日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

今、社会に蔓延しているのは「恐怖」ではなく「不安」だ

2020-02-29 20:33:34 | 徒然

一昨日だったと思う、Yahoo!のトピックスで「トイレットペーパーが売り切れ」という、ニュースが取り上げられていた。
このニュースを見た時「何故、トイレットペーパー?マスクじゃなくて??」と、思った。
そして昨日、近所のドラッグストアに行き、その理由が分かった。
どうやら「マスクを量産するために、トイレットペーパーの生産ラインが止まる」というデマが流れた為、買い占めに走った人がいた、ということだった。
それは、ティッシュペーパーやキッチンペーパー、女性の生理用品にまで広がっているらしい。

トイレットペーパーが売り切れるのだから、ティッシュペーパーも売り切れるのは、分かる。
しかし女性の生理用品まで売り切れるというのは、デマにしても程がある。
現在の「使い捨てマスク」のほとんどは、「不織布」という素材だ。
今でも昔ながらの「ガーゼマスク」を使われている方もいらっしゃるかもしれないし、スポンジのような素材のマスクもあるので「マスク=不織布で作られている」とは言い切れないが、主流は「不織布」であることのは違い無い。
トイレットペーパーやティッシュペーパーは、ご存じの通り「パルプ」で作られている。
キッチンペーパーの一部は「不織布」の製品もあるが、キッチンペーパーの用途を考えれば、マスクの代用になるとは思えないなずだ。
というのもキッチンペーパーは、灰汁取りや油こしとして使われることも多く、油こしとして使えるということは、ウイルスなどをブロックできるようなものではない、ということがわかるはずだ。
まして、女性の生理用品には「高分子吸収体」と呼ばれる、特殊な素材が含まれている。
赤ちゃんが使う「紙おむつ」等も、この「高分子吸収体」が使われていることで、オシメそのものがおしっこで濡れても、漏れ出ないようになっている。
個々の素材も違えば、製造ラインも違うはずなのだ。
もちろんドラッグストアの店頭には、「デマの注意喚起」の張り紙がしてある。
にもかかわらず、買い占めに走ってしまうのは何故だろう?

同様の経験は、9年前の「東日本大震災」でも経験している。
「東日本大震災」の時は、「東京電力福島第一原子力発電所事故」が起きたため、ミネラルウォーターが「買い占め」の対象となった。
9年前の「ミネラルウォーター」の時と、「買い占め心理」そのものは変わってはいない、ということにもなるだろう。

よく言われることだが「恐怖」と「不安」の違いは、「恐怖」はその「怖さの対象が明確」なのに対し、「不安」は「得体の知れない」漠然としているコトが多い。
言い換えれば「恐怖」のように、怖さの対象が明確であれば対策法もわかってくる。

ところが「不安」は、「対象が明確」とは、言えない。
「最初の検疫で陰性だったにもかかわらず、その後陽性となった」などの報道があると、その「得体のしれない」という不安感が、ますます強くなっているのではないだろうか?
今は「新型コロナウイルス」という「ウイルス」であることはわかっているが、具体的な対策法などの指示はされてはいない。
強いて上げるなら「小中高校などの臨時一斉休業」くらいで、一番罹患者数が多い大人への対応指示などが無く、連日報道される内容の多くは、罹患者数と死亡者数、感染ルートだ。
今一番生活者が知りたいのは、そのような数字やルートではなく、感染予防策などの具体的な方法だ。
何故なら「問題解決の為の具体的方法」が分かれば、行動するときの指針となることも多く、何より安心が生まれるからだ。
政府がまず行うことは、「生活者の不安」を取り除くような情報の提供であり、その情報を提供することによって「買い占め」のような、不安感から来る異常な行動によるパニックを防ぐことで、新薬開発を含めた新しい不安を取り除く情報を提供することができるようになるのでは?