中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

Web講演会の記録です

2022年01月06日 | 情報

参考になりましたので、分かる範囲内で報告します。

〇講演テーマ;うつ病と自殺のリスク(2019.12.19)

順天堂大学大学院医学研究科 精神・行動科学
順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 馬場 元教授の講演要約

◼ 若年成人(おもに勤労者)においては
 女性有職者で自殺が増加
 COVID-19感染症拡大の影響による労働環境の変化が自殺の増加に関連

◼ 高齢者においては
 「健康問題」が原因・動機として最も多く、年齢が高くなるほど身体の病気の悩み」が多くなる
「身体の病気の悩み」は「仮面うつ病」による症状である可能性も
 COVID-19感染症拡大の影響による社会的孤立がうつ病発症の誘因となり、高齢者の自殺の増加に
影響している可能性

◼ 一般人口において
 COVID-19感染症拡大の影響によって8割の人がストレスを感じている
影響により精神疾患に罹患しているが受診に至らない患者が多く存在する可能性

◼ 通院患者において
 COVID-19感染症拡大の影響に関連した気持ちや症状の悪化を自覚した患者さんは4割に満たず、
実際に病状が悪化したと担当医が判断した患者さんは16%程度
 COVID-19感染症拡大の影響をポジティブに捉える患者も
⇒精神疾患に罹患するほどの、または精神疾患に罹患していることによるストレスが
COVID-19の流行によるストレスより大きい可能性
⇒COVID-19の流行によるストレスがあっても、通院治療をすることで症状の悪化を
予防できている可能性
⇒社会適応の困難さによる葛藤から解放された可能性

◼ 通院患者の方が一般人口よりCOVID-19感染症拡大の心理的影響が少ない可能性

今まで以上に未受診のうつ病患者に対し、罹患の気づきと受診を促進させることが自殺予防となる

Q&A

Q;なぜ若年女性に大幅な影響が出ているのでしょうか?原因や対策はあるでしょうか?
A;非正規雇用の環境悪化、非正規が多い女性

Q;孤立を避ける対策
A;メールより、チャット等のタイムリーなコミュニケーションが有効では

Q;中でもすでに精神疾患をお持ちの方が通院治療が継続できたことが、不安等のネガティブの
割合が高くなかったことでした。一方で、体調等の不調があっても、
コロナ禍では新患を断られたと聞いたことがあるのですが、このあたりについて、
何かお感じになられていることはありますでしょうか。
A;待合室には、熱がある患者がいないという保証、安心感にもなる。


〇講演テーマ;大阪における自殺の現状と対策(2021.12.19)

関西医科大学精神神経科 木下利彦教授

‐自殺既遂者の特徴‐
わが国は自殺率が高い
交通事故死亡者数の6倍
既遂者は男性のほうが多い(約70%)
既遂の多くは初回の自殺企図である
20-40代の女性では自殺未遂歴ありが約40%
10-39歳では自殺が死因の第一位である
50代の自殺率が最も高い
既遂手段は縊頚(首つり)が一番多い(男性の約70%/女性の約60%)
健康問題が原因・動機の第1位

・自殺の調査研究

〇ケース・マネージメントの内容
1.定期的な対象者との面接(あるいは通話)
2.対象者の生活背景・受療状況に関する情報収集
3.精神科受療の促進
4.精神科・身体科かかりつけ医に関する受療調整
5.受療中断者への受療促進
6.公的社会資源・民間援助組織の紹介と利用する際のコーディネート
7.家族に対する入院中の心理教育と情報提供
8.ITを利用した情報提供(専用ウエブサイト)

〇「こころの健康に関する住民意識調査」結果報告書 大東市 2018.6
【家計に余裕がなければ幸福感が低下していた】
【より若いほど、イライラなどが強く、抑うつ傾向が高かった】
【手段に関係なく、若い人ほど相談する傾向にあった】

年齢とともに:
【ストレスの軽減を目的として、「人に話をきいてもらう」「時間が経つのを待つ」ことはせず、
運動で解消を試みていた】
【励ます傾向にあった】
【「自殺」は本人の判断に任せるべきではないという考えが強くなっていた】
【「死にたい」と打ち明けられた時の対応は、介入的となっていた】
【啓発物への関心が強くなり、よく見た人ほど自殺対策に関するPR活動が必要と考え、
講演会への参加も希望していた】
【近所の人が自殺で亡くなったという体験が増加していた】
【自死遺族にも「励ます」など積極的に介入していた】
【自殺念慮は低下していた】

・自殺対策の今後

  • 自殺対策基本法と自殺総合対策大綱 – 地域へ
  • 1998年からの23年 – 自殺者数は減ったが,コロナ禍で増加傾向。
  • 数多くの研修会が行われた– 若者のSNS相談  – 高齢者による叱咤激励
  • 自殺対策が根付いた地域とそうでない地域 – 研究、施策の効果や人口動態上の変化

今後について考えると
そのためには、対話(双方向性)– 独語・対話・物語
・理解をすること、されること
・「連携」と「おしつけ」

Q&A
Q;原因として学校や職場や家庭での問題がうつになっていくと感じます。そこに希望が
見いだせないのかとも感じます。その場合地域レベル連携として学校・教育委員会等教育機関や
職場・職安や地域の町内会や社会福祉法人とも連携・ご縁つながりが必須と思います。
対策として一層啓発活動や相談支援サポート体制が必要と思われますが、
先生はどうお考えなさりますか?
A;町ぐるみのつながりが大切

Q;地域活動を新たに、もしくは更にすすめるうえで、大事なポイント(ステークホルダー等)を
教えていただけるとうれしいです。
A;継続的な、支援が大切、(小職註;背景には、行政の予算手当の打ち切りがある)

補足;当病院には、戦略研究、救急救命センターに、複数の精神科医を配置
当病院では、救急救命センターの医師が、精神科の患者に親和的です
体制の継続・保持が必要で、それには行政の予算手当てが重要。

 

コメント
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