日経のCOMEMOに、面白いコラムがあった。
過疎に悩む道府県に「水素特権」をあたえ、「水素エネルギー」による地域の活性化を目指せ!というアイディアのコラムだ。
日経COMEMO:過疎道府県に水素特権を
このコラムを書いた方は「破れかぶれの提案」と書いていらっしゃるのだが、実は東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故により、被害を被った福島県相馬市では、この「水素エネルギーと太陽光発電を組み合わせた新しいエネルギー構想」が動き始めている。
環境ビジネスオンライン:福島県相馬市でスマートコミュニティ事業開始 最新の環境技術が集結
IHIプレスリリース:2018.4.5福島県相馬市において、持続性のある地産地消型スマートコミュニティー事業を開始
IHIのこの見出しはまだ続いていて、「『水素を活用したCO2フリーの循環型地域社会創り』を実践」という、長い見出しになっている。
IHIがプレスリリースを出していることに違和感を感じた方もいらっしゃると思うのだが、IHIは相馬市で火力発電所を稼働させている関係から、この「地産地消型スマートコミュニティー」の中心的役割を持つことになったようだ。
このスマートコミュニティの中心になるのは、太陽光発電のようだが、昨年九州電力が太陽光発電事業者に対して「出力抑制」を行った、とニュースになり、「太陽光発電による売電事業の難しさ」のようなことも分かってきた。
10年ほど前にあった「太陽光発電」の魅力が半減している、と感じている電売事業者もそろそろ出始めてもおかしくはないだろう。
とすると、既存の電力会社が「太陽光発電の出力抑制」による損失を、何かで補填したい、という気持ちになるのは当然のことなのかもしれない。
その「出力抑制」による太陽光発電の電力を利用し、「水素エネルギー」に転換させ、蓄電ではなく「蓄水素化」するというのが、実験的に行われている相馬市の「スマートコミュニティー事業」ということになる。
今後、既存の電力会社による「太陽光発電(を含む自然エネルギー)の出力抑制」が頻繁にされるようになると、上述した通り太陽光発電(を含む自然エネルギー)事業者にとって、うまみのある発電事業ではなくなる可能性は高く、CO2削減という目的がありながら、太陽光発電などの自然エネルギーそのものの推進は、ままならない状況になってしまう。
何より、電力そのものは送電する距離が長くなればなるほど、ロスが多くなると言われていることを考えると、発電する場所と消費する場所が近い=地産地消型の電力送電システムが、一番ロスが少なく効率が良い、ということになる。
それに対して(爆発などのリスクを減らすことが重要だが)水素は備蓄することができる。
いざという時、備蓄した水素を使いエネルギーとして活用することができるし、輸送することも可能だろう。
そう考えると、COMEMOにある「水素特権を過疎道府県に与える」というのは、あながち空論ではないような気がする。