ダイヤモンドオンラインに、興味深い記事があった。
DAIMOND on-line:なぜANAホテルは「桜を見る会」問題で最高権力に忖度しないのか?
ANAホテルが「桜を見る会」について、首相の答弁と食い違った説明をした、という話題があった。
記事にもあるように、「ANAホテルが外資系ホテルだから、忖度しなかったのでは?」という指摘をする記事もあった。
この報道で、自民党の議員さんたちの間では「ANAホテルは使わない」等の発言があったようだが、その一方でこの発言にで「これからは、積極的にANAホテルを使おう!」という、人達も数多くいるようだ。
確かに首相の答弁と違う説明をすることで、安倍さんをはじめとする自民党の議員さんたちからそっぽを向かれ、一時的にホテルの大きな収入源と言われている「宴会」利用は減るのだろうか?という、疑問がある。
というのも、今回の答弁でANAホテルのブランドイメージは、グンッと上がったのでは?という、気がするからだ。
それが「適切な会計処理をしている」ということが分かったからだ。
権力に忖度するのではなく、「当たり前に法に基づいた処理をし、それについて淡々と説明したに過ぎない。特別なことではない」と言う、社会的信頼をANAホテルというホテルをよく知らない人達にまで、知らしめたということになるからだ。
「当たり前のこと」に対して、ブランドイメージがアップする、ということ自体おかしなことではないか?と、思われるかもしれないが、「当たり前のこと」を丁寧に説明する、ということ自体が「誠実な企業である」という印象を、多くの生活者が持つことになったはずだ。
違う言い方をするなら、「未来の顧客に対して、ANAホテルは誠実な企業である」というブランドイメージを与えることに成功した、ということになる。
重要なことは「未来の顧客」に対して、「ブランド力をあげることに成功した」という点だ。
これまで様々な企業が、誠実な対応を怠り生活者からそっぽを向かれ、最悪な場合は倒産にまで追い込まれた。
一見すると、既顧客が離れたために倒産したような印象がもたれるかもしれないが、既顧客だけではなく未来の顧客も企業に対しての信頼を失ったため、様々な再建プランを出しても倒産してしまった、と理解すべきだと思う。
実際、今回の件でYahoo!などのコメントを見ると「ANAホテルを是非、今後利用してみたい」という書き込みが、いくつもある。
実際に利用するかしないかは分からないが、「利用してみたい」というコメントを読んで、「私も、利用してみよう!」という気になった未利用者は、案外多いのではないだろうか?
それは、ネットという一瞬で情報や個人の考えが拡がっていくツールだからこその反応であり、「未来の顧客を獲得する」という視点で考えれば、これほど有効なことはない。
一度失ってしまった「ブランド力」という無形の資産を取り戻すには、膨大な時間とお金と労力を必要とする。
また、「ブランド力」を維持していく努力もまた、相当な労力とお金が必要だ。
社会に対して「誠実な企業である」という、経営姿勢を示す為には企業のトップから現場で働くアルバイト一人ひとりに至るまで、「企業理念と企業が果たすべき使命」を十分理解し、それを忠実に行い・守ることなのだ。
決して、広告やコマーシャルでつくられた「企業イメージ」が「ブランド力」ではない、ということを、今回のANAホテルは示しているような気がする。