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「高齢者移住」は、現実的なのだろうか?

2015-06-05 19:15:19 | 老親介護

今朝の新聞に「高齢者移住」という記事が、一面に掲載されていた。
朝日新聞:「高齢者の地方移住を」東京圏の介護需要、10年後45%増 創生会議提言

まず、なぜ10年後なのか?というと、団塊の世代の人たちが「後期高齢者」になるだけではなく、いわゆる「団塊ジュニア」と呼ばれる世代も、そろそろ現役を引退する時期に差し掛かってくるからだ。
高齢者になれば、当然様々な身体的衰えによる生活の不自由さだけではなく、病気にもかかりやすくなり、また治りにくいという状態になりやすい。

現在のように、東京に「一極集中」していることを考えると、創生会議が予測していることは現実としてあり得ることだと思う。
事実今でも「介護付き老人ホーム」などは、入居待ちという状態になっており、一人で複数の施設に入居希望を出しているために、本当に入居を必要としている人と入居希望者数が、合致していないのでは?という指摘があるほどだ。

ただ、創生会議が提言しているように「地方への移住」というのは、そんなに簡単な話ではないと思う。
一つは、受け入れる自治体にとって、「移住する高齢者を歓迎するのか?」という点だ。
ご存じのように日本の皆保険制度では、「等しく医療を受けられる」ことになっている。
しかしその財源は、地方自治体の財源に頼るところとなっている。
主だった産業もなく、高齢者ばかりが転居されても受け入れる側の自治体としては、決して快いものではないのでは?
「高齢者医療を支えるための財源確保」という問題を解決しなくては、財源の少ない地方都市では難しいのではないだろうか?

もう一つは「地域コミュニティー」という視点だ。
拙ブログでも書いたと思うのだが、今年1月実家の父が心筋梗塞で緊急入院をした。
実家がある米子市は、今回の創生会議で「移転先候補」として挙げられている。
確かに、人口に対して「急性期病院」の数は多いかもしれない。
それだけではなく、「急性期病院と町の診療施設等との連携(「地域包括連携システム」と呼ばれるようだ)」がしっかりと整っている。このことに関しては、名古屋よりも進んでいるのでは?と感じた点でもあり、驚いた点でもある。
「地域包括連携システム」というのは、「急性期病院(=高度医療を中心とした治療を行う病院)」で2週間~1か月程度の入院後、医療施設を持つ介護施設や自宅に移った後の医療や介護をスムーズに行うための、連携システムのこと。今高齢者医療を中心に各自治体が取り組んでいる。この「連携システム」により「急性期病院」での入院期間を短くすることで、医療費を下げ、患者のQOLの質も確保しようという狙いがある、といわれている。
特に、高齢者患者(介護施設への入所を必要としている人たち)のQOLという視点で考えると、「地域のコミュニティー」ほど重要なポイントはないと思う。
実際「ご近所力=地域のコミュニティー力」が、遠距離看護をしなくてはならなかった私にとって、とても心強かった。

この「ご近所力」だが、高齢者になりいきなり都市部から転居しても、発揮されるものではない。
長い間の地域内での活動や、コミュニティーへの参加などによる「力」なのだ。
団塊の世代の人たちが、現役を退く頃からブーム?になった「セカンドライフの田舎暮らし」というのは、そう甘いものではない。
むしろ理想と現実は、大きく違うという覚悟が必要だと思う。
何より「都市部の生活の延長としての地方での暮らし」などは、あり得ない。
交通が不便というのはある程度我慢ができても、「人との付き合い方の密度」というのは、都市部のようなわけにはいかない。

とすれば、むしろ都市部には都市部向けの「高齢者施設」という考え方が、必要なのではないだろうか?
今まで都市部で生活をしていれば、その生活そのものに「愛着」があるはずだ。
単純に「施設の数」などで「高齢者の地方移転」というのは、安直な気がする。



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