中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

孤独感40~50代で顕著

2022年01月07日 | 情報

孤独感40~50代で顕著 リモートなじめず生産性に影響も
日経 2021年12月31日 [有料会員限定]

新型コロナウイルス禍で40、50代を中心とする働き盛りの「孤独感」が、他の世代よりも深刻さを増している。テレワークの拡大などに伴いコミュニケーションの手段が変わるなか、対面中心の意識から脱しきれないことなどが背景とみられる。孤独感に伴う経済損失について英国では年間約5兆円との試算もある。生産性などに与える影響は軽視できず、官民を挙げた対策が不可欠だ。

東京都健康長寿医療センター研究所の分析で分かった。調査は全国15歳から79歳までの男女約3万人が対象で、ここまで大規模にコロナ禍での孤独感を追った調査は初めて。同研究所の村山洋史研究副部長らが2020年8~9月と21年9~10月、インターネットで調査した。

「人との付き合いがないと感じる」「取り残されていると感じる」などと答えた人に、その頻度を尋ねて孤独感を判定した。さらに電話やメールなどでの同僚や知人らとの交流の有無や頻度を聞き、社会的孤立の状態にあるかを判断した。

全世代平均でみると、コロナ禍が始まった20年に「孤独感が高い」とした割合が18.8%、「社会的孤立状態にある」と判断されたのは27.9%だった。21年は社会的孤立が22.7%と約5ポイント改善したが、孤独感は21.5%と約3ポイント悪化した。

孤独感について世代別でみると、20代は21年に大きく改善した。村山氏は「若い世代は感受性の高さなどから孤独感がより高めに出る傾向がある」と指摘。20年は対面での交流機会が限られたこともあり一気に高まり、21年にはコロナ対策にも慣れ、オンラインも含めた交流にもなじんできたことから、徐々に解消したと分析する。

一方で、40~50代の悪化が目立つ。21年調査の孤独感は、10代を除けば40代(25.7%)と50代(25.3%)で高い傾向が出ている。前年調査比で約10ポイント増と、いずれも他の世代に比べ悪化も顕著だ。男女別で見ると、男性は約21%、女性は約30%で孤独感が高かった。40~50代男女の回答者の約8割が就労者だ。テレワーク環境の整備などに伴い、社会的孤立が10ポイント以上改善したことと対照的な結果に、村山氏は「業務上のコミュニケーションがやりにくいというストレスなどが、じわじわとメンタルをむしばんでいる」とみる。

「相手の表情が見えないとちょっとした一言が心に刺さる」。東京都内の商社に勤める50代男性は、20年春以降、社の方針で原則在宅勤務の日々がいまも続く。半年がたったころ、精神面に負担を感じるようになった。管理職として出席しなければならないリモート会議が1日8つ入ることもあった。「形はつながっているけど、心はつながっていない」

40、50代に限らず、産業医などに悩みを相談しにくいとの課題もある。NTTデータ経営研究所とNTTコムリサーチが9月に発表した「働く人のメンタルヘルス」に関する調査によると、コロナ下でストレスが増加した20~50代のうち、産業医を含む社内の相談窓口に「抵抗感がある」と答えたのは56%だった。

調査担当者は「面談内容が漏れたり、職場での評価に影響が出たりすることへの不安が根強い」とみている。

孤独感の放置は国の成長力をむしばみかねない。英国の「孤独問題対策委員会」が17年12月にまとめた報告書は、孤独が生産性や医療などに影響し年間5兆円近くの経済損失が発生すると試算した。

英国は翌月、世界初の孤独問題担当相を置き、孤独対策の戦略をまとめたほか、民間と連携した啓発活動などに取り組んでいる。

欧米では家庭や職場以外の「第3の場所」をつくる支援が進む。家庭と職場ではないストレスをため込まない場所を指し、教会やカフェなどが想定されている。

日本は21年2月、英国に次いで担当相を新設。全国16歳以上の約2万人を対象に孤独感や社会的交流に関する実態調査を始め、来年3月をメドに公表する予定だ。

経済協力開発機構(OECD)が05年に公表した調査では、日本は友人や同僚、他のコミュニティーの人と「ほとんど付き合わない」とした比率は15.3%で、加盟国中トップとなった。孤独や孤立の問題に詳しいみずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「所属する組織以外での人との結びつきを促す仕組みを地域や行政がつくっていく必要もある」と指摘する。

(関連記事)
孤独・孤立の実態把握 政府、12月に2万人初調査へ
2021年11月24日 日経

野田聖子少子化相は24日の記者会見で、孤独・孤立の実態を把握するための全国調査を12月に実施すると発表した。全国の16歳以上2万人を対象にオンラインと書面で調べ、政府として孤独感や社会参加の状況などの把握につなげる。

調査結果は2022年3月ごろに公表を予定する。野田氏は「孤独・孤立の背景や状況は多岐にわたり、人によって感じ方や捉え方も多様だ。実態を可能な限り明らかにし、必要な支援が行き届くようにしたい」と述べた。

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