議題がない、委員会がマンネリだという「お悩み」があります。
そこで、今回は、その議題について、以下に論じます。

なお、このテーマについては、リーフレット「衛生委員会・活性化テキスト」
(独)労働者健康安全機構編が、参考になります。

https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/manual/eiseiiinkai_2020_04.pdf

はじめに、安衛法第18条には、
「事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、
事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。」とありますから、

以下、「次の事項」について、紹介します。
「1.労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。」
⇒具体的には、労働衛生の方針や年間計画、重点事項など

 「2.労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。」
具体的には、事業者は、労働者の健康の保持増進のために必要な措置を継続的
かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。(安衛法第69条第1項)とされています。

さらに、指針が公示されています。
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(公示第8号 改正;令和3.2.8)

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-20/hor1-20-1-1-0.htm

・全ての労働者の心身両面の総合的な健康の保持増進を図ることが必要であり、
その具体的な実施方法が事業場において確立していることが必要である。
・中長期的な視点に立って、継続的かつ計画的に行うために次の事項に沿って積極的に
進める必要があり、衛生委員会等を活用して取り組むこと。

  • 健康保持増進方針の表明
  • 推進体制の確立
  • 課題の把握
  • 健康保持増進目標の設定
  • 健康保持増進措置の決定
  • 健康保持増進計画の作成
  • 健康保持増進計画の実施
  • 実施結果の評価

さらに、指針を分かりやすく解説した手引きも公表されています。
「職場における心とからだの健康づくりのための手引き~事業場における労働者の
健康保持増進のための指針」(2021.3)

https://www.mhlw.go.jp/content/000747964.pdf

たとえば、健康保持増進計画例(16頁記載)です。
計画の対象期間 令和2年4月1日〜令和3年3月31日
健康保持増進方針 労働者が積極的に健康保持増進措置に取り組めるように進める

健康保持増進目標
<中長期的な達成目標値>労働者の平均HDLコレステロール値を2mg/dl高くし、
生活習慣病の予防や改善につなげる
<措置別の目標>
①階段を使った昇降促進について、ポスター掲示や放送による参加促進を年4回実施し、
参加率10%以上にする
②年1回社内ウォーキングイベントを開催し、参加者数を5%増加させる(前年度比)

「3.労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。」
⇒具体的には、発生した業務上疾病の原因分析と再発防止対策

「4.前3号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項」
即ち、安衛則第22条において、
「安衛法第18条第1項第4号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、
次の事項が含まれるものとする。」とされています。

1)衛生に関する規程の作成に関すること。
⇒具体的には、衛生に関する規程には、健康診断の実施に関する規程、有害な業務
その他職業性疾病を発生する恐れがある業務などについての作業の実施要領、
作業環境の点検および測定の要領に関する規程が含まれる。
「メンタル対策における職場復帰に関する規程」や「健康情報取扱規程」(小職註;過去に、
当ブログで再三紹介していますが、難題です)などの整備も重要になってきている。

2)安衛法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は
有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。

3)安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。

4)衛生教育の実施計画の作成に関すること。
⇒具体的には、「衛生教育」には、法第59条および第60条による安全衛生教育等のうち
衛生に係るもののほか、随時必要な時期における労働者に対する衛生教育が含まれる。

5)安衛法第57条の4第1項及び第57条の5第1項の規定により行われる
有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。

6)安衛法第65条第1項又は第5項の規定により行われる作業環境測定の結果及び
その結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。

7.定期に行われる健康診断、安衛法第66条第4項の規定による指示を受けて行われる
臨時の健康診断、安衛法第66条の2の自ら受けた健康診断及び法に基づく他の省令の
規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策
樹立に関すること。
⇒具体的には、「各種健康診断の結果」とは、職場の健康管理対策に資することができる
内容であればよく、受診者個々の健診結果や個人の病名等は含まれないこと。
たとえば、
・受診率の状況、受診率向上策の必要性
・有所見者数の状況、特徴、事後措置の状況
・健康指導、健康づくりの方針や具体策

8.労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
⇒具体的には、
・健康教育、健康相談、労働者が自ら行う健康の保持増進を図るための活動に対する援助、
勤務条件面での配慮等が含まれる。
・労働者の職業生涯を通じた健康づくりを進めることが必要であること。

9.長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
⇒具体的には、
・長時間労働にわたる労働による労働者の健康障害の防止対策の実施計画の策定等に関すること
・面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること
・面接指導等の労働者の申出が適切に行われるための環境整備に関すること
・面接指導等の申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることが
ないようにするための対策に関すること
・面接指導等に係る基準の策定に関すること
・事業場における長時間労働による健康障害の防止対策の労働者への周知に関すること

10.労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
⇒具体的には、メンタルヘルス対策として(以下は、平成18年2月24日付け基発第 0224003 号)
・事業場におけるメンタルヘルス対策の実施計画の策定等に関すること
・事業場におけるメンタルヘルス対策の実施体制の整備に関すること
・労働者の精神的健康の状況を事業者が把握したことにより当該労働者に対して
不利益な取扱いが行われるようなことがないようにするための対策に関すること
・労働者の精神的健康の状況に係る健康情報の保護に関すること
・事業場におけるメンタルヘルス対策の労働者への周知に関することが含まれること

11.厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は
労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、
労働者の健康障害の防止に関すること。

〇加えて、ストレスチェック制度導入により、衛生委員会の付議事項(第 22 条)
関係(第 10 号)として、ストレスチェック制度の実施体制及び実施方法について、
調査審議を行い、ストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、
これをあらかじめ労働者に対して周知するようにすることが必要であることが示されています
(平成 27 年 5 月1 日基発 0501 第 3 号)。

5 衛生委員会等における調査審議(基発0501第7号平成27年5月1日)
(1)衛生委員会等における調査審議の意義
(2)衛生委員会等において調査審議すべき事項
規則第 22 条において、衛生委員会等の付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を
図るための対策の樹立に関すること」が規定されており、当該事項の調査審議に当たっては、
ストレスチェック制度に関し、次に掲げる事項を含めるものとする。

また、事業者は、当該調査審議の結果を踏まえ、法令に則った上で、
当該事業場におけるストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、
これをあらかじめ労働者に対して周知するものとする。

●ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
ストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気付き及びその対処の支援並びに
職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を
目的としており、メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしないという趣旨を
事業場内で周知する方法。

② ストレスチェック制度の実施体制
・ ストレスチェックの実施者及びその他の実施事務従事者の選任等ストレスチェック制度の実施体制。
実施者が複数いる場合は、共同実施者及び実施代表者を明示すること。この場合において、
当該事業場の産業医等が実施者に含まれるときは、当該産業医等を実施代表者とすることが望ましい。
なお、外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合は、当該委託契約の中で
委託先の実施者、共同実施者及び実施代表者並びにその他の実施事務従事者を明示させること
(結果の集計業務等の補助的な業務のみを外部機関に委託する場合にあっては、
当該委託契約の中で委託先の実施事務従事者を明示させること)。

③ ストレスチェック制度の実施方法
・ ストレスチェックに使用する調査票及びその媒体。
・ 調査票に基づくストレスの程度の評価方法及び面接指導の対象とする高ストレス者を選定する基準。
・ ストレスチェックの実施頻度、実施時期及び対象者。
・ 面接指導の申出の方法。
・ 面接指導の実施場所等の実施方法。

④ ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
・ 集団ごとの集計・分析の手法。
・ 集団ごとの集計・分析の対象とする集団の規模。

⑤ ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
・ 事業者による労働者のストレスチェックの受検の有無の把握方法。
・ ストレスチェックの受検の勧奨の方法。

⑥ ストレスチェック結果の記録の保存方法
・ ストレスチェック結果の記録を保存する実施事務従事者の選任。
・ ストレスチェック結果の記録の保存場所及び保存期間。
・ 実施者及びその他の実施事務従事者以外の者によりストレスチェック結果が
閲覧されないためのセキュリティの確保等の情報管理の方法。

⑦ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
・ ストレスチェック結果の本人への通知方法。
・ ストレスチェックの実施者による面接指導の申出の勧奨方法。
・ ストレスチェック結果、集団ごとの集計・分析結果及び面接指導結果の共有方法及び共有範囲。
・ ストレスチェック結果を事業者へ提供するに当たっての本人の同意の取得方法。
・ 本人の同意を取得した上で実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲。
・ 集団ごとの集計・分析結果の活用方法。

⑧ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び
削除の方法
・ 情報の開示等の手続き。
・ 情報の開示等の業務に従事する者による秘密の保持の方法。

⑨ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する
苦情の処理方法
・ 苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合の取扱い。

なお、苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合は、当該外部機関において労働者からの苦情
又は相談に対し適切に対応することができるよう、当該窓口のスタッフが、
企業内の産業保健スタッフと連携を図ることができる体制を整備しておくことが望ましい。

⑩ 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
・ 労働者にストレスチェックを受検する義務はないが、ストレスチェック制度を効果的なものと
するためにも、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいという制度の趣旨を
事業場内で周知する方法。

⑪ 労働者に対する不利益な取扱いの防止
・ ストレスチェック制度に係る労働者に対する不利益な取扱いとして禁止される行為を
事業場内で周知する方法。

さらに、
情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく
安全委員会等の開催について(基発0827第1号 令和2年8月27日)

https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/content/contents/000706713.pdf

基本的な考え方

安全委員会等は、事業者が講ずべき安全衛生対策の推進について、
事業者に対して意見を述べさせるために設置・運営されるものであり、労使が協力し合い、
事業場における安全衛生に係る事項について、十分に調査審議を尽くすことが必要不可欠である。

近年の急速なデジタル技術の進展に伴い、情報通信機器を用いて安全委員会等を開催することへの
ニーズが高まっているが、情報通信機器を用いた開催においても、事業場における安全衛生に
係る問題の十分な調査審議が確保されるよう、事業者は、記の2に留意の上、
事業場の実情に応じた適切な方法により、安全委員会等の設置・運営を行う必要がある。

最後に、
お疲れさまでした。いかがでしたか?役に立ちましたでしょうか?
結論としては、衛生委員会の議題は、持て余すくらいたくさんあるのですね。
ですから、「議題がない、マンネリ化する」は、ほかに原因があるのでしょう。
ヒントになる提案は、当ブログに再三提案しています。
なお、労基署も、この現実は掌握しています。しかし、解決策は教えてくれません。

(参照)当ブログ 21.11.17「永遠のテーマ?」

コメント
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